かくして幻想へと至る 作:虎山
何回たっても無くならないですね
「博麗神社と言う場所だが見つかったよ。ここがその場所だ。君が言っていた地名だけど今はあまり使われていないらしい。」
頼んでおいて何だが、かなり広い情報網だ。寂れた神社ということもあり見つけ出すのが難しいと思ったが。
「山奥ではあるが人が訪れる事は多いようだ。それに不定期だが祭事も行っている様子もある。君が言う寂れた感じはしないと思うが。」
地図と写真を渡される。写真では間違いなく博麗神社だと分かる。
「・・・いや、ここに間違いないです。ありがとうございます。」
「いつものお礼だ。気にしないでくれ。」
博麗神社周辺のどこかに外と内を分ける境界線があるはずだ。本来であるなら干渉することすらできない。
だけど結界を管理していた身なら干渉はできる。だからといって簡単に入れるわけではない。
(大結界と霊力を同調させて通り抜けるのが現実的か。紫さん以外の大妖怪も出入りしていたと聞いていたが、詳しく聞いておくべきだったか。)
大妖怪のやり方で入れるかは別として、似たようなやり方ができたかもしれない。
(季節的に紫さんは冬眠の時期が近い。入るならこの時期がいいな。)
大妖怪でも誤魔化す方法はある。満月の前夜から夜にかけてはどんな妖怪といえど妖力の変化は抑えられない。藍さんといえど感知は難しいはずだ。
満月の日の朝に向かえばいいか。
「・・・やはり行くか。ここに残ってはくれないだろうか?」
「すみませんが行かなければいけません。宇佐見さんへの恩はありますが、どうしても譲れません。」
「・・・そうか。寂しくなるな、、、」
短くはない付き合いだった。俺を拾ってくれて、幻想郷に行くための手助けもしてくれた。
宇佐見さんには感謝しかない。
「菫子にはこの事を言うのかい?」
「悩んでいます。不義理かもしれませんが、黙って消えるのがいいのかもしれません。」
間違いなく付いてくる。超能力を使われれば簡単に付いてこれる。
菫子の実力なら幻想郷でも問題なく立ち回れるくらいにはなっている。格闘術を学ぶ前の俺よりも強くなっている。
だけど家族がいる。もし行くつもりであれば宇佐見さんと話し合う必要がある。帰ってこれるか分からない場所に彼女を連れていくわけにはいかない。
(まだ菫子には早い。こっちで学ぶことも多い。よく知って、考えてからでも遅くはない。)
こっちの勝手な言い分かもしれないが、理解して欲しい。それだけ自分を大事に思ってくれる家族というのは大事にして欲しい。
「何時ここを発つのかは決めてるのか?」
「予定であれば四日後の朝方だと思います。」
「そうか。何か要るものはあるかい?こちらで用意できるものは何でも言ってくれ。」
「大変気持ちはありがたいですが、特にはないです。こちらの物を持っていっても使えない物も多いですし。」
動力の関係上仕方ない。紫さんに燃料など頼めなくもないだろうが、今の俺が友好的な関係を築けるかは分からない。
向こうからすると怪しい存在だ。幻想郷は何でも受け入れるが、個人がどうかは分からない。
未来の幻想郷を受け入れられないからこそ、俺を過去に飛ばしたのだから。
「・・・これで最後になるのか。君に手を差し伸べてよかった。私も君に大きな恩がある。もしこちらに来ることがあれば、また頼って欲しい。」
「ありがとうございます。本当にお世話になりました。」
・・・
「・・・そうですか。妖見も寂しいと言うでしょうね。」
魂魄家。妖見が帰ってくる前に里見さんに話をする。
「私の我が儘になりますが、妖見を連れていってはやれないでしょうか?」
「・・・あの子には里見さんがいます。もしあの子が一人だったら考えたかもしれません。妖見さんはおそらくこの時代には生きにくい。ですけど適応はしてきている。無理してまでこっちに来ることはないですよ。」
「あの子を貰ってくれるのは霊吾さんくらいしかいないと思っていたんですけど、無理のようですね。」
口に手をやり微笑を隠すような仕草だ。上品に見える行動の裏ではそんな事を考えていたのか。
あの子の祖母だ。まあ普通ではないよな。
「私は長くはありません。ずっと心配だったんです。妖見が私亡き後、普通の人生を過ごせるとは思っていませんでしたので、あなたの存在は私にとってもありがたいものでした。口を開けば霊吾さんと面白そうに言う妖見を見るのが好きです。・・・もう一度考え直してはくれませんか?」
こういう手には弱い。特に祖母と孫の関係については。妖見の事をみるのも里見さんのためと言うのもある。
里見さんにとってはやっと手に入れた安らぎ。失わせるのは辛い。それでも俺は。
「・・・すみません。」
「ふふ、少し意地悪に言ってしまいましたね。ここで曲がってくれる人ならあの子も苦労しなかったのでしょうけど。霊吾さん、一つだけお願いです。」
「お願いですか?」
「妖見に黙って行くような事はしないで欲しいのです。また知らぬ間に慕っている人が居なくなるという経験をさせたくないのです。それだけはお願いします。」
祖父の事だろう。確かに酷だな。菫子にも悪いか。
(・・・黙っていくのは止めるか。妖見には直接で問題ないと思うが、菫子は、、それまで考えるか。)
「・・・分かりました。」
「ありがとうございます。今日はせっかくですし、一緒に晩御飯を食べていかれてください。何時も通り妖見と稽古をするのでしょう?」
・・・
「楼観剣を持ってきたな。今日が最後になる。お前の今の力を見たい。」
「最後ですか、、やはり何処かに行かれるのですね。」
「分かっていたのか。」
「・・・あなたが日を追うごとに離れていく感覚がしていました。」
流石の勘の鋭さだ。それが発揮されるのは戦闘面だけではない。あの婆さんといい、厄介な家族だ。
「冷酷そうに見えてお人好しで、小言を言いながらでも異質な私を受け入れてくれる。それと容姿から体格に関してはド・ストライクです。私を連れていってください。」
真正面からの好意は慣れていない。真っ直ぐにこちらを見つめる目。目を反らすわけにはいかないか。
「・・・悪いな。」
「・・・はあぁ、分かってましたけどやっぱり辛いですね。でもいいです。ここからが私の勝負ですから。」
「勝負だと?」
「互いに条件を提示して戦いましょう。私からの条件はあなたがここに留まる事です。」
『俺が勝てば師匠のこれからを貰います』
かつての記憶が蘇る。絶対的強者に向かっていった若き自分。
妖見と俺にあの当時の俺と美鈴さんほどの差はない。純粋な戦闘では勝ち目はない。
だが俺の手札を妖見は知らない。そこが俺の唯一の勝ち筋だ。
「小傘、すまないが人を切る。殺しはしない、協力して欲しい。殺さないように刃をできるだけ収めてくれないか。無理、もしくは嫌なら形は変えなくていい。」
信頼関係があったとしても頼みづらいが俺の意思を汲み取ってくれただろうか。
拒否の反応は返ってこない。ただどことなく悲しむ感じが伝わってくる。こいつも意思を持っているんだ、それなりに人を識別しているのか。それとも純粋に俺に呆れているのか。
傘を振るうと刀に変形した。
「最初に打ち合った時を思い出します。あの時と今は違います。」
楼観剣に手を添えて腰を落とす。抜刀術の構え。妖見の能力を最大限に発揮させるために二人で考えついた一つの技。
ただ一点を斬るためだけに特化させた技であり、最速の斬撃。完全に速さをコントロールできるわけではないが、目で相手を捉える相手には絶対に避けられない。
だが、防ぐ手段は無くとも当たらない方法はある。
(この手を使うのはまだ早いな。勝負自体は一瞬だが、妖見の力を見るためにもギリギリまで奥の手は残しておくか。)
小傘の扱いが悪くなってますが、嫌いではないです