[魔力結晶について]
魔晶,魔水晶とも
生物が死亡した際に流れ出た魔力によって生成される結晶体。
人工的に作成する事も可能であり 大きさは顆粒状のものから人間の頭ほどのものまで様々。
含まれている魔力の量は大きさだけでなく色も関係しており 黄─緑─青の順で濃度が高くなる。
また 極稀に赤色を含む希少価値が高い魔力結晶が生成されることがある。
赤色が強いほど価値も跳ね上がり 低い順から天霊晶,星命晶,月魂晶,陽念晶と等級が高くなる。
これらの魔力結晶は膨大な魔力を含んでいるだけでなく 万物に魔力を馴染ませる効果があり 例え石でも水でも魔法の触媒として使用する事が可能になる代物である。
[通貨について]
基本は銀貨が使用されている。
銀1はだいたい100円。
また 銀の1000倍分である金貨もあるが こちらは通貨というより貯金の為のものであり 金貨そのもので物品の購入は出来ず 銀行で換金する必要がある。
銀貨の形状は小さな粒を平たく押し潰したような形であり 表には髭を生やした男性の横顔が 裏には旗に巻き付く蛇が掘られている。
男性の顔は かつての建国時代の偉人であり 蛇は羽ばたけずとも風を受ける事は出来るということを表している。
夕陽が木々を真っ赤に照らしあげる。
日が傾き もうすぐ夜が訪れる。
そんな中 一台の馬車がゆっくりと歩を進めている。
「結局日が暮れたかぁ」
馬車の幌から夕焼けを覗いたアルトゥロはそっと呟き バッグから乾パンを取り出して口に放り込む。
相変わらず仕組みの分からない兜の上からである。
馬車の中は アルトゥロ,ドロテア,トビアス,黒い棺,大量の荷物とやたら狭苦しい。
特に
馬車が遅いのは重量の所為でもあるのだが 一番は棺の中身の為である。
人一人がすっぽり入れそうな棺桶の中には 魔法ギルド ウェルドの主である吸血鬼 イヴェットが眠っている。
特に移動に関しては言及しなかった彼女だが トビアスが気を利かせてなるべく眠りの妨げにならないようにと 馬車の御者に言い伝えていたのだ。
吸血鬼と関わる日が来るとは思っていなかった御者は驚いたものの 二つ返事で了承してくれた。
「……暇だな」
「……ヒマだね」
「では オレが面白い話をするっス!」
暇を持て余している二人を楽しませようと トビアスが率先して話し始める。
話術があるかは別として 無意識の内に気配りをするあたり もはや癖というより性質とでも言うべきか。
「この前 机の発注を依頼されたんスけど その時の注文が少しおかしかったっス!」
「と言うと?」
「指定されたサイズが 奥行き
「えぇ 何それー」
「さすがのオレも変だと思ったんスけど とりあえず指定された通りに作り上げたんス!
予想通り 横に長ーい机が出来上がったっス!」
「で 依頼主の反応は?」
「特に無かったっス!」
「え?」
「本当にこれでいいのかと思って 何に使うのか訊いてみたっス!」
「うん」
答えを聞こうとした所で一つの異音が場を切り裂く。
それと同時に馬が嘶き 馬車が停止する。
「なんだなんだ?」
「……矢が飛んできたね」
その言葉にハッとしたように 馬車の幌に穴が空いているのが確認出来た。
十中八九 襲われたとみていいだろう。
そしてこういう事をするのは殆どが賊である。
「うん 面倒な事になった」
「日暮れはアイツらにとって狩りの時間だしね……」
「どうするっスか!?」
「どうするも何も 追い返す他はないし」
馬車から降りようとした時 棺桶からくぐもった声が響く。
イヴェットが起きたのだろうか 少々眠たげな声である。
「随分静かね。
もう着いたのかしら?」
「イヤ 山賊達が襲ってきたの」
「そう。
日は沈んでいるの?」
「えー うん まだ半分ぐらいかな」
「成程ね。
じゃあ 何とかして私を前線に立たせなさい」
「んな軽く言われても」
どちらにせよ今の状況を打破しなければならず 各々触媒を手にして馬車を降りる。
右を見ても左を見ても武器を構えた山賊ばかりで 強行突破をしようものなら一斉に襲いかかってくることだろう。
アルトゥロは剣を鞘に納めたまま小声で呪文を唱え ドロテアとトビアスが両腕を上げながら馬のいる前方に歩みつつ 御者の状態を伺う。
御者は縮こまってカタカタと震えてはいるが 目立った外傷は無い。
一先ずは安心するものの コボルト族の山賊が弓なりに曲がった剣を突きつけながらこちらへと近づいてきた。
「命が惜しけりゃ 荷物は全部捨てていきな。
剣のサビにはなりたくねぇだろう?」
賊の界隈で常套句にでもなっているかのような脅し文句は無視し 山賊の身なりを確認する。
くたびれた服装に皆バラバラの武器を持ち また長と思われるコボルトは熊の毛皮で仕立てたコートを羽織っている。
特にトレードマークと思しき物が見当たらず はぐれ者が集まった程度の名も無い賊の集団だと考える。
「おい 聞いてんのか?
何も答えねぇってんなら そのまま頂いちまうぞ?」
「アンタ コボルトだね?
ザンネンだけどアンタには勝ち目は無いね」
「何だとぉ?」
「ウチには銀をニガテとするヴァンパイアがいるからね。
銀をコバルトに変えちゃうような輩には勝てないよ」
「ヴァンパイアだとぉ!?
それで勝てると思ってんのかぁ!?」
「だったら試してみる?」
そう言い放ち 馬車の方へと振り返ると同時にアルトゥロがゆっくりと浮かび上がる。
天に召されるかのようにふんわりと飛ぶ鎧を見た賊は 慌てて撃ち落とそうと矢を放つ。
しかし見た目の割に素早く 的確に避けられ 山賊達は躍起になりながら攻撃の手を休めずに射続ける。
器用にかわしながら詠唱を終えたアルトゥロは 賊に見せつけるようにゆっくりと剣を引き抜いた。
「ちょっと早い夜を楽しもうか」
その刀身は輝くどころか闇のように暗くなっており まるで深淵の入口を思わせる程に色が見えない。
不気味な剣を目にした賊は 思わず攻撃の手を止め 暗闇の刃を凝視してしまう。
アルトゥロが夕日に向かって剣を掲げると 剣から黒いカーテンが流れ出るように形成され 瞬く間に日光を遮る壁となった。
色を吸収する暗黒に 山賊は恐怖を感じて距離をとるように遠ざかる。
「マスター 出番ですぞー」
その時を待っていたかのように棺の蓋が開かれ 黒い衣装に身を包んだ女性 イヴェットが姿を現す。
大地を踏みしめ 艶のある髪をたなびかせ 姿勢を崩すこと無く優雅に歩く姿は思わず溜息が出てしまう。
賊達が見とれている中 コボルトの山賊はイヴェットを睨みつけ 物怖じせずに問い掛ける。
「オメェがヴァンパイアかぁ?」
「ええ いかにも」
「そうか……」
ニヤリと笑ったかと思えば 刹那曲剣を振るう山賊。
卑怯などとはならず者にとっては罵倒ですらない。
そんな汚い不意打ちで首を刎ねようとするも。
「あら 礼儀がなってないわね」
「……なっ!?」
親指と人差し指 たった二本の指で受け止められてしまった。
まさか攻撃を防がれるとは思っていなかったコボルトは力任せに剣を抜こうとするが ガッシリと握られているかのように指から離れる気配がない。
「ホーラ だから勝ち目が無いって言ったのに」
ドロテアに横から煽られ 怒りを顕にした賊が剣を捨てて殴りかかる。
しかし インファイトなら彼女の方が圧倒的に上。
顔目掛けて放たれた拳を最低限の動きでかわし ガラ空きになった右の脇腹に腰の入った一撃を叩き込んだ。
綺麗にカウンターを受けたコボルト山賊はあまりの痛みに蹲ってしまう。
「あなた 動きがまるで初心者ね。
私どころかビトにも勝てないんじゃないかしら?」
「イヤ 流石にあの司祭一人には勝てる……かもアヤシイかなぁ」
「でしょう?」
リーダーであるコボルトを倒し 余裕を見せる二人を前に 残りの賊は戦意が消え失せていた。
それに 巨体のトビアスに加えて空に浮かんで暗い何かを放出するアルトゥロもいる事を考えると これ以上相手にしたくないのは当然かもしれない。
一人が逃げ出すのを機に一人 また一人とその場から離れ 最終的に残ったのは未だ痛みが引かずに這う事も出来ないコボルトの山賊のみ。
「み……見逃してくれ……」
さっきまでの威勢はどこへ行ったのか 弱々しくポツリと呟くように懇願し カチカチと歯を鳴らして震えている。
「なら さっさとそこを退きなさい。
通行の邪魔になるでしょう」
「そうそう 逃げるついでに一矢報いようとしたら……。
タダじゃおかないかもよ?」
御者と馬の面倒を見ているトビアスの方を流し目で見て 思わせぶりな態度を見せるドロテア。
心優しい彼が相手を傷つけるような事はしないが そんな事を微塵も知らない山賊からすれば嫌な想像が嫌でも脳内を駆け巡る。
これ以上の恐怖に耐え切れなくなったコボルトは 涙目になりながら必死に這って木々の奥へ逃げていった。
「今回のはあまり強くなかったね」
「人間なんて大体は脆いものよ。
本当に強い者は弱者をいたぶるんじゃなく 守るのだから」
「じゃあ アタシ達はさっきいたぶったから強くない方?」
「どうかしら?」
真の強者とは何か。
その議論には必ず弱者が関わってくる。
弱者なくして強者は存在しない。
表と裏 光と影のように 欠ける事は許されない。
「うん 何でもいいからはやく乗ってくれぇぇ。
日を遮るのも楽じゃないぃぃ」
「あら ごめんなさいね」
───
件の地下迷宮がある洞窟 そこから一番近い拠点のベルホワーシュ村に着いた時には日は完全に沈み 月明かりが森の輪郭を映し出していた。
本来ならば暗い外を出歩く時間ではないが 今回は訳が違う。
夜に活動するイヴェットに合わせ 馬車から降りた足でこのまま洞窟へと向かう事になる。
アルトゥロとトビアスは明かりの準備をし ドロテアはタロットカードを使用して占う。
宙を舞うカードが月光の下に照らし出される姿はさながら幻想であるが その夢幻の光景を突如着火した松明によって台無しに。
「──瓶の底に水あらば空にあらず
無き力を捨てるは力を失う……」
「……うん 無いもの捨てたって何もないような気が」
「今回ばかりはアテが外れたかなー」
「全くの無関係って訳でもなさそうだがな」
三人分のカンテラを用意し それぞれ丁寧に手渡すトビアス。
準備は整い さあ出発だと歩き出したところでイヴェットがストップを掛けた。
「どうしたっスか!?」
「まだ二人来てないのよ」
「え?」
「アタシ達以外にもダレか来るの?」
辺りをキョロキョロと見回すと そう遠くない位置に一つの光源があるのが確認出来る。
その場所に向かうと レザーアーマーと外套を着用している二人の若い男性と鉢合わせた。
持ち手を付けただけの蝋燭を手にしているゴブリンの男性は 金属製の帽子のような形をしたケトルハットを被っており
もう片方のヒトは
二人はこちらの顔を認識すると 頭を下げながら挨拶をする。
「どうも皆さん 覚えているでしょうか?」
「……んーっと」
「覚えているっスよ!
洞窟で遭難した人っスよね!」
「あー 見覚えあるなーと思ったら」
「俺はあの時本当に怖くて 死を覚悟してはいたものの できれば死にたくなくて……。
それがこうして生きていられるのも皆さんのおかげです」
「……仲間 助けてくれて 感謝 している」
「命あっての物種よ。
あなた達が無事ならそれでいいじゃない」
(報酬が少ないとか何とかで遭難者はそっちのけだった気が)
「っと 申し遅れました。
俺はエリアス・バクスターといいます」
「……オーガスト・ニューランズ」
互いに簡単な自己紹介を済ませ 一時的に六人グループとして行動する事となった。
「それより アタシはこの二人が来るなんて知らなかったんだけど」
「訊かなかったでしょう?」
「……そりゃあ そうだけどぉ」
彼らの遭難事件からのその後は道中に聞く事にして 地下迷宮へと続く洞窟に向かう六人。
一度行った事があるとはいえ 暗い夜道となると景色がガラリと変わる。
ひんやりとした空気が肌を撫で 目の前の見通せぬ恐怖も少なからずあってか寒気が全身を覆う。
少しでも震えを誤魔化そうと 未開拓の坑道の入口までは話題を絶やさないように努力していた。
「──という事で俺達の所属していたギルドは実質解体に。
俺とオーガストは別のギルドが見つかるまでは放浪者同然の生活を送っています」
「……残った メンバー ホロウェイは すぐに 故郷に 帰った」
「それで アテはあるの?」
「今はまだ検討段階とだけ。
死にかけた思いをしたので もしかしたら冒険者は辞めて兵に志願するかもしれないし……」
「……俺は 戦う。
……戦う 事しか 生きる 方法を 知らない」
「冒険者続けるなら シュマルド南東にあるグナロウラ峡谷に行ってみるといいぞ。
最近発見された集落の調査をやってるらしい」
「調査はもうこりごりです……」
「私のギルド ウェルドは魔法が扱えるなら誰でも歓迎よ」
「……そうは言っても俺達 魔法は一つも使えないですし。
あと気になってたんですけど 皆さんは魔法使えるんですか?」
「うん 勿論」
「トーゼン 使えるよ」
「オレもっス!」
「……魔法 難しい。
……文字 たくさん 読めない」
「うん 魔法を覚えたいなら ヘルネラントのザローネ魔法学校だな。
凄腕の魔術師を輩出してるし 実績もあるからな」
「イヤイヤ オーヴィネポリのエミリーナ大学でしょ。
世界最大の学校だし 環境はどこよりもいいんだし」
「あの 参考までに魔法を覚えるコツとかあれぱ 教えてほしいんですが……」
「うん そうだなー。
わっちの場合はなんか使えた感じだからなー」
「んー アタシもそんな感じかも。
まあ あまり深く考えないってのがコツかな」
「相手を思いやる気持ち これに尽きるっス!」
「それはあなただけでしょう。
私はそうねぇ…… 鞭を振るう感覚 かしら」
「……魔法 覚えるの 長く なりそう」
「ところでアルトゥロさん でしたっけ?
凄い鎧ですけど 特注品ですか?」
「うん まあ 特注といえば特注かな。
マントなんて無理やり着けたようなものだし」
「……やはりそれぐらいとなると 当然高いですよね?」
「うん 確かフルで銀10万だったかな」
「じゅっ……!?」
「ウソっ!? そんなにするの?」
「い いったいどこにそんなお金があったんスか!?」
「……聞きたいか?」
「……イヤ なんかヤな予感がするから止めとく」
「確かに聞くのはちょっと怖いっス……!」
「……エルフ きれい 美しい」
「へっ…… アタシ?」
「あらあら 大胆ね」
「イヤイヤ マスターの方が美人でしょ!」
「謙遜することはないっス!
お二人は美しいっスよ!」
「……おれ エルフに 憧れてる
……エルフ 美しい カッコいい」
「そんなにイイものかなぁ……?」
「持たざる者は 持つ者を羨ましく思うのよ。
対象に関わらず ね」
「うん
談話しながら北上し 川沿いに歩み進むこと数十分 暗い岩壁にぽっかりと空いた穴が見えてきた。
洞窟の入口は 今度こそ喰らってやるとでも言いたげな雰囲気が感じられ さながら無機物の食道といったところか。
「……うっ」
「うん 不安か?」
「……はい。
あの時の光景がチラついて……」
あの時── 異形の怪物に襲われた 忘れる事の出来ない事件。
脳裏に幾度となく浮かび上がり エリアスは思わず弱気になる。
しかし無理もない。
考え方によっては力と心の弱さが不運を招き 未熟な自分自身に降り掛かったのだから。
「ダイジョーブ アタシ達がついてるからっ」
「仲間の強さはオレが保証するっス!」
「えぇ 伊達にマスターやっていないところ 嫌でも見せてあげるわ」
「……心も 体も 強い
……おれは 信じる」
「……はい 足を引っ張る事になるかもしれませんが 改めてよろしくお願いします!」
───
洞窟の中では万が一に備え 魔物に遭遇しても対処できるよう二列で進んでいく。
先頭は主力のアルトゥロとドロテア 後ろはトビアスとイヴェットが背後を警戒し 四人に挟まれる形でエリアスとオーガストが並ぶ。
「……あー うん またあの湖横切るのかぁ」
「行きも帰りも背負って飛んだからね」
「でも今回は丈夫な縄梯子を用意してるっス!」
「湖を横切る?
そんな道があるんですか?」
「うん?」
「えっ?」
「……もしかして アタシ達が通った道とは別の方なのかな」
「少なくとも湖を横断するような道は通った覚えはないです」
道の推測は一旦置いておき まずは一本道をひたすら進んでいく。
途中の急勾配に気を付けながら降りて行き 何者にも出くわすこと無く道の広くなる場所へ辿り着いた。
おそらくここが分岐点であるとドロテアは考える。
「アタシ達はここの右の壁沿いに進んで行ったんだけど アンタの方は左に進んだの?」
「はい そうですね。
壁を左側にして進んだ記憶があります」
エリアスの言葉に倣って 岩壁を左に沿って歩んでいく一行。
こちらの道は右側に比べると水が張っていない分歩きやすいが 地底湖へ流れ落ちる水の音が近く 声が聞き取りづらい。
しかしそれも我慢して進んでいけば段々と遠ざかり 見覚えのある淡い光が視認出来るようになった。
儚く輝く光を目指し 周りを警戒しながら歩くと 揺らめく炎に照らされる迷宮の入口が見えてくる。
ここで一旦止まり ミノタウロスが居ないか確認する一行。
アルトゥロは逃げ帰る時に怪物を閉じ込めた場所を見つけた。
巨大な岩が砕かれ 穴の中に何も無い事から 自力で脱出したか仲間がいる事が伺える。
「……うん まあ どちらにせよ こんなデカイ岩を砕く程の力があることは間違いないな」
ザッと見回したところ 怪しい影は見当たらない。
しかし 安全が確認された訳ではない。
念のため ドロテアがカードを使用して未来を占う。
「──先手は勝利を導かない。
戦車を迎えば 月は落ちず……」
「戦車…… 摂理は無いとして 援軍か復讐だな。
で 月が隠れた敵か失敗か……」
「どっちにしろ ツッコんでいったらヤバイって事かな。
何かあったら向こうから来るのを待つって感じ」
互いに少し距離を取りつつ 各々武器を構える。
場数を踏んだウェルドの四人とオーガストは特に問題ないが エリアスだけがカタカタと小刻みに震えている。
心強い仲間がいるとはいえ こびり付いた恐怖を払拭するのは難しい。
それに気付いたドロテアが バッグの中からレモン色の小さい木の実を取り出し エリアスに渡す。
「ハイ これ食べてみて」
「は はい……」
震える手で木の実を受け取り 口へ運んで咀嚼する。
その瞬間 強烈な酸味が口内を刺激し 思わずむせ返りそうになるが エリアスは何とか堪える。
「す 酸っぱい……!」
「アハハっ! スゴイ顔してるよー」
「いきなりどうした」
口を窄める姿を見て笑うドロテア。
いきなりの奇行に思わずアルトゥロがツッコミを入れる。
ある程度笑い 収まったところでドロテアがおもむろに質問した。
「で 良かったらココに来たかった理由 教えてくれる?
コワい思いしてまで 何で来たのかを さ」
「………」
エリアスは暫くの間黙っていたが 意を決したのか ポツリポツリと話し始める。
後ろめたい事でもあるかのように 俯きながら小声で喋る。
「……死んだ仲間の為……です。
こんな場所で忘れ去られるのは辛いでしょうから せめて骨の一欠片だけでもと……」
「……それは罪滅ぼしのつもりで?」
「……そう かもしれません。
仲間を置いて逃げたという事実から逃げ出したいだけかもしれません……」
「んー……。じゃあさ もしアンタが逃げ遅れて 仲間が助かったとしたらどう思う?」
「……どうでしょうか。
少なくとも 生き残った仲間に命を捨てるような真似はして欲しくないです」
「なら やることは決まってるじゃん」
「……え?」
「アンタは死んでいった仲間の分まで生きる。
それがアンタに出来る罪滅ぼしだね」
「………」
「骨を拾って満足しちゃったら 本当に忘れてしまうよ。
恨んでるだとかは置いといて 忘れるような真似したらそれこそ恨まれるよ」
「……そう ですね。
死にに行くような事をした俺が軽率でした」
「ンッ わかればよろしい
じゃあ アンタを送り迎えるためにも ササッと仕事をこなしますかっと」
気を取り直して遺跡の入口を見ると 丁度奥から人間のような牛のような低い声が聞こえるのがわかる。
闇の中にうっすらと映し出される影 猛進してくるそれは 忘れる事の出来ないあの姿。
焦茶色の野牛の頭に筋骨隆々の人の身体。
長柄の斧を持ち 目は真っ赤に輝かせ殺意を剥き出しにしている。
「うん 来たな」
「ふぅん あれがミノタウロス……。
思っていた以上に下品ね」
「……立ち回り どうすれば いい?」
「あいつは堅い皮膚を持ってるからなぁ。
チクチク削るか ドーンと決めるか」
そうこう話している内に牛頭の怪物が入口から飛び出し アルトゥロ目掛けて斧を振り下ろす。
動作が大振りではあるが余裕を持って回避し キルゾーンから離れつつ剣を握りしめて詠唱する。
ドロテアはミノタウロスが斧を地に叩きつけたのと同時に懐へ入り込み 具現魔法で成形した爪でねじ込むように腹に拳を入れる。
しかし 予想以上に厚い皮は爪の侵入を許さず 傷一つ付けることすら叶わない。
爪が有効でないと感じたドロテアは 即座にミノタウロスから距離を取る。
「チックショー 堅すぎじゃない?」
トビアスは負傷者が出た時に備え 前線に立っている者の邪魔にならない位置に待機している。
イヴェットは指輪を輝かせ 呪文を唱えている。
オーガストは盾を構えながら脚の腱を斬ろうと槍で突く。
だが ここも皮膚が堅く 刃が通らない。
エリアスは弓を構え 弦を引き絞ろうとするも 緊張のせいでうまく力が入らない。
牛頭の魔物の連撃が繰り出される。
力任せに斧を振り回し 容易に近づけなくしつつ前進する。
アルトゥロは詠唱を続けながら攻撃をかわし 反撃のチャンスと決定打となる部位を探る。
(うん どうしよか)
ミノタウロスをじっくり観察していると 不意に巨大化したかと錯覚する勢いで急突進を繰り出してきた。
攻撃をモロに直撃したアルトゥロは吹っ飛ばされ 詠唱が中断されてしまった。
鎧は守ってくれるどころか枷となり 重みのせいですぐに立ち上がる事が出来ない。
それを好機とみた化物は 斧を高々と振り上げて 聞くに堪えない低い咆哮を発しながら勢いよく振り下ろす。
「待てまてマテ これは危ない!」
浮かぶまではいかなかったものの 重力魔法を駆使して咄嗟に右方向に転がるように身を翻す。
刹那 岩を砕く音がすぐ隣で鳴り響く。
少しでも遅れていたら鎧ごと真っ二つになっていただろう。
呪文を唱え終えたイヴェットが指輪をミノタウロスに触れさせる。
その直後 牛頭の怪物は動きを止めるものの 数秒も経たずして動き出し 声を荒らげて怒りを露わにする。
多少の時間稼ぎにはなったが この程度では心許ない。
「あらあら 魔力は思っているよりも多いのね。
これは楽しめそうかしら」
「そんな余裕は無いっスよ!
アルトゥロさんが殺されかけてるっス!」
突き飛ばされたアルトゥロが何とか態勢を整えているところに ドロテアがミノタウロスの右の膝裏に鋭い一撃を放つ。
思わぬ攻撃に相手は膝を付き 態勢が崩される。
しかし 大したダメージは与えられていないのか すぐさま立ち上がり 鼻息を荒くしながらドロテアに対して斧を振り回した。
「うわっとと!これはヤバイ!」
時空魔法を使用して当たらないよう立ち回るドロテア。
だが それも長くは続かないだろう。
戦いの喧騒は未だ鳴り止まない。
皆が奮闘している中 エリアスはまだ震えている。
(……怖い。
だけど ここでやらなきゃ やられる……)
己の内に潜む弱き自分と戦う。
しかし 仲間の死が邪魔をし 拮抗状態に陥っている。
(……逃げ出したい。
でも 逃げたらきっと…… いや 絶対に後悔する)
震える手で矢を握りしめ 先ほど食べた木の実の種を奥歯で挟む。
そして 自身の横腹目掛けて革の鎧の隙間に矢を突き刺した。
当然の如く鋭い痛みが駆け抜け 苦悶の表情を浮かべる。
「……俺ならやれる」
痛みで恐怖を無理やり打ち消し 自分に言い聞かせるように呟いて ミノタウロスを見据えて弓を構える。
しゃがむ様にして態勢を低くし 悔いのないよう力一杯弦を引き絞り 血のように赤い眼に狙いを定める。
動きの激しい敵に当てるのは至難の業だが 行動をよく見れば予測出来ないことはない。
(狙うのは……斧を叩き付ける瞬間!)
射られるのを待っていたかのように ミノタウロスが大斧を振りかぶる。
エリアスはその行動を見逃さず 振り下ろされると同時に目があるであろう位置に矢を飛ばした。
一直線に飛んでいく矢は まるで吸い込まれるかのように牛頭の左目に命中した。
深々と突き刺さる矢が効いたのか 悲鳴の如く苦しげに声を上げ 体力の底を感じさせない程に動き回っていたのが嘘のように動きが鈍くなった。
「や やった……!」
それを機にドロテアとイヴェットが膝裏に攻撃を叩き込んでダウンさせ イヴェットの指示でトビアスが両足を押さえつける。
その隙にアルトゥロが地面に剣を軽く突き立てて呪文を唱え 直径
石の槌をミノタウロスの頭上まで持ってくると そのまま剣から切り離す。
怪物の頭は岩石によっていとも容易く潰され 地が血で赤く染まり 魔物の血の不快な臭いが鼻を突く。
「やったか?」
アルトゥロが吐き捨てるように呟き 皆が固唾を呑んで状況を見守る中 頭を失った化物が動く気配は無い。
彼らは見事 地下に潜む怪物を犠牲を出さずに勝利した。
「フゥー 意外となんとかなるものだねー」
「皆さん お疲れ様っス!」
「ヒューッ…… 持ち上げるのはやっぱり疲れる……」
フラフラと風に飛ばされた紙のように落ちるアルトゥロ。
肩に提げているバッグから 鶏卵程の大きさの深緑色の魔力結晶を取り出し そのまま口の中へ放り込み 消費した魔力を回復する。
「……やっぱり皆さんは強いですね。
俺は矢を一発撃ち込むのが精一杯でした……」
「何言ってるのさ。
アンタの一撃のおかげで畳み掛ける事が出来たんだよ」
「……おれ 何も できなかった。
……エリアス お前は 活躍した」
エリアスの背中をバンと叩くドロテア。
その際に エリアスが一瞬苦痛の表情を浮かべる。
それを目撃したトビアスが木の枝を握りしめて話し掛けてきた。
「もしかして 怪我してるっスか!?」
「えぇ…… 自分を奮い立たせるために少し」
「傷を見せるっス!
治療してあげるっスよ!」
拒むことなく 言われるがままにレザーアーマーを脱いで横腹の刺し傷を見せる。
服が血で滲んでおり 傷から少し血が流れ出てしまっているものの 下手にいじりさえしなければ大事にならない程度である。
トビアスは枝を傷口に優しく当て 小声で詠唱し始める。
木の枝がぼんやり光ると同時に傷がみるみる塞がっていき 数秒も経たずして痕が残ることもなく完治した。
「これで大丈夫っス!」
「ありがとうございます」
礼を言い レザーアーマーを再び着用してから傷があった部分をさする。
傷なんてなかったかのように痛みも無く 今後の行動に支障は出ないだろうと安堵する。
各々 戦闘の後処理をし 本命の地下迷宮探索のために入念に準備をする。
脅威を一つ排除したが この先にまだ何があるのか 彼らは把握していない。
命を落とせばそれっきり。
慎重すぎるくらいが丁度いい。
───
「──と こんなものかな」
岩壁に鉄の杭を打ち込み そこに両足にロープを結んだミノタウロスを吊り下げて血抜きをしようとしている。
ミノタウロスなどの貴重な存在 もとい素材は無駄にする訳にはいかない。
探索を終えた頃には血抜きも終わる事を見越し 見せしめのようにぶら下げられている首のない怪物を背に 遺跡内に足を踏み入れる。
中は石造りとなっており 木材や窓が一つもない。
地下である事を前提とした構造となっており 誰も知らない文明が築かれていたのだろうと推測できる。
廊下には等間隔にどれも同じ顔がない石像が並べられており そのどれもが胸の部分に穴を空けられ そこに火が灯っている。
燃料も何も無いのに燃える不可解な火。
入口にあった燭台のものと同じものだろうということは察せるが アルトゥロの説明があっても不思議である事には変わりない。
「コレも『消えない炎』ねぇ……。
やっぱり炎の数だけその魔法を使った人がいるってこと?」
「うん そうなるな。
そうなるんだけど……」
「だけど?」
「こんな場所に『消えない炎』を扱う宗教があったんだろうか。
火山に住む邪神を迎えるためのものだっていうのに こんな山ですらないような場所にあるってのは……」
そもそもこの禁術があったのはヘルネラント領内の山間であり アルジョントメールのしかも地下深くにあるというのは考えにくい。
似たような魔法があると考えるのが自然か。
「同じような景色ばっかりで距離感が狂いそうね」
「ここは石像の炎のおかげでまだ明るいっスけど 確かに変わり映えしない光景ばかりだと迷いそうになるっス!」
「その点なら大丈夫です。
簡素ながらも地図を書き記しているので」
エリアスは厚めの紙と羽ペンを持って 石像の間隔を目印にして地図を書いている。
思えば遭難した日にもメモをとっていたりなど 記録を残す事に拘る性格なのかもしれない。
「……エリアス 意外と マメ
……どうでもいい ことも 書くから インク代も かかる」
「意外は余計だ」
心外だとでも言わんばかりの口調だが 悪い気はしていないようだ。
軽いジョークの裏では 情報の記録には手を抜かず 細かいところもしっかりと書き記している事を評価している。
途中 分岐点に悩まされながらも散策していると 広くひらけた場所に辿り着いた。
大部屋とでも言うべきだろうか その場所は四方
一行はまず 石像に近づいて観察する。
道中の像と同じように 胸に穴が空いてはいるが火が灯っていない。
また これまでの石像は人間に近い亜人型であったのに対し この像は蝙蝠の羽を生やした悪魔のような姿を象っている。
「なんだこれ?」
「こんなの見たことないね
タブン これを祀っていたんだろうけど」
不気味な石像を前に思ったことを口にし エリアスは別の紙を取り出して像のスケッチをし始める。
その間 他に何かないかと探すと 壁一面に文字が掘られているのが見える。
当然 現代の文字などではなく 目にする機会があるかないかの古代文字であり 区切られているとはいえ これが壁の端から端まで連なっているとなると翻訳に苦労するのは必至。
ここの解読は本格的な調査の時に任せるとして 他に何かないかと探索を再開する。
───
遺跡に入ってから何時間経っただろうか。
ようやく最後と思われる部屋に辿り着いた一行。
ここはそこまで広くなく また 入口と対になる方面の壁に 胸に空いた穴に炎が燃えている石像が飾ってある。
「石像ばかりね。
宝石の一つや二つはあっていいと思わない?」
「うーむ…… どれもこれも見事な造形だとは思うっス!」
「……石 そこら中に ありふれている」
辺りをぐるりと見回すと 石像を背にした状態から見た右の壁に これまた古代の文字が刻まれているのを発見する。
文章もあまり長くなく この程度なら翻訳出来るだろうと思ったアルトゥロは バッグから分厚い本を取り出す。
「翻訳するの?」
「うん まあ これぐらいなら数分でいけるんじゃないか?」
本をパラパラと捲り 該当する文字が記されているページを開き 壁の文字と本を交互に見ながら解読していく。
数分と宣言したにも関わらず 思っていた以上に時間はかかったものの 何とか文章を翻訳することは出来た。
「うん えーっと
『生命の根源 絶えること無き力 我ら炎にして炎を継ぐ者なり』だな」
「……我ら炎ってことは もともと炎だったってことになるの?」
「うん どうなんだろう」
「絶えること無き力……ねぇ。
こんなところに永久機関でもあったのかしら」
「でも それらしい物は見当たらなかったっス!」
「文明が滅びたと仮定すれば その滅ぼした者達に奪われたと考えるのが妥当かと思われます」
掘り下げて考察しようにも 情報が少なすぎる。
今回の探索で判明したことといえば この遺跡には石像と文字ぐらいしか残っていないことぐらいである。
そう 言い換えるならば石と火しかない。
「……仲間の 死体 どこにも ない
……骨 一本も 見当たらない」
全ての部屋を見て回ったにも関わらず エリアス達のかつての同胞がどこにも居ない。
ミノタウロスが骨まで喰らったか どこかに隠し部屋でもあるのか。
前者は荷物も全て無くなっていることの説明がつかないことから 後者である可能性が高い。
しかし これ以上探索しようにも 個人差はあれど疲労が溜まってきている。
「うん 調査はここまでかな。
腹も減ったし 早く帰りたい」
「遺体が見つからなかったのは残念ですが……」
「今日はここで休みましょうか。
今はもう日も昇っているでしょうし」
「こんな得体のしれない場所で?
まあ イヤだって言っても聞き入れないんだろうけど」
───
大した成果を得ること無く 一夜明けて もとい一昼暮れてから遺跡を後にした一行。
ミノタウロスを持ち帰ろうにも 大きすぎて邪魔だからと切り分けようとしたものの 手持ちの刃物では指を切り離すのが精一杯だったのは内緒である。
シュマルドの街 ミナクルトに着いた頃には朝日が昇っており イヴェットは棺桶に入らざるを得なくなった。
エリアスとオーガストは自ら手伝いを買って出て荷物を持ち アルトゥロとドロテアが棺を運び トビアスがミノタウロスの入った麻袋を担いでギルドハウスへ向かう。
周囲の目線がやや気になるものの ギルドハウスへと到着した一行。
トビアスが率先して荷物やイヴェットを中へ運び込んでいる最中に エリアスとオーガストが別れを告げる。
その際にアルトゥロが 兵になるならポースミリアの国王に会って ウェルドとイヴェットの名を出せば融通を効かせてくれるだろう と教える。
エリアスは王と関わりがある事に非常に驚くが その助言をもしもの為にと頭の片隅に留めた。
何度も礼を言いながら二人は去っていき その背中を見ながらドロテアはポツリと呟く。
「……また会えるかな」
「惚れた?」
「そんなのじゃない。
けど イイ人だよね」
「うん どっち?」
「エリアス」
「うん そっちか」
「何さ。ダメなの?」
「いや 異性としてかそうじゃないかのつもりで訊いたんだけどな。
うん やっぱり惚れてるじゃないか」
「だからそうじゃないって!」
「ぐりもわッ!」
からかったアルトゥロはドロテアに顔面目掛けて拳を叩き込まれる。
モロに喰らい大きく仰け反る形で倒れ込み ガシャンと硬い石に大きな金属を打ち付ける音が響く。
地面に仰向けになる形になるアルトゥロは 起き上がらずに空を眺める。
そしてそのまま 誰に言うわけでもないように言葉を放つ。
「うん どこにいようが生きている限りは会えるさ」
「……生きていれば ね」
命があれば 会えないなんてことは無い。
地下深くに潜んでいたエリアスがその例だ。
無数の出来事で構成される道筋 人生は不測の事態の連続でもある。
しかし 同時にそれは予測の範囲内に過ぎない。
『判らない』という事が判っているのだから。
「そんな所で寝てると風邪をひくっスよ!」
「うん 寝たくて横になってる訳じゃないから」
[いろんな職業]
─冒険者,探索者
主に未開の土地の開拓や探索をしたり 雑用もとい民衆からの依頼を受ける者の総称。
特に資格は不要であり 今その場でも冒険者を名乗れる。
しかし やはりと言うべきか活躍や名声 力量に信用がものを言うので 大体は雑用から始めることになる。
─戦士,騎士
戦士は戦闘を主とする者を一纏めにしただけであって 扱う武器や戦闘スタイルによっては呼び名が多岐に渡る。
剣士や弓術士 魔術師や狂戦士等がこれにあたる。
この世界での騎士は貴族に仕える戦士の事を指す。
国によって制度が多少は異なり 騎士国ヘルネラントでは王の下に貴族 貴族の下に騎士がいる形となっている。(いわゆる封建制に近いもの)
しかし 騎士が最も尊主するべきものは王でも主でもなく宗教であり 戒律に反すると判断した場合は例え領主の命令や国王の勅令であっても拒否できる。
盾役になれるナイトとはちょっと違うので注意。
─農民,奴隷
農民は言わずもがな農業に勤しむ者。
農耕ギルドに所属する者から個人で細々と楽しむ者まで様々。
基本的に自由農民は作物を作って一部を国に貢納 農奴も同様に作業をして貢納するが 国ではなく支配している領主に納める。
奴隷はイメージとして悲惨な扱いを受けているように思えるが 重要な労働力として人並みに扱われているのが一般的である。
奴隷は主に忠誠に従う代わりに 主は奴隷に生活の安全を提供する事を義務付けられている。
高い技術を持つ奴隷は特に高額で売られる他 丁重に扱われる傾向が高い。
奴隷 と響きは悪いものの 言い換えれば身寄りが無い労働者ということである。
─聖職者
宗教に携わる者の総称。
スタルニル教を例とし 大きく分けると修道士,助祭,司祭,司教,大司教の五つに分けられる。(
修道士は清貧,貞潔,服従の修道誓願を立てて 修道院で共同生活を送る。
助祭は主に司祭の手伝いやら雑用やら。
司祭は一つの教区を任されている人であり 修道司祭として生活を送る者も。
司教は複数の教区を纏めた司教区の代表者を指す。
司祭が小隊長とするなら司教は部隊長にあたる。
大司教は更に複数の司教区を纏めた代表者。
総隊長みたいなもの。
─商人,職人
商人は物品等を売る人。
店を構え 客を呼び込んで売ったり 各地を練り歩いて品物を仕入れつつ売りさばいたり 中には材料と引き換えに加工品を売る一風変わった店もある。
一応 物を売るにあたって守るべき掟があり もしこれを破れば相応の罰を受けることになる。
職人は加工技術を持つ者を指す。
鍛冶,木工,石細工,紡績等 多方面に渡って存在する。
個人の工房を持つ者は多くなく あったとしても作業スペースがある程度のものだったりすることも。
共同の工房なら道具も環境も整っているので そちらに腰を据えるのも悪くない。