レベルを上げて魔法で殴る   作:4416

2 / 10
─設定の続き


[魔法ギルド ウェルド]

 構成人数は ギルドマスターを含めて7人。

 加入条件は二種類以上の魔法が使える事だけ。
 人数が少ないのは 二種類もの魔法が使える者は大抵大型・中型ギルドに行ってしまうからである。
 過去に何度かウェルドに加入したいと申し出た人がいたが その殆どは門前払いに。

 なぜ魔法使用者限定なのかはマスターのみぞ知る。


[アルトゥロ・トールマン]

職業:魔法剣士
種族:ヒト
性別:男
魔法:自然魔法,重力魔法
触媒:剣
趣味:読書,空を眺めること
好きな物:静かな場所,非公式の書物
嫌いな物:魔法が効きづらい敵,蒸し暑い場所
好きな食べ物:穀物類,豆入りポリッジ
嫌いな食べ物:一部の香辛料,サフランを使ったもの

 当作品の主人公。

 全身を鎧で纏っており 見た目だけでは魔法を使うものとは分からない風貌をしている。
 白兵戦は苦手な傾向にあり 中~遠距離からの魔法攻撃を得意としている。

 触媒として使っている剣は魔導率が非常に高い品で ミスリルをメインに銀や白金などの貴金属 星命晶(せいめいしょう)と呼ばれる珍しい結晶を混ぜ込んだ合金で出来ている。
 魔法を扱う触媒としては素晴らしいの一言に尽きる逸品だが 反面切れ味は刃物なのかと疑う程のなまくらである。
 また 誕生石であるサファイアを剣の装飾品として使用しており 水と雷の力を増幅する効果がある。


[ドロテア・ヘガティ]

職業:占い師
種族:エルフ
性別:女
魔法:時空魔法,具現魔法
触媒:タロットカード,グローブ
趣味:占い,食事
好きな物:明るい月夜,食べた事のない料理
嫌いな物:迷信,蛾
好きな食べ物:焼き菓子全般,シナモンをまぶした胡桃クッキー
嫌いな食べ物:苦すぎるもの

 主人公その2。

 自称 スゴ腕の占い師。
 確かに当たるといえば当たるが どうでもいい事ばかり当たってしまう。

 戦闘は専ら拳で殴り グローブを触媒に具現魔法で音や爪を作ったり 時空魔法を使って敵の懐に潜るなど なかなかのインファイターである。
 グローブはちょっと怪しい店で買ったグリフォンの革を加工した物で 結構雑に扱ってもヘタレない丈夫な代物である。

 迷信は信じない性質であり 特に他人の占いはアテにしない。
 また 予知能力を高めるというムーンストーンを使った耳飾りを身につけているが 見た目が気に入っているだけで効果は信用していない。


[ビト・ボールト]

職業:スタルニル教司祭
種族:ヒト
性別:男
魔法:神聖魔法,心体魔法
触媒:聖書
趣味:散歩,喜捨
好きな物:金,晴天
嫌いな物:物を無駄にする人,針
好きな食べ物:果実類,焼き林檎
嫌いな食べ物:砂糖,過剰に味付けしたもの

 主人公ではない。

 神を信仰し 金に執着する司祭。
 守銭奴だと思われがちで実際そうではあるのだが 何も自分の為だけに金を求めている訳ではない。
 教会に寄付したり 貧しい人々に与える為に金を集めており 自身に使う分は最低限に留めている。

 戦闘は専門ではなく サポートに回ることが多い。
 一応 神聖魔法を使えば一網打尽も可能ではあるが 呪文がやたら長かったり制約が厳しかったりと万能とまではいかない。

 触媒として使用している聖書は 修道士時代に複写した物を触媒用に手を加えたものらしい。
 ちなみにガーネットを使用したタリスマンも所持しているが こちらは魔法の触媒ではなく単なるお守りである。


[ギルドの依頼について]

 ギルドが依頼を受ける方法は2つ。
 1つは依頼主から直接受け もう1つは総合ギルド局に赴いて依頼を受ける。

 ギルド局に依頼を発注する流れとしては以下の通り。

 1.依頼したい事とその詳細を伝える
 2.内容に不備が無ければ 次に報酬金額を設定
 3.安過ぎず高過ぎない額として受理されれば その報酬をギルド局が預かる
 4.上記の手続きが済んだら局員が依頼書を作成・複製し 提携している酒場や宿屋等に依頼書を送る

 酒場等で依頼を受けた場合は仮受注という形になり 正式に受けるには総合ギルド局に行く必要がある。
 理由としては お互いのギルドが別の場所で受けてしまって 依頼の取り合いにならない様にする為である。

 ギルド局を介して依頼を受けるメリットとして 報酬関連のトラブルが起こらない事と 怪しい依頼に遭遇しにくい事が挙げられる。
 もし依頼者が直接ギルドに依頼をした場合 支払いの際にごねたり誤魔化したり 最悪の場合逃げられる可能性がある。
 その逆として ギルド側が多額の報酬を要求したり 脅迫する事も否定出来ない。
 依頼内容によっては 詳細を伝えずに犯罪紛いの事をさせたり もしかすると散々利用された挙句消されるなんて事も。
 それらを防ぐ為にも 総合ギルド局での受注を推奨している。

 では ギルドに直接依頼する事にメリットはあるのか?
 限定的ではあるが 利点は存在する。
 一つ目は 互いに信用のある者同士だと 局を介さない方がスムーズに事を行える。
 二つ目は 失敗の許されない内容の場合 弱小ギルドに受けられるよりも 実力のあるギルドに直接頼んだ方が良い という点が挙げられる。

 受注した依頼をキャンセルしたい場合 相応の取り消し料が発生し 支払う事で取り消す事が出来る。
 また 依頼主が依頼を取り消したい場合もキャンセル料が発生するが 受注とは違い報酬の一部を費用として 残りの報酬を返すという仕組みになっている。
 これは無闇矢鱈に依頼を発注・受注するのを防ぐのと同時に 取り消した際の手続きの手間を削減する為でもある。


希望が無いなら魔法で創る

 

「……で 今ある依頼がこれだけと」

 

 冒険者の拠点ともいえる国 シュマルド。

 そこにある総合ギルド局本部に赴き 受けられる依頼を確認しに来たアルトゥロ。

 しかし 旨みのある依頼は大型ギルドに根こそぎ持っていかれ 小型ギルドにはせいぜい雑用や便利屋程度の依頼しか残されていない。

 アルトゥロは唯一残された依頼を見て 大きく肩を落とした。

 

「……行方不明者の捜索かぁ」

 

 行方が分からず 生死不明の人物を探し出す依頼。

 大抵は見つからずに終わるか 死体として発見されるかのどちらかであり 生きて連れて帰るというのは珍しい。

 殆どのギルドは そんな事に時間を割きたくないと受けたがらないのが現状である。

 何より どれ程の日数がかかるか分からない上 捜索に来たのに逆に捜索される羽目になるなど リスクの割に旨みが無いのだ。

 

 行方不明者の捜索依頼は 依頼が発生してから一ヶ月経っても生存が確認出来なかった場合 死亡扱いとして取り消される。

 その際に預かっている報酬は キャンセルと違い依頼主に全額返還するようになっている。

 そして もし死体として見つかった場合は 報酬は半額になり 残りは依頼者に返すという決まりになっている。

 

「……うん どうするかなぁ」

 

 改めて依頼内容を確認する。

 

 依頼主は小型ギルドに所属する冒険者。

 詳細は 新しい坑道の開拓の為に雇われ 同ギルドの冒険者が鉱山内部を下見に行ったところ 予定より三日過ぎても帰って来なかったというもの。

 報酬は銀1000。

 

「うーん……」

 

 

───

 

 

 冒険国シュマルドを代表する街 ミナクルト。

 そこに魔法ギルド ウェルドのギルドハウスがある。

ギルドハウスと言っても ギルドマスター名義の家であるが。

 経営不振で潰れた宿が捨て値で売られていたのを買取り そのままギルドハウスとして手を加えただけの物である。

 

 飾り気の無い扉を押し ギルドハウスへと入るアルトゥロ。

 一階の広間には大きな机と長椅子があり 奥にはギルドマスター専用の大きな椅子がどんと構えている。

 そこに暇を持て余していたマスターが座っており それに付き合っていた仲間の姿が目に入った。

 

「やあ マスター」

 

「あら アルトゥロじゃない。

 どう? 依頼はあった?」

 

「アルトゥロさん!お帰りなさいっス!」

 

 ギルドマスターでありヴァンパイアでもある 黒い衣装に身を包んだイヴェット・バーレイと 鉄の仮面で顔を隠した作務衣姿のサイクロプス トビアス・ハンフリーがそこにいた。

 

 イヴェットはギルドマスターではあるものの ヴァンパイアという種族上 日が出ている時に出歩く事は出来ない。

 その為 日中の活動は全てギルド員に任せ 夜になるとようやく活動を始める。

 ……のだが いったい何をしているのかは不明である。

 

 トビアスは主に物品の生産・加工を請け負っている職人である。

 一応 魔法も使えて戦闘も出来るが 得意ではないので基本的にサポートに回ることが多い。

 単眼という特徴を持つサイクロプスである為 なるべく怖がらせないように 人前では目を覆い隠す鉄の仮面を装着している。

 細かい意匠に拘り それを実現出来る技術を持つという器用さに加え 分け隔てなく相手と接する心を持っており 多くの人々に親しまれている。

 

「それで 依頼はあったのかしら?」

 

「うん あるにはあったが捜索依頼しかなかった」

 

 そう言い 件の依頼の紙を机に置く。

 イヴェットはそれを拾い上げ 内容をサッと確認する。

 その隣でトビアスも読もうとするが イヴェットに邪魔だと言わんばかりに押し退けられた。

 

「まあ いいんじゃない?

 報酬が心許ないし 現地で宝石でも持ち帰ったらいいでしょ」

 

「えぇ……」

 

「だって未開拓なんでしょ?

 宝石の一つや二つ 盗ったところでバレないわよ」

 

「うん そりゃ確かにそうだけど」

 

「それにウチには宝石の目利きを持つヤツがいるじゃない。

 トビアス アンタも行きなさい」

 

「了解っス!」

 

 半ば無理やりに決められ 二度目の肩を落としたアルトゥロ。

 しかし 他に依頼が無い現状 受けるしかないのは仕方ない。

 

 

───

 

 

 アルトゥロ ドロテア トビアスの3人は 銀鉱山を持つ事で知られる国 アルジョントメールに向かう馬車に乗っている。

 依頼にも記されている山は未開拓であり 拠点が無い。

 その為 近くにあるベルホワーシュという村に行く事にした。

 

「ふわぁ〜…… 眠い……」

 

「Zzz……」

 

 ギルドハウスを発ってから二日目。

 早朝から馬車に乗っており ドロテアは眠い目を擦って何とか起きている。

 アルトゥロは完全に寝てしまっており もしかすると賊に襲われても起きないかもしれない。

 対するトビアスは 道中で購入した保存食の品質を確認している為か 眠気とは無縁であった。

 

「うぅ〜…… 寒くなってきた……。

 上着どこだったっけ……」

 

「ここにあるっス!」

 

「あぁ ありがとう……。

 アンタ この寒さ平気なの?」

 

「ちょっと寒いっスけど 今はまだ大丈夫っス!」

 

 アルジョントメールは山が多く 他国と比べると標高が高く気温が低い。

 しかも早朝となると それが顕著に現れる。

 

「……アルトゥロ寝ちゃってるけど 大丈夫かな」

 

「マントを着けてきているので 大丈夫だと思うっス!」

 

「……ヤバイ すごい眠い」

 

「ちょっと待つっス!

 今 温かいスープを作るっス!」

 

 トビアスはそう言うと 荷物から塩漬けの豚肉とカンテラ 底の部分を除いだ外側が木 内側が金属で出来た器を取り出す。

 器の中に豚肉と水を入れ カンテラの火屋を外して火打石で蝋燭に火を付ける。

 そして器に火を当てて じっくりと温め始めた。

 馬車には緩衝機構が施してあるとはいえ絶えず不規則に揺れている。

 スープを零したり蝋燭が倒れたりしないよう 器をしっかりと持ちカンテラを倒れないよう抑えていた。

 暫く熱し続けていると スープから白い湯気が出始めた。

 湯気が出たのを確認したトビアスは火を吹き消し 熱したスープをドロテアに渡した。

 

「どうぞっス!

 底の部分は熱いので 気を付けるっス!」

 

「ありがと……」

 

 半分寝かけているドロテアは器を受け取り 熱々のスープを一口含んだ。

 お粗末にも美味いとは言えないが 温かい液体が身体を通り 体温が上がると共に眠気が消えていくのを実感する。

 一口 また一口と飲み 肉を咀嚼していく。

 器が空になった時には 睡魔は完全に吹っ飛んでいた。

 

「いやぁ〜 ありがとねぇ。

 おかげで体も温まったよ」

 

「こんなにも喜んでくれると コレを作った甲斐があったというものっス!」

 

「ソレ何?

 タダの器じゃないよね」

 

「この器は 底に火をあてて温める事が出来るんス!

 まだまだ改良点はあるっスけど お役に立てて嬉しいっス!」

 

「へぇー そんなの作れるんだ〜」

 

「構造は単純そのものなんスけど オレが目指しているのは手軽さっス!

 温めてすぐ食べられる!それがコンセプトっス!」

 

 身体が温まったところで 熟睡しているアルトゥロに目を移す。

 微動だにせず 凍死しているのではないかと錯覚させる。

 微かに聞こえてくる寝息だけが 彼の生存を知らせる。

 

「さすがに起こした方がイイかな」

 

 

───

 

 

 何事もなくベルホワーシュに到着した3人。

 村ではあるが 炭鉱を採掘する労働者の拠点のようなものであり 国の契約の下で村民が世話をしている。

 ミナクルトからベルホワーシュまでの移動の間 数時間が経過しており 太陽は既に真上を昇っていた。

 

「……腹減った」

 

「何か食べるっスか!?」

 

「干した物ぐらいしかないよ」

 

「とりあえずドライフルーツで」

 

「どうぞっス!」

 

 ドライフルーツの入った袋を受け取り 少しづつ摘んでいくアルトゥロ。

 優しい甘味が口いっぱいに広がり 更なる甘味を脳が要求する。

 アルトゥロが干し果物を堪能している間 ドロテアは村人らしき中年の男性に話しかける。

 

「チョットいい?」

 

「あい?」

 

「ココの近くに 開拓予定の坑道ってある?」

 

「ふぅむ…… あぁ あるねぇ。

 まだ検討段階だったとか そんな感じだったな」

 

「そこまでの道は分かる?」

 

「んん? お前さんら 見た限り業者じゃないようだが……。

 ……あぁ なんか下見を依頼するとか言ってたし お前さん方がそのギルドかい?」

 

「まあ そんな感じ」

 

「その坑道なら ここから北西に進んで 川沿いを北上すれば見つかるハズだ」

 

「ナルホド 北西に進んで川沿いを北ね」

 

「あぁ 道中はくれぐれも気をつけてくれよ。

 何でも 洞窟の中には恐ろしい怪物がいるとか」

 

「か 怪物っスか!?」

 

「あくまで噂さ。

 だがその噂のせいで 皆ビビっちまって開拓が進まねぇんだ」

 

「ふーん まあ もしホントにいたら ついでに退治しておくね」

 

「お おう……。

 そんなアッサリ言うものなのか……」

 

 村人に情報の礼を告げ 言われた通りに進んでいく。

 全く整備されていない為 歩くだけでも一苦労する。

 草木をかき分け 坂を登り 道無き道を踏みしめる。

 一時間程歩き続け 肩で呼吸する程に疲弊したあたりで川を見つけ ここで一旦小休憩を挟むようドロテアが提案する。

 軽食を取り 水分を補給したところで アルトゥロがおもむろに魚を取ろうと試みる。

 しかし視認できるのは小魚ばかりで 取っても腹の足しにならないだろうとあっさりと諦めた。

 

「うん 少ない」

 

「バカやってないで行くよ」

 

 移動を再開し 川の上流を目指して歩き始める。

 やはりというべきか木が邪魔して思うように進めず 防寒用に着用していたマントや外套が小枝と葉で装飾されていた。

 歩いていく内に足が山道に慣れたのか 思ったよりも短い時間で洞窟の入口に辿り着いた。

 ぽっかりと開いた入口は 闇の世界へと通じていそうな暗い雰囲気を感じさせる。

 

「やっと着いたね」

 

「でもここからが本番なんだよな」

 

「すぐにでも行くっスよ!

 早く助けるべきっス!」

 

「うん 待て待て こっちは明かりの準備するから ドロテアは適当に占っといて」

 

「テキトーって……。

 まあ いいけど」

 

 アルトゥロは松明をせっせと拵える。

 そうして出来た松明に魔力を込めて 自然魔法を利用して着火させる。

 魔法そのもので明かりを確保する場合 持続的に魔力を消費することになるが 松明に灯せばその必要が無くなる。

 松明も木製の杖のような物なので魔導率が高く 火打石等を使わずとも火を灯せる。

 例え火が消えてしまったとしても 手放していない限りはいつでも着火できるのが強みだ。

 

 一方トビアスはカンテラを使った。

 

「こっちは準備いいぞ」

 

「オレも大丈夫っス!」

 

「コッチは と──

 ……命を捨てて命を拾う。

 吊るし人は闇夜に浮かぶ月を思う……」

 

「……うん サッパリ分からん」

 

「オレも分からないっス!」

 

「う〜ん 吊るし人ねぇ……。

 慎重か試練か はたまた直観かな」

 

「慎重に行動すりゃ 何か見つかるって事?」

 

「遭難者か宝石が見つかるんスか!?」

 

「でも 命を捨てるってのが気になる」

 

「うん それは怪物が関係してるんじゃないか」

 

「やっぱり怪物がいるんスか!?」

 

「捨てたのに拾うってどういう事だろう?」

 

「うん どっちにしろ未開拓の地域だし モンスターの一体や一体はいるかもな」

 

「もし遭遇してしまったら どうするっスか!?」

 

「倒す」

 

「……まあ 倒すって言っちゃったからね」

 

「うん 強いのはそうそう居ないって。

 変異モンスターでも生物だし 弱点はある」

 

 この世界では 突然変異で巨大化 凶暴化した怪物が時折発生する。

 原因は未だ解明されておらず 許容量を超えて魔力を保有しようと無理矢理変異し 変化に耐えきれずに暴走 という説が有力である。

 しかし 最近になってこの説に異議を唱える者が出てきたり 邪教徒が隠れてモンスターを凶暴化させていると流布する者がいたりする。

 どちらにせよ 研究しようにも発生条件も場所もバラバラであり 経過観察など不可能に近い。

 また 人為的に魔力を与えても 許容量を超えての吸収はされないという研究結果も出ている。

 研究の仕方が悪いのか あるいは研究で解明出来るような事象ではないのか。

 もっとも 原因が解明されたとしても それを防ぐ手段が無ければ 解明されてないも同然だが。

 

 変異モンスターは 放っておくと近隣の村や生態系に甚大な被害を与える。

 それを防ぐ為に 実力のある大型・中型ギルドが討伐に駆り出させる。

 対象が単体の場合もあれば 子分を従えているタイプも存在し 後者は特に厄介極まりない。

 野生の縦社会では 下が上に逆らうというのは 人間が国に逆らう事と同等である。

 その為 ボスが守れと命令すれば 子分は体を張って守り抜き 号令を掛ければ集団で襲い掛かる。

 過去に変異モンスターを甘く見たせいで壊滅しかけたギルドが存在したり 一獲千金を狙って全滅したギルドもあった。

 

「うん じゃあ行くか」

 

「チョット待って アタシの明かりは?」

 

「オレが用意したっス!」

 

「あ ありがとね」

 

 アルトゥロは松明を ドロテアとトビアスはカンテラを持って洞窟へ足を踏み入れた。

 暗闇を照らす明かりから確認できるのは 無機質な岩肌のみ。

 松明の焼ける音と3人の足音だけが 洞窟の中で響いていた。

 暫く歩き続けている内に 同じ道を通っているかのような錯覚に陥る。

 時間も忘れてしまいそうな程に 何も無い道を進んでいく。

 

「何も無いっスね!」

 

「うん 面白いぐらいにつまらないなぁ」

 

「ドッチなの」

 

 今はまだ狭く 両側の壁が見える程度には照らし出せている。

 しかし 歩いていく内に徐々に広がっていくのが体感として分かる。

 長い時間歩き続けていると 今度は下へ下へと降りていくようになっていき 急な下り坂をもひたすら降りていく。

 

「うわっととと……。

 デコボコだし下り坂だし 歩きにくすぎー」

 

「気をつけるっスよ!

 足元をよく見るっス!」

 

「やっぱり何も無いなぁ。

 虫の一匹もいない」

 

「あー!何浮いてんのさ!

 1人だけラクするなんて!」

 

「いや 鎧だからコケやすいし」

 

「コケても鎧が守ってくれるでしょ!」

 

「まあまあ ひとまずは安全な場所まで行くっスよ!」

 

 何とか転ばずに下り坂を降りた一行。

 降りた先にはやはり暗闇が続いている。

 ここで明かりが両側の壁をうっすらとしか照らしていない事に気付いたアルトゥロは 壁沿いに進むように二人に言う。

 無機質な壁を右手側に沿って歩き始め 無の闇を進んでいく。

 ただただ歩いていくと 岩肌がしっとりと濡れているのが 明かりの反射具合から見て取れ 更に進んでいくと松明の音でも足音でも無い 水音が聞こえてきた。

 

「地下水でも流れてるのか?」

 

「床もツルツルするし あるんじゃないかな」

 

「転ばないよう 気をつけ…… オワッ!」

 

「あらら 大丈夫?」

 

「痛いっス…!

 でも この程度なら平気っス!」

 

「……ん? コケが生えてるぞ」

 

「ホントだ

 しかもちょっと光ってる?」

 

「これはヒカリゴケの一種っスね!

 でも ここに生えてるのは少しおかしいっス!」

 

「というと?」

 

「コケは光が無いと育たないんス!

 自然光も届かないこんな場所に生えるというのは不自然なんス!」

 

「え? コケって光が無くても生えるんじゃないの?」

 

「それは間違いっス!

 コケも植物っスから 光が必要になるんス!」

 

「まあ このコケが普通のコケじゃない可能性も否定出来ないけどな」

 

「それはそうっスけど…!

 でも 個人的に気になるので持って帰るっス!」

 

 トビアスはカンテラを置き 大きな背嚢に吊り下げているツルハシを握った。

 巨体であるサイクロプスの手からすれば ツルハシなど片手で持つに十分である。

 軽く叩くように 苔下の岩が砕けないよう丁寧に掘っていく。

 楕円を描くように掘り抜き 慎重に苔岩を手に取り それをまじまじと見つめた後 布で包んで原石用バッグに入れた。

 

「お待たせしたっス!」

 

「よし 捜索再開だ」

 

 再び闇の中へと突き進んでいく3人。

 水音は絶えず聞こえ まるで深海に迷い込んだかのように錯覚させる。

 一歩 また一歩へと進み 濡れた岩肌を踏みしめる。

 気がつけば足音は岩を踏む音ではなく 水を踏む音へと変わっていた。

 

「冷たい冷たい冷たい 鉄靴の隙間に水が水ががが」

 

「うるさい」

 

「はぁぁ 地底湖でもあるのか……?」

 

「これ以上進むと 湖底に着きそうっスね!」

 

「だとしたら どうするの?」

 

「うーん……

 ……うん?」

 

 道標になりそうな物は無いかと 期待せずに暗闇を見渡したアルトゥロ。

 その視線は 暗闇には無い筈のうっすらと光る何かがあり 距離にしてかなり遠いと感じる。

 もしかすると生き残りがそこにいるかもしれない。

 

「……あの光」

 

「光?」

 

「どこっスか!?」

 

「あの先だ。

 ぼんやりとだけど あそこに何かあるかもしれない」

 

「生存者がいるっスか!」

 

「うん 分からないけど 行くしかないさ」

 

「……そうだね」

 

 今にも消えてしまいそうな 儚い光を目指して進み出す。

 間に地底湖でもあるのか 真っ直ぐ進もうとすると水深がどんどん深くなってしまう。

 その為 光を左手側に 迂回する形で歩いていく 。

 しかし進んだ先では 湖が行く手を阻むように横切っており そのまま突き進もうものなら 全身ずぶ濡れになって凍えてしまうだろう。

 アルトゥロが対岸までどのくらいあるのか重力魔法で浮いて確認しに行ったところ そこまで距離はないと判明した。

 対岸を渡る為にとった方法は……。

 

「じゃ ヨロシク」

 

「よろしく頼むっス!」

 

「………」

 

 これまた重力魔法を使用し 二人を担ぎ上げているアルトゥロ。

 持ち上げるだけでもかなりの魔力を消費するというのに抱えたまま浮かぶとなると 疲弊だけで済むのか怪しくなる。

 一応 魔力を回復する魔力結晶なるものは持ってきてはいる。

 しかし まだ成果を出していないにも関わらず浪費するのだけは避けたい。

 

 半ば勢いに任せて力み 浮遊を試みるアルトゥロ。

 何とか浮く事は出来たが 上方向への重力を操るのが精一杯であり 思うように前へ進まない。

 このままでは対岸に着く前に魔力を使い切ってしまうだろう。

 

「……重……い」

 

「あともうチョット」

 

「頑張るっス! あともう少しっス!」

 

「……も……むり」

 

 気球が墜落するかのように緩やかに落ちるアルトゥロ。

 大量の荷物に加え 巨体のトビアスを抱えて浮くというのは 改めてみると無理がある。

 溺れるような深さでは無かったが 膝上まで濡れてしまい 鎧の隙間から冷水が流れ込んでしまった。

 ドロテアとトビアスは これ以上負担は掛けられないと判断してアルトゥロから飛び降りる。

 着地した場所は膝下が浸かる程の水深であったが 全身が濡れるよりはましである。

 

「ヒーッ……フーッ……」

 

「歩ける? ホラ 手」

 

「どこかで休息しないといけないっスね!」

 

「いい感じの横穴とか無いかな」

 

「無いなら無いで 作ればいいっス!」

 

「まあ とりあえずここから移動しようか。

 冷たいったらありゃしないよ」

 

「ヒョーッ……ヒューッ……」

 

「アルトゥロさんはオレが担いで連れていくっス!」

 

 満身創痍のアルトゥロを担いで 先を少し進む。

 横穴は見つからなかった物の なんとか水面から離れた位置へは辿り着いた。

 そこで一旦アルトゥロを下ろしたトビアスは 再びツルハシを握りしめる。

 苔掘りとは違って力強く岩壁を掘っていき 少し掘り進んだ先で部屋を作っていく。

 急拵えであり 辺り一面デコボコであるが 開けた場所で休むよりはいいだろう。

 部屋を作り終え せめて尖った岩は削ろうと 今度は金槌を取り出した。

 潰すようにして叩き 手で触って傷つかないか確認していく。

 その作業を繰り返し 問題ないと判断したトビアスはアルトゥロを抱えて横穴で休ませた。

 

 ドロテアは掘削作業中 暇だったため タロットカードを使って時間を確認していた。

 詳しい時間は分からないものの 日がどこまで昇っているか 月の満ち欠けはどの程度かなら分かる。

 いつものようにカードを浮かして占った結果 日はすっかり暮れていると判明した。

 その事をトビアスに伝え 今日はもう休もうと提案した。

 アルトゥロが疲弊してしまっている事もあり 拒む理由は無く すんなり受け入れた。

 

「念のため 掘り抜いた岩で入口を塞いでおくっス!」

 

「なんかこうして横穴で休んでると あの時の事を思い出すね」

 

「あの時というと 幻の金属とやらを探しに行った時の事っスか!?」

 

「そうそう! 報酬が高いってだけで受けた依頼ね。

 聞いたことも無い物を探し出せなんて無理難題 どうしようもなかったケド」

 

「結局 一週間掛けてもそれらしい金属は見つからなかったっスね!

 報酬は貰えず 時間と費用を無駄にしただけだったっス!」

 

「ヒドイよね〜。

 で 結局アモサイトって 存在するの?」

 

「あの依頼以降 耳にした事は無いっス!」

 

「じゃあ ただのイタズラか 根も葉もない噂を信じてたってだけかな」

 

「かもしれないっスね!」

 

 ちょっとした思い出話を懐かしみつつ 夕飯の準備をする二人。

 乾パンや干し肉等の味気ない保存食も 工夫次第で美味しくなる。

 まずは馬車で活躍した木枠の器に ドライフルーツを入れる。

 そこに水を少量加えて 火屋を外したカンテラでじっくり煮詰める。

 そうすれば ちょっとしたジャムが完成する。

 このジャムを乾パンに塗って食べるという寸法だ。

 

 次に もう一つ 一回り大きい器を取り出し そこに干し肉 干したジャガイモやニンジンを水と一緒に入れて加熱する。

 暫く温めればスープが出来上がる。

 乾燥物故 味は劣化しているが そのままかじるよりはずっといい。

 そうして出来たスープを三つの小さな器に小分けして移し 刻んだバジルを少量入れる。

 

 最後に 干し肉に脂を塗って焼けば 形だけではあるものの焼いた肉も楽しめる。

 

「これで完成っス!」

 

「はい アルトゥロの分」

 

「あんがと……」

 

 スープを受け取り やはり兜の上からすする。

 いったい何が頑なに兜を外させないようにしているのか。

 ひたすら無心に肉を食べてはスープを飲み 器が空になってからようやく乾パンに手を出した。

 乾パンでジャムをすくうように乗せ 口の中へ放るように食べる。

 早くも2,3個食べたあたりで手を止め 毛布を取ろうと立ち上がろうとする。

 しかし 体力がもう残ってないのか 鎧の重みで立ち上がることが出来ず 仕方なく毛布を渡してくれるよう頼み トビアスから毛布を受け取る。

 そしてそのまま鎧の上から毛布で身を包んで 倒れるように横になった。

 

「Zzz……」

 

「寝るの早いね」

 

「流石に無理をさせたっスからね!」

 

 二人は夕食をゆっくり食べていく。

 その途中でカンテラの火が1つ消えてしまい トビアスが手際よく蝋燭を取り替える。

 もう片方のカンテラを確認すると こちらも蝋燭が残り僅かとなっていた。

 そこでようやく 自分たちが長い時間洞窟に潜っていることを実感した。

 蝋燭を節約するために 照明のためのカンテラを1つにし 残り少ない夕飯を片付けた。

 

「ごちそうさまー」

 

「お粗末様っス!」

 

「たまにはこういうのも悪くないかもね」

 

「そうっスね!

 ではオレは 食器を洗いに行くっス!」

 

「あっ アタシも手伝うよ」

 

「いえ ドロテアさんはアルトゥロさんを見ててほしいっス!

 何かあればすぐ知らせるっス!」

 

「そう? じゃあ待ってるね」

 

 そういい 残りの短いカンテラに火をつけ それと食器を持って近くの湖面へ向かった。

 また暇になってしまったドロテアは 安全に休めるか占ってみる。

 暇さえあれば占うのはドロテアの癖だ。

 彼女の占いは当たるといえば当たるのだが 割とどうでもいい事だったりする事も多々ある。

 それでも 何も分からないよりはましではあるが。

 

「……闇は心を蝕んでいく。

 正義の聖火を絶やすことなかれ……か」

 

 恐らく 火の番をしろとの結果だとドロテアは考える。

 得体の知れない場所で暗闇の中で寝るというのは 確かに精神的に厳しいものがある。

 アルトゥロがこうして寝ているのも 明かりがあってこそのものかもしれない。

 

 占いをしてから少し経ったところで トビアスが岩の栓をしっかりと確認してから戻ってきた。

 確認が済んで床に座ったと同時に残り少なかったカンテラの火が消えてしまった。

 カンテラをいつでも使えるように トビアスはすぐさま新しい蝋燭に取り替える。

 取り替えが終わり 背嚢から綺麗な布を取り出して洗った器を吹き 食器用の袋へ丁寧にしまっていく。

 粗方片付けた後 荷物を邪魔にならない位置に置いてから毛布を2枚取り出し 内1枚をドロテアに渡した。

 

「さあ 早いうちに寝るっスよ!」

 

「いや アタシは念のため見張っておくよ」

 

「えっ いいんスか!?」

 

「アタシは大丈夫だけど トビアスは眠たいんじゃないの?

 かなり早くから起きてたみたいだし」

 

「……実はかなり眠たいんス……!」

 

「しっかり見てておくから ゆっくり休んでていいよ」

 

「では お言葉に甘えて休ませて頂くっス!」

 

 トビアスは毛布に包まり ドロテアに素顔が見えないように仮面を外す。

 それを頭上あたりに置いてから 壁の方へ向いて目を閉じた。

 よほど眠たかったのか 数秒経たずして寝息が聞こえてきた。

 二人の心地よく眠る音を聞いていると こっちまで眠たくなる。

 そう思うドロテアであった。

 

「……んー」

 

 なんとか暇を潰すために タロットカードで遊ぶドロテア。

 彼女が普段占いに使うカードは大アルカナのみ。

 小アルカナも使って占う事は出来なくもないが ドロテアの場合 結果がかなり曖昧になってしまうため 大アルカナのみを使用している。

 占いでは出番がない小アルカナだが これを使って変わった遊びが出来る。

 それは 適当に切った山札から1枚ずつめくり カードの意味に沿ったストーリーを作るというもの。

 丁度よく筋道が通る場合もあれば どうしてこうなったと言いたくなるような急展開にもなる。

 

「……資源に余裕があるのは 地道に仕事をこなしたからだ。

 だが その資源の貯蓄の為に蔵を買ったせいで金を失ってしまった」

 

 一枚 また一枚とめくっては 物語を構築していく。

 背景としては 金欠の農民の憂いが適当だろうか。

 

「贈り物ではないが 友の友情を信じて 資源を買い取ってくれるか交渉してみようと思う。

 だが どうしても成功する未来が見えず 準備に身が入らない……」

 

 何か重い話になってしまい 一旦物語を切ってまた別のストーリーを作り始める。

 これの繰り返しで 時間を潰していった……。

 

 

───

 

 

 2人が寝てから何時間経っただろうか。

 カンテラの中にある蝋燭はかなり短くなっていた。

 ストーリー作りにも飽きてしまったドロテアは ただただ揺れない蝋燭の火を見つめていた。

 じっと火を見つめている最中 アルトゥロが目を覚まして身体をむくりと起こした。

 周囲を見回し ドロテア1人が起きていることに気付いたアルトゥロは やや気だるそうに話しかける。

 

「おはよーさん」

 

「オハヨ」

 

「今の時間はどれくらい?」

 

「わかんない」

 

「わかんないって……」

 

「……眠い」

 

「眠い? って事は起きたばかり?」

 

「……逆」

 

「うん? まさかずっと起きてたのか?」

 

「うん」

 

「なぜに」

 

「……火の番」

 

「……じゃあ 火はわっちが見ててやるから ドロテアはもう寝てろ」

 

「ん……」

 

 羽織っていた毛布で身体を包み 横になるドロテア。

 目を閉じ瞬く間に眠り ようやく眠れたかのような寝顔を見せる。

 眠りについたのを確認したアルトゥロは 荷物を漁って食料と水を手に取る。

 まずは一口水を飲み 乾いた喉を潤す。

 そして 塩漬けの乾燥豚肉を口に入れ 味わうようにして咀嚼する。

 乾パンと干し果物も口にし 喉が乾けば水を飲む。

 その繰り返しで腹を満たしていった。

 

 食事を終え 活動を再開するまで時間が余ってしまったアルトゥロ。

 身体を軽く動かし 異状や問題が無いことを確認する。

 

 本来の目的は 遭難した人物の捜索だが 本命としては宝石・鉱石の採掘である。

 その事を考え剣を握り 柄頭を岩壁に当てて小声で自然魔法・土の呪文の1つを唱える。

 アルトゥロ 岩壁共に変化は見られないが アルトゥロは岩の中の異物をしっかりと感じ取っていた。

 宝石があるであろう位置を確認し 最短距離で掘り抜ける場所に移動して 今度は切先を岩壁に当てた。

 別の呪文を唱えると 切先に触れている部分を中心に小さな円形の亀裂が入り そのまま剣を引いた。

 すると まるで磁石のように剣にくっ付いたまま棒状の岩が引きずり出され 抜き取った1m程の岩の先を折り取り じっくりと観察する。

 しかしこのままではただの岩にしか見えず 削ろうにも綺麗に削り取れる技術が無い。

 だが 中に何らかの宝石があることは確信している。

 トビアスが起きたら見せてやろう。

 そう思うアルトゥロだった。

 

 あちこち移動して柄頭を壁に当てている最中に トビアスは起きた。

 頭上に置いてあった仮面を付け 辺りを見回し 奇妙な行動をしているアルトゥロに対して何の疑問も抱く事なく話しかける。

 

「アルトゥロさん おはようございまっス!」

 

「うん 起きたか」

 

「身体の調子は大丈夫っスか!?」

 

「うん 大丈夫だ。

 宝石を探し当てるくらいには回復したさ」

 

「宝石を見つけたんスか!?」

 

「1個だけだけどな

 加工と鑑定よろしく」

 

「任せるっス!」

 

 バッグから道具を探すついでに水を取り出して飲む。

 着々と様々な道具を揃え 慎重に岩を削り始める。

 トビアスが原石を加工している間 アルトゥロは松明に使う獣脂を染み込ませた布を取り替える。

 松明の準備が済み 次に紛失した物が無いか 念のため荷物を確認していき 幸いにも消費した分以外は無くなってないようだと分かって安堵する。

 まだ時間が余っているため 寝る時に使用した毛布を 粗い石の粉を叩き落としてから畳んで丸めた。

 トビアスの鑑定結果が出たのは 暫く経ってからだった

 

「うーむ…… これはオニキスっスね!」

 

「オニキスと」

 

「ただ ちょっと小さいっスので 装飾品としては心許ないっス!

 アクセサリーに使用するなら十分っス!」

 

「なるほど」

 

 オニキスを布で包み 衝撃を与えないようにバッグへと入れる

 それからようやく 朝食を食べ始めた

 

 

───

 

 

 数時間経ち ようやくドロテアが目を覚ました。

 サッと食を摂り 手短に準備を済ませる。

 一応 時間を占って確認したところ 日は昇っているがそこまで高くないようだと判明した。

 荷物を背負い 横穴からこっそりと顔を出して 周りに怪しいものが無いかを確認する。

 暗闇ではあるが 特に怪しい音も聞こえない為 三人は横穴の外へと出た。

 もし またここに来る事になった時のために 岩の部屋は塞がない事にした。

 緊急時の避難所になればいいが もしかすると何らかの生物の住処になり得るかもしれない。

 もっとも 巣になったらそれはそれで自然な事ではあるのだろう。

 

 依然として光は ぼんやりと輝いている。

 今にも消え入りそうな淡い光だったが 特に変化は見られない。

 光を目指して ただひたすらに闇の中を歩き出す。

 水音と松明の焼ける音 そして濡れた地を踏む足音が静寂を感じさせない。

 何十分歩き続けただろうか 次第に光がハッキリと視認出来るほどにまで近付き 正体を知りたいが為に足早に歩き出す。

 

 そこで目にしたのは 予想もしなかった物であった。

 岩壁に埋もれるようにして存在していたそれは 非常に古い遺跡だった。

 入口と見て取れる場所が唯一 岩から突き出ており 中を覗く限り 内部は瓦礫等で散乱はしているものの入れない程ではなかった。

 そして光の正体は燭台の炎だったのだが 奇妙な事に薪も油も無いのに燃えており 燭台そのものに火がついている訳でもなかった。

 その燭台の形も変わっており 見てくれは人の石像であり ぽっかりと穴があいている左胸に炎が灯っていた。

 その炎を見たアルトゥロが 兜の下で怪訝な顔をする。

 

「これは…… まさか『消えない炎』か?」

 

「消えない炎?」

 

「そんな便利な物があるんスか!?」

 

「かなり昔の神聖魔法だ。

 ただ 命と引き換えに永遠の炎を作り出すというものだから 禁術に指定されてるけど」

 

「いったい何のために?」

 

「詳しくは知らないけど 信者はもれなく消えない炎を使ったらしい。

 それでその邪教は自然消滅して廃れた」

 

「……むむっ よく見ると床に血の痕があるっス!」

 

「うん? ホントだ」

 

「もしかして 遭難した人が襲われたとか……?」

 

「うん 決めつけるにはまだ早い。

 他にも何か無いか探すか」

 

 手掛かりを見つける為に 地面を這うようにして探し出す三人。

 少し離れた所で 腰ほどの高さもない小さな横穴を見つけたドロテアは 中に何か無いかとカンテラで照らしながら中を覗き込んだ。

 そこにあった物は 遭難したと思われる人物と 僅かな荷物 そして火の切れた蝋燭だった。

 ドロテアは急いで2人を呼び 中にいる人を横穴から出した。

 

「息はあるか?」

 

「うむむ…… あるにはあるっスけど かなり危険な状態っスね……!」

 

 トビアスはポーチから適当な木の枝そのものの触媒を取り出し 遭難者の首元にあてる。

 呪文を唱えると 小さな木の棒がぼんやりと光る。

 少しの間当て続けた後 触媒を首から離してポーチへとしまった。

 

「これで暫くは大丈夫だと思うっス!」

 

「早く連れて帰るか」

 

「待って まだ何かある」

 

 遭難者を抱えようとしたその時 さっきまで遭難者がいた場所にいくつかの紙があることに気付く。

 それを拾い上げたドロテアは くしゃくしゃに潰れた紙を広げて中身を確認していく。

 

「何か書いてあるか?」

 

「えーっと…… 最初の方は関係ないメモみたい。

 重要なのは…… ここからかな」

 

 

─坑道の下見の依頼を受けた。

 安い額ではあるが 適当に行って報告すればいいだけならば妥当ともいえる。

 ついでにめぼしい物があれば こっそり持って帰ろうと思う。

 

─場所が場所だけにとても寒いが 洞窟の中は天候の影響を受けにくいのである意味快適だ。

 問題があるとすれば 明かりがなければ目の前すら全く見えない事だ。

 その内ここも暑苦しい採掘場となるのだろう。

 

─道中は何も無く ただただ前に進んでいる。

 宝石の1つでも持ち帰りたいのか 仲間の1人が一向に戻る意思を見せない。

 俺としても何か成果を得たいので 付き合う事にした。

 

─ここには地底湖があるようだ。

 洞窟内はとてつもなく広く この湖もどれ程の規模なのだろうか。

 やはりというべきか 何も無い。

 もう少し奥に進んでみようと思う。

 

─俺達は見つけた。

 地下に隠された謎の遺跡を。

 これは思わぬ収穫 いや諦めなかった事による賜物だ。

 いったいどんな宝が眠ってい

 

─なんだあれは。

 怪物が襲ってきた。

 俺は仲間をおいて逃げてしまった。

 仲間の悲痛な叫びと バケモノの聞くに堪えない声が頭の中で再生される。

 助けに行きたいが 俺には力も勇気も無い。

 荷物も捨ててきてしまい 地上に戻るのも困難だろう。

 そして何より 怪物に出くわすのが怖い。

 

─僅かばかりの食料と水で なんとか生き抜いている。

 数日も戻らなければ ここに来なかった仲間が不審に思って捜索してくれるだろう。

 俺は生きてここを出たい。

 

─どれ程の時間が経ったのだろう。

 食料が底をつき 水も少ししかない。

 俺を見つけた頃には 既に死体になっているかもしれない。

 いつ死んでもおかしくない冒険者という職業柄 遺書など笑われるかもしれないが 念のため書いておく。

 

 

「……で 遺書の文で最後だね」

 

「もう少し遅れてたら ホントに遺書になってたのか」

 

「何はともあれ 死ななかっただけマシっス!」

 

「……で 気になるのが この怪物という記述なんだけど」

 

「宝云々の書き込みが途切れてるあたり 遺跡の前で出くわしたってところか」

 

「いったいどんな怪物なんスか!?」

 

「会ってみないと分からない」

 

「……なんか嫌な予感がするから サッと占うね」

 

 ポーチからタロットカードを取り出して 目の前で浮遊させる。

 呪文を唱えた後 浮かない顔をしながらカードを回収した。

 

「……光あるところに 盲目あり

 愚者は月を背に歩く……」

 

「月に背中……」

 

 月の意味の1つは 隠れた敵。

 それに背中を見せるという事は……。

 

「……まさかな」

 

 冷や汗を浮かべながら振り返る三人。

 そこには 隠れた敵であろう姿があった。

 体長10フィート(約3m)程の巨体を持つトビアスとほぼ同等の大きさのそれは 人の身体でありながら野牛の頭を持つ 異質ともいえる存在。

 鼻息を荒くして睨みつけている眼は 敵意よりも鋭い殺意が込められている。

 牛頭の化物は 手に持っている長柄の大斧を掲げ 牛とも人とも言えない低く野太い咆哮をあげた。

 

「ミノタウロス……!」

 

「完全に怒ってる……よね」

 

「どうするっスか!?

 倒すんスか!?」

 

「どうするも何も 逃げるしかないだろう。

 お荷物1人庇って戦うのは得策じゃあない」

 

「それに 1体だけとは限らないしね……

 ……あの時 軽率に言葉を選ぶんじゃなかったよ」

 

「トビアスは遭難者を抱えて ドロテアと逃げる準備を

 わっちは足止めしてから後を追う」

 

「了解っス!」

 

「ムチャはしないでね」

 

「うん 善処する」

 

 剣を鞘から抜き 刀身に魔力を注ぐ。

 その間 ミノタウロスは突進する勢いで迫ってくる。

 高々と斧を振り上げ 野生の馬鹿力で振り下ろされた斧は 岩を易々と砕いた。

 回避はしたものの これは鎧なんて意味無いな と心の中で苦笑する。

 剣は次第に輝きを増していき 紅蓮の刃へと変貌した剣を水平に薙ぎ 三日月型の炎を飛ばした。

 攻撃はミノタウロスの両足に命中するも 表皮を軽く焼いた程度であまり効いていないようだ。

 

「随分と厚い皮をお持ちのようで……」

 

 炎が効かないと分かったアルトゥロは 刀身の色を変えようとする。

 しかし 先程の攻撃で逆鱗に触れたのか ミノタウロスが再度斧を振り上げる。

 そのまま真っ直ぐ叩きつけるのかと思いきや 右から左へ 左から右へと大きく振り回してきた。

 咄嗟に左の小手で軌道を逸らし 何とか直撃は防いだ

左手がビリビリと痺れるような感覚に怖気立つ。

 

「うん コイツはヤバイ」

 

 刃の色は 明るい星の如く真っ白に輝く。

 隙を見計らっている最中に 光を直視しないよう2人に注意を促す。

 トビアスは既に遭難者を抱え 逃げる準備は整っているようだ。

 ミノタウロスが大斧を横に振り切ったのを見たアルトゥロは 刀身を文字通り怪物の目と鼻の先に置いた。

 

「光あれ!」

 

 叫んだと同時に剣が刹那強く輝く。

 強い光によって視力が奪われたミノタウロスは 暴れるようにして斧をメチャクチャに振り回す。

 仲間に飛び火が行かないよう 背中に回り込んで剣で軽く突き 逃げ道と反対の方向へと向かせた。

 

「さあ今の内に」

 

 掛け声と共に走り出した2人。

 何とか無事に横を駆け抜ける事に成功した。

 後はミノタウロスが追ってこない程度に行動を制限させるのみ。

 しかし 炎で焼き切るのは難しいとわかり 他の自然魔法でも外傷を与えるのは厳しいだろうと考える。

 剣自体も ジャガイモすら切れるか怪しいレベルのなまくらであり 化物の厚い皮膚に傷一つ付けられないのは火を見るより明らかだ。

 

「だったら やる事は1つ」

 

 ミノタウロスの目がまだ見えない内に 切先を地面に当てて詠唱する。

 相変わらずミノタウロスは斧を振り回し続けており 体力に底は無いのかと思わせる程に疲れが出る様子を見せない。

 呪文を唱え続けると 地面の岩に大きな円形のヒビが入り それと同時に敵を視認できる程度に回復したミノタウロスが 頭を前に突き出して突進してきた。

 それを見切って重力魔法で上へ飛んだかと思うと ヒビから半球体の岩が転覆するかのようにひっくり返る。

 ヒビの円の上に入ってしまった怪物は当然 岩があった穴に落ちてしまう。

 そして流れるようにして ひっくり返した岩で蓋をする。

 ミノタウロスの怪力は未知数だが これで逃げる程度の時間稼ぎは可能だろう。

 

「じゃ また会おう」

 

 岩の下の怪物に別れを告げ カンテラのぼんやりとした光を目印に走り出した。

 

 

───

 

 

 捜索依頼を完遂してから数日後。

 奇跡的に助かった遭難者は 活動が再開出来るまで療養中だと耳にした。

 生き残りの者と洞窟の下見に行かなかった者を合わせて 僅か3人となってしまっていたギルドが アルトゥロ達のギルド ウェルドに移籍したいと申し出た。

 しかし 誰一人として魔法が使えないらしく 丁重に断っておいた。

 

「せっかくなんだし 魔法覚えさせりゃ良いんじゃないか?」

 

「そうは言っても 魔法が使える事がこのギルドの加入条件なんだし」

 

 ギルドハウスでまったりくつろいでいるアルトゥロとドロテア。

 ビトは教会で一組の夫婦の式を執り仕切っており トビアスは手に入れたオニキスを丹念に研磨し アクセサリーを作っている最中だ。

 ギルドマスターのイヴェットは マスター仕様の自室で明け方から眠っている。

 

「そういえばアイツはまだ戻ってないのか」

 

「みたいだね」

 

「うーん……。

 潜入ついでに壊滅させてくれれば 楽なんだけどなぁ」

 

「いくら何でも単騎で複数人相手にするのはキツイでしょ」

 

「いやでも 相手が小規模ならやりかねん」

 

「……否定できない」

 

 そうこう話していると 寝室からイヴェットがのっそりと出てきた。

 二人の話し声で起きたようだ。

 

「おはよう お二人さん」

 

「やあ」

 

「オハヨ」

 

「あなた達が見つけた地下迷宮についてなんだけど」

 

「うん」

 

「詳しい調査の為に 私達が駆り出される事になったわ

 昨夜の会合でそう決まったわ」

 

「エっ?」

 

「決行は1ヶ月後を予定してるみたい。

 詳細はまた今度分かったら教えるから」

 

「えぇ…… まさかまた会うハメになるのか……」

 

 アルトゥロは 怪物に『また会おう』と冗談で放った事を少し後悔した。





[イヴェット・バーレイ]

職業:ギルドマスター
種族:ヴァンパイア
性別:女
魔法:時空魔法,神聖魔法,心体魔法
触媒:指輪
趣味:各地のワイン収集
好きな物:美しい物,普通じゃない人
嫌いな物:太陽,強者気取りの弱者
好きな食べ物:蒸留酒,ヘビ酒
嫌いな食べ物:にんにく,匂いのきついもの

 魔法ギルド ウェルドを仕切るマスター。

 吸血鬼ではあるが ヴァンパイアの弱点は個人差があるが故 効くものと効かないものの差が激しい。
 銀 聖水は長時間触れなければ平気だが にんにくと日光は大の苦手である。
 特に日光を浴びると 灰にはならないものの皮膚が焼けて日常生活に支障が出るので 日中の外には出たがらない。

 細身の身体からは想像もつかない程の怪力であり 相手を掴みあげて心体魔法でダウンさせるのが主な戦法。
 頼りになるが 日光のせいで活躍の場は少ない。

 吸血鬼なので血を飲むといえば飲むのだが 何も人間の血である必要はなく また普通の食事でも生きていく分には問題ない。
 イヴェットの好みは蛇の血らしく 過去に一度だけ味わったバジリスクの血の味が忘れられないとか。

 触媒として身につけている指輪は 鳩の血のような赤味を帯びたルビーを使用している。
 この紅こそが彼女の気品をより際立たせている。


[トビアス・ハンフリー]

職業:家具職人
種族:サイクロプス
性別:男
魔法:心体魔法,具現魔法
触媒:やすらぎの樹の枝
趣味:物作り,研究開発
好きな物:人々の笑顔,支柱
嫌いな物:詐欺,おばけ
好きな食べ物:ハーブ類,自家製ミックスハーブティー
嫌いな食べ物:キノコ,毒がありそうなもの

 心優しいサイクロプス。

 語尾に『~っス!』と付けるのが特徴で 常に元気も良い。
 人と接する時は笑顔を忘れないのが彼のポリシーらしい。

 触媒であるやすらぎの樹の枝は 回復力が大幅に上昇し 鎮静作用効果も簡単に付与できるサポート向きの触媒である。
 戦闘は敵を心体魔法で精神的に無気力にさせたり 傷付けない程度に押さえ付けるなどがメイン。

 家具職人ではあるが 家具に限らず色々な物を作れる。
 アクセサリーを始め 調理道具や金具部分等の金物 馬車の車輪や船舶の船首 衣類にバッグ 果てには小屋も建てられる。
 幸せと笑顔の為に喜んで引き受けていった結果 多種多様なスキルが身に付いていった次第である。

 ギルドハウスの隣にある工房を持っており よく分からない様々な試作品が転がっている。
 また現在も愛用している鉄の面には カーネリアンが埋め込まれている。


[土の鴉山賊団]

 賊にしては珍しく組織形態を採用しており 無法者の癖に規律に厳しい集まりとなっている。
 構成員の数は百とも二百ともいわれており 襲撃・略奪を主とする鳶の刃奇襲部隊をはじめ 見張り・偵察を任される鷹の目偵察隊 厄介な有力者や裏切り者を始末する梟の針暗殺組といった組み分けとなっている。

 土の鴉山賊団が恐れられている理由は 規模でも力でもなく防衛力にある。
 自然を最大限に活かしたゲリラ戦法により 幾度となく攻めてきた大型ギルドをアジトに踏み入れさせる事なく追い返してきた。
 次第に大打撃を与える事が不可能だと囁かれるようになり 災害や仲間割れで解体されるのを待つしかなくなった。
 彼らの根城は自然溢れる山中にあり 豊かな土壌と中規模ながら存在感溢れる滝と川も相まって 実質その山中だけで暮らしていく事が可能である。

 と かなりの強敵であるようだが 守りが堅いだけであって攻めはそうでもない。
 やはりならず者の寄せ集めのため 外では自由に暴れる者も珍しくなく それが原因でしばしば撤退することも。
 一応 無駄な殺生は避けるというのが土の鴉山賊団の掟の一つなのだが 感情任せに殺めてしまったり1人ぐらいならバレないと遊び半分で殺してしまう者もいる。
 ちなみに無駄な殺生を避けるのは聖人気取りな訳ではなく 略奪の対象を減らせば取り分も減るという訳である。


[ハビエルの衆]

 賊というよりカルト教団に近い存在。

 創設者ハビエル・アーヴィングによって作られた団体であり 簡単に言うならハビエルに認められた者以外はゴミ屑同然であるというもの。
 ハビエルに認められれば悠久の楽園に行けるらしく 認められるに及ばずとも努力すれば 楽園に行ける資格を得られるとか。
 その為 認められようと略奪や殺害 生贄を差し出したり 果ては禁術に手を出すなど目に余る行為に走る者が後を絶えない。
 目的のためならば手段を選ばず 彼らに人道を説くなど馬の耳に念仏である。

 尚 ハビエル・アーヴィングは既に死去しているが 信者は皆 悠久の楽園に住んでおられると信じて疑わず 布教活動も信者が自主的に行っている。
 ハビエルが現世に存在しないにも関わらず認められようと必死になるのは 盲信しているが故なのか。


[エルフについて]

 一応 エルフの里のような場所は存在する。

 昔 社会に進出する若者を止めようと躍起になり 同族は郷内に留まらせ 他種族には排他的な態度で接していた。
 しかしそれは急進派の反感を買う結果となり 結局のところ社会進出の阻止は失敗に終わった。
 今では来る者拒まず去る者追わずのスタンスに落ち着いている。

 他の世界ではドワーフと仲が悪い事が多いらしいが この世界では別段仲が良い訳でもなければ悪い訳でもない。


[サイクロプスについて]

 元々個体数が少なく 更に人間社会に馴染んでいる者となると かなり珍しい部類に入る。
 単眼であるのもそうだが 巨体であることもあってか避けられる傾向にあり 知能が低いという偏見も少なからず持たれていたり 近付く者は物好きとまで言われる程である。
 生息地は森の奥深くとも荒地のど真ん中とも言われているが 情報は定かではない。

 トビアスはサイクロプスの中でも小さい方らしく 現在確認されているものでは8m近くもある個体が存在する。
 ちなみにその8mのサイクロプスは とある漁村で漁師をしているとか。


[ヴァンパイアについて]

 不老不死と言われてはいるものの 一応生命ある存在なので老いはするし絶命もする。
 ただ やたらと長寿であるため 不老不死だと言われている。

 ヴァンパイアが敵対した場合 厄介なのが弱点の個人差である。
 日光とにんにくは軒並み弱いが 十字架は力のある吸血鬼に対しては効かない事が多く 聖水は忌避する者から愛用する者まで様々 銀は大抵は有効だが逆に銀製品を使う者もいたりする。

 ちなみに ヴァンパイアは鏡に映らない為 名のある画家に肖像画をよく描かせる。
 イヴェットも例に漏れず ギルドハウスのホールに自慢の自画が此れ見よがしに飾られている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。