かくして幻想へと至る 作:虎山
「そうか。菫子に似た少女だったか。」
「境遇は違いますが、似ていました。菫子よりかなり危険な状態で厄介でしたよ。菫子には武力がなく、本人の性格もあって落ち着いていたからよかったんですが、武力があって高揚している相手はなかなか骨がおれましたよ。」
「島さんが言うには霊吾君が敗北を教えてくれたと聞くが、武術に関しても長けているのかと驚いているよ。」
島さんからすでに学校での事は報告されているだろう。
「でだ、話に聞く限りでは君が傷付く事はなかったはずだが。何があった?」
「島さんには言わないで下さい。学校からの帰りに斬りかかられました。この通り問題はないです。向こうにも大きな怪我はありませんので安心してください。」
「・・・君がいいならそうしておこう。ただその子が他の人に同じような事をする可能性はないのだろうか?君だからこそ対処できたのだろうが、他の人だったら取り返しのつかない事になったはずだ。」
そういう心配はするだろう。近くに人を斬ってくる存在がいるというのは恐怖だ。
「ないとは言いきれません。なので暫く様子を見に行こうと思ってます。抑えられるようにしていきます。」
「・・・分かった。一つ聞きたいが、菫子もそうなっていたのだろうか?」
「タイプが違うのでどうとは言えませんが、可能性は低くなかったです。」
超能力が暴走すれば、周囲まで影響を及ぼす。規模を考えればより悲惨な事になるだろう。
とりあえず依頼完了の報告は終わった。後は個人的な相談だ。
「菫子さんと会わせてみたいのですが、よろしいですか?」
「危険で厄介と聞いた相手に会わせても大丈夫なのだろうか?」
「基本的には大丈夫です。向こうも人を拒絶するタイプではないですし、個人的には菫子さんと気が合う可能性が高いと思ってます。」
性格的にも相性が極端に悪くはないだろうし、仲介に入ればいざこざは起きないだろう。
「・・・確かに菫子には年が近い友人を作ってもらいたいところだ。」
・・・
土曜の午前中。菫子とは違い、高校には毎日行っている妖見に会わせるには土日しかない。土日でも部活動はあるのだが、島さんからの許可はいただいている。
「あんたを斬ったやつのとこに行くの?」
「そうなる。そういってやるな、あいつもそれなりに反省してる。」
「・・・あんたがいいんならそれでいいんでしょうけど。何で私と会わせるのよ?」
「いい刺激になる。君にもだが、向こうにも。」
「ふーん、そういうことにしといてあげるわ。で、彼方さんはどういう能力を持ってるの?あんたを斬れるくらいだから強力なものでしょ。」
あんまり菫子に力を見せている訳ではないが、其れなりに感じているか。
「具体的には俺も分からない。自身の身体能力を上げる能力だと推測はしているが。俺の速さについてこれるくらいだ。」
一度、菫子には見せている。姿を捉えることができない程の高速移動。
「・・・敵対すると厄介そうね。」
「仲良くしてくれると助かるんだがな。」
・・・
玄関を開けて、声をかける。奥から妖見がやって来た。
「こんにちは、霊吾さん。今から修練ですか?道場に行きましょう!」
あれから二度ほどここには来ているが、来る頃には決まって準備ができている。
基本的には素直な子だ。
「相変わらず気が早い。里見さんは?」
「おばあちゃんなら買い物に行きました。そういえばその子は?」
「お前に紹介したい人だ。宇佐見菫子といって、似たような存在だと思ってくれればいい。」
先ほどから静かにしている菫子。チラッと見ると警戒しているようだ。感知能力が上がっている分、何か掴んでいるのだろう。
「そうですか。初めまして、魂魄妖見と言います。気軽に呼んで欲しい。」
「・・・私も好きなように呼んでいいわ。」
問題は特になさそうだな。
「妖見、今日は修練前にやってもらうことがある。菫子もだ。」
玄関から道場に移動した。魂魄家は広い屋敷で道場があり、そこで妖見は祖父から剣術を学んだそうだ。
持ってきた紙風船とプラスチックのバットを渡す。
「今からしてもらうのは遊びだ。互いに風船を頭に付けて、相手の風船をバットで叩いて割るだけ。」
二人から懐疑的な目を向けられる。これに何の意味があるのかと目線で訴えている。
「色々考えずにとりあえずやってみろ。」
すぐに終わればいつもの修練に戻るといったら、二人とも準備を始めた。
(まあ、すぐに終わることはないだろう。)
始める前に妖見に聞こえないように菫子に耳打ちする。
「発火以外なら能力は使っていい。」
「・・・いいの?相手にならないわよ。」
「それならそれでいい。」
二人が向き合って対峙する。妖見はバットを構えているが、菫子は片手に持っているだけだった。
武術も何も知らないし、能力を使ってすぐ終わらせるつもりだろうから関係ないと考えているのか。
「始め。」
妖見が先に動き出す。距離を詰めて、菫子の頭に振り下ろそうとする。
その瞬間に菫子が消えた。
「・・・うっそ。」
「・・・面妖な術を使うのか。」
背後に回り、振り下ろしたバットを見ることなくバットで受け止めている。
これで互いの相手がただ者じゃないというのは理解できただろう。次からが本番だ。
妖見は振り返りながらバットで菫子のバットを弾く。そのまま流れるように攻撃に移る。
バットが弾かれるや否や、両手を突きだし、妖見を離す。念動力での限界は一人分を浮かす程度だったはずだが霊力を使って吹き飛ばしている。
距離を取って牽制しあう二人。どちらも相手に決定だがない状況だ。菫子は瞬間移動している限り、攻撃は当たらない。妖見も鋭い勘で一撃を防いだときに、警戒しているはずだ。
ここからは持久戦になる。
(どっちが勝つかな。妖見は集中力、菫子は体力が切れたら負ける。まあ、慣れている方が勝つな。)
・・・
パンッと風船が弾ける音がした。
「はい、止め。」
二人ともへたりこんだ。まあ随分長くやっていたから気付かぬ内に疲労が蓄積していたか。
風船を破られた菫子は不服そうな顔をしている。
「はあ、はあ、、妖見さんだったかしら。何で見えない攻撃が防げるのよ?」
普段、あまり動かない菫子の方がだいぶきてるな。妖見の方は少しの時間で呼吸が整っている。
「んー勘かな。いや、ほんとに説明するほどのものではないんだ。危ないと感じたときに咄嗟に防いでいる感じだからな。」
「・・・対処のしようがないじゃない。」
バタンと仰向けで倒れる。よくやった方だ。
「互いに相手はどうだった?」
「霊吾さんが連れてきたというから普通ではないと思っていたんですが、超能力を使うとは思ってなかった。」
「あんたを斬った相手とは言え、こうも移動先を読まれると手がでないわ。」
互いが互いにそれなりに思うことがあるといった感じか。特に菫子に関しては相性の悪さを感じているだろう。
「さて、勝負はついた事だし、霊吾さん!いつものやつしましょうよ!」
「分かってるから少し休んだ後だ。菫子はその間、ゆっくりしておけ。」
「・・・分かったわ。」
妖見との修練。能力を抑える、扱えるようになるための訓練だが、やっていることは単純に木刀での試合だけ。身体能力を上げるという能力であるなら、実戦で学んだ方が早い。
菫子はその試合をじっと見ていた。
・・・
日が落ちかけている時間。道場での修練を終え帰路に着いている。
「ねえ、私も戦える方法ないの?」
「何だ、悔しかったのか。安心しろ、妖見が異常なだけで本来なら後ろに瞬間移動した段階で勝負は付いている。」
「・・・そうなんでしょうけど、あんたも戦えるじゃない。私も能力に関係なく力に抗う方法が欲しい。」
「お前の能力上あまり必要性は感じないが、どうしてもと言うなら教えてやろう。といっても格闘術になるが。」
「お願い。私に教えて欲しい。」
そろそろストックがなくなってきました