かくして幻想へと至る 作:虎山
ある平日の昼間。本来なら子供は学校に行っている時間だが、宇佐見邸にて菫子といる。宇佐見さんが言うには、最低限行っておけば問題ないそうだ。中学まではそれでいいらしいが、中学でその状態だったら今後やっていけるのだろうか。董子だからこそ心配はしていないのだろうが。
菫子は頻りにこちらを探るような会話をしてくる。正体を知りたいのもあるだろうが、知られると面倒になることもある。かといって全く何もしゃべらないとすれば、信頼されない。さっさと本題に入るとしよう。
超能力の話に入る。超能力を使うにあたり、場所が問題になってくる。瞬間移動、念動力、発火といった能力は町中で使うには目立ちすぎる。特に発火はかなり場所を選ぶ。規模も知りたいところではあるが、水場周辺でない限りは使えないだろう。
そういうわけで菫子の修練場を話し合っていた。
「適当な山とかじゃダメなの?川の近くなら問題ないと思うけど。」
「近くにあるのか?」
「近くじゃないけど、行けるわよ。」
「・・・瞬間移動か。」
「そ、一度行ったことがある場所なら行けるわ。遠すぎる場所だと疲れるけどね。」
一度行ったことがあるなら瞬間移動で行けるか。障害物や距離はあまり関係ないと考えると、空間転移していると思っていいか。
「一人くらいは運べるか?」
「やったことないから分からないけど、たぶん出来る。」
「・・・近くで試してみるか。ここから見える範囲だったら行けそうか?」
「行ける。」
「ここから見える範囲だと、あの公園辺りに飛ぶか。瞬間移動は接触が必要か?」
「そうね。触れてないと運べない。」
「じゃあ頼む。」
手を握られた瞬間、世界が変わった。部屋の風景から一転して外に変わった。
(一瞬だったな。空間転移で間違いないだろう。)
菫子を見ると少し汗をかいているようだった。
「人を運ぶのは初めてだったけど、意外に行けるのね。」
「少し消耗してるようだが、自分一人と比べるとどうだ?」
「・・・運べる限界が少し見えたわ。少なくとも見える範囲内が限界だと思う。」
部屋から公園までそんなに離れてはいない。やはり人ひとり運ぶのはそれなりに負担があるか。
「予定変更だな。近くの河川敷に行くか。橋の下なら幾分かはいいだろう。」
「そんなとこでやってて人に見られないの?発火能力は目立つわよ。」
「人の気配を探りながらやるから問題ない、見える範囲内の人なら全方位感知できる。」
現代で戦闘能力を鍛える事は難しい。適度な時間、場所、相手が必要になる。特に現代ではあまり派手なことができない。
その代わりに感知能力は磨き続けた。戦闘能力は落ちたかもしれないが、感知範囲は以前より上がった。
「それ私もできるの?」
「できるだろうな。ただ、どの程度のレベルまでいくかは分からない。」
「・・・というか能力じゃないなら、どういう原理でやってるの?」
「それも教える予定だ。」
・・・
河川敷。橋の下は上を通る車両からは死角になっていて見えない。多少の音なら問題なく、発火能力も水場があるので使えるだろう。
「さてと、さっそくだが霊力を扱えるようになってもらおうか。」
「霊力?」
「説明より見せた方が早い。よく見ていろ、霊力というのはこういうもんだ。」
左手に霊力を集める。圧縮させて小さな弾を作り出す。青白く発光している霊力弾が発現した。
(久しぶりに霊力を扱ったが、この程度なら呪いの影響は受けないか。やはり幻想郷より発現する力が弱いな。)
「・・・すごい。体に流れている力を一点に集中させてる。それも高密度に保った状態を維持してる。私にこれができるの?」
透視能力だろうか。力の流れを見ることができるとは便利な能力だ。見れるならより分かりやすいだろう。
「できるはずだ。透視能力で自分を見てみるといい。同じようなものが流れているはずだ。本来なら感覚に頼ることでしかできないが、君なら見ることができる。俺のように一点に流れを集中させてみろ。」
「・・・やってみるわ。」
片手を広げ、真似をする。
(これまでの董子はおそらく霊力という存在は知らなかったのだろう。ただ、力の流れが分かるのであれば、一度見せただけでもこいつならできる。自分で能力を試してきたなら、霊力は扱える。)
董子の霊力が一点に集まるのが分かる。掌に具現化する霊力弾の大きさは俺の倍以上だ。幻想郷ならどうなっていることやら。
「これが霊力なの。」
「そうだ。霊力自体は体を巡っている力の一つだ。基本的に人間は誰しもが持っている。ただ、扱うには修練が必要になる。そうやって目で見えるほどに具現化させるには修練だけでなく、才能も必要だがな。」
「才能?」
「君も見てきた人の中には力が大きい奴や体から力が溢れているように見える奴もいただろう?」
「確かにいたけど。」
「霊力の大きさはだいたい生まれた時から決まっている。俗にいう天才といわれる人の多くが強大な霊力を持っている。君はその中でも群を抜いている。少なくとも俺が見てきた中では。」
俺やかよといった博麗の巫女よりも強大な霊力。博麗霊夢が今の時代に巫女をしているかどうかは知らないが、時代によっては紫さんが幻想郷に引き込んだかもしれない。
宇佐見さんがいる以上はあまり手を出してこないと思うが、この子の存在を認知しているのだろうか。知っているなら俺に何らかの接触があるはずだが、スキマからの目線もない。紫さんはこの子を知らないとみていいだろう。
「集中をやめて、霊力弾を少しづつ辺りに発散させろ。今の状態を維持したまま、俺の真似をして霊力弾を消していくぞ。」
「分かった。」
掌の霊力を徐々に発散させる。俺の霊力弾は簡単に消せるが、菫子のものは違う。力の大きさや圧縮度を見るに、爆発する可能性もある。目視できるほどのエネルギーの塊だ。最初のうちは簡単にはコントロールできない。
互いに霊力を発散し終え、次の段階にいく。
「霊力というのが分かったなら、能力もより効果的に使えるだろう。」
「・・・感知能力も元はこれかしら?」
「半分正解だ。感知能力といっても俺は二種類ある。一つは菫子には難しいが、もう一つが力を使ったものだ。よく辺りを見てみろ。」
菫子が目を細めて周りを見渡す。ハッとしたように、こちらに振り返る。
「ここら一帯に分散してる力って、もしかしてあんた?」
「そういうことだ。霊力ではないが、霊力でも同じようにできる技だ。自分の周囲に力を分散させ、範囲内の存在、動き、状態を感知する。」
広範囲精密感知。伊吹萃香が能力を使って得意としていた技だ。原理は単純であるが、集中力の維持、力の繊細なコントロールといったものが求められる。
一瞬だけの展開なら前々から使うことができたが、常に維持するのは現代に来てからできるようになった。
「慣れればいずれできるようになる。さて、話を能力に変えるぞ。念動力、発火の範囲はどのくらいだ?あとは負担も知っておきたい。」
「発火の範囲は広くはないわ。対象を正面に捉えないとできないし、燃えないものだと火はすぐに消える。念動力はそうね、、、これくらいかしら。」
浮遊感を感じた。なるほどこれが念動力か。不気味な感覚だ。空を飛ぶとは訳が違う。浮かされている。さらに言うなら動きに制限がかかっている。気力で強化すれば難なく振りほどけるが、素の身体能力では少し厳しいだろうな。
すぐに解除されたが、瞬間移動後のように疲弊した様子はない。
「人ひとりが限界か?」
「よく分からないけど、生きてるなら一人しか動かせない。長時間は動かせないけど、手より若干先の範囲までなら自由に動かせる。発火と念動力の負担は分からないわ。そこまで使ったことないもの。」
どうやって能力を使っていくか難しい。本来、能力とは固有のもの。能力の制御は能力所有者ごとに違う。霊力、気力の扱いを通して、能力を制御していく道もあるが、幻想郷とは違い現代ではあまり使う事はない。
菫子は制御できていると感じているようだがまだだ。感情の起伏で爆発的な力で能力を使う事がある。まだその状況が来てない以上、限界を知る、自分の能力の危険性を知るのは重要だ。
「負担は知らないか、、、だとすると瞬間移動と同様に限界を知る必要があるな。」
とりあえず菫子には考えていたことを話し、納得してもらった。
「・・・で私はどうすればいいのかしら?ここら一帯の水でも蒸発させれば限界が見えてくるんじゃない。」
「・・・面白い。力の限りしてみろ。」
「え!、ほんとに?」
「能力は自分の感覚で試した方がいい。君がそう思ったのならやってみるといい。周囲の警戒と逃走は気にするな。」
「・・・分かったわ。全力で焼き尽くして見せるわ。」
どこか嬉しそうに手を突き出す。力を試したいのだろう。これまでよく抑えてたものだ。能力を自覚し、使える状況ながら制限をかける。子供離れした強靭な理性だ。
その理性を解き放った時感じた。菫子はすでに化け物だった。
これからしばらくは日常が続くかな。現代であまり殺伐とすることはないと思います。
あまりね。