かくして幻想へと至る   作:虎山

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ぼちぼち週一投稿。


いつしかの白

「くっ、」

 

 拳を弾き、軌道を僅かにそらし避けながら体の回転を利用し裏拳を叩き込む。が、足で捌かれ、浮き上がるように蹴りが飛んでくる。蹴りを受けながら反動を利用して下がる。

 

 相手の片足がまだ浮いている間に懐に潜り込み、胸に両手で掌底を放つ。リーチが短くこちらが手薄になるが、逸らされにくい技だ。たとえ師匠であったとしても簡単には躱せない。

 

「ふっ、」

 

「なっ!」

 

 渾身の両掌底を片手で受け止められた。力をぶつけたのではなく、掌底を使い全身で威力と速さを殺すような感じだった。

 

 横っ腹に衝撃が走り、飛んで転がりながら体勢を整える。顔を上げると師匠は目前に迫っていた。低い体勢のまま足払いをかけてみようとしたが、同じく足で抑え込まれた。そしてそのまま蹴り上げられた。

 

 空中に投げ出され、そのまま落下し倒れた。何とか立ち上がれるが、まともにくらって少しふらふらしている。

 

「・・・今日はよく持ちましたね。」

 

「ふぅ、まだまだ大丈夫です。」

 

「そうですか、、なら、あれの相手をしてもらいましょうか。」

 

 師匠が指さす先には獣型の妖怪がいた。紅魔館周辺は多少妖怪がうろついているが、実際に近づいてきたことはない。それはここに来ても利がないからだろう。ただし、今は俺がいる。

 

「霊力は使わないように、今のあなたならやれるはずです。では、私は下がっておきます。」

 

 そういうと師匠は門の向こうに行った。師匠を警戒していたのか、去っていったのを確認すると、妖怪は走り、飛び掛かってきた。

 

 振り降ろされる鉤爪を流し、獣の勢いをそのまま利用して後ろ足に拳を叩き込む。バキッという音がなり、妖怪が唸りを上げる。これまでとは違い生身でも相応の威力が出るようになったとはいえ、随分と強くなったものだ。

 

 今までまともな威力の検証ができなかったが、力試しには丁度良かった。妖怪は、片足を引きずりながらもまだこちらに敵意があるようだ。吠えて威嚇をしてくる。

 

「・・・お前じゃ俺には勝てない。今はまだ見逃す帰れ。」

 

 一応声はかけてみたが、もちろん呼応することはない。相変わらずギャアギャアと叫びながらのろのろと近づいてくる。

 

(・・・しかたない。悪く思うなよ、、!)

 

 ガサガサといたるところから聞こえた。あたりへの警戒を強める。木陰から複数の妖怪たちがこちらをうかがっている。

 

(まずいな、五,六体はいるな。俺に捌ききれるか。)

 

 隙を見たのか背後からガサッと少し大きい音がし、妖怪が一体飛び出してくる。ちらっと背後を見ると開かれた口からギラリと鋭い牙が見えた。目前に迫る牙を間一髪で躱すも、体勢が崩れたところに左右から二体が飛び出してきた。右からくる妖怪が鉤爪を振るう。

 

(こいつら、協力でもしてんのかよ!)

 

 右からくる妖怪の前足を叩き、それを反動に浮き上がり後ろから頭を殴りつける。左からも鉤爪が迫っていたのが功をなし、丁度良く右のやつの頭が自分のいた位置にいったのもあり、頭が切り裂かれ一体がいなくなった。

 

 そのまま振り返り、食い込んだ爪を抜こうとしている一体の目をめがけて拳を振り切る。拳は目をつぶし頭の骨を砕く。が、まだ動けるようだ。

 

 目に突っ込んだ手を支えにして、妖怪に飛び乗る。自分がいた場所にはガチッとした音が響き、飛び乗った妖怪の顎をかみ砕いた。手を引き抜くと、ばたっと倒れた。

 

(・・・二体を何とか瞬殺できたが、、、これが一対多の戦い方か。うまく攻撃を流しながら当てるのは難しいが何とかなりそうだ。)

 

 目の前の一体、未だ機会をうかがっているのは二体ほど、一体は消えたが、最初に足を叩き折ったやつもまだやる気だ。

 

(いける!無傷のやつが三体、手負いが一体、力的には倒した二体と変わらない、、はず。)

 

 こい!と意気込み強く踏み込む。

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

「はあ、はあ、、、ふぅ、、、」

 

 木にもたれかかり、呼吸を整える。あたり一面には妖怪の死体がごろごろと転がっている。その数は少なくとも二十体以上はいるようだった。

 

 消えた一匹があれから呼んできたのかさらに数が増え、気づけば四面楚歌。

 

 体が返り血と自分の血でドロドロになっている。手もかなりの摩擦で爪が剥がれ落ちたりしている。最後は多少無理にでも数を削るために拳をねじ込んだ事などが手の傷には影響している。それだけではなく、師匠との手合わせの件も響いてるのか体のいたるところから悲鳴が上がっている。

 

(・・・気配はしないか、あんだけやれたのは意外だったが、やっぱり楽とはいかないな。だが、霊力なしでここまでやれるなら凶クラスの相手でもなんとかやれるのか。)

 

 何とか、木を支えにして立ち上がるが、少しふらつく。久しぶりにここまで大量の血を流したが、どうやら少しは体も頑丈になったのか以前よりは耐える力も強くなっている気がする。それでも厳しいことには変わりないが。

 

「・・・また、傷ついてるね、お兄さん。」

 

 目の前から聞こえる声にとっさに警戒し、顔を上げる。そこには何時か見たことのある顔があった。

 

(体に巻かれたようなコードのようなもの、それに白い髪。誰だったか、確か名前は、、、)

 

「古明地こいし、だったか。ざっと一年ぶりくらいか。」

 

 そうだった、この少女は前もこんな感じで現れたんだったか。今、対面して分かるが気配が一切しない。強者とも弱者とも取れない、まったくなにもない少女という感じだった。まともに顔を見たのが初めてだが、表情は豊かだ。

 

「私の名前知ってたんだ、嬉しいな。お兄さん、名前なんていうの?」

 

「・・・霊吾だ。」

 

「ふーん、覚えておくよ。お兄さん。それよりも何してるの?遊びかな?」

 

 こいしは転がっている妖怪の破片を足で触りながら、聞いてくる。行動を見ても、子供のようであった。死体の山を見ても平然と笑っているところから子供っぽくはないが。

 

「・・・こんな遊びがあってたまるか。」

 

「そう、私はたまに昆虫の足とかをとって遊んだりするからね。あなたもそうじゃないかなと思って。」

 

 子供特有の残虐性なのだろうか、楽しそうに語っている。

 

「・・・今日もかまってる暇はないんでな。」

 

 話を打ち切り、妖怪の死体を木々が生えていないところに、一箇所に集める。一先ずは安全確保ができたので、処理をしてさっさと傷を癒したい。

 

「死体を集めて何するの?」

 

「放置しておくと地が穢れる。穢れを少しでも薄めるためにこいつらを燃やす。そのためだ。」

 

「ふーん、私も手伝うよ。」

 

 こちらが返事をする前に妖怪を拾い出した。早く終わるに越したことはないので、手伝ってもらうことはありがたかった。

 

 二人である程度死体を詰め重ねて、木や葉をかき集め、火をつけようとするが肝心なことを忘れていた。

 

「・・・こいし、火を起こせるか?」

 

 八卦炉がない今、火を起こす手段がない。霊力の衝撃だけではうまく発火できない。

 

「できるよ、これを燃やすの?」

 

「そうだ、頼む。」

 

 いいよ、といってこいしは火の玉を発現させた。それは木や葉を燃やし死体を焼いていく。火はだんだん強くなっていき、煙を上げる。

 

「・・・戻るか。ありがとう、こいし。お前はどうするんだ?」

 

「んーついて行ってもいいかな?することもしたいこともないし、私暇なんだ。」

 

「・・・どうだろう、聞いてみる。たぶんいいとは思うけど。」

 

 敵意などは感じないし、おそらく師匠はダメとは言わないだろう。個人的にも妖怪らしくない妖怪で、友好的な妖怪だから大丈夫だとは思う。

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

「早かったですね。もう少しかかるかと思っていましたが、あなたの戦い方がやや攻撃寄りになったからでしょうかね。」

 

 師匠の部屋に行くと、声がかかる。口ぶりからするとあの数がいたことを知っていたようだ。

 

「知っていたんですか。」

 

「そうですね、最近うろうろしていた数は来るのでは、と思っていたくらいですね。私の戦い方は集団を相手にした場合により強くなる。見極めるなら、多数の妖怪の中に落とすのが分かりやすいですので。」

 

 それでも一歩間違えば死んでいましたとはいえない。師匠はあれくらいで死ぬならと思っているだろうし、俺もそう思う。

 

「私が教えることはもうないです。これ以上は極めることになりますし、あなたには必要のないこと。ですが、私から最後に一つだけ、餞別があります。明日は無理でしょうね、早ければ明後日からでしょう。それが終わればすべて終わりです。今日はもう休みなさい。」

 

 次が最後なのか、それが終われば約束を果たさなければならない。あまり考えたくはない。

 

(・・・そうだ、こいしのことも言わないとな。)

 

「師匠、古明地こいしっていう妖怪を連れてきていいですか?もう入れてしまいましたが、特に危ないこともなさそうなので。」

 

「いいですよ。あなたがそう感じたのなら反対することはないですし、危険だということは聞いたことがないですので。」

 

 あっさり了承を得た。いつも通り興味ないという感じだ。こいしには適当な部屋に案内しておいたのでこの場にはいない。

 

「こいしのことを知っているんですか?」

 

「聞いたことがあるくらいです。心の読めない覚妖怪といわれているくらいのことしか知りません。」

 

 やはりそれほど知られていないのか。

 

「ただ、そうですね。彼女は少し狂気を抱えていると思われます。あくまで推測ですが。」

 

 師匠は不吉な言葉を残す。冗談を言う人ではない。少なくとも思い当たることがあるのだろうか。できれば杞憂に終わってほしいものだ。

 

 

 

 




紅魔館編終了までは週一で
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