戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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どこかの深淵の中、キャロルは薄れゆく意識の中にいた。

シェム・ハに与えた最後の一撃でキャロルは自身の思い出を全て焼却してしまいその意識は消えようとしていた。

キャロル(世界を壊すはずの歌で似合わない事をした挙句がこれだ…だが…)

今まで自分が行ってきた所業とは真逆に世界を救うために歌を使ったことに皮肉を感じていた。

だが、その顔はどこか満ち足りていた。

エルフナイン「どうして!?もしもの時は二人の思い出を焼却して明日を取り戻そうと誓ったはずなのに!どうして!」

沈むキャロルの前にエルフナインが来て聞く。

シェム・ハに最後の一撃を加えた時、キャロルはエルフナインの思い出を焼却せずに自分自身の思い出のみを焼却していたのだ。

キャロル「はぁ…情けないな」

今にも泣きだしそうになる顔のエルフナインを見てキャロルは微笑みながら言う。

キャロル「お前の思い出から消えてしまうのがたまらなく怖くなったんだ」

エルフナイン「そんな理由で…僕の思い出を使わずに…自分の全てを焼却させたのですか!」

心からのキャロル自身の本音を聞いてエルフナインは言う。

するとキャロルの体がどんどん薄れ始めていた。

エルフナイン「僕は!僕達は絶対に忘れない!明日も明後日も!キャロルが守った世界で!いつまでも君を忘れない!」

消えてしまうキャロルにエルフナインは泣きながら言いたいことを言う。

キャロル「さようならだ。もう一人の俺…」

エルフナイン「うん…また逢う日まで…もう一人の僕…」

互いに抱きしめ合って最後にそう言い残してエルフナインからキャロルは消滅してしまった。

エルフナイン「キャロル…」

残されたエルフナインはさっきまでいたキャロルの意識の温もりを感じていた。


XV編最終章4(第482話) 神様も知らないヒカリで…

S.O.N.G.のロゴが入ったテント内にエルフナインと気絶した未来、そしてリルとエルザは寝かされ、その前に弦十郎の指揮のもと、ユグドラシルの調査が行われていた。

 

藤尭「惑星環境の改造速度、元に戻ってる!」

 

友里「状況の報告お願いします!」

 

シェム・ハにより速度が上げられた改造速度は以前のままになってはいるが、それでもネットワークに入り込んだウイルスは健在し、ユグドラシルの惑星環境改造は続いていた。

 

そして調査のためにユグドラシル内に入った響たちに連絡を入れる。

 

 

 

ボロボロの状態であるがエクドライブモードの飛行能力でユグドラシルの内部に入り調査していた。

 

ガウは響の背にしがみついてサポート体勢にいた。

 

マリア「目視にて状況確認」

 

クリス「本部。シェム・ハが倒れてもユグドラシルはまだ生きている!」

 

胎動するユグドラシルを見て報告する。

 

 

 

藤尭「世界各地の演算汚染進行中!」

 

友里「論理防壁、突破されるまで7分と予想されます!」

 

ネットワークに入り込んだウイルスが防壁を破壊し、侵食域を拡げていた。

 

さらに防壁を展開していたスーパーコンピューターは演算処理が追い付けず、オーバーヒートを起こし、悪い場所では爆発していた。

 

弦十郎「潜航したユグドラシルをメインシャフトと仮定!中枢部を破壊して惑星環境の改造を食い止めるのだ!」

 

緒川「敵性反応!?」

 

ユグドラシル破壊を指示した矢先、モニターに大多数の敵性反応を感知したアラームに驚く。

 

 

 

ユグドラシル内部では侵入した響たちを迎撃しようとファンネル群と一際巨大な白いロボットが上がってきていた。

 

パルパレーパ「これ以上は行かせんぞ、悪魔どもぉ!!」

 

白いロボットーパルパレーパ・ブラジュナーのコックピットにてパルパレーパが怒りの叫びと共に上がってくる。

 

クリス「しゃらくさいのが雁首揃えて!」

 

ガウ「がうがう!!」

 

訳:しかもアイツ(パルパレーパ)、しつこい!!

 

ファンネル群とブラジュナーを見て毒づきながらも臨戦する。

 

マリア「だけど今のコンディションでは…」

 

臨戦する周りにマリアは言う。

 

現状のギアはシェム・ハ戦でかなり損傷し、飛んでいるだけでやっとであった。

 

さらにガウに至っては響にエネルギーを与えすぎたために変身するだけの体力は無かった。

 

その時だ。

 

?「Rei shen shou jing rei zizzl……」

 

全員『!?』

 

聞き覚えのある声が響き渡ったかと思いきや響たちの後ろから大量の光弾が降り注ぎ、ファンネル群とブラジュナーを破壊した。

 

パルパレーパ「バ、バカなぁ!?」

 

ファンネル群と共に破壊されたブラジュナーのコックピット内にてパルパレーパは空中で愛機と運命を共にした。

 

上を見上げるとファウストローブとなった神獣鏡を纏った未来が降りてきていた。

 

響「未来!?」

 

ガウ「がうー!?」

 

訳:なんでー!?

 

ユグドラシルに来て、さらに神獣鏡を纏った未来を見て驚く2人。

 

未来「私これ以上響やガウくんの背中を見たくない!2人の見てるものを一緒に並んで見ていきたいの!だから!」

 

自身の本当の気持ちを正直に未来は言う。

 

エルフナイン《皆さん!キャロルから皆さんに言伝があります》

 

通信にエルフナインの声が入ってくる。

 

未来「この先にある中枢部を壊しても増殖したユグドラシルのいずれかが管制機能を獲得し稼動は止められないみたいなの」

 

シェム・ハと一体になっていた時に得た情報を未来は全員に伝える。

 

クリス「つまり新たなメインシャフトが誕生しそいつがどれかわからなくなるのか!」

 

未来の話を聞いてクリスは言う。

 

エルフナイン《なのでここがメインシャフトと仮定できる今中枢をフォニックゲインで制御し全ての幹を同時に爆破伐採するしかありません!》

 

 

 

翼《フォニックゲインで?だが私達は一度チフォージュ・シャトーの起動にも失敗して…》

 

チフォージュ・シャトーでの失敗を思い出しながら翼は言う。

 

エルフナイン「だからキャロルは未来さんを救おうとしていたのです。7つの惑星と7つの音階、世界と調和する音の波動こそが統一言語。7人の歌が揃って踏み込める神の摂理。ですが、それだけでは不完全なんです」

 

マリア《どういこと?》

 

エルフナインの説明にマリアは聞く。

 

エルフナイン「7つの惑星と7つの音階、世界と調和する音の波動こそが統一言語…それはもう1つの要素が必要だったんです。人類だけがこの星に住む唯一ではない。人類以外の生命、つまり、神々が造り出した生命ではない生命。シンフォギアのアウフヴァッヘン波形を吸収・変換し、エネルギーにしながらもそれを他者へ分け与えられるガウくんの力であり、ガウくんの持つアウフヴァッヘン波形です!それらが調和し、奏でられる音の波動、それこそが生命の絆!世界を知れというパパからの命題に対するキャロルなりの回答です!」

 

 

 

翼「私達とキャロル、8人の共闘がシェム・ハの埒外物理を突破したのはそういうことだったのか!」

 

エルフナインの解説に翼は神殺しでもないのにシェム・ハにダメージを与えられたことを察する。

 

あれはガウのアウフヴァッヘン波形が響とガウ自身の共鳴により生まれる神殺しの力を翼たちにも付与していたのだ。

 

そして響たちは最下層に辿り着くと周囲に7つ、中央に巨大な1つのクリスタルのような石があった。

 

響「だったら何も迷わない!信じよう!胸の歌を!」

 

未来「私も響と!みんなと一緒に!」

 

エルフナインの言葉を信じて響と未来が言うとガウは響から降りて前に出た。

 

響「お願いね、ガウくん」

 

前に出たガウに響は言う。

 

ガウ「がう!」

 

言われたガウは頷きながら鳴いた。

 

そして一瞬の静寂から響たちは絶唱を歌う。

 

それに合わせてガウは背鰭を光らせ、響たちの絶唱のエネルギーを吸収・変換、クリスタルに向かって同じ絶唱を歌う。

 

未来(バラルの呪詛…繋がりを隔てる呪いさえなくなればこの胸の想いは全部伝わると思ってた。だけど…それだけじゃ足りないんだ)

 

絶唱しながら未来はそう思っていた。

 

バラルの呪詛により届けたい・伝えたい本当の思いが伝わらなかった。

 

でも、今なら分かる。

 

ただ思いを届けた・伝えたいだけじゃ本当に分かり合えることなんてありえないという事が…。

 

響たちの絶唱を聞き、クリスタルが赤、青、紫、白銀、緑、ピンク、黒、黄に輝き始めた。

 

すると響たちの前にある人物たちが舞い降りてきた。

 

響たちの前に現れたのは奏、八紘、セレナ、ナスタ―ジャ、ウェル、サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティ、ヴァネッサ、ミラアルクたち響たちに深く関わった人物たちだ。

 

全員がすでに亡くなっている…だが、中枢と響たちの歌が共鳴して幻となって来てくれたのだ。

 

中枢が響たちの歌で共鳴して再会を果たしているとき、響はガウが泣いているのに気付いた。

 

何で泣いているのかと目を凝らすとガウの前に2人の人物たちがいた。

 

1人はガウによく似た男性。

 

もう1人は響によく似た女性だった。

 

この2人はガウの実の両親である。

 

いや、両親だけではない。

 

両親たちの後ろには十数頭のゴジラザウルスがいた。

 

全員、ガウの兄弟・祖父母たちだ。

 

中枢と響たちの歌の共鳴で他の面々と一緒になって来てくれたのだ。

 

泣いているガウの頭を父親は優しく撫で、母親は抱き着いていた。

 

もう二度と感じることの出来なかった懐かしき温もりにガウは大粒の涙を流していた。

 

そんなガウを見て響は自分のことのように思えて笑っていた。

 

 

 

藤尭「8つの調和…まさか統一言語を求めた了子さんはそのつもりで7つのシンフォギアを作りっていたんじゃ…」

 

友里「真実を告げないまま、言葉を奪われてしまった了子さんはあらゆる方法で隔たりを乗り越えようとした…」

 

響たちの歌を聴き、反応する中枢を観測しながら2人は了子こと『フィーネ』の本当の思い言う。

 

緒川「そして生み出されたのはノイズ、歌、様々な異端技術、怪獣たち…」

 

弦十郎「ただ繋がりたかったという彼女の想いは時を経て人類全体を繋ぐ奇跡へと進化した。それはアヌンナキからの脱却、人類の…いや、この星に生きる生きとし生ける全ての生命の独立だ!」

 

神々からの独立、それがこの戦いの最後の…いや、全生命の掲げる意志なのだ。

 

 

 

歌い続けて、響たちの前にフィーネとエンキの2人が手を繋いで現れた。

 

人間であるフィーネと神であるエンキ、違う存在でありながらも深く愛し合った2人がようやく再会を果たしたのだ。

 

調「8人の歌で」

 

切歌「みんなの歌で」

 

マリア「この奇跡は私達の奇跡だ」

 

クリス「繋いだ手だけが紡ぐもの」

 

翼「強く、尊く、儚いもの」

 

未来「未来に響き渡らせるために!」

 

響「これが私達の絶唱だぁー!!」

 

響たちの叫びと共に中枢の動きが止まった。

 

同時に地揺れが起き、崩壊が始まった。

 

響がガウを抱えると全員がもと来た道を戻り始めた。

 

 

 

藤尭「地球中心各域より高エネルギー反応!ユグドラシルの自壊を確認!」

 

友里「世界各地でも呼応しています!」

 

中枢が止まり、世界中で稼働していたユグドラシルが全て自壊し始めたのを観測して2人は言う。

 

だが…。

 

 

 

地上へ向かっていた響たちのギアは度重なる戦いと絶唱による反動でボロボロであちこちから火花と煙が出ていた。

 

後ろからはユグドラシルのエネルギーが向かってきていた。

 

調「このままじゃギアが!」

 

切歌「持ちそうもないのデス!」

 

崩壊するユグドラシルから脱出する前にギアが壊れてしまうと言った時、後ろから土で出来た人の形をした何かが現れた。

 

シェム・ハである。

 

マリア「まさかあれは!?」

 

クリス「シェム・ハなのかよ!?」

 

迫りくるシェム・ハを見て逃げようとするがギアの出力が上がらず追いつかれるとシェム・ハの両手に捕まってしまった。

 

 

 

シェム・ハ「答えよ。なぜ一つに溶け合うことを拒むのか」

 

声が聞こえて目を覚ますと響は全裸で未来とガウの2人とおり、シェム・ハがこちらを見ていた。

 

未来「私達は簡単に分かり合えないからこそ誰かを大切に想い好きになることができる。例え姿形が違う存在でも、その気持ちがあれば向き合って好きになれる。その気持ちは誰にも塗りつぶされたくはない!」

 

シェム・ハ「それが原因で未来にまた傷付き苦しみ、裏切られることになってもか?」

 

響「だとしても。私達は傷付きながらも自分の足で歩いて行ける。神様も知らないヒカリで歴史を創っていけるから」

 

ガウ「がうがう、がうーがうががう。がうがうーがうがうがう」

 

訳:それに裏切られても、自分が信じていれば乗り越えられる。未来はその地に生きる生命が持つ無限の可能性だよ

 

シェム・ハ「ならば責務を果たせよ。お前達がこれからの未来を司る…」

 

響たちの言葉(答え)を聞いてシェム・ハは満足した顔で言うと周囲が真っ白になった。

 

 

 

ユグドラシルのエネルギーが空高く吹き上がる中で巨大な腕が現れたかと思いきや地面で開くと無傷の響たちが出てきた。

 

響たちが出て腕は砂となって消滅した。

 

弦十郎「大丈夫か?」

 

遅れてS.O.N.G.の車が到着して弦十郎たちと気が付いたリルとエルザが降りて響たちの前まで来た。

 

響「師匠…」

 

弦十郎を見て響は地上に戻ってきたことを実感する。

 

響「シェム・ハさんが…繋ぐ大きな手が私達を…」

 

弦十郎「ああ。みんなが繋いだ明日の世界だ!」

 

最後の最後にシェム・ハとも手を繋ぐことが出来たのを響は言うと弦十郎はそれが"勝利"だと言う。

 

リル「かう~!!」

 

エルザ「ガウ~!!」

 

ガウの前にリルとエルザの2人がいく。

 

リル「かうかう~!!」

 

跳躍してリルはガウに飛び付く。

 

ガウ「がう~!」

 

飛び付いて来たリルを受け止めながらガウは喜ぶ。

 

エルザ「良かった…無事に帰ってきて…本当に良かったであります…」

 

泣きそうになるのを堪えながらエルザは言うとガウはエルザの頭に手を置いた。

 

ガウ「がうがう…がうがうがう。がうがう、がう」

 

訳:違うよエルザ…こういう時はこうだよ。ただいま、エルザ

 

エルザ「お帰りなさい…あなた…」

 

ガウに言われてエルザはガウに抱き着いた。

 

ガウもエルザを抱きしめて答える。

 

ガウ「がう?」

 

その時、ガウは自身の体にある違和感を感じることに気付いた。

 

エルザ「どうしでありますか?」

 

リル「かう?」

 

ガウが何かしらの違和感を感じたのを察したエルザとリルは聞く。

 

ガウ「がう…?」

 

脚に力を入れて立ち上がろうとするガウだが、立ち上がれなかったのだった。




シェム・ハの計画を阻止して数日後、とある教会に響たちを含めたS.O.N.G.の関係者や響たちの友人家族、そしてアンギラス、ラドン率いる陸空の怪獣たち、海側では戦死したチタノザウルスの代わりに『海竜 マンダ』率いる海の怪獣たちが集結していた。

これほどの怪獣や人が集まるのにはある行事があったのだ。

教会の扉が開いて2人の人物が出てきた。

1人は純白のウエディングドレスを着て、手にはブーケを持ったエルザ。

もう1人は車いすに乗っているガウだった。

今行われているのはガウとエルザの結婚式である。

そしてこれがガウにとって怪獣王としての最後の行事となる。

下半身の機能を失ったガウは怪獣王を引退し、自身が引退してしまった怪獣王の椅子をリルに譲ることを決めたのだ。

周囲が引退を思いとどまるように言ったがガウの意志は固く、引退が決まった。

また経験はまだ浅いが実力ではガウとほぼ同じであるリルが二代目の怪獣王になることを反対する怪獣は出てこなかった。

そしてガウが車いすでいる理由は今から数日前、ユグドラシル破壊後のことである。



響「ガウくんの下半身が機能していない?」

弦十郎「あぁ。精密検査の結果、ガウの脊髄が機能していないことが分かった。もう、2度と立つことは出来ないかもしれん」

響「そんな…」

下半身が機能していないと聞いて言葉を失くす響たち。

調「なんでそんなことになったんですか?」

弦十郎「分からん…だが、さきの戦いにおいてガウはギアと調和した時、全員分の絶唱によるバックファイアをそのその身に全て受け、その代償に下半身機能を消失させてしまったのやむしれん」

ガウの下半身が機能しなくなった理由を推測する弦十郎。

翼「つまりガウは私たちへの負担を軽くするために己の身を犠牲にした…と?」

マリア「つまり私たちが…」

切歌「ガウくんの下半身をダメにしたってことデスか?」

自分たちのせいでガウの下半身の機能を奪ってしまった…そのことに響たちは自分たちを責めた。

その時だった。

ガウ「がうがうー、がうがうーがうー?」

訳:ちょっとちょっと、何くらい雰囲気出してるの?

声の方を見るとリルに押された車いすに乗ったガウがいた。

ガウ「がうがうがうーがうがうーがう。がうがうがう」

訳&メモ:みんなして何でそんなに暗い表情してるのさ。そんなんじゃ幸せが逃げてちゃうよ

少し冗談交じりに自身が言っていることをノートに書いて伝えるガウ。

響「でも…私たちのせいでガウくんは…」

そう響が言った時だった。

ガウ「がう!」

訳:リル!

リル「かう!」

訳:うん!

ガウの合図でリルはハリセンを出すと跳躍して響たちの頭を叩いた。

(なぜか翼だけ縦で殴った)

響「あいたっ!」

クリス「いてっ!」

マリア「いたっ!」

調「いたい…」

切歌「デース…」

翼「なぜ私だけ縦で…」

叩かれた頭を抑えながら屈む響たち。

ガウ「がうがうがうがうーうがーうがうー」

訳&メモ:いつまでそんなこと気にしてるの?

屈んでる響たちにガウは言う。

響「"そんなこと"…"そんなこと"!?ガウくんの体半分が動かなくなったんだよ!?前みたいに自分で歩いたり出来ないんだよ!それを“そんなこと"って…」

ガウの言った"そんなこと"というワードに響は言う。

自分たちのせいでガウの"自由に歩き回る"という行為を奪ってしまったことへの罪悪感があったのだ。

そんな響にガウはため息を吐くと車いすを響の前まで動かすとデコピンした。

響「ふえ…?」

突然デコピンされて唖然とする響。

ガウ「がうがうがうがうーがうーがうー。がうがう、がうがうがうがうがーうがうーがう」

訳&メモ:確かに僕はもう前みたいに歩いたり、走ったり、響たちと一緒に戦うことも出来なくなったよ。でもね、それを誰かのせいだなんて思ってないよ。

自分たちを責める響たちにガウは言う。

下半身が動かなくなったことは確かにガウにとっては死活問題となる。

だが、ガウはその原因は響たちにはないと言うのだ。

ガウ「がうがう…がうーがうがうがうがう、がうがうがう」

訳:僕にとって…響たちと一緒に今まで通り暮らせれば、体の半分動かなくなったって構わないよ

響「ガウくん……」

それを聞いた響はガウに抱き着いた。

響「ごめんね…ありがとう……」

泣きそうになるのを堪えながら響は精一杯の気持ちを言葉にする。

その気持ちをガウは受け止めるかのように響に抱き着いた。



戻って現在。

2人を祝福して集まった面々は花びらを撒く。

その中をガウとエルザは通っていく。

通っていく2人にみんなは「おめでとう!」と声をかけていく。

怪獣たちも自分たちの元王(・・)に向かって祝辞を送る。

敷かれたカーペットの先端まで行くとエルザはガウの顔を見た。

ガウもエルザの方を見る。

2人とも、幸せに満ちた顔をしていた。

そしてエルザはブーケの方を見ると思いっきり後ろの方へ投げた。

ブーケを投げるとそれを取ろうと女性陣が殺到する。

だがブーケは吸い込まれるように2人の少女の手元に来た。

ブーケを受け取った2人の少女とは未来と響だった。

ブーケを受け取って2人は少し驚いて互いの顔を見合っていたが直ぐに嬉しさで笑った。

未来(八千八声 啼いて血を吐く 不如帰。人が人である以上傷付けあわずに繋がることは難しい。だけど繋がれないもどかしさに流した力はたくさんの尊い光が生まれている…)



ガウとエルザの結婚式を終えて、その日の夜。

響と未来はある場所に来ていた。

未来「あのね響…ずっと自分の言葉で響に伝えたいことがあったんだ…」

少し思いつめた面持ちで響に言う未来。

響「うん。私も」

未来「え!」

響の一言に未来は驚いて顔を上げる。

響「私の伝えたいこと、未来と同じだったら嬉しいな」

そう言いながら響は夜空を見上げる。

未来も空を見上げると"いつか2人で見よう"と言っていた流れ星が流れていたのだった。

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