力と耐久ないけどダンジョンにいるのは間違っているだろうか? 作:血濡れの人形
~ダンジョン 18F~
直後、狂ったような叫び声が周辺に響き渡った。
その声の発生源は、見るだけで精神を削る異形の神々。
まるで液体のようにあふれ出てきたそれは、
存在するだけでその場にいた心弱きものの精神を消滅させるようなものだった。
同時に、大半の冒険者たちが全速力で上層へ上がっていこうとする。
それこそ、武器を投げ捨て、邪魔するものを引きちぎって、
転んだものを踏みつけるように逃げ出す。
しかし、今回においてそれは悪手というほかないだろう。
なにせ、彼らが本来倒すはずの標的であった彼らは、すでに正気ではないのだ。
ゆえに、あの狂気では狂わない。
「グラ!この一撃で決めるよ!」
「そら、魔糸!あいつらの首を跳ねろ!」
逃げ出す敵をたたき殺すために振り下ろされる
その二本の凶器によって、逃げ出そうとしていたものの首、あるいは全身が消滅する。
地面が揺れ、
「なっ、てめぇら、そんな所に居やがったのか!」
近くの森の中から飛び出してきた二人に、ベートは声を荒げながら走り出そうとする。
「待てベート!さっきの二人の攻撃、動きが一切読めなかった。明らかに速度が上がってる!
さらに明に関しては、明らかに攻撃力が跳ね上がっている!」
「それに、一緒に逃げたという他の三人の姿も見えない。
どこにいるかわからない以上、孤立したところを襲われるかもしれない」
「総員!警戒態勢!小さな変化も見逃すな!
僕、リヴェリア、ガレスであの二人を抑える!
アイズ、ティオネ、ティオナ、ベートは向こうに呼び出されたモンスターを倒せ!」
さすがは大規模ファミリアの元団長と元副団長いったところか、他の三人への警戒はしつつ、
ナレッジと明を確実に足止め、討伐できそうなメンバーで陣形を組み始める。
中心にいる魔法使いたちが詠唱を始めているのは、おそらく周辺の森を焼き払うためだろう。
「でも、案外残ったな?あの人の説明的に、
あと半分くらいはいなくなると思ってたんだが・・・」
ナレッジが呟くのとほぼ同時だろうか。魔法使いを護るように囲んでいたはずの一部の冒険者が、
魔法使いたちに一斉に斬りかかる。また、魔法使いの一部は詠唱がまともにできず、
そこらじゅうで魔力暴走が起きようとしている。
さらに、いきなり腕に力が入らなくなったように、手に持っていた武器を落とす。
いきなりの出来事に対処できなくなったのだろう。
その場にいたメンバーのうち半数が瀕死、あるいは即死し、
さらに魔力暴走による爆発によって周辺にいた魔法使いが肉片となった。
生き残っているのは、そこから離れていた元ロキファミリアの幹部たちや、
偶然範囲にいなかった、巻き込まれなかった運のいい冒険者達である。
いや、ある意味運が悪いのだろう。なにせ、残ったのは本来いたメンバーの十分の一、
召喚された存在は全て健在、三人の伏兵もまだいる上に、最高戦力は分散済み。
『我が妻の呼びかけに答え馳せ参じた。我が名は水竜王である』
そのうえで、蒼きドラゴンが現れる。それも、残り少ない部隊の正面に、である。
『我が前に立とうとする者よ。倒れぬという意思を、声高らかに叫び続けよ。
貴様らが勇者であれば、英雄であるならば、蛮勇であろうがかざして見せよ』
そう宣言したドラゴンの周りには、無数の水球が浮かんでいた。