力と耐久ないけどダンジョンにいるのは間違っているだろうか? 作:血濡れの人形
もし彼らの中に、彼の中に宿っている、
異常な王と騎士の存在を知っているものがいたなら。
もし彼らの中に、木の枝一本で隣国を滅ぼし、
憎悪とともに世界を半壊させた王のことを知っているものがいたなら。
もし彼らの中に、単独で国を滅ぼせるような者二十人と、
惑星を砕けるほどの者一人を相手に、
被害を部屋一つと自分の命のみで抑え込んだ、
たった一人の騎士のことを知っているものがいたのなら。
もし彼らが、その者達の転生体である彼、
ナレッジの逆鱗に触れなかったなら。
きっと、こんなことにはならなかっただろうに・・・
なにかが体の中を這いずるような感覚に陥る。
頭に中に何かの記憶が流れてくる。
城のような風景、こちらに向けて笑みを浮かべる二人の女性。
吐き気が込み上げてくる。
その二人がなにかに殺されるような光景が頭の中に現れる。
『また失うのか?』
そんな声が聞こえた気がした。
『再び会うことのできた妻を見殺しにして、貴様は満足なのか?』
その声には、どこか慣れ親しんだものに聞こえる。
『まったく、あの程度の雑魚に遅れをとるなどと、
ずいぶんと弱くなったようだな。俺は』
ドクン、と、心臓が大きく鼓動する。
『仕方がない。一時的に力を貸してやろう。
あの程度の者たちなど、雑草のように刈り取ってやれ』
何かの技術が入ってくる。頭に直接叩き込まれたそれは、
だがしかし、確かにどこか懐かしい技術だ。
体に力が溢れていく。傷が塞がっていくのがわかる。
目を開く。先程の光景と変わらず、アリスが地面に倒れていた。
「Aaaaa」
自分の口からそんな声がこぼれ落ちる。
意識が別な何者かに奪われる。
肉体が無理やり変化していく。
「ヤット、アリスニフタタビアエタンダ」
意識がなくなる直前、
「アァ、ヤハリコノ体はよくなじむ」
という声が聞こえた。自分の口から出たそれは、しかし、
いまの『ナレッジ』という個体の出す声ではなかった。
~視点変更 明視点~
いつもと違う声と共に、お姉ちゃんが立ち上がる。
嫌な気配だった。本能が訴える。あれはお姉ちゃんじゃないと、
その皮を被った別のものだと。
否、その皮すらすでに存在していない。
綺麗な男の人だった。でも、それがとても怖く感じた。
お姉ちゃんの体がその男の人に変化した後、服装も同時に変わる。
まるで、鎧のような服。しかし、所々に白い布地が見える。
チキとラティが地面に落ちる。勝手に落ちていったところを見ると、
本人たちが嫌がったのだろう。
「・・・剣よ」
その男の手に大剣が現れる。
「魔力を纏いて万物を粉砕せよ」
背筋が凍る。そんな感覚に陥ると同時に、男の剣に何かの靄が見える。
男が剣を振るう。前方に向けて振られたそれは、
暴力となってローブの者たちを吹き飛ばす。
ふと、男の足元を見ると、そこにはアリスさん達が倒れていた。
いつの間に、なんて思う暇もなく、振られた剣の衝撃が原因なのか、
木々が倒れ、地面が大きくえぐれる。大男は回避が間に合ったが、
・・
残りのローブの者たちはそのままそれに飲まれて消滅する。
私に被害が一切ないのは、彼が考えたうえで行った行動なのだろうか?
という疑問がよぎる。
男はしゃがむと、懐から赤色の薬ビンを取り出し、アリスさんに飲ませ始める。
コクリ、と、アリスがそれを飲み込むと、
アリスさんの傷が瞬く間に消えていく。
それからすぐ、アリスさんが目を開き、彼の方を見ると、
突然涙を流し始める。
アリスさんの口から、
「やっと、やっと会えた・・・」
という声が聞こえる。何のことだか分らなかった私だが、
そのあとの光景に思わず固まってしまった。
キスしたのだ。アリスさんと彼が。唐突に、何の前触れもなくである。
それが終わるとともに、大男が再び姿を現すが、
腕が変な方向にねじ曲がっていた。
「そこの小僧。次、我が妻に手を出してみろ。その四肢もいで、
吐き気の催す視線を向けてくるババァもろとも犬の餌にしてやる」
大男がその言葉と共に男に向かって斬りかかる。
その攻撃を、男はそこら辺に落ちていた石ころひとつで、
完全に、衝撃すら残さず受けきる。
「急に斬りかかるとはどういうことか、是非とも教えていただきたいなぁ」
男はそう言うと、大男に石を投げる。その石は、一切ズレを作らずに、
大男の肩を粉砕した。
というより、大きく抉れたといったほうが正しいだろう。
「ったく、せっかく繋がったリンクが切れちまったじゃねぇか」
彼はやれやれと言わんがばかりのしぐさをとる。
「魔力の残量がなくなったら終わりとはねぇ。面倒くさいことだ」
大男は気絶したのか、地面に倒れる。
「さてと、そこの少女、えぇっと、明だっけか?
俺が出ていったあとの体はよろしくぅ」
彼はそう言うと、目を閉じ、地面に倒れる。
それと同時に、元のお姉ちゃんの姿に変わっていく。
いったい彼がなんだったのか、それを知るためには多分、
アリスさんに聞くしかないのだろうと思った。
ところで疑問なのだが、なぜわざわざアリスさんやクロワッサンさん、
水奈さんに頼らず、私にいったのだろうか?
ちなみにそのあと、近付いたらなぜなのかすぐわかった。
四人揃って、とても気持ち良さそうに眠っていました。
そんな光景を見た私は、おとなしくお姉ちゃんの頬を突っつきに走るのだった。
チートじゃねぇかっていう突っ込みはあるかと思いますが、
主人公ではなく別人です。
あえて言うならグリムノーツの主人公みたいに、
英雄とかのスペックをそのまま持ってきている感じ。
本使ってないし、時間制限付きだし、前世の自分だったりするけど、
決して本人ではないから、タイトル詐欺にはなってない(事を祈る)