かくして幻想へと至る   作:虎山

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今回は少し長めです


吸血姉妹 前編

 ルーミアの封印を施して紅魔館に向かう。慣れない封印で消耗はしたが途中で小傘が追い付いてくれた為、万全の状態ではある。

 

 門の前で倒れている存在が目に留まる。俺に戦い方を教えてくれた妖怪であり、その強さは大妖怪の脅威を体に覚えさせる程のものだった。

 

「寝たふりか、門番。」

 

「・・・よく気付きましたね。あなたはさっき攻め込んできた巫女さんの協力者ですかね。」

 

 スッと立ち上がる。寝ているかどうかについては気力での判断は出来ないが、美鈴さんが気を失ったままでいるのが想像つかない。

 鎌をかけた感じだが、乗ってくれたようだ。立ち上がってはいるが戦闘の意思は無い。

 

「協力者といえばそうだ。ここの主を叩けば上手く収まると思うんだが、あんたはどう思う?」

 

 互いに戦う気が無いのなら話に乗ってくれるだろう。美鈴さんがどの程度説明されているか分からないが、今回の騒動は乗り気では無さそうだ。

 

「どうでしょうね、言っていいのかは分かりませんがここにいない妖怪は暴れたいからこっちに来たというのが多いんですよ。それに支配欲が強い吸血鬼達にとってみれば主がやられるのは好都合でしょうね。」

 

 はぐれ妖怪をまとめて幻想郷に連れてきたか。人里に仕向けたのがルーミアだけだったのも純粋に人を食らう目的がルーミアだけしかいなかったのか。

 妖怪の山に向かったのは自らの強さを誇示するためだろうな。

 

(だがまあ、本当に厄介な奴は単体で手に負えない力を持っている。確かに集団で来られると面倒な妖怪達ではあったが、圧倒的な個の力には破れるだろうな。)

 

 紫さんが伝えるであろう前に妖怪の山で最も強い奴には伝えている。闇を払い弱体化した吸血鬼達を相手に万全のあいつが負ける姿は想像できない。

 

 気になっている事を問う。

 

「あんたの主人、死ぬ気か?」

 

「そのつもりは無いと思いますが、どうでしょうね。本意は私にも分かりませんし、分かる必要はないんでしょう。」

 

 美鈴さんも薄々は理解している。少なくともまともに説明されている訳ではないな。

 

「死んでもいいというわけか。」

 

「・・・それが望んでいるのであれば仕方ないんですよ。」

 

 よく見た表情だ。チルノが昔は明るかったと言っていたが、心の奥では常に何かを諦めていたのだろうな。

 周りに誰もいなくなればあの姿に戻るのだろう。

 

「仕方ない、、、あんたの本音はどうなんだ?俺はそっちが気になる。」

 

「敵の望みが気になるなんて変な人間ですね。」

 

 訝しげな表情。

 

「変に拗らせた妖怪は面倒な存在になる。幻想郷っていうのは何でも受け入れるらしいが、望みに素直になったらどうだ?もしかしたら叶うかもしれない。」

 

 ここで紅美鈴が暴れるようなことは起きない筈だ。竜の力を解放しているのであれば紫さんが幻想郷に残すとは思えない。

 本来ならその道を辿るのだろうが、既に変わっている。

 

「・・・本当に変な人間ですね。あなたが叶えてくれるとでも?」

 

「そうだと言ったらどうだ。」

 

「とんだお人好しですよね。まあ、今から言うのは独り言ですのでお気になさらず。」

 

「最後位は本音が聞きたいですね。吸血鬼としてではなく、ヴラドとして私をどう思っていたか。長く共にいたのですから気になるんですよ。」

 

 願いがそれか。吸血鬼の傲慢さを知って受け入れている。

 

(最後の言葉を俺から伝えても美鈴さんは変わらない。吸血鬼に負けず劣らず頑固な妖怪(ひと)だ。変えるなら前と同じようにするしかないな。)

 

「その独り言叶うといいな。じゃあ、通るぞ門番。」

 

「紅美鈴です。名も知らない親切な人間、また会ったら名前を教えてください。」

 

 

 

・・・

 

 

 

 霊吾が到着するよりも前に遡る。巫女は勘を頼りに紅い館を探索する。元より索敵は得意な方ではないが魔力が漂っている独特の空気のせいで詳細な感知ができない。

 

(館に残っている奴らは少なくないと思ってたけど、館内の魔力だったかしら。どっちにしろ術者を捕まえて吐かせた方が早いわね。)

 

 門番に聞き込みをするのが早い手段ではあったが何処から術が飛んでくるか分からない為、館に入り込んだ。

 取りあえずは強い妖気を辿って奥に入り込む。

 

(他の扉に比べて、強い作りになっている。)

 

 部屋に入ると子供部屋のような場所についた。煌びやかな西洋風の部屋だが、壊れた玩具が散らばっている。ベッドの上でのそっと気配が揺れる。

 

「ふぁ、誰?、、、人間?」

 

 金色の髪に紅い瞳の少女。輝く羽が彼女を異形の存在だと知らしめている。

 

「そういうあなたは吸血鬼かしら。」

 

 寝惚けた目から一瞬にして輝きだした。幼子のような純粋な眼が見つめてくる。

 

「珍しい人間もいるのね。よかったらさ、私と」

 

『あそんでくれない』

 

 言葉と共に荒れ狂う妖気が吹き出る。

 

「お父様ったらせっかく来たのにお留守番って言うんだもん、お家に入ったのなら好きにしたっていいと思うんだ。そう思うでしょ、お姉さん?」

 

「・・・大人しくしておきなさいと言っても無理そうね。」

 

 

・・・

 

 

 

(空間の歪みは感じられない。未だ十六夜咲夜は館に来ていないと見るべきか。少なくとも今回の戦に参戦する事は無さそうか。)

 

 一時期住んでいた時よりも狭く感じる館内。何処の部屋に誰がいるかは分からないが、主は上にいると思われる。

 かつて住んでいた時の記憶では最後の当主だった吸血鬼の部屋が最上階にあった筈だ。

 

 だが、行く手を阻む者が現れた。最上階に上がる階段からゆっくりと何者かが降りてくる。内在する妖気の大きさはそれなりだが、近づく度に増す威圧感はそこいらの妖怪とは比較にすらならない。

 

「生で見ても、やっぱりいい男ね。殺してしまうには惜しいわ。」

 

 幼き姿の少女。姿に似合わぬ気配だ。それに俺の事を見ていたか。どこから探られていたのか。

 

「・・・主人の娘か。」

 

「ええ、レミリア・スカーレット、以後お見知りおきを。さて、挨拶も済ませた事だし。」

 

 手に三叉の槍が現れた。穏便にすませられそうだと思ったんだが、そうもいかないか。

 

「運命を変える程の力、どの程度なのか見させてもらうわ。」

 

 

 

・・・

 

 鬼に及ばぬ力、天狗に及ばぬ速さとはよく言ったものだ。

 

「よく付いて来れるわね。もう少し飛ばしても良さそうね。」

 

 槍と爪の攻撃。間合いを測らせないためか変則的な動きだ。少しでも距離を取れば妖力の弾丸を飛ばしてくる。

 

(強い!流石に力や速さだけじゃないか。それに妖力ではないな。魔力か。)

 

 種族としての特徴はあくまでも目安にすぎない。主観ではあるがレミリアという個体はどちらにも匹敵している。それだけじゃなく、魔力を扱う分、別の脅威がある。

 

「才に頼った戦い方ではなく、数多の戦闘を経て培ってきた対応といったところかしら。」

 

 戦闘の中で息切れることなく語りかけてくる。

 

「・・・さて、どうかな。」

 

 悟られぬように流す。

 

「分かるものよ。動きにしろ、力にしても完全に抑え込まれたと理解しているでしょ?」

 

「・・・」

 

 よく見えている。それだけの余裕がある。

 

 未だ余力を残す吸血鬼とそれを受け止めるだけで精一杯の自分。狭い通路での戦闘は素早く小回りが効く吸血鬼の方が機敏であり、反撃の隙も無い。

 

 開けた場所であればもう少し戦いやすい。瞬間的な速さだけなら追い付くことはできる。

 

 切り札を使うにしてもここでは相手次第で巻き込まれる。自身を省みずに反撃してくる可能性はある。

 

(紅魔館の中で最も広い場所、、、あそこしかないか。)

 

 間取りはある程度把握している。十六夜咲夜の能力が関与していない状態でもあの魔女が細工をしているであろう場所。

 

 霊力をレミリアに放ち、推進力を使って勢いよく飛び出る。背中を晒す危険性は十分に把握している。

 

「逃がさないわよ。」

 

 砲撃を弾き、こちらに迫る。純粋な速さ比べでは負けているため、追い付かれる。

 

 全速力で移動しつつも、攻撃を受け流す。常に笑みを浮かべているが、こちらの思惑が分かっているのか。どちらにせよ、行動を変えるつもりはない。

 

 こちらが相手をしないと見るや魔力の弾幕を放ってくる。

 

「小傘!」

 

 背中の小傘を弾幕に向かって広げる。人を守るという目的を持った物であるならば弾幕を受け止めることはできる。

 

 受けた勢いを推進力に変えて速さを増す。

 

 辿り着いた大きい扉を蹴破る。紅魔館の中で最も広大な部屋である図書館だ。

 

 

 入って直ぐに魔力を感知した。肌に感じる熱。

 

 灼熱の太陽が落ちてきた様に思えた。切り札の一つを発動させる。

 

『虚日 ロイヤルフレア』

 

 蒼い炎と衝突させる。打ち消す程の威力は無い。

 

(流石はオリジナル。だが、遅らせるだけで十分!)

 

 威力は多少落ちたが、遅れて入ってきた吸血鬼にぶつける。

 

「きゃぁぁ!」

 

 叫び声をあげながら炎に包まれる。姿が消えて蝙蝠となって飛び回る。

 術者と思われる存在の横に集まり吸血鬼の姿に変わる。

 

「ちょっと、パチェ!危ないじゃない。」

 

「・・・まさか二回も止められるなんて。それに彼のさっきのは魔法に近い。パッと見で同じような火系統。興味深いわね。」

 

「何一人でぶつぶつ言ってるのよ。」

 

「道具を介した魔術使いってとこかしらね。レミィ、殺さないで捕まえてくれるかしら。」

 

「もう完結してるし。まあいいわ、あの男を殺すつもりは無いわよ。」

 

 魔女と吸血鬼が頭上で見下してくる。この二人で組まれると不味いな。

 

 妖気が凄まじい勢いで近づいてくる。

 

 図書館の壁を突き破り、何者かが飛んできた。素早くレミリアが受け止めた。

 

「いぃぁ、」

 

 首がへし折れた金髪の少女。折れてなお死んでおらず、七色に輝く羽から吸血鬼だろう事は分かる。

 

「フラン、随分とやられてるようじゃない。」

 

 レミリアが折れた首をもとに戻すと直ぐ様目を輝かせる。回復が早い。やはり再生能力は群を抜いている。

 

「お姉様!なかなかに強い人間がいるよ!」

 

 

 壊れた壁から遅れて巫女が入ってきた。普段より気力が乱れている。姿を確認すれば明らかだった。

 

「巫女、そいつは、、、」

 

「気にしなくていいわ、でもちょっと不味いかもね。」

 

 右手の手首から先が消失している。顔色をほとんど変えていないが、珍しく冷や汗が見える。

 

「フラン、壊しちゃ駄目じゃない。」

 

「ごめんなさいお姉さま。でもかなり強かったから許してね。能力使っても手を持っていくだけで精一杯だったんだから。」

 

「へえ、存外いるものね。あなた達みたいな人間が。フラン、あの男の人は本当に壊しちゃ駄目よ。それが呑めるんだったら一緒に遊んでもいいわよ。パチェも混ざる?」

 

「私はいいわ。ここで暴れるなら本を守らないといけないし、館全体の結界もあるのよ。どっちも面倒なのに戦闘なんてまともにやってられないわ。」 

 

 魔女は戦線を外れるか。

 

 

「下がっておけ、その状態で長くは戦えんだろう。それにあいつは俺は本当に壊さないと言っている。」

 

「あんた一人でいけるの?あの吸血鬼姉妹も厄介だけど、あいつらの主が残っているわよ。」

 

「能力を使った殺しあいと言うなら二人の相手は話にならないが、遊びとあれば可能性はある。どこまで対処できるかは知らないが、勝機はある。それにお前には術者の対処を頼みたい。館周辺の結界がなければ八雲も侵入できる。」

 

 片手を失くすほどの負傷だが、吸血鬼を一方的に打ちのめす力はある。魔女だけならば巫女は負けない。

 

「無茶言うわね。術者はどうか分からないけど、あなた一人であいつらの相手をする気?」

 

「死ぬ気はない。」

 

「・・・分かったわ。とりあえずあの金髪の吸血鬼だけど、力任せの部分が大きい。武器を振り回しているだけだと私も問題なく対処はできた。一つだけ注意するのは手を此方に向けて握る動作。避けきれずにこの様よ。」

 

 壊す能力。巫女の勘でも追い付かないか。手だけですんでよかったというところか。

 

「気をつけておく。」

 

 巫女の腕を掴み、感覚を浮かせる。大丈夫とは言いつつも欠損した痛みを抱えながらでは上手くは闘えない。気丈に振る舞ってはいるが気力の乱れは誤魔化せない。

 

「助かるわ。便利なもんねあなたの能力。」

 

「無理はするな、浮かせてはいるが強い痛みが加われば戻ってくる。あの魔法使いは体力的に長く戦える奴じゃなさそうだ。魔法を使わせて疲労させるだけでもいい。」

 

 即興の結界は維持に意識を取られる。さっきの言動から魔女も余裕ではないだろう。

 

 睨み合い。魔女が何かの魔法を発動させたと同時に動きが起こる。

 

 魔女と巫女が同時にその場から離れる。吸血鬼姉妹もそれに付いていこうとしたが、間に立ち塞がる。

 間に入ったことで吸血鬼姉妹の標的が完全に俺になった。

 

 

 右手には草薙の剣。左手には小傘改め、妖刀多々良。

 

 焔の剣と朱の槍が此方を見据える。

 

「へえ、あなた一人で私達を相手する気かしら。場所が変わった程度でどの位できるかしらね。」

 

「簡単には壊れないでね、せっかくの遊び相手なんだから。」

 

「・・・大妖怪相手に戦闘する事は無いと思っていたんだがな。」

 

 

 

 

 

 




やっと吸血鬼が出てきた吸血鬼異変です
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