かくして幻想へと至る 作:虎山
小さなものだ。妖精の癖に妖怪たちと仲良く、妖精の癖に友達のためなら妖怪に立ち向かう。その姿はどうしようもなく被る。私が親友と思っている人に。
身の丈に合わないものに手を伸ばしているようで、馬鹿だなと思った。それでいて羨ましいと思った。
小さなものはいつか私に勝つと言って挑戦しに来る。たまたま親友がいるときはその親友が相手をする。人間にしては強きもの、妖精にしては強きもの。二人はよく似ていた。だから二人は仲良くなれたのだろうか。
私はやっぱり違う。人間とは別次元だと言われる。そう自分も思っている。
けど、馬鹿達はそんな私を目標にしているようだ。だから暇を見つけては来るのだろう。そんな馬鹿達を私は好きだったらしい。
小さきものは私にとって大きな存在になっていた。
・・・
「・・・赤いな。」
目を覚ませば、視界に広がる赤、赤、赤。真っ赤な部屋は目覚めに悪く、いい感じはしない。おまけに窓もない。
体は多少痛みはあるが動けないほどではない。胸には布が巻かれている。包帯代わりだろうか、誰か処置をしてくれたらしい。
「・・・八卦炉と本はどこだ。そういえばリボンもない。」
もしかして水のなかに落としてしまったのだろうか。だとしたら絶望的だ。命があっただけでもいいと思えるが、憂鬱になる。
しかし、こうも赤に囲まれると落ち着かない。少し外に出たい。とりあえず部屋を出るためにドアを開ける。廊下と思われるところも赤だった。どうもここの主は赤が好きなようだ。
「目が覚めましたか。」
後ろから声がかけられる。振り向くと赤い長髪の女性がいた。ただ少し異様だった。右腕がなく、片目も潰れていて、表情からは生気が感じられない。痛々しい姿だが美しい女性だ。しかし、身長が足らず見上げる形になるのはつらい。
「・・・はい、これはあなたがしてくれたんですか?」
自分の胸を指し、聞いてみる。
「そうですね、放置すると人間は死ぬかもしれませんから。」
機械のように淡々と言っている。表情の変化が無いような感じだ。
「あの、八角型の物体と黒い厚い本を知りませんか?」
とりあえずこの二つがあれば何とかなりそうだが。
「八卦炉と魔導書、リボンの三つはありますよ。あなたを助けた人が持っています。それであなたはその人から呼ばれてました。今はどこか出掛けていますが。」
欲しければ待っていろと言うことか。しかし、ここで待つのも個人的にはきつい。
「・・・屋敷内なら動いても大丈夫ですか?」
「それくらいならどうぞ。」
どうやらうろうろするのはいいようだ。じっとしているよりかは動いておきたい。
・・・
紅魔館、湖の近くにたつ吸血鬼の館だったような話を聞いた気がするが、それがこの館なのだろうか。
魔理婆さんの話では小さい吸血鬼姉妹と魔女が住んでいるらしいが、人の気配がない。館自体もところどころボロボロで場所によっては廃屋のようにも思える。
(しかし、不気味だ。こんなに広いものなのか。まるで空間が歪んでいるような、、考えてもきりがないか。)
目的もなく廊下を歩く。極端に窓が少ないのは吸血鬼の住まいだからなのだろうか。
ふらふらしているうちにやけにでかい扉に行き当たった。開けると、中はずらっと本棚が並んでおり図書館のような場所だった。魔女の資料室のようなものなのだろうか。
机に置いてあった本を適当に手に取ってみる。『不老の美女と刹那の王子』というタイトルの本だった。
(・・・明らかな恋愛小説だな。そういえば娯楽の本を見るのは
内容はいたって簡単なものだった。何百年という時を生きる魔女と言われた少女が城から脱走した王子様に惚れ込み、どうにかして伴侶になるために画策するという話だ。
しかし、どうやらまだ途中のようで空白のページが残っている。
(・・・これはここの魔女が書いたものなのか。随分と痛々しい。それに王子のモデル、、、明らかに魔理婆さんな気がする。名前もマリスだし、金髪で活発な少年って感じだしな。)
魔女の意外な側面を見てしまった気がするが、その間に時間はだいぶ経ったのだろう。時計がないから正確な時間は分からないが。
(・・・戻るか。)
図書館を出て部屋に戻る。
・・・
少し迷ったが、部屋にたどり着いた。中に入ると、赤の部屋とは対照的な青い髪の少女がいた。入ってきた俺をまじまじと見て、観察しているようだった。
その少女には見覚えがある。俺を水の中から引き揚げてくれた人だった。背中の氷のような羽からして人ではないのだろうけど。
「・・・あんた、これらをどうやって手に入れた?」
机に広げられた、八卦炉、魔導書、リボンを指して言った。仮にこの少女がルーミアの友達だとすると疑われても仕方無いのだろう。
「・・・その八卦炉と本は魔理婆さん、、、霧雨魔理沙から貰ったものだ。そのリボンは、、、ルーミアという妖怪が死んだときに頭から落ちたものだ。」
それを聞くと少女は、ベッドに座り、落ち込む。
「・・・そう、ルーミアは逝ったのね、、、」
「・・・俺の事を疑わないのか?」
俺の言ったことを信じ込んでいる少女に聞いてみる。この反応からすると、ルーミアとは友達だったのだろう。ならば、一番怪しいのは俺のはずだが。
「あんたは違う気がする。あたいは妖精だから何となくわかる。」
何とも理解しがたい答えだった。
「妖精だから何でわかるんだ?」
「あんたの言葉を発したときに心が泣きそうになってた。悲しそうに死んだと言ってくれたあんたを少しは信じるよ。」
感情を読む。妖精にはそんなことができるのだろうか。
「魔理沙は今どこにいるの?」
「・・・少し前に。」
「そっか、、、しょうがないのかな、魔理沙は人間だしね、、、」
少女の目には涙が見える。魔理婆さんとも仲がよかったのだろうか。だとすると二人を一遍に失ったようなものだ。俺にはきつい。
「・・・あんた名前は?あたいはチルノっていうんだ。」
「霊吾。」
「レイアね、覚えた。それにしても何で湖に飛び込んできたの?あたいがいなかったら溺れていたよ。」
チルノにここまでの経緯を話した。何故か分からないがこの少女は信頼できると確信している。
「・・・なるほどね。まずはありがとう、八枝を助けてくれて。ルーミアの最後も見届けてくれたことも。あと、とりあえずその凶って男のことは美鈴には言わない方がいい。」
「・・・美鈴って、あの赤い髪の人か?」
「そう、レミリア達、、、紅魔館の住人を人間達が襲ったときに主にやられたのがそいつらしい。確信があるわけじゃないけど、特徴的に似てるからそう判断した。」
あまり聞きたいことじゃないだろうな、仇のようなものだろう。それにしても凶の強さを計れない。
「それでどうするの。博麗神社にいくのはいいと思うけど、そいつには注意することだね。」
しかし、対抗できる手段がない。向こうは剣術でかなりのもの。それに比べ見習い程度の魔法と素人に毛が生えたくらいの戦闘技術。機動力と身体強化でカバーしているが地力がまだまだ弱い。
せめて接近戦でもある程度やれるようにはなりたいが。駄目元でチルノに聞いてみる。
「・・・博麗神社に行く前に一つやりたいことがあるんだが。チルノ、妖怪の中で格闘が強いやつって知ってるか?」
「格闘?それなら美鈴だよ。」
どうやら運がいいらしい。しかし、今の美鈴さんを見てどうだろうか。はたして教えてくれるものだろうか。そもそも人間にたいしていい印象を持っていないと思うが。
「・・・頼み込んでみるか。ありがとうチルノ。」
「ははっ、美鈴なら大丈夫だよ。何だかんだで優しいし、何より、、、まあ、とりあえず言ってみたら。あたいからも言ってみるよ。」
二人で部屋を出て美鈴さんを探す。並んで歩くときにチルノが自分より少し身長が高く、自分の小ささを見せつけられる。
美鈴さんを見つけた。玄関の広間のような場所で立ったままぼーっとしていた。
今日初めて会った相手に何て頼み込もうか考えたがあまりいい言葉が思いつかない。当たって砕けろくらいの勢いでいこう。
「美鈴さん、俺を弟子にしてください。」
「・・・はい?」