かくして幻想へと至る 作:虎山
誤字報告も毎度助かっております
後始末を警察に任せ帰路に着く。宇佐見さんを通しただけあって話を聞いてくれる。信じてくれたかは別だが。死体の状況からしても野生動物とは思えない食われ方をされているのを見て普通ではないと思ってはくれたようだ。
被害者の二人については菫子と妖見のことを内密にするようにお願いした。警察が来たときは隠れて過ごしたが二人については隠しようがなかったが、素直に聞いてくれた。
空は赤くなっており、夜になるまで時間はかからないだろう。早く事がすんでよかった。
「二人ともだが、今回は助かった。俺だけでは簡単にはいかなかったな。」
救出では菫子、戦闘では妖見にそれぞれ助けられた。俺一人でも妖怪相手に立ち回ることはできる。だが、その中で二人の人間を救うのは難しい。
「そうかしら。あんたが自分の手を明かさないから結構強いって思ってたけど。」
「能力で言えば菫子の方が強力だ。純粋な戦闘だけで言えば俺は妖見にはもう勝てないだろうな。」
「模擬戦では互角じゃないですか?」
「楼観剣を持てば話しは別だ。楼観剣を持ったお前の剣を捌ける自信はない。」
木刀を持っての戦闘では妖見の能力は発揮されない。それでも強いのだが、真剣を持てば別格になる。
切る能力と呼んでいるが、切るために力、速さを上昇させる能力のようだ。石や鉄などを容易く切り裂くだけでなく、結界や弾幕も切れる。
普通の刀では耐久性の問題があるが、楼観剣なら妖見の能力に耐えることができる。
「でもあんたは変な術をいろいろできるじゃない。さっきの何かもただ単に吸出したわけじゃないみたいだし。あれは何なのよ?」
「・・・房中術だ。詳しくは言いたくないが、力のやり取りを体を通して行うものと思ってくれればいい。」
「房中術ねえ。聞いたことあるようなないような。」
「確かに菫子にはまだ早いと思いますね。ようはあれのことでしょう。エロいやつって何か見たことありますし。」
そういう認識されるから詳しくは言いたくなかった。
「ああ、そういうやつね。顔色変えずにできるようだし、慣れてるようね。」
「意外ですね。」
小娘二人から複雑な目で見られる。
「で、そろそろ答えてくれるかしらね。」
「・・・何が聞きたいんだ?」
「あんたが何者なのか知りたい。妖見さんにもあまり言ってないようだし、言いたくない事でもあるわけ?」
どこまで話すか悩む。幻想郷の事を話すのは駄目だな。
様々なことができる事を納得させるにはもともと目指していたものを話すしかないか。
「・・・俺は魔法使いに成れなかった人間だ。霊力の扱い方が秀でているのも本来は魔力という霊力よりも変化に富んだ力を使っていたからだと思う。」
「成れなかったっていうのはどういう事?それに魔法使いって種族の事?」
「そもそもだが魔法っていうのは魔力を媒介にして様々な現象を起こすものだ。菫子の超能力を能力以外の力を使って再現するようなものだ。俺にはその魔力を生み出す術がなかった。種族としての魔法使いは確かにあるが、どうやってなるかは俺には分からん。」
幻想郷の魔女は魔理婆さんを除くと種族としての魔法使いがほとんどと聞いている。
魔力を使えない以上、人の身で魔法使いに成れる人間は理論上いないからだ。
「魔法使いってあんな化物を相手にもよく戦っていたりするんでしょうか?」
「それは俺が例外的な存在だからとしか言えない。どっちかには前に御子のようなものだと言ったことがあるかもしれないが、そこで妖怪退治のような事をやっていた。」
「今回みたいな妖怪とかですか?」
「そうだ。ああいう人食いは珍しくはない。本当に厄介な妖怪は今の俺では相手にならない。」
「厄介な妖怪ですか?」
「妖怪っていうのは滅多に人前にでることはない。今回みたいに本来は人が足を踏み入れない場所に隠れている事がほとんどだろう。だが、本当に力を持ったやつは違う。お前らが今回見た妖怪で何か思ったことはないか?」
「そうですね、、、人の部分があるとは思わなかったですね。もっと異形のような感じだと思ってたんですけど。」
「同じね。人と合わさったような見た目とはね。逆に不気味だったわよ。人の部分があるだけで余計に嫌悪感を感じたわ。」
二人とも似たような感じだ。人と化物が合わさったような姿。化物の姿より人が混ざっている姿の方が恐怖がより煽られる。
「菫子が言ったように嫌悪感や恐怖を与える姿をした妖怪っていうのは基本的には表にでてこない。昔ながらに興味本位で訪れた奴らや迷い込んだ者に恐怖を与え糧とするくらいだ。」
妖怪は基本的にこちらから接触しようとしなければ遭遇することはない。
「厄介な奴らだが、ほとんどが人と変わらない見た目だ。なんなら現代に溶け込んでいる妖怪もいるだろうよ。」
「人間の姿ですか?」
「強い妖怪ほど人と見た目が近くなる傾向にある。人の恐怖から産まれたようなものだからかもしれんが、詳しくは分からん。気まぐれ何かで被害に遭うことがある。災害みたいなもんだ、知らない限り対処のしようがない。」
「・・・私達の近くにも居るのかしら。」
「菫子、俺を感知する時に分かりやすいと言っていたな。それに妖怪の気配も探ったことだし何か分かったことでもあるだろ?」
「・・・あんたの気配に少しだけ妖怪の気配が混ざっていると思ったわ。もしかしてあんた、、、」
「俺は人間だ。俺の中に妖怪を感じる理由だが、こいつが原因だ。」
首の包帯を少し捲る。未だに治る気配のない傷をバックミラー越しに見せる。
「昔、手負いの妖怪に油断して付けられた傷だ。如何な妖怪と言えど死ぬまでは何をするかは分からない。人間とは違い四肢が無くとも人を殺める事はできる。」
「それが妖怪に容赦しない理由ですか。」
「まあ、理由の一つだな。菫子への質問の答えだが、少なくとも俺達が住んでいる周辺には妖怪はいない。そもそも絶対数が少ないからな。」
・・・
「じゃあな、婆さんには、、言い訳できないか。刀持ち出してる時点で無理だな、後日謝りに行く。」
「私が勝手に行ったので怒られるのは私だけですよ。」
「本来なら止めるべきなんだよ。そういうわけだ、次の休日にまた来る。」
「分かりました。それではまた。」
妖見を置き、走り出す。次は宇佐見邸か。
(宇佐見さんには何と言うべきか。とりあえずはこっちも謝罪だな。)
後部座席で寝ている菫子。あまり人前では弱みを見せずに気丈に振る舞っているが、相当疲弊していたのだろうな。
・・・
宇佐見邸に着いた。少し揺さぶったが菫子が起きる様子はない深い眠りについている。仕方ないが運んでやるか。
菫子を持ってチャイムをならす。少しして宇佐見さんがでてきた。
「・・・帰りが遅いと思っていたら君に付いていってたのか。すまない、迷惑をかけたようだな。」
「夜も遅いですが報告もかねてよろしいですか?」
「後日でもいいのだが、私も聞きたいことがあるから今日の内に話を聞いておこう。」
家に上がり、菫子を部屋に連れていく。ベッドに寝かせて1階のリビングで話をする。
「今回も助かった。君が会った警官から話は少し聞いている。亡くなった方は残念だが、二人は無事に帰れたそうだ。君も含め事情聴取はあるだろうが。」
事情聴取か。どこまで言えばいいか。結局は公にでないだろうが。
「何故菫子が君といたんだ?警官から報告では君一人のはずだったんだが。」
気になるだろう。あの場は間違いなく俺と宇佐見さんしかいなかった。俺が連れていこうとしない限りは菫子が一緒にいることはありえない。
能力について菫子から話をした方がいいと思っていたが、宇佐見さんにある程度は伝えておいた方がいいか。
「以前菫子さんには能力があると言いましたが、覚えてますか?」
「ああ、覚えているよ。その能力が関係しているのか?」
「直接彼女が伝えるまで待っておこうと思ったのですが、今回のようなことがこれから起こる可能性もあるため話しておきます。彼女の能力についてですが、一言で言うと超能力です。」
超能力についての説明。それにより今回の事を知られたことを話した。透視、念動力、発火、瞬間移動等ができ、おそらくできることは増えてくる。
「・・・なるほど、君がそういうのであればそうなのだろう。益々あの子が人間離れしていくな。私は彼女に何もしてやれないのか、、、」
どこか悲しそうな顔をする。恐怖ではない。この感じは自分に対する情けなさか。それを再認識してしまったのだろう。
「特別なことをする必要はないですよ。何時も通りに接してやってください。宇佐見さんが自分を責める必要はないです。」
「・・・そうだな。私は私のできることをするだけだな。」
その後も報告が続いた。妖怪についてと被害者の二人についてだ。一応、二人については無事ではあるが今回の事での心の傷や妖気を体に取り入れた事での後遺症なんかもある。
少し様子を見ておきたいこともあり、その旨を伝える。
「その二人なら暫くは病院にいるだろう。かなり衰弱した様子だったとあるから回復次第元の生活に戻るだろうが、私から連絡させてもらうよ。」
「助かります。少し気がかりなので。」
「それとだが、一つ面白い情報がある。菫子や魂魄さんのように変わった少女の話になる。」
新しい情報だ。というか随分と少女が多いな。
「何でも奇跡を操る少女だそうだ。」