かくして幻想へと至る   作:虎山

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私生活が少し慌ただしかったので更新が遅くなってます



賢者邂逅

 冬が終わりを迎える頃になった。暖かくなり始め、妖怪達が意気揚々とする時期でもある。

 博麗としての仕事に妖怪退治とあるが、この時期になると忙しくなることもある。

 

「別に私一人でも問題はないわよ。」

 

「手伝いに行くというよりはあんたの戦い方を見に行くといった感じだ。」

 

「いつも見てるっていうか、知ってるじゃない。」

 

「対人はな。まあ大きくは変わらんとは思うが、集団を相手にしての立ち回りを見てみたい。」

 

 常に動き回り、回避優先で相手の虚を突く戦い方では妖怪の集団を捌くのは難しいと感じた。何処から攻撃が飛んでくるか分からない中で動き回るのはかなり繊細な空間把握と感知の能力が必要になる。

 巫女も高い方ではあるが、二つの能力では自分が勝っている。それでも常に感知しながら集団を相手取るには最低限の動きを意識しなければならない。

 

 巫女のように回避を続けながら攻撃を仕掛けるのは範囲感知を張っていても俺には無理だ。

 

「ふーん、まあいいわ。邪魔にはならないでしょうしね。」

 

 これまで組手をやってきた中で巫女もこちらの実力を把握している。同行には問題ないと思ってもらえているか。

 

 

 

・・・

 

 

 

 妖獣の群れと言えど、未来では厄介な存在は多くいた。土地が穢れていたために奇妙な特徴を持った奴もいたが、こっちでは未だに見てはいない。

 野生動物の延長線上といった妖獣が大半だ。合成獣のような見た目もいない事から種族としてもそれほど多いわけでは無さそうだった。

 

 だが、数は多い。春先からは眠っていた妖獣が一斉に動き出す事もあり、感知できる範囲では妖獣、妖怪共に犇めいている様子だ。

 それでも未来よりかはましだが。

 

(・・・未来では冬でも特異体がけっこうな数いたが、殆どいないな。大体の妖獣が単一の動物からの派生のような感じだな。)

 

 合成獣のような奴らは未来では珍しく無かった。土地の穢れと多種多様な妖獣が合わさった結果だったんだろう。厄介な存在がいないのは多少は楽に退治できる。

 

 

 

 目の前を先行する巫女が飛び出す。弾丸のよう速さで妖獣の群れの中でも妖力が大きい存在の首をへし折る。

 巨大な犬のような妖獣はその巨体を揺らして倒れる。一瞬、その妖獣の群れが止まる。群の長を真っ先に仕留める事でその群を潰す。凶なんかがよくやっていた戦法だ。だが、別の群れも交ざっているため、長期戦では利点が薄くなる。

 

 妖獣達が巫女を囲い込む。だが、巫女に攻撃が当たらない。そもそも妖怪が近づいていない。いや、近づけないといった様子だ。

 

(能力か。博麗の巫女は代々似たような能力を持つと言われていたが、例に漏れずに拒絶・孤立系の能力だろうな。)

 

 かよの能力は結局分からず終いだったが、他の存在を拒絶する能力であったはず。

 この巫女も俺や博麗霊夢のように自身を孤立させる能力か他の存在を拒絶する能力だと推測できる。

 

 

 一体一体潰していく巫女。彼女に集団相手をするような戦い方は必要ない。一対一に持ち込めるのなら、それだけを磨き続ければ敵はいない。

 

(・・・やはり博麗の巫女は別格か。)

 

 迫り来る妖獣を流しながら、巫女の戦闘を見る。殴った箇所が内側から破裂していた。俺との修練では使った事がない技だ。使われたら洒落にならないが。

 

(霊力の塊を押し付けての破裂。妖力と霊力は基本的には反発し合う性質を上手く利用している。少しの霊力でも致命傷を与えることが出来る技だな。)

 

 ゼロ距離霊力砲と似ているが、内部に流し込む分コントロールが難しい。出来なくはないが、少なくとも戦闘中に何回も続けるのは難しい。それも一対一に持ち込むことが出来るからこそだろう。

 

 一体ずつ着実に仕留める巫女と集団全体を少しづつ削り取る俺。格闘戦では巫女に勝てないが、倒している妖怪の数は同じ程度だ。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 暫くして妖怪達が散っていった。数も大分減らしたし、今季は十分だろう。

 

(異常繁殖や発生は聞いていないが、今の幻想郷では起きていないとみていいか。)

 

「今季は多い方ね。秋頃にある程度は片付けた筈何だけど、何処から来るのかしらね。」

 

「普段からあの程度ではないのか?」

 

「あんなうようよしてたのはそう無いわ。いくつかの群れを従える奴らを複数潰さないと逃げ出さないのは久しぶりだわ。」

 

 妖怪が急激に増えた原因は何だ。巫女としては冬の間でも霊吾がちまちまと退治していたのもあり、普段よりも少ないだろうと考えていたらしい。

 

 別々の群があれほど一斉に集う事は確かに珍しいらしい。とすると外的要因か。

 

「・・・あなたの仕業ですか?」

 

 虚空に向かって声をかける。戦闘中もずっと観察していた気配を感じていた。藍さんとは違う妖気。

 

「・・・何私には見えない系の奴?ちょっと止めてよね。」

 

「巫女が何を言ってるんだ。見えないが分からなくもないだろ。」

 

「・・・あー、あいつか。」

 

 まあ思い当たるだろう。

 

「そろそろ出てきて下さい、あんまり黙り決め込むと俺が悲しい奴になりますので。」

 

 無視するかのように声だけが響いた。

 

(せっかく様子見で来ているのなら会話くらいはしたいのだがな。あまり使いたくは無かったが、今後のために試しで使ってみるか。)

 

 藍さんから何かしらは言われていると思うが、どういう印象を俺に持っているかを確認しておく。

 

 範囲感知においては範囲内にいる力を持つもの全てを把握できる。伊吹萃香のように微少に分身を飛ばしているものから藍さんのように隙間で空間に接触している者までだ。

 正確な位置を掴み、虚空を払う。

 

(捉えた!)

 

 隠れていた存在を空間から弾き出す。

 

「え!嘘!」

 

 情けない声と共に隠れている者が虚空から現れた。

 

 隙間から引き摺り出される感覚は初めてだろうな。

 

「あいたた、、珍しい人間って言ったから見に来てみればなかなかやるじゃない。」

 

 立ち上がり土埃を払っている。怒っている様子ではないか。寝起きで機嫌が悪いかとも思ったが、かなり上機嫌だ。

 未来での借りはこの程度で返しておくか。それに紫さんに対抗できる手段を確認できた。

 

(・・・それにしても妖怪は大きく変わらんか。)

 

「盗み見はよくないですよ、八雲紫。初めましてですね。」

 

 驚いた様子ではあったが、挨拶をすると表情を戻した。

 

「ええ、初めまして、霊吾。色々と話は聞いています。藍が個人的に興味を持った人間というのが気になってね。それにしても、、、」

 

 舐めるようにこちらを見る。

 

「不思議な人間ね。貴方よりも霊力の使い方が上手なんじゃない?」

 

「力のコントロールは正直そいつには負けるわ。でも術にせよ、体術にせよ負けているわけじゃないから。」

 

「貴方に勝てるようならそれは人を越えている存在ですわ。博麗の巫女という存在はその世代の絶対的強者なのですから。特に戦闘面では歴代でも並ぶものがいない貴方にはね。」

 

 霊夢という存在が出てくるまではこの巫女が最強だったのか。

 

「・・・よく言うわよ。」

 

 あまりいい顔をしている訳ではない。紫さんとは合わない、そんな感じがした。

 基本的に巫女は一人だ。誰かと親しく接しているところは見たことがない。博麗の巫女は本来ならそういう役なのだろう。

 

「妖怪についてはあなた方なら問題ないという認識で少しだけ集めていました。霊吾、あなたには期待しているのよ。」

 

(期待?どういう事だ。)

 

「それはどういう意味ですかね。」

 

「今回の件でどの程度戦力があるか見てたのですが、巫女と比べても劣っているわけでは無いということが分かりました。博麗の巫女は貴重な存在故に替えが効かない事もあり、是非とも支えて頂けるとありがたいですわ。」

 

「・・・まあ、行く宛もありませんし、もう暫くは神社に居ようと思ってますよ。支えは要らないと思いますし、居付けるかどうかは巫女次第ですが。」

 

 チラッと巫女を見ると、しょうがないという顔で溜め息を吐く。

 

「好きにしていいって言ってるじゃない。」

 

 少しだけ喜びの感情がある気がする。

 

「良好な関係で何よりですわ。また、顔を出すと思いますのでその時にでもゆっくりお話したいものですわね。」

 

 そういって隙間に消えた。空間から消えたのも確認できた。

 

 八雲紫には自分の存在がどう見えたのだろうか。

 

(どちらにせよ、予想通りで助かったか。相変わらず人が悪い事には変わりないか。)

 

 長く共にいたのだ、表情と声である程度は分かる。嘘を言ってはいないが本当の事を伝えていないのは理解できた。

 

 

 

・・・

 

 

 

 彼が良い人でよかった。巫女に勝らないにしろ引けを取らない人間は博麗の巫女同様に貴重な存在だ。巫女と違い人妖に関わらず他者との交流が出来る点も強みだ。

 

 

 巫女を失うのは不安があるが彼を失っても惜しい存在ではある事に変わりはないが大した痛手にはならない。支えるというのは負担の肩代わりを任せるという意味もある。

 

 

 それに交渉役としても彼は最適だ。巫女には任せることが出来ない事を頼むことが出来る。実に悩ましい。

 

 何にせよ八雲紫にとっては使い勝手の良い人間と認識している。

 

(思った以上にお人好しで助かりましたわ。隙間を捉える事は驚きましたが、敵になることは無いでしょう。藍が言うように危険な存在では無いと見ていいでしょうね。)

 

 外界の術師であり、どこで知ったかは分からないが幻想郷に辿り着いた人間。それだけなら数年に一人は見るが、技量は比べ物にならない。

 

(だけど不確定要素に変わりはない。次の博麗の巫女が来るまでには彼の事を詳しく把握しておきたいわね、、、)

 

 若くしてあれほどの戦闘技術と感知能力を併せ持つ者であれば、幼少の頃から目立つ筈なのに把握していなかった。何かを隠している。

 

 

 

 八雲紫との邂逅は無事に終えた。

 




次は異変になります
少し間に小話を挟みますが
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