かくして幻想へと至る 作:虎山
もう年末ですね。
ブン、ブンと空を切る音が響く。落ちた木の葉に切れ目が走る。
「おとーさん、お腹すいた。」
ピタッと音が止まる。
「ああ、すぐ行く。」
先ほどまで振っていた刀を鞘に収め神社に戻る。
台所に立つと小さな影が食料を持ってきてくれた。食料はといっても肉や魚はあまりなく、庭で作っている野菜が主だ。
「ありがとう、黒姫。」
そういうと小さな影、半自律人形の黒姫はぺこりと頭を下げて戻っていった。さっそく材料たちを調理するが、別段料理がうまいという事はない。芋やニンジンといったものと森で取っている茸を適当に鍋に突っ込み火を通すだけのものだ。もちろん多少の味付けはしているが。
魔理婆さんの家から持ってきたものは結局のところ二つしかない。実際は一つで、もう一つというより一人ついてきたという感じだが。裏の倉庫に入っていたものはそのほとんどがガラクタであった。外の世界の一昔前の電化製品であったり、燃料でもって動くようなものばかりなため、これといったものはなかった。実際に危ない物もいくつかあった。
持ってきたものの一つとして刀である。一目見たときに直感だが、ただの刀ではない気がした。格闘、魔法が主な戦闘法であるが、二つとも消費が激しいため別の方法を探っていた時に見つけたため、上海に交渉のすえ、借りさせてもらった。
もう一つであり一人は、かよと遊んでいた人形だ。かよから黒い髪のお姫様という意味の「黒姫」と名付けられた。上海曰く、俺とかよのところに居たいそうだ。珍しく悔しそうにしていたが。動力源である魔力を定期的に与えれば問題ないのだが、上海からなるべくは見せに来るようにという助言を受けた。まあ、上海も心配なのだろう。
そんなわけで今現在は黒姫に手伝いとかよの相手を少ししてもらっている。
次に行く時に何かしらの土産でも持っていくかなどと考えているうちに野菜スープが出来上がった。ずっと同じようなものを作っていると慣れてくるものだ。器に入れて、炊いてあった米と一緒に持っていく。
「ほら、できたよ。」
座って待っている間に黒姫と魔力の糸で遊んでいるかよにやめさせて、目の前にスープとご飯を置く。
「「いただきます。」」
二人そろっていただきますをするのも慣れてきたものだ。やっぱり一人で食べるより二人の方がいいものだ。黒姫は大人しくかよの横で座っている。
幼い子供には味気ないと思いつつも美味しいと言って食べてくれるかよにはだいぶ救われている。
食事も終わり、かよの修行に移る。博麗の巫女として必要なのは最低限として結界の管理ができるくらい霊力が扱えること。戦闘に関しては巫女代々で変わるようだ。先代巫女・博麗霊夢は術を主体とした戦闘方法であり、スペルカードルールを生み出した要因の一つだったらしい。その一つ前の代は格闘主体としていたようだ。かつての巫女には刀や槍を使うものもいたという。
霊力を操るための鍛錬を行い、はや一週間で霊力弾を作れるまでになった。まだ掌の上でフワフワと浮いているだけの玉だが、霊力を形に変えるというのは俺が一月はかかった。霊力を操る才に長けているのだろうか。
というわけで弾を作ることが出来たので次は結界である。結界といっても種類はさまざまであり、博麗大結界のように大規模な結界術から護身用の小規模結界というように性質と規模で変わってくる。
ただ、基本的には霊力を張り巡らせるだけではある。
「むぅ・・・」
手を合わせて結界を張る。自分の周囲、足元に届く範囲ではあるが自身を囲う程の円形の結界が出来ている。かよの今の段階での限界ではあるが一か月程度でできるのは十分すぎるできだった。
「ふふふ、意外に早かったわね。先生が優秀だったからかしら?」
かよが驚き周りを見渡すが誰もいない。そして俺のほうを向く。
「誰?」
「ああ、そういえば会うのは初めてだったかな?」
「ええ、そうね。藍から話は聞いているけど、実際に会うのは初めてね。」
ぱかっと空間が開き、中から金髪の女性が出てくる。初めて会った時のように青白く、死んだ表情をした病人のような姿ではない。血色のいい肌や余裕が出てきたからか出てくる妖艶な笑みは、まさしく妖怪の賢者。回復したのは見た目だけではないが。
「初めまして、かよ。私は八雲紫、幻想郷の管理をしている者と思ってね。」
かよは紫さんから離れ、こちらに近づく。座っている俺の背に隠れるように動き、背中越しに紫さんを見ているようだ。
「あら、嫌われちゃったかしらね。」
「・・・どうしたの?」
ぎゅっと服を掴んで紫さんを警戒している感じだった。
「あの人、不気味。ぐにゃぐにゃしてる。」
ぐにゃぐにゃ。おそらく紫さんの妖怪としての本質なのだろうか。かよの能力はよく分からないが、異常な程の見抜く力がある。そして紫さんの能力である境界を操る能力、また妖怪としての性質が、かよにとって形容し難きものだったのだろう。
紫さんに関しては問題ないだろうな。
かよの頭に手を置いて落ち着かせる。
「大丈夫だよ。紫さんは悪い人じゃない。少し変わってるけど、かよの周りにも変わってる人が多いよね。」
俺の横に佇んでいる黒姫が自分を指さしている。私の事と言いたいのだろうか。
「・・・くろひめみたいないい子?」
「いい人だよ。」
顔だけをのぞかせていたが、体ごと隣に移動する。まだ警戒はしているが、悪い人と思ってはいなさそうだ。
「初めまして、博麗かよです。」
「うふふ、ありがとう。礼儀正しいのね、あなたに似たのかしら。」
楽しそうに笑いながら、こちらを見つめてくる。
「もともとかよは礼儀正しかったですよ。それで、何か用でも?それとも博麗の巫女の様子見ですか?」
「んーまあ、それもあるわね。どれくらいの修行期間がいるのかと思っていたのだけれど、あなたの体の限界までにはいけそうね。術が得意な子でよかったわ。」
俺が持つまでとなると半年ほどだろうか。代替わりとしては早い気がする。今の年から結界の管理をさせるのは、一応親の身としてはやめて欲しいものだ。
「あんまり納得いってなさそうね。」
「それはそうですよ。娘には長く生きてもらいたいと思うのは普通じゃないですか?」
「幼くして父を失うよりはいいんじゃないかしら?」
ぐうの音も出ないな。こういう事も踏まえたうえで俺に任せたのかもしれないな。
「俺って、そんなに大事なんですか?」
「私個人ではとっても大事だけれど。」
嫌な言い方をする。
「私の事はさておいても、万能型の人間はいて欲しいのよ。総合的な能力値で言えばあなたのような人間は数世紀ぶりの逸材よ。」
総合力ね。。。純粋にその道を究められなかったからこそ辿りついた道だ。その道に特化した奴らには勝てない。
「・・・それでそんな俺に何の用ですか?」
かよの件とおそらく俺に何かしらの用でもあるのだろう。最近は藍さんが来ていたから、俺も会うのは久しぶりだった。
「ふふ、分かってるくせに。」
いつの間にか隣に来て、腕を絡ませてくる。なんとなく予想はしていていたが流石に昼間からは来ないだろうと思っていたのだが。
「かよがいるんですから、あまりそういうことはしたくないんですが。」
「・・・寝た後ならどうかしら?」
「俺と一緒に寝てるんで駄目です。」
不貞腐れたような顔でこちらを見てくる。
「・・・藍から何か言われたかしら。」
ぼそっと言っているあたり怖い。
「それもありますが、あのころと違ってあんまり必要性は感じないでしょう?」
「私がそれだけのためにするとでも、そんなに薄情じゃないわよ。」
少し怒ったような表情を見せる。
「・・・まあいいですよ、寝静まった後にまた会いましょうか。」
ぱあっと笑顔になる。もういい年であろうというのに少女のようである。
「そうね、また来るわ。今夜は久々だからけっこう頑張」
「早く戻ってください。」
言葉を遮り、帰りを促す。それでもニコニコしながらスキマに入っていく姿を見て、かつての賢者が少々残念な人になっている気がする。
「・・・よし、じゃあ再開するか。」
何となく疑いの目で見られている気がするが、気を取り直してかよの修行に移る。
そういえばですがヒロインって決めてないんですよね
そもそも必要なのかっていう話ですが