かくして幻想へと至る   作:虎山

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氷にしても闇にしても物語では強キャラが使っている印象を持っています


砕けぬ氷 後編

 精霊とは自然そのものが具現化した姿。美しさもあるがそれ以上の脅威を体現する。特に暴走状態のチルノは歩く災害にも等しい。

 ルーミアも形振り構わずに大妖怪たる能力で対応する。

 

 

 闇と氷の衝突は辺りの環境を変えるには十分。霧の湖は闇に包まれ、氷の棘が至るところに発生している。人が踏み入れることができない領域。

 

「・・・ほんと、止めてよね。」

 

「こっちの台詞だ、ルーミア。先に止めておけばよかったのはお前だ。」

 

 鋭い礫が混じった吹雪。強固で形を持たない氷像。技とも言えない能力の暴力だ。

 猛攻を防ぐのに精一杯だ。向こうも力が変わったばかりで上手く扱えていないが、純粋な能力での物量戦では妖力が多く、また周囲に漂う冷気による相性からチルノが有利だった。

 

 能力同士の衝突は劣勢ならばと接近戦に持ち込む。近付きたい相手ではないが、現状打つ手がない。

 剣で迎え撃つだろうと思い込んでいた。剣を持ってして力で押し飛ばした一瞬で全方向から闇で突き刺して終わらせる気でいた。純粋に妖力で強化した腕力ならまだ力に慣れていない精霊程度相手にならず、至近距離でならこちらの技が速い。

 

(力が上がっても速さに対応できる程都合よくはいかないはず。それに感覚はまだ妖精の域を出ていない。)

 

 妖力強化での瞬発力、筋力での速攻。上手くいけば反応もできずに葬れる。

 

 だが、想定と異なり、こちらの剣を相手が掴む。凍り付き離れない。ここまでで一切見せていない速さからの斬撃だったが簡単に捕まれた様に見えた。

 

「は!?」

 

 一瞬の動揺。その隙に剣を持った手を掴まれ、瞬時に感覚が消えた。

 

「その腕貰った。」

 

 至近距離で闇を放出するが、一歩遅かった。チルノは距離を取り闇を避ける。僅かに掠め取るも失った片腕と比べて足りない。

 

「やっぱり近付くと速くなるな。危なかったが、もう当たってはやらない。」

 

 直ぐ様再生している様子はなく、再生能力が高まってはいない事は分かる。

 だけどチルノに戦闘不能にまで追いやれる傷を付ける事ができない。

 

「くそ、、」

 

 剣は相手に取られ、片腕は完全凍結している。再生が得意ではないが、大妖怪というだけあって再生に力を注げば腕は生えてくる。溶けそうにない氷よりは切り落とした方が使えるようになるまでが早い。

 

 だが妖力の消耗も早く、瞬時に再生するわけではない。切り落とすという選択肢はない。

 

 

 

 思考の結果は様子見。完全に闇の中に姿を眩ます。

 

(妖精は常に妖気を放出し続けている。とすればあの姿は長時間持たない筈。加えて感知能力も高くないなら闇に籠って避け続ける事は出来る。まったく、妖精相手にとんだ様ね。)

 

 真っ向からの勝負では不利。持久戦へと持ち込めば勝機はあると踏んだ。

 圧倒的物量で攻めて来ると思ったが、妖精は止まっている。下手に手を打ってこちらの領域に踏み込まないようにしているのか。

 

(好都合ね。だからと言ってこっちから打つ手もないし、一旦離脱した方が賢明ね。)

 

 闇を操る能力は様々な使い方ができる。視覚の闇に潜り込むように気配を断つのも容易くできる。物理的に闇を操作するだけでなく概念的な領域においても本領を発揮する。

 戦闘からの離脱は最善の策。真っ向にぶつかり合えば間違いなく負けるのなら逃げに徹するのみ。

 

 

 だが、判断が遅かった。

 

 目映い閃光が横を抜ける。闇の中を切り裂く熱線が僅かに腕に触れた。

 

「がぁ!」

 

 直撃などしていない筈だった腕は煙を上げていた。凄まじい熱と衝撃。直撃すれば間違いなく消し炭になる。

 

(なに?!あいつは氷の妖精の筈!どれ程の力を得ようとも性質が真逆の技をこのレベルまで使いこなせる筈がない!)

 

 閃光で闇が晴れ、チルノの姿が露になる。正面に歪んだ氷の膜を張っており、本人は空に手を伸ばし、目を瞑っている。

 

「・・・外れたか。」

 

 突き上げられた手の上空、太陽の光が不気味に見える。

 

「・・・そんな事がありえるの、、、」

 

 上空に張り巡らされた数多の氷で光を歪ませている。

 

 覚醒したチルノは氷の性質もを変化させる。元から溶けにくい氷を産み出す事ができたのだ、溶けない氷など容易に造れる。

 

 太陽の光を一点に集中させて放つ。ルーミアの射程範囲に近付かず、気付かれないための技。上空からの閃光であるならば間違いなく奇襲は成立した。

 ぶっつけ本番での技であるため制御は難しく、細かな標的に合わせる事はできないが、掠めただけで大妖怪を焼け焦がす事ができるのなら必要ない。

 

 氷の壁を更に産み出す。先程の威力で無くても十分通用する。威力を多少抑えて逃げ場を無くしてしまえばいい。

 

 一点集中で放つ太陽光を拡散させる。どこに逃げようが必ず当たる必殺の技。

 

 ルーミアには防ぐ手段がない。闇で壁を作ったとしても意味をなさない。光を飲み込む闇ではあるが、今のルーミアに太陽を防げるほどの力は出せない。

 

 片腕は凍りつき、もう片腕は焼け焦げていた。

 

 どれ程の防御も無意味だ。

 

「・・・はは、ここまでね。」

 

「じゃあな妖怪、消えろ。」

 

 上空の輝きが増し、手を下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寸前に姿が元の妖精に戻った。

 

 それと同時に空中に浮遊していた氷が砕け散った。精霊の力で展開していた氷の制御は元に戻ってしまった。 

 絶対に溶けない性質の氷は頑丈の域を出ない氷に変わり、蓄積した太陽のエネルギーに耐えきれず崩壊した。

 

 精霊と化していたのは感情の揺れによる一時的な変化に過ぎなかった。勝負が決まったと思った瞬間に高まった怒りが途切れた。

 

「うぐぅ、後少しだったのに、、、」

 

「・・・はは、惜しかったわね。復活しても困るわね。どうすればいいのかしら?」

 

 近付いてくる。立ち上がる力もない。手を闇に捕まれ、吊り上げられる。

 

「はな、せ。」

 

 心では負けていないが体が動かない。どこにも力が入らない。

 

「よくやってくれたわ、ほんと。人間も食べられてないのにここでくたばる訳にはいかないのよ。あなたに1つだけ聞きたいのだけれど死にたいって思ったことあるかしら。」

 

 足元に触手のように闇が蠢く。

 

「自ら死を望むものが復活するか試すいい機会だわ。」

 

 ザクザクと致命傷にならない部分が刺される。妖精の復活は全くの同じ状態で戻ってくるため、復活されると厄介な存在だ。だが、心の傷はどうか。記憶が残るのであれば、その身に受けた恐怖も残すことができるのではないか。ここで完全に心を砕いてしまえば復活したとしても立ち向かう気も無くなるだろう。

 

「ちく、しょぉ、お前なん、かレイアが」

 

 ズタボロの身体でも目の輝きだけは失っていない。諦めない妖精に苛立ちを感じる。

 

「都合よく助けが何度もくるわけっ」

 

 側面からの衝撃でのけ反る。

 

 闇の中の僅かな隙間を潜ってきたのか、一切の気配を感じなかった。

 

 人間の男と思われる存在がチルノを抱えていた。

 

「れい、あ」

 

「遅くなってすまない。」

 

 存在を認識した瞬間に虚空を突き抜ける闇。僅かに掠め取った感覚はあるが、それだけだ。

 確かに拘束していた筈だが、闇が断裂している。凄まじい速さで拘束を切り外し、救出された。

 

「・・・何者かしらね。」

 

 闇の範囲内から気配が消えた。追いかけるか悩んだが、闇に付着した血液に目がいった。

 

 

・・・

 

 

 

 

「あたい、守れなかった。さいきょうって言っておきながらあたいは弱かった。」

 

「・・・お前は強いよ。圧倒的格上の相手に立ち向かえる者に弱い奴はいない。よく頑張ったな、チルノ。あとは任せろ。小傘、頼む。」

 

 鍛練のせいで死ねなかったか。限りなく妖怪に近い耐久力を秘めている分、苦痛が長く続いてしまう。

 

「分かりました。ご主人様一人で戦われるのですか?」

 

 チルノを背負い、心配そうにこちらを伺う。

 

「大妖怪といえど手負いだ。それにあいつの能力と吸血鬼の侵略を結びつけると、昼間に攻め込めたのはあの闇の能力だろう。あれさえ封じ込めれば吸血鬼の侵略は止まるはずだ。」

 

 ここで抑え込めば、今回の異変は収まる。吸血鬼が日中は動いてこないという想定を裏切っての侵攻だ。最も力が高まる夜に攻めて来なかったのは、他の妖怪であっても同じ条件であり、制圧できないと考えてのものだろう。

 

 

 

 

 妖怪の元に戻る。闇についた俺の血を舐めとっている。恍惚な表情を浮かべる。

 

「・・・美味しいわ。洗礼された人間の味。もう少し若かったら極上の物だったわね。」

 

 獲物を見るような目で俺を見てくる。恐怖は感じるが、これまでの妖怪達に比べて圧倒される感じはない。

 手負いで消耗しているからではなく、記憶にある小さな存在と被ってしまう為だ。

 

 

『温かい味がするのだぁ』

 

 己の血を分け与えた少女、救えなかった存在を思い出す。

 

「そうか。最後の晩餐に上手いものを食わせることができてよかった。」

 

 

 

 

 

 

 




霊吾や魔理沙の早さで慣れていない場合は切り裂かれて終わっていました
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