かくして幻想へと至る 作:虎山
目の前で八角形の何かを構える魔法使い風の少女。まるでこの時を楽しみにしていたと言わんばかりの笑顔をしている。
満月を背に輝く少女はまるで彗星のようであった。そんな少女を憧れを抱いているように見ている気がする。この胸の高まり、楽しみにしているのはこちらも同じ様だ。
・・・
「・・・お前は誰なんだ?」
何時ものようによくわからない夢を見ていた。あの少女はきっと魔理婆さんなのだろうか。かなりの頻度で出てくる魔理婆さんだが、夢の主と仲がよかったのだろうか。
(霊夢、と言う人なのだろうか。)
神社にいることが多いことから巫女なのではないだろうか。
(何を伝えたいのだろうか。今のところ魔理婆さんくらいしか出てきていない気がする。)
まあ、そんなことを考えてもどうしようもないので、いつも通りにいこう。
部屋を出て、軽く体を動かすため外に向かう。いつも通りの静かな朝、と言うわけではなかった。
(!人だ。)
結界があり向こうからは認識されないが此方は認識できる。見た感じだと十数人というところだ。手には各々物騒なものを持っている。ここまでくるのだから妖怪相手の対策だろうか。しかし何故だろうか。何かを探しているような、そんな感じもあるが別の目的もありそうだ。
目的のものがないと思ったのかぞろぞろと引き返していく。
(ん、あれはなんだ?・・・っ!)
一人が持っている不自然な布袋に違和感を感じた。しかし、すぐに確信に変わった。
(チラッと見えた金髪、ところどころ見える赤い斑点、人一人分の大きさ、正確には子供一人分だがあれは人を入れているのか。)
遠目からでは具体的には分からない。幸いながら結界の出入りは最近出来るようにはなっている。
(魔理婆さんはまだ寝てるし、関知されることはないだろう。行ってみるか。)
結界を抜けて、気配を殺しながら近付く。木陰に隠れ、聞き耳をたてる。
「やっぱり、もう食われちまってるよ。昨晩からなら生きてる方が奇跡にちかい。」
「だからといって、諦めろってか!俺は死体を見るまでは絶対に止めないからな。どうしても嫌ってんなら、一人でも探す。」
「あんたに死なれるとこっちが面倒になるんだよ。夜が明けたことだしいったん里に戻ろう。」
会話から察するに誰かを探しているらしい。誰かの子供なのだろうか。それでも夜に出歩くのは滅多にないはずだ。
(それにあの袋は、・・・やっぱり人か。いったい何のために。)
気になるがこの不気味な団体に気付かれるのも厄介なことになりそうだ。とりあえずこの場を離れよう。
「・・・けて。」
(ん、何だこの声。)
団体とは違う方から微かに聞こえた。団体は少し離れているから聞こえないのだろうか。
(行ってみるか。)
隠れながら、声のする方に向かう。
「グゥゥゥ」
獣のような唸り声が聞こえた。草影に隠れ、観察する。最初に遭遇した妖怪と似たような妖怪だ。
木を必死で引っ掻いているようだ。
「誰か助けて!」
その木からやや高い声が聞こえていた。よく目を凝らすと、自分よりも小さい子供だった。泣きながら助けを求めていた。
(・・・今の俺にいけるか。他に妖怪の気配はしないが、、、いや、やろう。)
両手に霊力を集める。全力の一撃を油断しているあいつに叩き込む。
バキッと妖怪によって木が折れた音と同時にマスタースパークが放たれる。ギューンと言う音と、眩しい青白い光線が飛び出し妖怪を突き飛ばす。
不意打ちをくらった妖怪はよろめいている。今のうちに子供の前に立ち、背中ごしに声をかける。
「大丈夫か?」
「え、あっはい何とか。けど、足を挫いちゃって。」
「逃げられそうか?」
「・・・難しいです。」
「そうか、ならあいつを何とかしないとな。」
さっきの爆発音であの団体か魔理婆さんのどちらかが聞こえてくれればいいが、あまり期待しない方がいいだろう。
妖怪はところどころ毛が焦げているのか煙をあげながら、此方に怒りの眼差し向けている。
(霊力でのマスタースパークは対した威力がでないのは分かっている。それでも今の全力が精々よろけさせる程度か。意外と厚い皮膚でもしてるのか。)
ならばと思い、全身に霊力を纏わせる。身体の強化、霊力の本質をより出すのはこういうやり方だ。
砲撃が効かない相手なら接近戦しかない。
妖怪は自分に目標を定め、飛び掛かってくる。自分を最初に仕留めた方がいいと感じたのだろうか。
飛んできた勢いそのままに鉤爪で引っ掻く。身をかがめて鉤爪をよけて、木の陰に隠れる。単調な攻撃であってもまともに当たれば無事ではすまない。だが、むこうの図体がでかく、木の多いここではこっちが有利。
裏を突き妖怪の腹をぶん殴る、そして回避、隠れる。今まで小さい者と鍛練していたためか、攻撃はかなり当てやすい。
相手にダメージを与えていっているが、なかなかくたばらない。流石に妖怪と言ったところだろうか。
迫り来る牙を避け、すれ違い様に顔に向けて小さいマスタースパークを放つ。それが的確に眼球に当たったのか、妖怪は悶えている。
(人間にとっての弱点だが、妖怪にも当てはまるな。しかし、どうするか。)
一方的に見えて、実際はそこまで一方的ではない。小さいながらも霊吾の体には切り傷が多くあり、出血もそれにともない少くはない。このまま続けば、霊吾の方が先に倒れるかもしれない。
(・・・一か八かでやるか。どっちにしろこれで通らなかったらもう打つ手はない。)
右手に限界まで霊力を集中させる。最大限の強化を施す。妖怪の攻撃を掻い潜りながら、懐まで潜り込む。
「っら!」
小さい雄叫びを上げ全力で喉元を突き上げる。何回か攻撃を当てた中でも一番軟そうだった場所だが正解だったようだ。皮膚を貫き、ぐちゃと嫌な音と感触がした。
「ガァァァァ!」
獣のような雄叫びを上げ、何とか爪を降り下ろそうとする。喉を潰した程度では妖怪は止まらない。
「まだ終わってねーよ、マスタースパーク!」
妖怪の体が爆発と青白い光線と共に浮き上がる。制御の出来ない威力ではあるが、ゼロ距離であるなら問題はない。ただ、こちらの手も無事と言う訳ではないが。
妖怪はドサッと地面に倒れたあと、ピクリともせずに動かなくなった。爆発と砲撃で内部から焼き焦がしたら流石にくたばるか。
「ふー、何とかやったか。」
血濡れの右手を見てみると、爆発で皮膚が焦げているのか黒くなっている。結構痛い。持ってたタオルでぐるぐる巻きにしておく。
ふと、襲われていた子供をみると、驚きの表情で此方を見ている。よく見れば少女であった。
「終わった、早く戻った方がいい。お前を探していると思う人達を見たからな。」
しかし、少女はなかなか立てそうにない。
(そういえば足を挫いたっていってたか。)
屈むように体を落とし、乗るよう催促する。
「あの、その、ありがとうございます。」
おずおずといった感じでのっかかる。
「人里の場所は分かるか。分かるなら教えてほしい。」
「はい、大丈夫です。」
まず、こっちと言って顔の横から手が延びて方向を指す。それに従い歩いていく。
淡々と歩いて、大分経った。
「・・・あの、あなたは、人間ですよね。」
「それ以外に見えるのか。」
「いえ、そう言うわけではなくて、妖怪を身一つで倒せる人間って里では凶さんしかいないし、あなたを見たことがなかったから。」
「俺は外の世界からやってきた人間だ。里に行ってないからだろう。」
魔理婆さんのことは伏せよう。それと気になっていたことを聞こう。
「何故、あそこにいた?妖怪が出る場所に子供一人では普通はいかないと思う。」
その質問にどこか言い渋っているような感じを見せる。
「・・・その質問を答えるまえに一ついいですか。」
「何だ?」
「あなたは妖怪の事をどう思っていますか?」
少し前までおどおどした印象だったが、何処か強い意思を感じる。
「・・・俺は妖怪をそれほど見てきた訳じゃないからなんとも言えない。ただまあ、人間も妖怪も話を聞くやつは聞くし、聞かないやつは聞かない、それ位の認識だ。」
魔理婆さんの話でも妖怪にもいろんな奴が居ると聞いている。まだ獣型の妖怪である、妖獣としか会っていないが。
少しの沈黙が流れる。
「あなたなら、大丈夫だと思います。実を言うと、妖怪と妖精の友達に会いに来たんです。そしたらどちらもいないし、別の危ない妖怪も出てきたから隠れてたんですけど、夜になってますます帰れなくなってしまったんです。」
「人里の人間は妖怪を嫌っていると聞くが。」
「いえ、違うんです。妖怪の中にも人間と友好的な方達もいるんです。けど、里の人達はほとんど妖怪は害悪だって言ってるんです。一人は分からないんですが。」
珍しい人間なのだろうか。しかし、こういう考え方をよく持つことができるな。
「何故、そういう考え方を持てた?」
「昔、助けてもらったことがあったんですよ。行ってはいけないとこまで行って、あんな妖怪に見つかってしまって、そこを助けってもらったんです。」
なるほど、そういう経緯があったのか。
「そういえば、名前を聞いていなかった。教えてほしい。」
「八枝と言います。あなたは?」
「霊吾だ。」
「霊吾さんですか、あ、もうそろそろつきます。」
木々を抜けると壁のようなものが見えてきた。里はこれに囲まれているらしい。
「っ!」
「わっ!」
突然の殺気に飛んで身を引く。
「これはこれは随分と可愛らしい少年だな。それに似合わず強そうだね。」
刀を持った青年とおぼしきものが現れた。
「あ、凶さん、違いますこの人は私を助けてくれた人です。」
凶と呼ばれたその人は今にも斬りかかりそうだったが、八枝の一言で止まったようだ。
「そうか、礼を言う。だからと言って君の事を信用はしたわけではないけど。」
刀を納めてくれた。それでも警戒を解いてはいない。何時でも斬りかかれる雰囲気だ。
「・・・あんたとは敵対したくないな。」
勝てる気がしない。少なくとも今の自分には。
「僕も好んで人間を斬りたくはないよ。ああ、そうだ八枝ちゃん、今は里に入らない方がいいよ。うちの小屋にいな。」
何だか微妙な表情をする凶。
「けど、お父さん達が心配していると思いますし。」
(お父さんと言えば、あの団体にいた人のどれかだろうな。ん、団体といえば。)
「なあ、あんた。」
凶に呼び掛ける。
「何かな。」
「少し前に八枝を探しに来てたであろう団体が何かを持ってたようなんだが、あんた、それがなにか知らないか?」
「・・・見たのか。」
「少し見えた。俺の予想通りなら正気を疑うものだな。」
はぁー、と溜め息をついたような素振りを見せる。
「八枝ちゃん、君にとっては残酷なものだけど、悲しんではいけないよ。最悪、俺と同じように人から嫌われたくなければ。」
八枝は少し疑問に思っているようだ。自分もよくわからない。
「まあ、注意して入るか、いや入るとまずいね。こっちから見て判断しようか。」
そういうと凶は壁を探って一か所をブロックのように取り出した。八枝は訝しげな眼で見ている。
「二人とも見てみな。八枝ちゃんは気を付けてね。」
二人で人里を見る。
目に飛び込んできたのは十字架に磔にされた金髪の少女だった。