力と耐久ないけどダンジョンにいるのは間違っているだろうか? 作:血濡れの人形
~ダンジョン 18F~
貴方、神が憎くない?
涼華のその言葉に、僕は苦笑いを浮かべながら答える。
「別に?神たちには特に何か憎しみがあるわけでもないし、あえて言うのであれば、
僕が憎むべきは世界そのものさ。理不尽に命を奪った、奪うことをためらわない世界そのもの、
それこそが、僕が憎むべきものであって、そんな世界の操り人形に興味はないよ。
もっとも、だからと言って嫌いじゃない、なんてこともないけれどね。
第一、もし僕が恨むのであれば神ではなく人だ。こんな世界を作った人間さ。
与えられた力をまるで自分のものであるかのようにふるまうのが、
それを使って平然と略奪と暴虐の限りを尽くす人という、いや、違うな。
そういうことをできる思考できる生き物が僕は嫌いなんだ」
これもまた事実。実際のところ、今もある神の加護を受けている僕自身が、
その神も含めたすべての神を否定するわけにもいかないだろう。
僕のその言葉に、涼華はどこか驚いたような表情を浮かべる。
まるで想定外の解答を受けたかのような表情に、思わず首をかしげる。
そうしていると、涼華が話し出す。
「・・・そう、貴方の中では、神はこの世界を好き勝手にできる存在ではなく、
あくまで世界が生み出した操り人形だというのね。それに、あくまでも悪いのは人だ、と。
まるで、私がここに来る前に出会った神の従者と話してる気分になるわ」
「その人、神の従者なのに操り人形とか言いきっちゃうんですね」
明のその一言に、涼華は苦笑する。
「彼は少し特殊だったのよ。付喪神の人形が、とある神に拾われて、
神の従者になったの。だから、他の従者とは少し変な視点を持ってるのよ」
その話を聞いて、なぜかドールの顔が頭をよぎる。さすがに彼ではないだろうと思い、
頭からその考えを振り払う。
「まぁ、そういうことで、別に神様が憎いとかってわけじゃあないよ。
ただ、あえて言うのであれば、この世界の神様は嫌いかな」
「嫌い・・・なるほど、憎いとかではなく嫌いなのね。
あんな風に、理不尽に囚われて、脅されて、主神には危険物扱いされたっていうのに」
まるで感心するかのようにそう呟く彼女に、思わずクスリと笑ってしまう。
「あの程度で憎いとか言ってられませんよ。
だって、それ以上に理不尽なことだっていっぱいありますからね」
そういって思い出すのはつい最近思い出した、過去の、別の世界の僕の記憶。
「ある男がいました。女神に侵略された世界を救った彼は、
異世界で王となり、妻たちとともに暮らしていました。その彼は、
仲間の名をかたった偽物に、全てを壊されました。
妻を犯され、惨たらしく殺された彼は、
それを行った人物と、その周辺の国ごと滅ぼしました。
ある男がいました。かつて王国最強であった彼は、
結婚して王国騎士ではなくなりました。
そんな彼は、周辺の国から送られた刺客によって殺されました。
どちらの人物も、世界の危機から多くのものを助けたものでした。
それが、助けたはずの人物に殺されるだなんて、滑稽だと思いませんか?
そこまで行けば、僕もまだ憎いって言えたかもしれません」
暗に、僕の感じているこの程度の思いが、憎しみであるはずがないと、
ただそれだけの話である。
憎しみというのは、もっとどす黒いものだと知っているゆえに。
「こんな解答で満足していただけましたか?」
「十分よ。そこまで自分の意見が言えるのであれば、
私が手を貸してもいいかと思える程度には納得できる回答だったわ」
「そうですか・・・え?手を貸す?」
「そうよ?食料の調達とか、武器の整備、回復アイテムの補充とか、
色々と準備できていないでしょう?もっとも、同族ではなかったみたいだから、
そんなに割引はしないわよ?」
そういって、涼華は少しだけ楽しそうに微笑むのだった。
行方が不明なこの作品。いっそ消して新しく書き直すか考えてるけど、とりあえず全部書き上げてみることにしました。