かくして幻想へと至る   作:虎山

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何とか月一ペースは維持したいところです


訪問

「師匠、森に住んでる魔法使いって知ってますよね?」

 

「アリス・マーガトロイドか。知ってるよ。」

 

 接触したのだろうか。今の魔理沙でも結界を見つけることは不可能ではないと思うが、破る事が出来たのだろうか。結界と同調してすり抜けるのが正規の手段ではあるが、衝撃でも破ることは一応可能だ。

 ただ、俺のマスタースパーク程度では威力が足りないだろう。八卦炉があれば可能性はあるというくらいだ。

 

「知ってたのなら教えてくださいよ。」

 

「その内に会うだろうと思ってな。会ったのか?」

 

「研究材料を収集してた時に声をかけられたんですよ。魔法使いの男を探してるって言ったんで師匠の事かなと思いまして。」

 

 自称魔法使いだが、俺の他に似たような存在はいない。

 

「俺だろうな。思い当たる部分もある。」

 

 探している理由は十中八九、研究内容だろう。魔理沙、俺と経て微妙に変わっている部分はあれど、元の理論はアリス本人のものである以上気付かない訳がない。問われはするだろう。

 アリスの生存によって上海の孤立は避けられると踏んでの選択だ。今回でアリスに素性が知られたとしてもそこに悔いはない。

 それにアリスは魔力操作に長けている。魔理沙との交流は遅かれ早かれにはなっていただろうが、学ぶところは多い分早いに越したことはない。

 

「少し立ち寄ってみるか。本物の魔法使いからの助言というのも重要だろうしな。」

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 魔法の森でも霧の湖に近い場所。人里に近い方面には森近霖之助、中心部には魔理沙とバラバラに位置しているのは個人的には面倒なところだ。

 

 

「結界ですか。ここに?」

 

「ある。認識阻害の結界が巧妙に張り巡らされている。普通なら結界を通過するための方法を適応するか、力業で破るかのどちらかをする必要がある。まあ、今回はその必要はなさそうだがな。」

 

「え、何でですか?」

 

「魔女の感知に引っ掛かっているからだ。この結界もそうだが、結界の外周りに魔力の糸が張り巡らされている。結界に向かって行くものを感知するためのものだろうな。そのうち向こうから出迎えが来るだろう。」

 

「そんなのあったんですか?」

 

「俺が前に来た時はなかった。一度結界内に侵入されたから簡易的に施しているのだろうな。違うか?」

 

 認識阻害の結界の向こうから気配が近づいて来ていた。

 

「・・・正解。そこの魔女っ子が気付かなくても無理無いわよ。気づくのはその男くらいよ。ほんと勘のいい人間ね。」

 

 魔理沙は突然姿を現したアリスに警戒している。一度会ったことはあるとはいえ、人外への警戒は忘れていない。教え込んだだけはあるか。

 

「あんたがアリスで合ってるよな?」

 

「そうよ、小さな魔法使い。その男を連れてきてくれてありがとね。」

 

 僅かに笑みが見える。

 

「まあ、その男に聞きたいことがあったからって言うのもあるけど、貴女にも純粋に興味があるのよ。人の身でありながら魔法を使う貴女にね。」

 

 妖怪特有の執着を感じた。それにいい印象はない。

 

「・・・アリス。」

 

「安心なさい。あれが手に入った以上、その少女には手を出さないわよ。こう見えて同業者というのは大事にする質よ。あなたも含めてね。」

 

「それならいいが、、、」

 

「まあ、上がりなさい。魔理沙だったかしら、紅茶は好きかしら?」

 

 

 

 

・・・

 

 

 

「に、人形?」

 

 訝しげに人形を見る魔理沙。

 

「勝手に動いているのか?」

 

「半自律人形と言って程度は変わるけど、魔力を与える事で予め組み込んだ動作を行うようになっているわ。勝手に動いている訳ではないけど、紅茶を淹れる程度の動作なら私が操らなくとも組み込んだ術式を起動するだけで十分だわ。」

 

「・・・すごい、これが魔法使いか。それにしても人形が人間みたいに動くのって何かあれだな。」

 

「怖いかしら?」

 

「いや、そういうわけじゃないけど、、、悪いとは思うけど、ちょっと不気味だなって感じがした。」

 

 魔理沙でもそう思うか。

 

「・・・まあこの反応が普通よね。少女でも人に近い存在には少なからず恐怖心があるわね。人形であっても変わらない。」

 

 チラッとこっちを見る。何かを言いたげにしていたが、それよりも気になった事があったのだろう。

 訝しげな目線を俺の背後に向ける。

 

「その背中の傘、何?」

 

「ああ、これは、、」

 

「ばあ!、ちょっ!」

 

 人間体になった瞬間に身体中に糸が絡まり身動きが取れなくなった小傘。流石の警戒と反応だ。

 

「・・・相手を選べ、小傘。アリス、そいつは付喪神だ。放してやってくれ、さっきのは習性みたいなものだ。」

 

 魔理沙は特に驚く様子もなく紅茶を飲んでいる。小傘の悪戯にはもう慣れている。

 

「付喪神?これはまた随分と珍しい物を引き連れているわね。」

 

 泣きつく小傘をそのままにして、話を続ける。

 

「あなた個人との対話を希望しているのだけれどいいかしら?その間に魔理沙には少し手伝って欲しいことがあるのよ。」

 

「私に?」

 

 ふよふよと動いている人形がアリスの側に近寄ってきた。

 

「上海、、この子だけでの戦闘が可能かどうかを試したいのよ。軽くでいいのだけれどいいかしら?」

 

「分かった。人形相手にするっていうことは無かったから、壊したらごめん。」

 

「この結界を破れないならこの子を破壊することはできないわよ。そう心配しなくてもいいわ。」

 

 こちらをチラッと見る。俺からも何かしら言えとの事か。

 

「・・・いい機会だ。自分より小さい相手ってのはそうそういないが技を当てる精度を高めるにはいい相手だ。」

 

「分かりました、やってみます。」

 

「小傘、見守っててやりな。必要は無いだろうが。」

 

「は~い、了解しました。」

 

 上海と小傘を連れて魔理沙が外に出た。

 少しの間、沈黙が流れる。自分から俺個人との対話を望んだというのに。

 

「・・・俺に用があったんだろ?」

 

「そうよ。あの資料どこで手に入れたの?」

 

「詳細な出所は言えない。」

 

 にじり寄って来る。無機質にも見える瞳が此方を覗き込んでいる。

 

「質問を変えるわ。私の研究をどこで盗んだの?」

 

「・・・やっぱり誤魔化せないか。話すから少し落ち着け。一つ言っておくと盗んだわけじゃない。」

 

「そうだとする正当な理由を話してちょうだい。」

 

 認識阻害の結界があるが念のために感知領域を広げる。

 

「ここからの話は絶対に誰にも言わないでくれ。少なくとも俺が生きている間は頼む。」

 

「内容によるけど、誰かに広めるほど交流は無いわよ。よかったわね。」

 

 

 

・・・

 

 

 

「未来か。辻褄は合うわね。あの研究では自分の命を削って魂を作っていたとある。私が想定していた自分の分身を埋め込む方法が適応された未来だったわけね。」

 

「正解だ。お前の成果であった命の創造は確かに凄まじい技術だ。その分代償も大きいがな。大まかに二つの要素である自我の確立と永久的な動力源を同時に行ったが為に術者に負荷がかかる。」

 

 ヒントは小傘だった。妖力を持った道具が永い年月を経て付喪神になり、実態を変える。

 

「妖力に近い魔力の動力源については前任者の研究がある。それを付与することで自然からの気力を僅かながら魔力に変換し人形に馴染ませる。それで永い時間が経てば原理上は付喪神になる筈だ。」

 

「・・・なるほど、命を埋め込むのではなく、発生させるということね。付喪神の在り方を面白い捉え方をしたのね。最後の工程になる付喪神となるほどの年月への対応、あれはあなたの魔法かしら?」

 

「時間制御系の魔法は基の理論はあんたとは別の魔法使いのものだ。俺の能力を持ってどうにか成立するものだったが、何とか魔術として形にしてみた。違和感はあるだろうな。」

 

 紅魔館の魔女の研究と時空間制御の名残があった懐中時計を元に作り上げた魔法。世界の時間と自分の時間をずらすことでの倍速以上の動きを可能にするもの。物を対象にする事で擬似的に物の体感時間を狂わせる事が出来ると想定している。

 

 他の資料とは違い殆ど一から作ったため、読んでいれば違うことは気づくだろう。

 

「それだけ戦闘に特化していた名残があったわ。あなたあれをよく使っていたわね。」

 

「生きていくには自分の術にするしかなかったからな。妖怪の攻撃をまともに受ければ無事ではいられない以上避ける手段として重宝したよ。動くに支障がない程度の負担で済む。」

 

 少し呆れたような表情をするアリス。

 

「理性的な人間かと思ってたけど、意外に変なところもあるのね。それだけの環境だったという事よね。」

 

 基本的に使えるものは使って戦う。人体に使えば割に合わない魔法かもしれないが、物体への運用はアリスにとっては有益なものになってくれるとの思いだ。

 

「あなたが人形に忌避感を持たない理由も納得したわ。魔理沙達も戻ってくる頃だからまた今度詳しく聞かせて欲しいわね。」

 

「そうだな、思い出話で良ければさせてもらうよ。」

 

 

 

 

 




次回から異変になると思います
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