Fate/stay night Ideal alternative(アイディール・オルタナティヴ) 作:紗代
もうそろそろ昼時なので気分転換も含め商店街まで買い物に出る。すると、珍しい人影が見えた。
桜だ。
「おーい、桜」
呼びかけるとこちらに気が付いたのか少し急ぎ足で来てくれた。
「こんにちは、先輩」
「ああ、いい天気だな。桜も買い物か?」
にしては手持ちが少ない。それともこれから買いに行くところなのだろうか。
「いいえ、私は新都の方に用があって、今帰ってきたところなんです。」
「?なら桜の家通り過ぎてるだろ、ここ」
確か桜の家である間桐の洋館は商店街より新都をつなぐ大橋に近かったはずだ。わざわざ商店街に顔を出すくらいなら新都の駅前の方が品揃えも豊富だしそっちで買い物した方が負担が少ない。
「今日は買い出しじゃなくて、ある人へのお礼がしたくて、それで来たんです。」
「お礼?」
「はい。ちょっとよそ見してて危ないところを助けてもらったんです。」
「へえ――――なあ、その助けてくれたやつってどんな人なんだ?」
「えと、長い黒髪のすごく美人な女の子です。といっても会ったのはその一度きりでまた会えるか分からないんですけど、せめてお礼だけでも言いたくて」
「黒髪の、女の子」
特徴から遠坂かと思ったが、それならそんなふうに回りくどく言わずに「遠坂先輩」と言えばいい。なら誰が――――――と思った時。脳裏にふと、あの黒い少女が浮かんだ。
いや、ありえないか。
「先輩?」
「ああいや、何でもない。贈る相手が女の子なんじゃ俺は役に立たないだろうし、俺はもう行くよ。桜も帰り道気を付けろよ」
「はい。今うちが立て込んでて先輩のおうちに行けませんけど、片付いたらまた行きますから、待っててくださいね先輩」
「ああ、またな」
そうして桜と別れ買い物に戻る。昼食の材料やお茶請けの和菓子にほうじ茶、あとは広告にあった特売品を買って終了。
「よし、まあこんなもんかな」
セイバーだけでなく遠坂もうちに来るそうなので結構な大所帯になることが懸念される我が家は、念のため多めに食材を買っておいた方がいいだろう。
「って、卵買うの忘れたな」
いままでは俺、桜、藤ねえの分しか用意しなくてよかったから割と足りていたりしたのだが、如何せんセイバーと遠坂に料理をふるまうのは初めての事なので未知数である。だからなるべく切らさないようにしたいのだが。
「おひとり様1パックか・・・」
買い物に来たのは俺一人のため1パックしか買えない。どうしたものかと思っていると後ろから声がした。
「どうしました?」
聞き覚えのある声に振り返るとそこには、昨日の夜の黒い少女がいた。
「っおまえは、あの時の」
「はい、昨日はイリヤ共々お世話になりました。」
「何しに来た」
「そんなに警戒なさらずとも何もしません。装備の一切は拠点に置いてきましたし、魔眼も使うつもりはありません。それでも納得できないというのであれば、いっそボディチェックしてもいいですよ。」
昨日と同じくほぼ無表情ではあったが、そこに敵意や殺意は一切含まれていないことを感じとり、俺も警戒を解いた。
「それで、どうしたんですか?お困りのようでしたけど」
「そうだ。式波、今暇か?」
「は?確かに予定はありませんけど・・・・」
「よし、ならちょっと手伝ってくれ」
「?」
そして俺は卵のパックを手に取ると再び会計にならぶのだった。
桜の言っている人はもちろん刹那です。今回は濁すために入れ違いになってもらいました。
いろんな意味で桜にとっての恩人になる予定。