かくして幻想へと至る   作:虎山

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台風が怖いですね



家族の元に

 魔法の森で魔理沙が見つからないため、人里にやってきた。運悪く霧雨商店に人が多かったため、少し時間を置くことにした。だが、どこで時間を潰せばよいやら。

 

 通りがかった茶屋に見知った顔がいた。賑わっていた商店の店主がいた。こちらに気づいたのか手招きをした。

 

「・・・忙しそうでしたが店はいいんですか?」

 

「最近うちに帰ってきた娘が店番やってるよ。たまには休めだとさ。俺より商才があるとはな。」

 

 何とも面白くなさそうな顔をしている。

 

「魔理沙は帰って来ているんですね。どのくらい前に出ていったかは分かりませんが久しぶりに戻って来て、親孝行をしたいんでしょう。いい娘さんじゃないですか。」

 

「・・・ありがとう。あんたのおかげだ。」

 

「僕は声をかけただけで、決めたのは魔理沙です。」

 

「声をかけただけであいつが心変わりする奴じゃねえのは分かってんだ。あんたに汚れ役押し付けちまったな。本当は俺が言うべき事だったんだ。それでも、俺は、、言えなかった。」

 

 家族の前では言えない後悔。一家の主が見せない姿だった。意地でも家族の前では強くいるのだろう。

 

「・・・霧雨さんの立場なら僕も言えるかどうかは分かりませんよ。だから自分を責めないで下さい。」

 

「・・・愚痴ぐらいは言わせてくれよ。」

 

「そのくらいなら何時でも付き合いますよ。家族仲良くといっても思うところはあるでしょうし。」

 

「・・・ほんと何者だよ、あんた。若そうに見えるが実際は違うのか。人を見る目はあると自覚していたが自信がなくなるな。」

 

「そうですかね。見た目通りだと思いますけど。」

 

 茶屋で暫く話が続いた。宇佐見さんもそうだったように娘の話になると長くなる。魔法使いとしてやっていけるのかと、彼女の行く道に否定的ではないにしろ不安はあるのだろう。

 やっぱり父親としては心配になるのだろうな。その気持ちはよく分かる。

 

「霊吾に何度も頼むようで申し分けねえが、あいつを見てやってくれねえか。帰ってきた時もボロボロだったのを見るに魔理沙でも一筋縄ではいかないんだろう。あいつにどれ程の才があろうと森で普通に暮らすには幼すぎる。」

 

 暮らすというが生き残るだけでも人間にとっては困難なところだ。ボロボロになりながらも生存しているだけで魔理沙の非凡さが分かる。

 それでも傷ついた娘を見たくない。

 

「森近さんにも頼まれてますので大丈夫ですよ。魔法は教えてやれませんけど、生き残る術は叩き込む予定です。魔理沙次第ではありますが。」

 

「そうか、霖之助にも頼まれてたのか。あいつから見ても頼りになるとしたらよほどのものなんだろう。」

 

 

 

・・・

 

 

 俺と霧雨さんが商店に戻ると人集りが落ち着いていた。奥で勘定の整理をしている魔理沙が見えた。

 

(こうやって店を継ぐ未来もあるのだろうか。その未来も見てみたいが彼女に人里は狭いか。)

 

 物音で気付いたのか、顔を上げてこちらを見た。以前に見た切羽詰まった様子とは違い、年相応の少女に見えた。

 

「・・・もう帰ってきたのか。ん、霊吾さん!」

 

「森で会って以来だな。随分と穏やかになったじゃないか。」

 

「そうですか?人里で暮らすようになってよく寝れているかもしれないですね。」

 

 過酷な環境だったんだろうが、本当によく生きてたな。だからこそ妖怪に太刀打ちできる実力者になったんだろうが。

 

「ありがとな、魔理沙。後は俺がやっとくから、霊吾の接待を頼む。」

 

「分かった。とりあえず上がってください。」

 

 

 

 

 

 

 小さな気力が穏やかに揺れている。前に会った時よりも弱々しくなっている。予想より早くなるかもしれない。

 

 その表情が伝わったのか、魔理沙が心配そうに聞いてきた。

 

「やっぱりお母さんは治らないんですか?」

 

「・・・すまない。」

 

「謝らないで下さいよ。諦められない私が悪いんですから。」

 

「お前は悪くないよ。自分の母親を助けようとしているんだから悪いも何もない。力になってやれなくてすまない。」

 

「だから謝らないで下さいよ。」

 

 そういうわけにもいかない。決断したのはこの子だが、誘導したのは俺だ。最後まで諦めずに踠いていたこの子に現実を教えて理解させてしまった。

 

「こういうのは可笑しいと思いますけど、感謝してるんです。私も迷ってたんです。治す手立てが一向に見えないけど誤魔化しながらやってたんです。きっとあそこで引き返せなかったら私は二度とここには戻れなかったと思います。」

 

 子供の成長というのは早いなと感じる。菫子もそうだったようにこの子も。ずっと走り続けていたんだろう。苦しかったはずだ。辛かったはずだ。それでも諦めなかったのはそれだけ家族を大切にしたかったのだろうな。

 

 確認することでもないが本人から聞きたい。

 

「・・・魔法使いになりたいか?」

 

「なりたい。」

 

 即答だった。真っ直ぐな目は俺に希望を与えてくれた人のそれだった。

 

「何故魔法使いになりたいんだ。能力があったとしても魔法使いに拘る必要はないと思うが。」

 

「・・・何でかは分からない。いろいろなきっかけはありますけどきっと私は生まれた時から魔法使いになる運命だったと思ってます。」

 

 能力はそいつの生き方や道を決める。彼女も例外に漏れず魔道を進むか。それでも人として終えたのは彼女の抵抗だったのだろう。

 魔女ではなく魔法使いとして生きる。同じようでその道は違う。

 

 魔女は時として人の道を外れる。魔法を極めるというのは人間では不可能だからだ。永劫の時と多くの代償を必要とするからこそ魔法は何でもできるのだから。

 

 魔理沙は知ってもその道に行かなかった。俺が憧れた魔法使いはそういう人だ。だから安心した。この幼い少女に憧れの女性が被ってくれてよかった。

 

「そうか。」

 

「今はもう叶いませんけど、昔はお母さんを夜空に連れていってやりたいと思ってました。お母さんは星が好きで昔からずっと見てたんですよ。いつか星を近くで見せてあげたかった。」

 

「・・・連れていってやろうか?」

 

「いいんですか!」

 

「一人程度なら軽々運べるし、一人なら体に負担をかけないようにもできる。魔理沙さえよければ夜空の散歩でもしようか。」

 

 バタバタと走り出した。慌ただしい子だ。

 

(この子があの落ち着いた老婆になるとは思えないが、分からないもんだな。芯の強さは間違いないが。)

 

 真理菜さんの雰囲気は間違いなく魔理婆さんと同じだった。俺が咄嗟に反応してしまうほど、よく似ていた。

 

(真理菜さんくらいになっても落ち着くとは思えないが。確かに俺への話し方からは育ちの良さは感じるが、霊夢の記憶と今の魔理沙の行動力を見ても同世代の中でも群を抜いているだろうし、性格的に落ち着くのはまだまだ先だな。)

 

 真理菜さんに聞いてきたであろう魔理沙が戻ってきた。

 

「お母さんも行きたいそうです。何時にしますか?」

 

「そうだな、、、今夜にでも行けなくはないがどうだろうか。二人に聞いてみるか。魔理沙は真理菜さんに今日大丈夫か聞いてみてくれないか?」

 

「分かりました!」

 

 

 

 

 

 

「・・・というわけ何ですがどうですか?」

 

「真理菜が望むんならこっちからお願いしたいところだ。持って半年と言ったが寝込むことが増えてきて早まったんじゃないかと思う。気掛かりだったのが魔理沙の元気な姿を見て安心したのかもしれねえ。」

 

「かもしれないです。僕が見ても衰弱の早さが以前見た時より早くなっています。あの調子だと、、、」

 

「一月位だろうな。年は違うが俺の母親と同じ感じがするんだ。明日には寝たきりになるかもしれない。だから頼む、最期に幻想を見せてやってくれ。」

 

「任せて下さい。真理菜さんにも聞いていますがおそらく今日になると思うので、また夜に来ます。」

 

 真理菜さんは自分の状態を分かっている。だからこそ魔理沙との時間を選ぶ。

 

 

・・・

 

 

 人里の入口で上白沢慧音と出会った。この人が昼間に人里から離れているのはあまり聞かないが何かあったのだろう。

 

「おや、霊吾殿ではないか。」

 

「出られていたようですが、何かあったんですか?」

 

「行方不明だった子が戻ってきたんだが、何でも金髪の女性に助けられたらしい。人形を操っていたそうだが、気になってな。少し見回りをしていたところだ。」

 

 人形。幻想郷で人形を操る奴は一人しか知らない。人外とはいえ友好的ではあるか。

 

「人形ですか。助けてもらったという子は他に何か言ってませんでしたか。」

 

 もう少し情報が欲しい。友好的かもしれないが子供だけかもしれない。その魔女の目的を知っておきたい。

 

「そうだな。その女性から人里についていろいろ聞かれたらしい。といってもその子を安心させるためかもしれないが。友達が多いかなど聞いてもどうしようもないだろう。」

 

 友達か。子供の数が知りたいのか。

 

(・・・これは不味いかもな。早めに対応した方がいいかもしれん。)

 

「・・・そうですね。人形劇でもしたいんじゃないですかね。」

 

「そんな物好きな奴だったら是非とも一度やって欲しいな。」

 

「はは、そうですね。僕の方でも少し探してみます。会ったら序でにお礼を言っておきましょう。」




全体を見直すと誤字がチマチマあったのが気になったので隙を見て修正していってます

何時までも誤字が減らない、、、
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