かくして幻想へと至る   作:虎山

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巫女遊戯

 幻想郷に滞在してから2週間程たった。あれから人里にはあまり行かずに霧の湖や妖怪の山を中心に散策していた。

 

 霧雨魔理沙についてだが、あれから見ていない。一時的に家族と暮らしてるのかもしれない。たまたま会わなかっただけかもしれないが。

 

 今日は何をするかと考えながら起き上がり、居間に行くと巫女が戦闘服に着替えていた。普通の巫女服とは違い、黒いトータルネックに赤い羽織。未来の俺がよくしていた服装に似ているその格好は血が付着しても目立たないという理由があった。

 

 

 

「さあ、やるわよ!」

 

 

・・・

 

 

 時間が経ち傷も癒えてきたのもあり、巫女との組手をすることになった。予てより言っていたので向こうは楽しみにしていたようだ。

 普段の息抜きみたいなものだろう。

 

 俺も巫女の実力を見ておきたい。代々、人から外れるほどの力を持っていたとある。初対面の時とは違い条件は同じ。どこまで通用するか。

 

「ルールはどうする?」

 

「特になしでいいだろ。まあ良識の範囲内なら何やっても問題ないってことだな。」

 

「了解。」

 

 先手を取っておきたいとこだが、向こうの手を知りたい。回避優先で手の内を把握しながら反撃するといういつものやり方。

 

 

 巫女が腰を落として低い体勢を保っている。何かの準備か。

 

 

 地を蹴り、その勢いで地面を這うかのように低い位置から潜り込んでくる。

 

 拳を下に叩きつけるがすいっと避けられる。下から突き上げるように拳が飛んでくる。後ろに下がりながら避ける。

 勢いそのままに上空に飛び上がり、空を蹴って動き回る。

 

(速い。それに動きが変則すぎる。)

 

 空中に小さな結界を作り出し、それを足場に変則的な動きを可能にしている。

 正面に構えることなく、上下左右に位置を変動させ狙いを絞らせないようにしている。妖怪相手に培われたものだろうが人間であっても対応できるものじゃない。

 

 頭上から拳が飛んでくる。それを流すが、巫女はその場から動かない。

 

(動きが窮屈になってやりづらい。俺以上に戦闘に慣れてるな。)

 

 真上からの攻撃は対処しづらい。雪崩れ込んでくる攻撃を流し続けられない。

 

「うらぁ!」

 

 体を捻り頭上にいる巫女を蹴りつける。巫女は下がりながら両腕で蹴りを受け止める。回りながら勢いを殺しまた地を這うように低い体勢になった。

 

 こちらから仕掛ける。一瞬だけ脚力を強化する。瞬間的な速さなら俺の方が速い。

 

「ふっ」

 

 目の前に接近して掌底を叩きつける。狙いが付けにくいが胴体に向けて叩き込めば当たるはずだったが、直前に手で地面を叩き方向を変えて避けられる。

 叩きつけた手を引っ張られ、こちらが逆に叩きつけられる。

 

 足で顔を踏みつけようとしてきたが、両手で防ぐ。変則的な動きと翻弄からの攻撃の速さ。防御が主体の俺とは相性が悪い。

 全てが攻撃のための動き、どんな相手でも倒すための戦い方だ。

 

「やっぱりそこそこやるわね。実力差があっても何とか張り合うような感じかしら。」

 

「・・・正解だ。お前と違ってこっちが主体じゃないんでね。」

 

 徐々に力を込められる。この巫女、性格がよろしくないな。

 

(能力を使わざるえないな。浮き上がれ!)

 

 体を浮上させる。何かを感じ取ったのか、巫女が少し離れた。だが切り返しが速い。離れた瞬間に足元に結界を作り、再度勢いを持って飛び込んでくる。

 珍しく正面から来た。フェイントかもしれないが迎え撃つしかない。

 

(いや、敢えて受けきる!)

 

 変則的な動きを封じるには掴むしかない。流しても躱しても次の攻撃は対処できないなら受けきるのみ。

 

 左手に霊力を集中させて巫女の拳を掴む。が、それを読んでいたかのように俺の腕を支点にして勢いを殺すことなく肩に蹴り込んでくる。腕ごと体を屈めて蹴りを避けると共に巫女を押さえ込む。

 

「ふん!」

 

 掛け声で首に足が巻き付く。下半身の力だけで挟まれた首を持ち上げられ叩きつけられる。強化の質が段違いだ。

 叩きつけられた俺の背中を蹴って離脱してまた動き回る。攻撃と離脱が上手い。対個人なら間違いなく最強だ。

 

(・・・参った。これは勝てんな。)

 

 常に霊力で身体能力を上げているため、普通の攻撃は通りにくい。そもそもまともに攻撃を当てるのが難しい。妖怪相手に戦ってきただけに一撃を受ける危険性を分かっている。

 

 やはり博麗の巫女といったところだ。だが俺も博麗と名乗っていた誇りはある。簡単には倒れてはやらない。

 

 大振りの拳で飛び回る巫女を突き上げる。

 

「そんな攻撃が当たるわけないじゃない。」

 

 懐に潜り込まれる。がら空きの胴体を晒す。部の悪い賭けは何度も行ってきた。絶対に勝てないと思った相手に対してのみ行う捨て身の技。

 

 掌底を溝に叩き込まれる。普通の人なら痛みで動けない、勝ちを確信しただろう。対人ならこの一撃で決まるほどのものだ。

 

 相手が油断した一瞬、痛みを感じなければここから反撃ができる。

 

「・・・お前の勝ちだが、ただで終わらせてはやらんさ。」

 

「なに、ぐっ!」

 

 全力の蹴り上げで巫女を蹴り飛ばす。

 

「・・・降参、がはぁ!はぁはぁ。」

 

 痛覚を戻すと呼吸が儘ならない感覚が襲い座り込む。蹴り飛ばされた巫女だがスッと立ち上がって近寄ってきた。悪くない感覚だったんだが、そう簡単に起き上がってくるとあんまり効いていないか。

 

 不機嫌な表情を浮かべているから強がっているだけか。

 

「変な能力ね。そんな戦い方やってると早死にするわよ。」

 

 忠告を受ける。それについては俺もよく分かっている。

 

「・・・お前に一撃くらい与えるにはあれくらいで隙を作らんと無理だ。それにこのやり方で戦わないと死んでいた可能性もあった。」

 

「外の世界が怖くなってきたわよ。幼少期に私もいたはずの世界はそんなんじゃなかったと思うけど。ほい、手貸してやるわ。」

 

 倒れている俺に手を差し伸べてきた。

 

「ありがとう、助かる。」

 

 

 

・・・

 

 

 縁側で休憩。巫女も少し疲れた様子はあるが、相変わらずの様子だ。あれだけ強化して動き回ってもこれだけの疲労で済むのか。

 

 お茶を啜りながら二人でぼーっとしている。

 

「で、どうだった。俺はお前の御眼鏡に適ったか。」

 

「霊力が私くらいあったら違ったんでしょうけど、十分強いわ。私が見てきた中でも強い部類になる。」

 

 十分か。あれだけ鍛えても捨て身の一撃を食らわせるのが精一杯だった。大分衰えてしまったとはいえ、悲しい事実だ。

 だが称賛自体は嬉しいものだ。

 

「そうか、お前にそういわれるんだったら光栄だ。」

 

「というか、あんた格闘主体じゃないのね。鍛え方や最初に会ったときの立ち振舞いから向こうの武道家と思ってたのだけれど。」

 

「元は魔法使いを目指してた身だ。今はあまり使えないがな。後は武器もそれなりに使える。」

 

「意外に芸達者ね。私も武器を持とうとしたことはあるけど邪魔になるのよね。結局、拳が一番強いし。」

 

「俺もお前ほどの霊力があるなら武器は手に取っていない。格闘にせよ強化が必要だからな。武器というのはそういう才能を補う物でもある。俺にとってはだがな。」

 

 その後も縁側でゆったりしていた。冬の風が暖まった体を癒してくれる。穏やかな時間が流れた。

 

 

「おーっす、レイア!」

 

 神社に珍しい来訪者だ。なんならここに来てから初めてだ。

 

「チルノか、ここに来てどうした?」

 

「今日は誰も見てないって言ってたから心配できてみた!疲れてるみたいだけど何かあったの?」

 

 チルノのコミュニティも広いものだ。俺が普段からあの周辺にいるだけあって妖精や妖怪からも認知されているようだ。そこからチルノに伝わっているのか。

 

「少し巫女と戦っただけだよ。」

 

「あの巫女と?レイア強いんだね!」

 

「負けたけどね。流石に勝てるとは思ってなかったけど一方的だったのは悲しかったな。」

 

「じゃあ、あたいが仇をとってやる!」

 

 俺を挟んで睨み合う。

 

「めんどいから嫌よ。あんた、随分懐かれてるのね。心が綺麗な人にしか友好的にならない妖精が懐くのは珍しいわよ。」

 

「懐いてるわけじゃないと思うが。まあ友達だな。」

 

「そうだ!」

 

「ふーん、そういうことにしといてやるわ、幼女趣味(ロリコン)。」

 

「・・・何を言っている。」

 

「こっちの美人が見たことがない優しい笑みをしてたからそういう事でしょ。私の裸への反応も納得できる。」

 

 いつまで根に持っているんだ。

 

「よかったわね。妖精は年をとらないから。」

 

「変な勘違いはやめてくれ。」

 

「なあ、レイア、ろりこんって何?」

 

「あなたみたいな子が好きな人達の事よ。よかったわね。」

 

 嫌な笑みを浮かべている。その説明だと否定しづらい。

 

「レイアはろりこんなのか。あたいもレイアの事は好きだぞ!」

 

「・・・ありがとうチルノ。」

 

 

 堪えきれなくなって爆笑している巫女に僅かに苛立った。

 

 

 




博麗の巫女は幻想郷の調停者という認識なので基本化物です
霊吾君は例外的になっているのでその括りではない
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