かくして幻想へと至る   作:虎山

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随分と更新が遅れてしまいました。



妖蟲

 妖獣どもが逃げて行ったのも束の間にして、新しい刺客が来たようだ。緑色の髪に黒いマントのようなものをしている少女のようである。

 

「リグル!生きていたの?」

 

 チルノが飛び出てきた。どうやら旧知の仲のようだ。だが、恐らくあいつは違う。

 

「待てチルノ。」

 

 向かおうとしてるチルノの腕をつかみ、止める。

 

「大丈夫だよ。あいつはあたいの友達だから。」

 

「友達の見た目をしてるだけだ。お前の口から友達・・・リグルはもう死んでると聞いたのは数年前だ。」

 

「え、いやだって、あそこに、、、」

 

 そういって指をさす。そこには確かにリグル・ナイトバグである少女がいる。チルノの記憶と合わせても違いのない彼女だろう。

 

「そうだよ。僕はここにいる。」

 

 リグルと呼ばれた少女はそう言ってこちらに歩み寄ろうとする。

 

「動くな!」

 

 八卦炉を構える。得体の知れない存在だ。警戒した中でも一瞬の隙に現れたのだ。こいつは妖力の扱いがかなり上手い、もしくはかなり上等な移動術を持っていると思っていた。

 

 だが、違う。こいつから漂う不気味な感じ。妖怪とも言えないナニカを感じる。それにかなり濃い死臭。辺りに転がる妖怪どもじゃなく、こいつ自身から発せられているように感じる。

 

「そうやって脅しても無駄だよ。」

 

 一歩踏み出そうとする前に、閃光が貫く。妖怪だろうと顔を狙えばただじゃすまない。

 

「レイア!何も本当に撃つ必要ないだろ!」

 

「リグルちゃん!、、、!?」

 

 チルノの声と八枝の驚愕の声が重なる。

 

「・・・チルノ、よく見てみろ。あれがお前の友達か?」

 

「レイア、何を言って、、、」

 

 目を向けた先には顔の右目を中心に穴が空いても、笑って何事もなかったかのように振舞っている存在がいた。

 

「痛いじゃないか、まったくお友達の姿なら余計な消費も済むかなと思ってたのにな。」

 

「・・・なるほど、それがお前の正体か。」

 

 空いた穴に小さな虫が集まり顔を成形する。

 

「「「まいった、まいった。こんなことなら最初から奇襲すればよかったのにね。」」」

 

 声が何重にもなって聞こえる。さっきの一撃で少し歪んだようだ。

 

「じゃ、じゃあ、リグルはどこにいるんだ!」

 

「「「さぁ、僕たちは知らない。」」」

 

「「「私も知らないわ。」」」

 

「「「ただ、そうだね。この形をみんなで作るにあたって、この子をたくさんいただいたからね。といっても僕たちは少ししか食べる必要がないから残りは多いはずだよ。」」」

 

「「「ちなみに僕達は目を少し齧ったよ。」」」

 

「「「私達は脳みそを少し吸ったわ。なかなか美味しかったわ!」」」

 

「「「俺達はみんなで心臓を突き破って食っていった。」」」

 

 おぞましい声だ。ぐちゃぐちゃに混ぜられた声から発せられたのは彼女、リグルの死であった。

 

「そ、んな、、、うぇ、、」

 

 べちゃっと、チルノが吐き出した。友達の壮絶な最期を想像したのか。それだけでなく、先ほどまで抑えていたであろう虫どもの強烈な死臭にも当てられたのだろう。

 

 チルノの状態を見て虫は動き出した。伸ばした手が分離し、虫の群衆がチルノに向かう。

 

時空変換 三倍速(タイムドライブ サード)

 

 一瞬にしてチルノを持ち上げて、氷の壁まで下がる。八枝の様子を見るが、どこか怪我をしているのか万全とは言えない状態のようだ。

 

「八枝、チルノを頼む。ここに居れば、俺が死なない限りは問題ない。・・・たぶんな。」

 

「・・・あなた一人で大丈夫なの?」

 

「問題はないと言いたいが、何とも言えん。」

 

 どちらか一人でも動ける状態ならよかったのだが。

 

「「「へぇ、よく助けたね。流石だよ!」」」

 

「・・・随分と余裕だな。」

 

「「「君の拳も蹴りも僕達には効かない。さっきの閃光でも僕達は殺しきれない。つまり君に有効手はないってことだよ!僕達に負けはない。」」」

 

「そうか、、、勝負ありってわけか。」

 

「「「そう!君の負けでね。君はおいしそうだから、あとに残して先に、、」」」

 

 

 

「おまえの負けでな。実れ、マスタースパーク!」

 

 リグルの頭上に眩い閃光が輝く。全身を焼き焦がす強い光が叩きつけられる。

 

「口が多いっていうのも面倒だな。」

 

 全身を形成している虫のうちほとんどが死滅すれば、こいつらの殺傷能力は皆無となる。最初の一撃で仕掛けておいたが、油断していなかったらばれていたかもしれない。

 

「やったの?」

 

 八枝が氷の壁から顔を覗かせる。相変わらずチルノはぐったりとしている。

 

「いや、どうやらまだ終わりじゃないみたいだ。」

 

 生き残った数匹の虫が戻っていく。撃ち落としてもよかったが、まだ確証がない。こいつらだけで終わりのはずがない。よく当たる悪い勘が告げている。

 

 戻っていく先に大きな妖力の塊が確認できた。いや、今現在塊になっているところだった。

 

「なるほど、集約しているのか。だとするとそこに本体があるのか。」

 

 妖力が巨大になっていくにつれて、それが姿を現す。辛うじて人の形を保っているが、異様に手が長い怪人の姿をした巨人が作られていく。四つん這いのように見える姿でのそのそと這うように近づいてくる。

 

「あれは!?」

 

「さあ、だけどあれを倒さないと人里は消える。よく見てみろ。」

 

 どこからともなくあちこちが食われた妖獣が連れてこられ、一瞬のうちにして骨になった。その後また一瞬で何もなくなった。周囲の草木も消滅しているかのように食われている。

 

「マスタースパーク!」

 

 極太の閃光を放つが巨人に穴をあけるだけで、またすぐに塞がる。さきほどリグルの形をしたものに食らわせたものより太く、強力だが、やはり効かないか。 

 閃光ではここまでが限界か。

 

「ちょ、ちょっと!どうするのよ!効いてないよ!」

 

「落ち着きなよ。あれの移動はかなり遅い。さっきまでのように数が少ないなら連携がとれるみたいだけど、あそこまで集まったら逆に駄目みたいだね。」

 

「そんな呑気に言ってないで、どうにかしてよ!」

 

「まあ、見てなって。」

 

 懐から一枚の札を取り出す。少し前の時代においては主流であった’遊び’で使われたものだ。

 

「一部を破壊しても無駄だけど、あいつらは虫だ。あれは多くの虫が集まって形作ってるわけで、さっきみたいにほとんどを殲滅できれば勝手に消滅する。」

 

 札に霊力を流し込むと、描かれている魔法陣が光りだす。

 

「そして虫っていうのは火に弱いって、よく聞くよな。」

 

 辺りに火の粉が舞う。火の粉を振り回し、空中に陣を描く。

 

最上級 (ロイヤル)・・・」

 

 動かない魔女の最も得意とする魔法であり、彼女が万全であったなら、その威力はマスタースパークすらも凌駕する可能性を持つ。

 

 火炎魔法 (フレア) !」

 

 燃え盛る業火が虫の巨人に飛び込む。全身に回り、体が弾けたように火の粉が周りに散乱する。パニックになった虫が本能のままに好き勝手に逃げ出したようだ。

 どちらにせよもう遅い。あたり一面、火の海になっており、どこに逃げようとも飛び火が襲い掛かる。

 

それでも火の中から飛び出してくる虫。道連れにでも持ち込もうとしているのか。単細胞なりに考えたのか分からないが、マスタースパークでは太刀打ちできない太さで押し寄せる。

 マスタースパークより太く強く激しく。霊力、気力を八卦炉に集中させる。

 

「消し飛べ、『ファイナルスパーク』。」

 

マスタースパーク以上の太さを誇る閃光が最後の虫の塊を呑み込み、消滅させる。あとはもう時間の問題だ。

 

「とりあえずは終わったか。八枝、すまないがチルノを起こしてくれ。消火しないとひどいことになる。」

 

 ロイヤルフレアと虫が逃げ回っているせいで、ちょっとした火事になっている。ここら一帯を浄化する目的もあるのだが、あまりに燃えすぎると人里まで被害が出る可能性もある。

 

(それにしても、、、あの虫、自然に発生したのか。あんなに強大な妖力になるには時間がかかるはずだが。誰かが手引きしなければの話だが。)

 

 起き上がったチルノ、八枝たちと消火を行いながら考える。今の幻想郷では候補が多い。手あたり次第に探すのも一苦労だろう。

 

 

 

 

 

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