かくして幻想へと至る   作:虎山

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高校野球が終わり、夏休みの終わりを感じますね。


博麗代理

「起きろ!」

 

 布団を引っ張られ、無理やり叩き起こされる。

 

「・・・橙、なんか用か?」

 

「藍様から様子を見て来いって言われただけ、じゃなければ来ないわよ。」

 

「・・・ありがと。」

 

「あんたのためじゃないわ。命令よ命令。」

 

「いや、それでも来たくもないやつの元に来てくれたんだからな。」

 

 この少女、橙は自分が初対面で吹き飛ばしてしまった少女だ。起きてすぐ襲われかかったが、藍さんの説得もあり和解はしたが、あくまでも藍さんの前だけであり、こうして二人になれば小言を言ってくる。

 

「それで、何か異常は?」

 

「・・・体が異様に気怠いくらいだな。あと結界を張った後くらいに極度の疲労感が来た事かな。」

 

 あれから数日置いて、結界の補強を行ったが、前後の記憶があんまりない。すぐに寝てしまったことは覚えているが、それまで意識が朦朧としていたようだった。

 

 藍さんも言っていた通り難しいということはなかった。ただ、霊力を引っこ抜かれるような感覚で奪われたのは驚いたし、恐らくはそれで魂が疲弊しているのだろうとのこと。

 

「ふーん、じゃあまあ特に異常なしってことね。」

 

「そう伝えといてくれ。」

 

 はいはいといって橙は出ていく。

 

 紫という方もそうだが藍さんも相当疲れていたようだった。橙に聞けば、心配しなくても藍様なら大丈夫といっていた。今はマヨヒガという場所で少し休んでいるらしい。

 

 というわけで神社には一人だけでいる。幻想郷に来て今まで誰かと一緒だったせいか、一人で住むことにはやや違和感を覚える。少しだけ寂しさはあるが、慣れていくだろう。

 

だが、ここにきて少し問題ができた。

 

(ここの食料、どうなってるんだろうか。)

 

 魔理婆さんの家では魔法による保存などで蓄えられてあったし、紅魔館でも時空の歪みで腐敗が起こっていなかったので問題なかったのだが、生憎ここにはそれらしきものはない。

 

(・・・藍さんは忙しそうだし、橙は絶対に命令じゃない限りはやらないだろうしな。自分で何とかするかな。)

 

 とは言ったものの、当たり前だが何の知識もない。現段階では少しの手持ちと森でとれるもので何とかしていくしかない。

 

 思考の整理が終わり、体を動かすために外に出る。気怠いとはいえ、動かさないと体は簡単になまってしまうので、とりあえず境内の掃除をしておくか。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

「お前、誰だ?」

 

 箒をもって外に出ると少女がいた。一目で人間ではないことが分かった。

 

 頭から突き出た二本の角が少女を妖怪と知らしめる。それだけではない。これまであった大妖怪特有の威圧感のようなものを感じる。今のところ敵意は感じないが、警戒はしておく。

 

「一応、博麗の代理をしてる者です。あなたは?」

 

「・・・ああ、外来人か。にしても、ふーん、、、」

 

 こちらの質問には答えず、観察するように見てくる。

 

「・・・何とも言えないな、、、あんた何だ?」

 

 要領を得ない質問が来た。

 

「・・・どういう意味ですか?」

 

「お前の姿がほんのわずかに重なったからね。霊夢と。」

 

 こちらの質問に答えたと思ったら、ここでもその名前が出てきた。彼女も霊夢に影響された一人なのだろうか。

 

「・・・俺は霊吾です、霊夢という人は俺とは無関係ですよ。」

 

「そりゃそうだろうね。でもな、ちょっとくらいは期待させてみなよ。」

 

「何を言って、!?」

 

 突然、拳が飛び込んできた。警戒していたおかげで拳を弾き流すが、思っていたより力が強く、痛みが走る。体が本調子じゃないのも相まって体勢を崩してしまった。

 転がりながら起き上がり、体勢を整える。前日に霊力を使い切っていたため、まだ回復しきれていない。気力だけで強化を施し、構える。少女の方は追撃はせずにこちらを見ていた。

 

「へー、よく反応できたね。それにうまく流されたし、若い人間にしてはやる方だね。今時珍しいがそれだけか。」

 

「・・・いきなり何すんですか。博麗には手を出せないんじゃないですか。」

 

 藍さんから聞いていたことだが、本来、妖怪が博麗の関係者に手を出すのは禁止されているらしい。知性のない妖怪たちもよっぽどのことがない限りは神社に乗り込んで襲ってくることはないらしい。それを聞いて少しは安心していたのだが。

 

「なーに、あの程度の軽い一撃で死んでるような奴が博麗だなんて言わないさ。」

 

「・・・あの程度か。妖怪の軽い一撃でも人間からしたら急所に当たれば死ぬようなものばかりだ。それを分かって言ってるのか?」

 

 流すために弾いた手がまだビリビリする。強化していなかったのもあるが、そのまま頭に食らえば意識を失うこともあったのかもしれない。少女の言葉にいら立ちを隠せない。

 

「いちいち小さいことを気にするガキだな。いいだろ、生きてんだから。」

 

「・・・それで、なぜ殴ってきた?」

 

「ちょっと確かめたかっただけだったが、最近ご無沙汰だったもんだからな、、、もうちょっと付き合ってくれや。」

 

 そういうと少女は自分に向かってきた。

 

 さっきの一撃を軽いと評した少女の攻撃をまともに受ければどうなるか理解できる。気力だけでの強化でやっていけるか分からないが、少ない霊力を使うべきだろうか。

 

 そのような思考の間に少女は距離を詰め、殴りかかってきた。

 

「ふっ!」

 

 攻撃を流しながら反動を利用し、体勢を保ちながら滑るように距離を取る。まだ相手の間合いを把握できないためカウンターを仕掛けようにも躊躇してしまう。

 

(美鈴さんほどリーチが長いわけじゃない。力があるとはいえ、あの時の美鈴さんに比べれば対応できるほどだ。そしてなにより、、、)

 

 そして同じような攻撃を仕掛けてきた。

 それをさっきと同様に流し、今度はカウンターを仕掛けるため、踏み込んで中に入り込む。

 

(隙が大きい!)

 

 がら空きの腹に拳を叩き込む。

 

 当たる直前で、拳に衝撃が加わり軌道が変わる。そのまま空を切る。

 

「あまいね。」

 

 横から聞こえる声。自分より小さい体ということもあり、うまい具合に死角に潜り込まれた。見えない状況でなりふり構わず攻撃を繰り出した手とは逆の手にのみ霊力を集中させ、直感頼りで構える。

 

 運良く拳が丁度手に収まり霊力で強化していたおかげで受けきった。

 

「なかなかやるじゃないか。」

 

「・・・これで満足か?」

 

「いいや、もっとだ。」

 

 掴んでいた手を逆に掴み返され、上空に投げ出される。そのまま能力で浮遊する。

 

「飛べるのか、なら今度は空中戦といこうじゃないか。」

 

 飛び上がり、殴りかかってくる。空中での接近戦はあまり得意ではない。地に足がついていない分、流す要領が掴み辛く、また踏み込みも不完全なものとなるため純粋な力で簡単に弾かれてしまう。

 

 それも力が格上の相手だ、まともに打撃が通ることはないだろう。

 

 だから空中戦はない。ここで落とす。残念ながら八卦炉が手元にない。両手を突き出し、少ない霊力を振り絞り、霊力の砲撃をぶちかます。近づいていた相手は真正面から受ける。

 

「くっ、意外に重いが、この程度、弾き返せるんだよ!」

 

 威力そのままにして、霊砲が跳ね返ってきた。

 

(はっ、嘘だろ!)

 

 避けれる距離じゃない。とっさにガードして受ける。自分の技とはいえ、自分が食らうには重い技だった。

 

 何とか受けきり、相手を探す。

 

「相手から目をそらすなって教わんなかったか?」

 

 後ろ上空から声が聞こえた。振り返るところに蹴りを入れられる。伝わる衝撃により、能力が解け、落ちていく。

 

 落下寸前で何とか止まり、落下の衝撃をなくす。だが、腹に食らい、やや意識が飛びかけていた。

 

「おいおい一撃で落ちんのかよ、弱々しいな。」

 

 地面に降りこちらを見て笑う少女。ギリギリの状態でも、今までに比べたらまだ戦える状態だ。痛覚を浮かすのはまだ早い。痛みをこらえ立ち上がる。

 

「・・・根性はいいな。いいね、いいサービス精神だ!」

 

 そういいながら笑顔で突っ込んでくる。受けきってのカウンター狙いはきつい。ならばあえて、相打ち狙いの一撃を叩き込む。

 

 残りの霊力を全部右手に乗せ、向かってくる相手に一歩踏み込む。そして拳を振るう。

 

 だが、不気味な空間が現れ、拳は空を切った。それだけでなく相手を見失ってしまった。

 

(一瞬で消えた!?なにが起こったんだ。あいつの技か?)

 

「・・・邪魔すんなよ、紫。」

 

 後ろから聞こえる声。先ほどまで高ぶっていた気持ちが冷めているのが分かる。そして不気味な空間が現れ、そこから女性が現れる。

 

 長い金髪に綺麗な顔立ちだが、かなりひどい見た目だ。目の下に大きな隈を作り、ぼさぼさの髪に、病的なまでに白い肌。その女性は服装が藍さんに似ていること、そしてなにより少女が紫と呼んだことから分かる。

 

(この人が八雲紫、、、)

 

「やめなさい萃香、博麗関係を殺す事がどういう意味か分かっていますよね?」

 

「分かってるから、そう本気になるなよ紫。ちょっと手合わせしただけだ、もうしねーよ。」

 

 少女の鬼の如き気が弱まり、戦闘意欲がないことが伝わる。それを感じ取り、膝をつく。体力の消耗が想像以上に体に蓄積されているようだった。

 

 そんな自分の元に八雲紫が寄ってくる。

 

「・・・初めまして、八雲紫といいます。あなたのことは藍から聞いています。今はお休みください、もう立つだけでも辛いでしょう。」

 

 そういうと自分の意識が揺れる。起きているか寝ているか、あやふやな状態になり、そのまま意識がなくなっていった。




紫さん登場です。
そういえばですが、ヒロインが決まってないんですよ。
決める気もないですが。
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