かくして幻想へと至る   作:虎山

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相変わらずの遅い更新です

ちょっと長くなってしまったので区切って二話構成になりました


氷精の友人達

〈氷精と魔法使いの師弟〉

 

 

「魔法の質が変わった実感はあるか?」

 

「はい、マスタースパークの威力が上がっていました。威力を上げる事が出来るようになりましたし、疲労を感じるまでの回数も増えた感じです。体を鍛えてたら魔力も増えるんですか?」

 

「霊力や魔力といった宿っている力は変わらない。だが、力の使い方を知れば効率良く使える。砲撃の反動に耐えるために無意識の内に魔力で強化をしていたり、無理な体勢で砲撃を放つ事での負荷は軽減できている。」

 

(未だマスタースパークだけか、、、多彩な魔法を使っていたはずだが、現状としては一つしか実用できるものはない。基礎修行としてはこの程度で十分か。)

 

 

 

 

 魔理沙も修行ばかりでは魔法が伸びない可能性もある。基礎的な体力、筋力、格闘術を教え込んだところで、俺との修行頻度を少なくし、自らで魔法を鍛えていってほしいと説得した。

 

「魔法について教えるほど詳しい訳ではないが、知っている事はある。が、それがお前に活かされるかは分からん。だから取り敢えず魔法は自分にあったやり方で模索していけ。迷ったら助言ぐらいはするさ。」

 

 俺が知っている晩年の霧雨魔理沙と今の霧雨魔理沙は違う。試行錯誤で生存能力を上げてきた末に辿り着いた結末とは異なった道を行く可能性はある。

 

(体に叩き込んだ格闘術がどうなるか。悪い方向には行かないと思っているが、魔理沙次第か。)

 

 魔理沙の接近戦のセンスは悪くはない。それだけに極めようと思えば、数年で俺を越える可能性はある。

 だが、それは格闘に全てを注いだ場合だ。魔法との両立ではどちらも中途半端なものになってしまう。俺のように。

 

「・・・魔法については私も何も知りません。師匠の光に追い付きたくて、あの輝きに手を伸ばしたくてあなたについて行きました。私はまだ教えてもらうことがあります。ここで終わるというのはまだだと思います。」

 

 受け入れがたいと言った様子。魔理沙が俺を目指す事はいいとは言えない。

 

「すまない、魔理沙。これ以上お前に教えてしまうとお前の良さを潰す可能性がある。」

 

「師匠は私の何を知っているんですか!私の可能性は私が決めます!」

 

「・・・俺は魔法使いに憧れただけの人間だ。お前の様に魔力を扱える訳ではない。俺の教えというのがお前の邪魔になる。」

 

「そんな事はないです!」

 

「お前は素直で、根性があって、俺には勿体ない弟子だ。だからこそ自分を信じて欲しい。」

 

「何で、そんな事を言うんですか!もう私の事は見限ったんですか!」

 

 瞳に浮かぶ涙。違う。お前を捨てた訳じゃない。ただ俺は、、

 

 居たたまれなくなったか魔理沙は飛び出していった。

 

 

・・・

 

 

 

 言い争いになって飛び出していった魔理沙。魔法の森の奥に消えていった。

 

「よかったんですか、ご主人様。魔理沙ちゃん悲しんでましたよ。」

 

「・・・何がいいのか、分からない。俺はあいつの未来を知ってしまっている。あの二人とは違う。一つの道を極めた姿を知っている。中途半端だった俺が教える事で俺と同じになるのではないかと恐れている。」

 

 戦闘能力で言えば俺より強くなるだろう。格闘のセンスもあって魔法での技で俺より多彩な攻撃ができる筈だ。

 

 だが弾幕ごっことなるとどうなるか分からない。一番の危惧は彼女が最も輝いていた場所から離れてしまう事だ。

 

「珍しいですね、ご主人様が悩むなんて。」

 

「幻滅したか、小傘。」

 

「そんわけないじゃないですか。人の事を考えての言葉と想い。だから人間は愛おしいんです。」

 

 人間体になった小傘が後ろから首に抱きつく。安心させようとしているのだろう。自分が思っている以上に気落ちしていたようだ。

 

「・・・ありがとう、小傘。もう大丈夫だ。少しは引き摺るがな。」

 

「早く、元気出して仲直りしてください。」

 

「もうちょっと落ち着いたら行くさ。」

 

 

 

 どう接すればよいかと考え、項垂れていると気配を感じ取った。

 

「あ、レイア!」

 

「どうしたチルノと、、、そちらは友達か?」

 

「そ、大妖精って言うんだ。皆からは大ちゃんって呼ばれてるんだ。」

 

「は、初めまして、話はチルノちゃんから聞いてます。とても強くてカッコいいって言ってました。」

 

 妖精にしては落ち着いた雰囲気を持っていた。それにしても格好いいか。チルノの中ではそれなりに大きな存在になっているのだろうか。

 なにはともあれ今の疲れた心には癒しになる。

 

「・・・そうか。ありがとう。」

 

 ひんやりした頭を撫でる。

 

「えへへ、そういえば魔理沙は?」

 

「いろいろあってな、今はたぶん魔法の森の家にいると思うが、用でもあったのか?」

 

「レイアに教えてもらってる格闘術を試せる相手だからな。今日もやりたいなって思ったんだ。」

 

「なるほどな、、、よかったら魔理沙の相手をしに行ってくれないか?あいつを元気付けてやってくれ。」

 

 今の俺では無理でもチルノであれば魔理沙も少しは落ち着いて話せるかもしれない。

 

「レイア?何かあったのか?」

 

「少し魔理沙とすれ違いがあってな。俺はあいつの事を考えているようで見ていなかったのかもな。」

 

「喧嘩でもしたのか?だったら一緒に反省しないとな!あたい、連れてくるよ!」

 

 何処にいるかも伝えていないのに飛んでいった。

 

「チルノちゃん!」

 

「はは、相変わらず親切な奴だ、、、」

 

 取り残された大妖精がチラチラと此方を見てくる。

 

「あ、あの霊吾さんに聞きたいことがあるんですけど、、、」

 

「答えられる範囲ならいいが、なんだ?」

 

「結構噂になっていまして、妖怪を退治する事もあれば、見逃す、談笑している事もあるって聞いて不思議な人間だなと思ってました。結構チルノちゃんから話は聞いているんですけど、チルノちゃんと仲良くしてるのは何でかなと思いまして。」

 

 妖精という種族にしては客観的な物の見え方だ。大妖精という名の通り、知性も妖精のそれとは違うのだろう。

 

「そうだな、、、一言で言えばいい奴だからか。」

 

「いい奴ですか?」

 

「いたずら好きというのは一重に妖精だけのものというわけでもない。妖精としての性質はおそらくチルノも変わらない。だが、あいつの中に秘める友達を大事にしている部分は何者よりも強いと思った。君もそう感じたからチルノと共にいるのだろう?」

 

「・・・そうです。それだけではありませんが。」

 

「俺がチルノと仲良くしてるのはその部分が大きい。いい奴という総評も現に今も俺や魔理沙っていう少女のために動いている。誰からも好かれるはずだ。」

 

 友達に対しては打算も思惑も無い純粋な好意で接する。いたずらも友達とそれ以外とでは加減が異なる妖精らしさはあるが最近は減っている。俺と接してきた事で少なからず思考能力が育ってきたのだろうか。

 

「なるほど、よく分かりました。やっぱりチルノちゃんの勘は当たるもんですね。」

 

「勘?」

 

「『大ちゃんもきっとレイアを好きになる』と言ってたもので。妖精は基本として感情を読む力があるんです。チルノちゃんが全面的な信頼を寄せていることから悪い人ではないのは分かっていましたが、あなたの心には誰かを思う暖かさがあるんです。」

 

「俺に限った話では無いと思うが、そう思ってくれてありがたい。まあ、弟子に愛想を尽かされてるがな。」

 

「それもきっと弟子さんを思っての事でしょう?」

 

「だとしても俺にも非はある。」

 

「うーん、思ったよりはひねくれてそうですね。」

 

「・・・意外にはっきり言うんだな。」

 

「あなたなら大丈夫だと思いましてね。すみませんが、私も少しは甘える相手が欲しいんですよ。」

 

 穏やかな性格の大妖精ではあるが、彼女も内々に思うことがあるのだろう。

 

 大妖精の話に付き合っている間に近づいてくる気配を感知した。

 

「レイア~!魔理沙を連れて来た!」

 

 ぼろぼろのチルノと魔理沙が戻ってきた。小競合いでも起こったのだろうが、この様子だとチルノが勝ったようだな。

 

(これは頭が上がらないな。)

 

 魔理沙が近づいて来て真っ直ぐ俺の目を捉える。

 

「・・・師匠、ごめんなさい。私の事を考えてくれていたのは分かります。でも今日で終わりと言われたのは受け入れられないです。」

 

「俺もすまなかった。お前を見ていなかった。教えるのは終わりだが、俺との修行は続けていこう。」

 

 忘れる事はできないが、今の霧雨魔理沙を恩人と切り分けるように考えていく。

 でも教える事はしない。魔理沙の才能を最大限引き出すには教えるより適切な表現がある。

 

「盗め。俺の持つ全てをお前に見せる。その中から己の力とすべきものを見定めろ。いずれは俺だけでなく全ての存在から技でも何でも盗めるようになれ。」

 

「はい!」

 

 輝かしい笑顔で答える。もう二度と曇らせてはいけないと感じた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

〈夜の歌姫〉

 

 

 どこからともなく聞こえる綺麗な歌声。視界になにも映らない。どこまでも暗い闇が続いているような感覚。

 

 普段であれば夜の森に向かうことは無いが、周辺の妖怪を知る為にも探索がてらにふらつく。ある程度妖獣の活動も収まってきた事もあり、知能がある者達が出てくる頃だ。

 

 この歌声もそのような妖怪達の一人だろう。

 

「~♪、あら夜にこんな所に人間が居るなんて危ないよ。私の歌聞いちゃった?」

 

「綺麗な歌声だった。聞いた結果が何も見えなくなる、、、夜雀という妖怪の特徴だったな。声の主、お前がそうか。」

 

 人里でも注意で言われる程度だった為、積極的に人間を襲うタイプでは無いのだろう。

 稗田から聞いた特徴では歌が好きな妖怪で、歌声を響かせて聞いたものを鳥目にする事で歌に聞き入ってもらうといった目的ではないかと考えているらしい。

 

「正解よ、随分と肝が座った人間ね、、、もしかして霊吾って言う人?」

 

「知ってるのか。どこから聞いたかは知らないが合っている。霊吾と名乗っている外来人だ。」

 

「道理で襲えそうに無い訳か。見えていないのに一切の隙がない人間は初めてよ。」

 

 妖怪らしく搦め手を使うようだ。これまで争ってきた妖怪達とは違い力で攻める事は無いと見ていいか。

 

「物騒な奴だ。チルノの話では優しい奴と聞いていたんだがな。俺の事はチルノから聞いたのか?」

 

「ええ、嬉しそうにしてたわよ。どんな人間か興味はあったのよね、、、見えてるの?」

 

 見えないはずだが、目線が捉えている。

 

「見えている訳じゃないが分かる。妖怪にしろ、人間にしろ、力を持っていれば感知ができるんでな。そして生憎だが、俺の感知領域にお前がいる。」

 

 盲目になった瞬間に感知精度を上げた。漠然とした広範囲の感知ではなく、範囲内の全ての動きを捉える精密感知。消費は激しいが、見えていなくとも戦闘に支障はでない。

 

「なるほど妖力を感じ取っているのね。」

 

「そういうことだ。ちなみにだが、背後で様子を伺っている妖怪も俺の感知範囲に入っている。」

 

 元から気配だけは感知していたが、動きから間違いなく俺を標的にしている。襲ってきそうな様子はないが、把握はしている。

 

「・・・驚いたわ、誇張抜きで最強の人間って言うのは強ち間違っている訳じゃなさそうね。リグル、ばれちゃってるわよ。」

 

「・・・博麗の巫女でも気付かれなかったんだけどな。」

 

 背後から声が聞こえた。敵意も感じずに近づいてくる。

 

「あいつは正確な感知はしないタイプだ。おおよその勘だけでも何とかできる奴だ。勘づいてはいただろうが、脅威がないと判断すれば無理に退治する事はない。」

 

「あら、私達は敵に値しないということ?」

 

「敵意をぶつけない限りは敵ではないという認識だろう。妖怪の脅威というのは何も純粋な力というわけではない。特異な能力を持った妖怪はそれだけでも脅威だ。俺でなければ無力化されているだろう。」

 

 視界を奪う能力も厄介だが、リグルという妖怪についてもその能力は使いようによっては人里を滅ぼせる可能性もある。

 

(未来での蟲は広範囲の攻撃魔法がなければ詰んでいた。群を一瞬で破壊する必要がある分、相性のよい相手にはとことん強い。)

 

 戦闘能力は高くないかもしれないが、戦った場合に無傷とはいかない可能性はある。敵対しないに越したことはない。

 

「お詫びも兼ねてなんだけど、私の店に来ないかしら?」

 

「・・・店?」

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

 案内される道中で視界は元に戻った。数分程度ではあるが戦闘中にあの状態になった場合、感知していたとしても混乱するだろう。

 

 森の中でひっそりと佇む屋台。こんなとこに客が来るのかと疑問に思うが、妖怪相手にしていると言ってる事から立地としては問題ないのか。

 それにしても女将というのが似合っている。

 

 

「ミスティアとリグルか。話には聞いていると思うが霊吾と名乗っている者だ。」

 

「あのチルノが成りたいと言っている程だからただ者じゃないのは分かってたけど、」

 

「普段ならあたいより弱いって言うけど、霊吾だけはあたいより強いって言ってたからね。」

 

「・・・二人ともチルノとは知り合って長いのか?」

 

「まあそれなりにね。小鳥を凍らせて遊んでたチルノに痛い目見せてやろうと思ったら中々にしぶとかったから驚いたのだけどね。妖怪と戦える妖精なんてほんと厄介な存在よ。でもチルノのおかげで面白い日々になっていったのは確かだけど。」

 

「遊びで凍らされたりして、ほんと参ったよ。僕とはその時からかな。こいつとやっていけるか何て思ってたけど、ミスチーや大ちゃん達が仲良くしているのを見て僕もという感じだったね。」

 

 妖怪達からもチルノというのは異常に見えるのか。

 

「そうそう、チルノが強くなっているのはあなたのおかげなんでしょ?」

 

「俺は特別な事をしてる訳ではないがな。ちょっとした手解きをしてるくらいだ。素直に聞いて取り組んでるあいつの努力が凄いだけだ。」

 

 実際の成長は魔理沙に比べれば遅いが明らかに動きは変わった。氷を飛ばしたり、凍らせたりといった単純な能力での技に合わせて接近戦が出来るようになった。

 もとから身体を動かすのが得意だった方だとは思うが、氷という武器にも防具にもなる能力がなによりも便利だ。

 

 教えただけで出来る様にはならない。チルノが考えて実践してきたからこそのものだ。

 

「素直に人の言うことを聞くタイプじゃないわよ。妖精らしく嫌なことはしたくないはずのチルノが続けられるのはあなたのおかげと言うことよ。少なくとも私達じゃ無理なことよ。」

 

 

 

 

「・・・そうか。」

 

「ふふ、そうやって照れてる姿はなかなか可愛いのね。」

 

 見た目は少女だが、雰囲気や言い回しは大人の女性のものだ。見た目に引っ張られている奴が多い中でミスティアという妖怪はあまり会ったことが無いタイプだ。

 

「・・・大の大人が可愛いというのはどうかと思うが。」

 

「私達からすれば大人だろうと人間は変わらないものよ。妖怪として強くは無いけど、長く生きているだけはあるんだから。昔から人に化けて紛れ込んだりもしていたんですよ。」

 

「この商売はその名残もあるのか。」

 

「そう、意外とお客さんも来るんですよ。」

 

「最近は大妖怪も来るせいか、圧がすごいんだ。ミスチーはよく平然としてられるね。」

 

「まあ、常連さんも多いからね。」

 

 

 

「・・・お前も常連か?」

 

 誰もいない席に目を向ける。正確に言うならば目を向けるまで誰もいなかった席だ。

 

「あれ、萃香さん、入らしてたんですか?」

 

「まあな、お前が色目使ってるところ、しっかり見させてもらったよ。」

 

 若干不機嫌になっている。萃香からしてみれば自分の獲物が盗られるとでも思っているのだろうか。

 

「ふふ、いいじゃないですか。こんな人間居ませんでしたし、私も少しだけは仲良くさせて下さいよ。」

 

 リグルがあわわとしてるのを境に少しピリッとした雰囲気が漂う。

 

「止めておけ、萃香。鬼のお前が暴れると面倒だ。」

 

「別に何もする気はねえよ。ちょっと気に障っただけだ。それにお前も悪い。ふらふらと付いていきやがって。」

 

「別にいいだろ。警戒を解いている訳ではない。」

 

「だとしてもだ。」

 

 グイっと瓢箪を傾ける。 

 

「なるほど、最近ご機嫌だったのは霊吾さんのおかげだったんですね。珍しいですね、萃香さんが人間に熱中するなんて。」

 

 萃香の席にスッと食べ物を出す。

 

「うるさい、雀だ。つまみを出していなかったら一発殴ってたよ。」

 

 暫く妖怪達の談笑に付き合い、夜は終わった。

 

「またいらしてください。今度は一人の時にでも。」

 

 艶かしい目線が突き刺さる。人間を虜にする際によく見る目だ。こっちに来てからは初めて見るな。

 

「おい、簡単に誘いに乗るなよ。この手の輩は何をしてくるか分からないからな。」

 

 力ずくで欲しいものを手に入れる妖怪とは違い、引き寄せて自分から離れないようにする妖怪も多い。ミスティアとしては萃香の反応を楽しむ目的の方が大きいだろうが。

 

「暇があったら来る。一人ではないかもしれないがな。」

 

 今回は目立たない為にも小傘は連れてきていない為、ご機嫌を取るにも連れてこよう。

 

「はい、楽しみにしてますね♪」

 

 

 

 

 

 

 




弟子が成長すればする程、恩人の面影を感じる為、結構心がざわつく霊吾君
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