かくして幻想へと至る 作:虎山
あまり進んでませんが
「・・・にて爆発が起きたと見られる現場に来ています!幸い被害は出ていませんが、危険物が残っている可能性もあり、立ち入り禁止になっています。警察官も慎重に調査しており、近隣の住民は近づかないようにしてください!また、怪しい人物など、、、」
昼休憩時、食堂に流れるニュース。
「物騒なもんだ。近くでこういう事件が起こると、うちの子供が心配になるよ。霧雨さんも気を付けなよ。」
「・・・そうですね。あんまり近づかないようにします。」
ここで働いている人の中には、爆発が起こった場所の近くに住んでいる人も少なくない。朝の朝礼時には全体に注意喚起がされた。
軽率だった。発火能力を水面に試しても、一瞬だけの火が発生する程度だろうと思っていた。
発火なんてものじゃない。爆発。一瞬にして一帯の河川が蒸発し水蒸気爆発を発生させた。威力、規模共にでたらめだった。
試しておいて正解だったが、場所は考えるべきだったな。幸いにして怪我人がでなかったのはよかった。
(あの場所はもう使えないか。悪くない場所だっただけに勿体無いことをしたな。)
すぐにあの場を離れたため、犯人と思われることはないだろう。
「そろそろ戻ろうか。霧雨さんは今日も早上がり?」
「そうなります。すみません。」
「いや、いいさ。宇佐見さんから別件の仕事を頼まれているのだろう。良くあることさ。最初はここにいろんな人が来るけど、宇佐見さんがその人にあった仕事を探してくるんだ。合わなくてもここに戻ってこれる。誰もが恩を感じているから、あの人の頼みごとは最優先だよ。」
流石の人望だ。埋もれた才能をどうにか生かそうとする思いは真似できない。
「そういうことだから、霧雨さんも気にしなくていいさ。君もまたここから旅立っていく人と言うわけだ。疲れたら戻ってくるといい。といっても肉体労働だがな。」
・・・
「体調は、、悪くはなさそうだな。」
「そうね。疲労感はあるけど、それぐらいよ。で、今日は何をするの?昨日あれだけ目立ってしまったから、今日はなるべく超能力は控えたいのだけれど。」
宇佐見邸のリビングにて休憩をしていた菫子と話す。度々一階で見かけるようになったが、宇佐見さん曰く俺のおかげらしい。
特別なことはしていない。菫子も父親のことを尊敬しているし、宇佐見さんも菫子に歩み寄ろうとしているのだから話をしていれば、すぐに親子間の問題はなくなるはず。
そういうわけで菫子にはなるべく一階のリビングにいるように促した。
これまで、菫子は能力を隠れて使うしかないため、二階の自分の部屋にいることが多かったらしい。衝撃や音などを考えるとかなり神経質になっていただろう。能力の規模だけに制限された状態で使っていくのはかなりのストレスだったはずだ。
ある程度発散させ、力のコントロールができるようになれば、心に余裕ができるだろう。実際に、昨日の爆発で体力は消耗したかもしれないが、雰囲気は少し柔らかくなっている。単に疲れているだけかもしれないが。
「昨日はすまなかった。君の能力の規模を見誤った。宇佐見さんには詳しくは伝えてなかったが、何か言われなかったか?」
疲労困憊の娘が背負られて帰ってきたのだ。かなり心配していた。本当に申し訳ないと思ったが、どこかで試さなければならないし、早くに越したことはなかった。
菫子が部屋に行った後に少し話したが、完全に納得していた訳じゃなかった。
「あまり聞かれなかったけど、何か言ってくれてたんじゃないの?体の調子とかを聞かれたくらいよ。」
納得してくれたと見ていいのだろうか。宇佐見さんも菫子の様子は見てるだろうし、良い方向に変わっていると見て判断したのだろうか。後で聞いておくか。
「今日は基本的に昨日の振り返りだ。昨日は疲れていただろうから話すことなく終わったが、霊力の扱い方や能力の限界を見たことでのこれからの進め方だな。」
「昨日やってみた霊力なら少しは扱えるようになったわよ。ほら。」
そういうと掌に霊力の玉を出現させた。そのままフッと霊力玉を消した。集中、拡散はある程度できている。
自信に満ちた顔。暇を見ては扱っていたのだろう。
「・・・あまり無理はしない方がいいが、その様子だと問題ないか。霊力の扱い方は昨日少し見せたが、様々な応用がきく。拒絶、感知、封印といった感じで本来は妖の類いを相手取るために磨かれてきたものだからな。」
「何でそんなに詳しいの?どっかの坊さんとかだったりするの?」
「似たような者だ。どうしても気になるか?」
ならない訳はないだろう。能力、力の使い方に詳しい謎の人物。信用はしているが、謎であることにはかわりない。
「当たり前でしょ。一応は私の先生ということになるんだから。」
「先生か。」
「そうね。私が教えを乞うのはあんたくらいよ。少しは素性を教えてもいいんじゃないの?」
「そうだな、、、いつかは教える。君が俺を越えるくらいに能力を使いこなせるようになった時だな。」
「なにそれ。基準が分かんないじゃない。教える気が無いってことは分かったわ。」
今の君に教えるわけにはいかない。何時幻想郷に行けるかは分からないが、菫子が行くにはまだ早い。
「じゃあ、一つだけ答えて。申し訳ないって言う気持ちがあるならいいでしょ?」
「事にもよるが、何だ?」
「あんたの右手、どうなってるの?」
長袖に革手袋。端から見ると変な感じだろうが、菫子の目には違うものが映っているだろう。
「霊力を扱ってみて、いろいろと分かるようになってきた。私の部屋にあるものが不気味な力を発しているということ。ずっと嫌な感じがしていたあんたの右手がそれよりも禍々しく感じる。それは何?」
やはり霊力が強い人間なら何かしら感じるのだろう。もっと封印を強くした方がいいかもしれない。
伝えておいてもいいだろう。警告になるかもしれない。
「ただの呪いだ。術者はもういないが、封印をしても怨念は滲み出るほどだよ。もし君がずっと独学でやっていたら何時かは降りかかるかもしれない。」
革手袋を取り、手に巻いた包帯を少し捲る。包帯にしろ革手袋にしろ封印には関係ない。外部への僅かな漏れを閉じ込めているだけで、自身への影響はない。僅かな漏れでも菫子なら分かるだろう。
「・・・何をしたらこんな呪いを受けるのよ。」
冷や汗が見える。直接的に触れずとも、危険性は理解できたと感じる。
「神様には喧嘩を売らない方がいいというわけだ。あまり出過ぎた真似は身を滅ぼす。気を付けておくことだ。」
「・・・」
警告はこんなもんでいいだろう。素直に聞くやつではないが、考えはするだろう。
「俺の話はここまでだ。君の話に移るぞ。能力の限界を知ってどうだった?」
「限界、、、発火能力にあそこまでの威力が出るとは私も思わなかった。けど、体力の消耗が激しいから使うことはないと思うわ。」
「少なくとも人を殺せる威力は十分にあることが理解できただろう?」
「・・・それを知りたかったのかしら?」
「君が理解しておく必要がある。前に言ったと思うが、咄嗟に能力を発動してしまう原因の一つに感情の動きがある。怒り、悲しみ、負の感情ほど爆発的な能力に繋がる。」
個人差はあるが、強い感情は能力を強化する。本能と関連があるのだろう。能力にもよるが、理性で制限されているのがほとんどだ。
「分かるだろ?他に人がいる場所であれほどの威力が咄嗟に出てどうなると思う?」
「・・・大惨事は免れないわね。能力のコントロールってそういう意味もあるのね。」
「大事なことだ。君の感情の揺れによってはあの威力を越える可能性も十分ある。最終的には限界まで昂った状態でのコントロールもして欲しいところではあるが、そんな機会はないだろうな。いや、ない方がいい。」
無理に危険を求める必要はない。ある程度抑制できれば菫子なら大丈夫だろう。
「でだ、使える場所を探している間の内容を考えていたわけだが、いくつか宿題を出そう。」
「宿題って言葉はあまり聞きたくはないわ。強制されているみたいで嫌。」
「まあそう言うな。やって欲しい事だが、とりあえず二つだ。能力の同時使用と霊力で周囲に結界を作る。この二つをやっていくか。ゆっくりやっていけばいい。」
能力の同時使用、霊力での結界はどちらとも細かい制御の前段階だ。どちらも集中力の維持にはいい練習になる。
できれば格闘術も鍛えてやりたいところだ。菫子次第だが。
前回に前編と書いて、今回後編じゃないのは間違いではないです
後編はたぶんまだ先