死後彼は、面白半分で人を生き返らせては彼らが破滅するところを見たある悪辣な高位存在にスカウトされる。
あえて彼はその手を握る。あの糞みたいな人生の分だけのし上がるために。
そして、その手に宿る力の名は、赤龍帝。
ピンポンパンポーン! おめっでとーう! あなたは第二の人生を手にする権利をげっとしちゃいました!!
唐突に、自分のどん底の人生の終幕とは思え内容は軽い展開が勃発して、俺はどうしたもんかと首を傾げた。
「もー。いっつもこうなんですよねー! 記念すべき十回目もこれなんですよー。まじでやんなっちゃうんですよねー!」
などとひとしきり文句をぶちぶち垂れるそのよくわからない物体は放っておいて、俺は自分の人生を振り返る。
俺の親父はヤク中で、お袋は時々男を連れ込んでは遊び惚けるビッチだった。
ネグレクト一歩手前の生活環境で小学校にすら言ったことのない俺が、先進国でまともな職に就くのは不可能だっただろう。
唯一持っていたのはお袋に暇つぶしで教え込まれたベッドテク。これ以外には何もない。勉強できなかったから学がない。毎日ボコボコにされて運動なんてして余裕もなかったからガタイもない。
だから、俺がやれるのは裏風俗の女衒だけだった。
割と難しいことでもないんだ。こういうところに堕ちてくる連中なんて、お先真っ暗なのがほぼ確定だからな。そこをちゃんと自覚させて、とりあえず給料を稼いで好きなものを買うこともできることを知らせれば、たいていの連中は素直に自分を売るようになってくる。
中には一歩やりすぎて壊れた女もいたが、そういう女は単品で売り物にすればいい。
・・・我ながらすごく屑な生き方だ。いっそ死ねばいいといわれても納得できる。
むろん、そんな生き方をしているような奴がまともな死に方もできるわけがなく。仕事がらみで恨みを持った奴にナイフで刺されてお陀仏という自業自得の結末だ。
妹の仇とか言っていたが、いや、まあそうなんだが借金創ったあんた等にも責任はあるだろうとか少し思ったね。
それでようやくこの糞のような生活からもおさらばかと思った時にこれだ。
「・・・と、とにかく気を取り直しますー! あなたは、これから転生することができます。それも、三つほど特典をゲットすることができます。これを使ってバラ色人生ライフをゲットできるかはあなた次第ですよ!」
と、その謎物体は俺に対してしつこく勧誘してくる。
「・・・俺みたいな屑にそんなことして、どんな意味があるんだよ」
「それは簡単! 人生落伍者だった奴が、スーパーチートを使って頑張るさまが見たいんですよ。そういうのって、頑張れる何かがあれば結構化けますからね」
嘘をつけ。
目が、あり得ないぐらい悪意にまみれている。女衒をしているとそういう目をしたやつを何人も見てきた。
破滅していく奴の人生を眺めることを、最高の酒の肴にしようって連中の目だ。
こいつは俺たちに憐憫なんて一切だいちゃいない。それどころか、体のいいおもちゃぐらいにしか思っていないはずだ。
「・・・それで?具体的にどんなチートがもらえるんだよ 限度はあるのか?」
「お、質問攻めとは珍しいですね。たいていの連中はもてたいとか邪魔者を殺せる力がほしいとかばっかりだったんですけど」
「どんな世界に堕ちるのかもわからないのに、そんな適当でできるわけないだろ」
そいつらも馬鹿としか言えないな。
こんな塵屑でもすぐに考え突くことを考えようともせず、なんとなくで適当なパワーを欲しがるだなんて。
少なくとも、俺がいた時代は個人がいかに武力を持ってたって自由に生きれるような時代じゃなかった。
知力や組織力などの総合力がなければ、大物になんてなれないんだよ。そんなだからおもちゃにされるんだ。
「文明レベルはほとんど変わりませんね、っていうか生まれ変わるのは同じ世界ですよ。・・・あの世界のシステムを利用しないとここまでのことはできないので」
「ってことは、チートに関しても期待できないってか?」
まあ、そんなうまい話があるわけないか。
そう思ってもういっそ断ろうかと思った俺だったが、しかし聞き捨てならないことが届いた。
「・・・お、あなたラッキーですよ? 今、すごいレアスキルが一つ空いてます!」
本当に驚いたそいつの言葉に、俺はとりあえず耳を向ける。
「小難しい話は学がないから言っても無駄ですよねー。簡単に言うと、半端な神様なら舐めプで殺せちゃうドラゴンを宿した神器です! 十秒間ごとに自分の力を倍加させて、その倍化の効果を触れた者や人にも与えることができるっていう奴ですよー」
なるほど、それは確かにすごいだろう。
だが、圧倒的な力があったって今時そう簡単に使えるわけがない。
「どうせ、同じような能力を持ってるやつは何人もいるんだろ?」
「こいつホントにめんどくせーなー。えーそーですよー。だいぶ力も封印されてるし、悪魔を代表とする四大魔王の1人と互角ぐらいが歴代の強さの平均値でしたねー。各種神話体系の主神クラスにはかないませんねー」
それ見ろ。そんなもん持ってたって大暴れできないんじゃ宝の持ち腐れ―
「―待てよ?」
その時、俺の脳裏にピンとひらめいたものがあった。
「なあ。・・・あんた」
「あ、神と及びください。厳密にいえば高次元生命体なのでまた異なる存在ですが、なんかかっこいいので」
適当だなこの生命体。
だが、俺はとりあえず思いついたことをこの生命体に話してみる。
俺の女衒の腕と赤龍帝の籠手から放たれる合わせ技。これができるかできないかで俺の人生は大きく変わるといってもいい。
「・・・理論上はやれますねー。おお、こんなこと聞いてくる人初めて見ましたよー」
神はうんうんとうなづくと、何やら機嫌よさそうに俺の肩をたたいた。
「うん! サービスにあと一つか二つぐらいはチート上げてもいいですよ? 何でもおっしゃってください! こっちも面白い物語が見れまくりそうだ!!」
何やら機嫌がいい神だが、しかし俺も機嫌がいい。
赤龍帝の籠手。この力があれば俺は人生をやり直せるかもしれない。
もちろん、そのためには俺の努力もいくつも必要だろう。だが、それができれば俺はのし上がれる。
俺みたいな屑がのし上がれるほど世界は甘くないかもしれない。だけど、のし上がれるならそんな世界どうなろうとかまわない。
俺だって、俺だって、俺だって・・・。
「・・・あんな糞みたいな人生、不満だらけに決まってんだろうが!」
「そりゃそうでしょー。同じ轍を踏むかどうかはあなた次第ですがー? ぶちゃっけ今回は結構粘りそうだと思ってますよー?」
そう俺を誘惑する神に、俺はのっかってやることにする。
「いいだろう。じゃあ、残り二つは簡単だ」
ぶっちゃけ二つもいらないが、しかし一つは欲しいものがある。
「今から行く世界のその赤龍帝の籠手? それと、そもそもそんなものがある業界の基礎知識を教えてほしい」
「OKでーす! ワンコインで帰るハンドブック程度の知識は脳に刻んであげまーす! それで、最後は?」
あっさりとのっかってくれた神に、俺はこう告げた。
「もし、俺の後に赤龍帝の籠手に適合した奴が出てきたら、その時は何か埋め合わせをしてほしい」
・・・この情けが、のちにとんでもない事態を引き起こすことになるとは俺も想定が全く足りていなかった。
そして生まれた家で、俺は兵藤一誠という名前を与えられた。
なんて皮肉な名前だろう。誠実さがデメリットにしかならない世界で生きてきた俺は、そんな言葉に忠実に生きたりはしない。そういう意味では名前が全くあってないからだ。
だが、それはともかく俺は子供のころは品行方正に過ごした。
優等生はやっかまれることも多いが、人気があって頼りになる生き物だ。今の段階では赤龍帝の籠手も使えないし、油断は禁物だった。
子供のころから週に一回は図書館に行って本を読んで知識を蓄え、そして次の週はランニングなどで体を鍛えた。
小さい子供は九州が速いというがその通りだ。こんな真面目に自発的に努力する子供なんていないだろうが、それでも子供は伸びる生き物なんだ。あのクソどもに邪魔されなければ、俺もそれぐらいはできたのかと思うと涙が出る。
お手伝いを率先して行い周りの人の気分をよくし、道場に通いたいと言い出した。
護身術ぐらいは習得しておきたいという願望からだったが、親にはいざというとき二人と、そして次に生まれてきた弟を守りたいからと伝えて置いたらすぐにうなづいた。
そこでも俺はとにかく伸びた。なにせ命がけの戦いに巻き込まれるかもしれないのだ。それは当然必死になって覚える物さ。
むろん、それをやっかんで嫌がらせをしてくる輩は出るには出たが、想定できれば対策の一つぐらいはとれる。ボイスレコーダーをお年玉で買って、その中を公表しただけだ。
すぐに、ふざけたことをした連中は破門になった。お礼参りにすぐに来るふざけたことをしやがったが、その時はためらいもせずに近くの家に逃げ込んで警察を呼んでもらった。
なるほど、ほかの転生者はあいつらみたいなことをしてすぐに警察のお世話になったのだろう。馬鹿な奴らだ。
俺はそんなことはしない。ある程度の力を持ってから出ないと、たった一人で動いたって何の意味もないからだ。
そして、俺が小学校を卒業する年になったとき、ついに事態は動いた。
『ほう? 今回の宿主はなかなか成長する存在のようだな』
赤龍帝の籠手に宿る魂の持ち主、ドライグと語り合えるようになったのだ。
ああ、これで赤龍帝としてスタートライン。ようやく俺は戦うことができるのだ。
「初めまして、ドライグ。俺のことはどこまで知っている?」
『おまえが生まれたころから見させてもらった。くくくっ。優等生に見えてその実は真っ黒な性分だな』
「失礼だな。あくどいことをするのはこれからさ」
ああ、あくどいことをするのはこれからだ。こっから先が大変なんだ。
「ここから先の動きは、たぶん俺にとっても想定外のことが多くなろうだろう。そのためにアドバイスしてほしい。・・・なに、音楽の希望ぐらいは聞いてやる」
『意外だな』
ドライグは心底そう思ったかのように言ってきた。
「なにがだ?」
『アドバイスをしろというやつはいたが、してほしいから何かを出すだなんて奴はいなかった。お前にとって俺は何なんだ?』
なんなんだと聞かれても、それは困るな。
「・・・しいて言うならビジネスパートナーだな。お前は俺に能力を提供して、俺はお前に娯楽を提供する。つまりはそういうことだ」
俺のその言葉をきいて、ドライグはうれしそうに笑った。
ああ、こいつは今まで道具として扱われてきたのか。
しゃべるOS程度の認識だということか。
「まあ安心しろ。俺の所業にお前は不満を覚えるかもしれないが、俺はお前に好待遇を約束する。・・・いずれ、仮の体を与えてやれるかもしれないぞ?」
『大きなことを言ったな、小僧。だが、何の後ろ盾もないお前がどうやってそんなことを?』
「ああ、簡単だよ」
そう、これは簡単なのだ。
俺も小学生のころから人間関係を努力してきたので、女友達ぐらいは何人もいる。
その中から、特に金を持っているわけではないが、美貌的な意味で将来性が楽しみな少女と、そういう関係に近い関係になっておいた。
「一誠さん。これ、変な味がするね」
「お父さんがこっそりの出る奴なんだ。もっとおいしいかと思ってたよ」
そういいながら俺たちは少しだけ酒の入った水を飲む。
小さな子供ならこれで十分酔いが回る。あとは
「俺は、君のことが好きだよ」
「・・・ほんと?」
もちろん嘘だが、それは関係ない。
俺の小学校で俺に恋愛感情を向けてる女は何人もいる。こいつはその中からピックアップした女だから何も間違っていない。
そう、だから愛をささやいて抱きしめれば、彼女は幸せな感情になるだろう。
そして、幸せな感情になっているとき、人は脳内麻薬を分泌する。
そう、薬物を分泌するのだ。
『Transfer!』
籠手を即座に展開して、彼女の頭に触れて譲渡を行う。
これがうまくいくかどうかだけが賭けだったが、しかしそれは・・・。
「ふ、あ、ふぁあああああああ!?」
・・・成功だ。
彼女はガクガク体を震わせながら、しょんべんを漏らして腰を落とす。
目は同じ方向を向いてないし、涙もよだれも鼻水も出ている。
ああ、彼女は今、この強大な多好感に酔いしれいている。
人格が崩壊してもおかしくないほどの幸せを感じて、今までのそれとは比べ物にならないレベルの幸せを感じているはずだ。
『これが、お前の策か?』
ああ、そうだよドライグ。
女衒をやってた俺だからわかる。快楽堕ちなんて言葉があるけどあれはリアルにできる輩がいるんだよ。
特にそういう知識や経験に乏しい相手には効果が絶大だ。なにせ普通は感じない量の脳内麻薬だからね。そんなものをこんな時期に経験したらもうあとは落ちるだけさ。
「もっと欲しいかい?」
「・・・ひゃぃ」
うなづくというよりがくんと揺らす動きで、彼女はそう答えた。
「じゃ、これからは僕の言うことをよく聞くんだ。そうすれば、あとでまた味合わせてあげるからね」
「ふぁい・・・わかりまひあ」
いまだ夢心地の感覚のっま、彼女は答える。
これでほぼ完ぺきだが、しかしそれだけではだめだ。
「うん。いうことを聞かなかったり、ほかの誰かに話したりしたら二度と味合わせてあげないからね? ちゃんと言うことを聞くんだよ?」
とたんに、彼女は別の意味で涙を垂れ流しながら俺にしがみつく。
「・・・わきゃりまひた! わきゃりましたから、お願い、もっと頂戴!!」
ああ、思った以上に速攻で堕ちてくれた。
これで、彼女は当分の間俺の言うことにいは逆らわない。
あとはゆっくり女衒の腕を揮えば、金を落としてくれるいい女の完成だ。
・・・まずは一人。あとは取り巻きどもを中心にして集めるとするか。
『倍加にこのような使い方があったとはな。洗脳に使えるとは思わなかった』
不服かドライグ? いや、お前はこういうのは好まないタイプだろうが。
『まあな。だが、今代の宿主はあくまでお前だ。そのお前が必要だと思ってやっているのなら、あえて口に出すまい』
悪いなドライグ。俺が屑だから、これぐらいしないとのし上がれそうにないんだ。
・・・今度のクリスマスプレゼントは音楽関係にするから勘弁してくれ。好きなジャンルを選んでくれていいぞ? ドラゴンは歌が好きなんだろ?
『お前は和楽をたしなんでいる程度だがな。まあ、俺はブリテン島出身だから洋楽のほうが耳になじむが』
「俺もできるってだけで好きってわけじゃないからなぁ。しっかし音楽鑑賞とか雅な趣味だ」
俺とドライグの関係は、友達と呼べるようなものじゃない。
誇り高きドラゴンであるドライグからしてみれば、こんな手段は不快だろう。堂々と嫌悪感を示されても文句は言えない。
俺とドライグの関係は、道具と使い手でもない。
ドライグは赤龍帝の大先輩で、長い年月を生きた経験者だ。彼の知識と経験は俺に取ってたからなのだから、それに見合った報酬があってしかるべきだろう。
そう、しいて言うならばビジネスパートナーとか茶飲み友達ならぬ音楽聞き友達といったところだった。
何度か経験を積んで様々な女を利用してのし上がってきた俺は、自分探しの旅と称して駒王町を出ることにした。
規模は小規模で済ませてきたが売春ネットワークもどきができているんだ。そろそろヤクザの介入もあるだろう。禁手に至った俺がやくざごときに殺されるとは思わないが、面倒ごとは避けたい。
すでに俺のためなら自殺できる領域になっている女たちにはいつも通りの学生生活を送るように伝えておいた。
いつも通りとはいえ、それは格闘系の部活で特訓するなど、俺のための忠実な兵士として動くべく訓練を積むという意味でだが。
文字通り俺の忠実な僕と化した彼女たちは、今後の俺の行動のための道具となってくれる。
友達関係でまとめておいたこともあるし、彼女たちには旅行の名目でたまに合流するとするか。
『落とした女のケアも忘れないとは律儀なことだな』
「何事もマメなやつが勝利するもんだ。覚えとけよ」
女衒の仕事もマメな奴ほど成果を上げるもんだ。屑みたいな人生だがこの人生にとって利点となってばかりなのは皮肉以外の何物でもないな。
「さて、ここからは本格的に異形関係者を狙っていく。・・・箱入りシスターとかは定番だが、こっからは質を重視したいしな」
『シスターといえど、本格的に能力を持っているのはごく一部だからな。まあ、うかつに事を起こしても悪魔の仕業と勘違いするだろう』
「最近、本格的に助言くれるようになったなぁ」
すでに禁手にも至っている俺なら、上級悪魔が出てきても負けることはない。
だが、それだけ強大になると白龍皇に目を付けられる可能性もある。
俺の禁手は単純戦闘能力だけなら歴代二天龍でも最下層争いなのだ、まともにぶつかるのは極力避けたい。
最低でも、そこそこ実戦経験を持った実力者を落としたいが、こっからが大変だ。
それに、見聞を増やすことも必要不可欠。こういうのは知識の量がすべてを決するが、実際に見たり聞いた入りしたことは数値では測れない何かがあるというしな。
「・・・さて、いったいどうしたものかねぇ」
俺は大量の障害を感じながらも、しかし同時に高揚を得ていた。
ああ、俺は屑だ。下衆だ、塵芥だ。世界なんて同行できるような器じゃない。
だが、そんな奴にもし同行されるなら、世界は実はたいしたことがないということじゃないだろうか?
「世界は素晴らしい。・・・本当にそうなのか?」
本当に素晴らしいなら、俺みたいなゴミが生まれてくるようなこと自体ないんじゃないか?
もしかしたら、世界はどうしようもない駄目なものなんじゃないだろうか?
だったら、俺がむちゃくちゃにしたって問題ないだろう。
さあ、魅せてくれ世界。
お前は、俺なんかに汚されるようなくだらないものじゃないんだろう?
全力の俺を振り払って見せろ。きれいな輝きを見せてくれ!!