かくして幻想へと至る   作:虎山

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およそ半年ぶりの更新です



闇の欠片

 藍さんへの経過報告の翌朝。朝食の準備や寝間着の洗濯等やることが多く、巫女が起きるより早くに目を覚ます。

 

 基本的に来訪者はいないが、来るのであれば主に昼だ。妖獣もそれほど活発に動かない昼であれば人里からも来ることはできる。とはいうものの数人の団体にはなるが。

 

 早朝に来訪が来るとすれば緊急事態なのだ。

  

「霊吾さん!」

 

 神社の外から声が聞こえた。

 

(近づいてくる気配はなかった筈だが、、、巧妙に隠していたにしては今ははっきりと分かる。)

 

 巫女が万全の状態ではないこともあり、それなりに警戒はしている。大きな妖気ではないが、気づかない程小さくはない。呼び方からして敵ではないと思われるが誰だ。

 

 早朝ということもあり、寝ている巫女から離れ。外に出ると、いつか見たチルノの友達がいた。緑髪の妖精にしては大人びた風貌と性格。確か、、、

 

「大妖精だったか。慌てた様子だが何かあったか。」

 

「あの時の妖怪とチルノちゃんが戦ってて!チルノちゃんから霊吾さんを呼んで欲しいと言われたので、来てもらいたいです!」

 

 思い当たるのはルーミアか。大人しくしていたようだが動き出したか。傘立てのに声をかける。

 

「小傘、留守を頼む。巫女が起きたら少し出ている事を言っておいてくれ。」

 

 傘から人間体に代わる。

 

「分かりました。お気を付けて。」

 

 草薙の剣を渡される。相変わらず気が利く。

 

 渡された刀を腰に差す。

 

「ああ、大妖精、案内を頼む。」

 

「はい、、あの、失礼します!」

 

 大妖精が手を掴むと景色が変わる。

 

 異変でチルノとルーミアが争っていた魔法の森と湖の間にいた。目の前でチルノとルーミアが相対している。

 

(瞬間移動だったか。道理で気配がいきなり現れる訳だ。)

 

「お前はあの時の!?」

 

 こちらに俊敏とは言えない動きで距離を取る。どうやら身体の動きが上手く制御できていない様だ。

 

(記憶が残っている?妖気も小さく封印は成功している筈だ。記憶だけが残っていると見ていいか。)

 

 赤布の霊力が落ちていたか。俺の封印術が巫女ほどの強さを持っていなかったか。どちらにせよルーミアも俺の知る存在から外れたか。

 

「レイア、こいつどうする?」

 

 僅かに戦闘の後は見える。息遣いの荒いルーミアと無傷のチルノ。周囲の氷の状況からして大規模の争いでは無さそうだ。

 それにチルノは無傷であることから間違いなく力は抑え込まれている。

 

(チルノが強くなったと言えど力がそのままなら無傷とまではいかない筈だ。)

 

「目立った害を成さないなら放置でいい。それに今のお前が牙を向けるのなら俺が消し飛ばす。不完全な封印である以上は仕留め損ねた妖怪と同じで、本来ならこの場で消滅させるんだがな。」

 

 霊力の圧を飛ばす。弱くなったと言えど、人食い妖怪であることに変わりはない。

 

 無邪気で幼き性格ではなく元の性格であるなら、藍さんが言っていたように力がなくとも害を与えることはできる。幻想郷を脅かすほどの脅威は無いにしろ好き勝手に暴れれば被害は出る。

 

(俺のミスだ。ここで処理した方が適切か。今のこいつはどちらに転ぶかは分からん。)

 

 ルーミアは恐怖で動けない。

 封印前の時ですら目の前の二人を同時に相手取るのは不可能。

 それに目の前の男はもう封印という手は使わない。今度こそ終わりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・レイア、そこまでしなくてもいいんじゃない。今のルーミアはあたいでも抑えられるし。」

 

 隣でチルノに腕を掴まれる。

 

「大妖精を一度は殺し、お前を殺そうとした存在だ。情けをかける相手ではないだろ。」

 

 大妖精を見る。チルノに反対する気は無いようだ。とりあえずはチルノに任せているようだ。

 

「いや、何て言うんだろうか。レイアに怯えてるルーミアを見るとさ、こいつもあたい達と同じ弱い存在だと思うんだ。悪い奴ではあったけど、でも、、、」

 

 一度は殺されかけたというのに庇うか。それは優しさではなく、甘さだと言うべきだろう。

 

 だが、その底なしの甘さに救われてきた者達もいた。切り捨てるべき妖怪達も何とか拾おうと駆け回っていたチルノを思い出す。例え敵だったとしても変わらないか。

 

 

 ルーミアを見る。威勢はいいものの力が伴わない虚勢にも思える。

 

(・・・己と重ねたか。)

 

 自らを最強と鼓舞するチルノとは違い、この妖怪はただ傲慢なだけだろうが。

 ただ、この子の判断に任せてみたい。常にいち早く危険を察知してきた彼女なら仮にルーミアが暴挙にでても未然に防げる筈だ。

 

(例えルーミアの性格が大妖怪だとしても肉体に多少は引っ張られる筈だ。それにチルノとの関わりでも変わる可能性は十分にある。)

 

「・・・そうか。じゃあ、チルノ、暫くこいつを頼む。ただ、少しだけ話をさせてくれ。」

 

「ほんと!」

 

 パッとこちらに笑顔を向けるチルノ。

 

 硬直しているルーミアに近付き、首根っこを掴み持ち上げる。

 暴れる気は無いようだ。諦めだろうか。

 

 少し離れた場所でルーミアを離す。ここでなら聞かれることはないだろう。

 

 

「聞いていただろうが、そういうわけだ、宵闇の妖怪。チルノに免じて暫くはお前を放置する。まあここは悪くないところだ。拾った命を無駄にすることは止すんだな。」

 

 警戒は解いていないが、どこか安堵している様に思われる。

 

「・・・それは私に人を食うなと言うことかしら?」

 

「そんなことは言わんさ。妖怪としての性質、特性上、お前が人を食うことを否定する訳じゃない。人間とて人里の外に出る時に無防備な訳じゃない。簡単に食えるとは思わんことだな。」

 

「たかが人間が妖怪に立ち向かう訳がない。いくら力が落ちたと言えど、私を止められるかしら。」

 

「そのたかが人間にその姿に追いやられたのだろ。俺より強い人間は直ぐに出てくる。古い価値観は捨てた方がいい。」

 

 図星と驚愕でルーミアは黙り込む。幻想郷という地での人間を誤解していたのかもしれない。

 助け船という訳ではないが、一つの役割を伝える。

 

「食える人間は選べ。ここは外の世界の人間が迷い込むことがある。そいつらなら問題ない。」

 

「寛容なのね。」

 

「少なくないとは言え一定数存在するもんだよ。妖獣に食い荒らされることもある等どうしようもない部分もある。そして希にだが不穏分子になることがある。」

 

 外からやってくる人間がまともかどうかは正直怪しい。霊力の高い子供や孤独な老人等が迷い混んでも長くは生きていけない。

 

 厄介なのは霊術に通じてきた人間。意図的に幻想郷に訪れる存在はいるのだ。

 古くからの文献もそうだが、紫さんが流している部分もある。大人しく幻想郷に適応できるのであれば問題ないが、下法に手を出す可能性もある。

 

(・・・完全に予想外の俺とは違い。小道具屋の店主等は紫さんの工作があった。本人に向かう意思が無かったかどうかは不明だが、あれはおそらく招いている。)

 

 招き入れるのが一種のバランス調整かどうかは知らないが、下手な妖獣が食らうよりはルーミアの方が適任だろう。

 

「・・・それは貴方も含まれているとみていいのね?」

 

「未だ立ち向かって来ると言うのであれば、相応に相手をする。」

 

「何れはあんたを食ってやる。」

 

 捨て台詞を吐いて、離れていった。

 

「あ、おいルーミア!待ってよ。」

 

 それを追いかけるようにチルノが付いていく。暫くは様子見をしておくか。

 

 

 

・・・

 

 

 

 神社への戻り道、一連の観測者に話しかける。

 

「藍さん、見ていたのでは?」

 

「観察してはいた。だが、あの氷精が一人で抑え込んだのを見て、一度離れたよ。私が手を下さなくとも氷精がやると思ったのだが、君を呼ぶとはね。」

 

 藍さんから見てもルーミアは危険因子か。俺も未来を知っていなければ、消す可能性はあった。

 

「あいつは、、、もういいでしょう。害になることはないと思います。」

 

「そうだな、今の闇妖怪なら大した脅威にならない。まあ、君の言い分には少し引っ掛かるがな。外の世界の人間なら食ってもいいと言うのは些か言い過ぎだ。」

 

「一つは納得させる為ですよ。それにルーミアを当てるのが適任かと思いまして。」

 

「それは未来を見てきたが故のものか?」

 

「いえ、完全に俺の判断です。未来のルーミアと今のルーミアは姿のみが同じの別物です。知性がある分敵対すると厄介な存在になるかもしれませんが、チルノと関わる内に変わる可能性が高いと見込んでのものです。」

 

 チルノが眼を光らせ、ルーミアもチルノを探ってる間に変化は起こる。力が衰え、知性が残っているが故に狡猾な妖怪になる可能性もあるが、チルノに寄る可能性が高いと見込んでいる。

 

「随分とあの氷精をかっているのだな。」

 

「俺から見ればチルノは希望です。あの世界でただ一人戦い続けていた。管理者たる貴女方とは違い、純粋までに自分と自分の周りを救おうとしていた。」

 

 あの気持ちは、想いは俺が見てきた中でも尊いものだった。

 

「仮に幻想郷が崩壊の道を行ったとしても彼女は立ち上がる。俺がやっているのは立ち上がった時に少しでもチルノの思う方向に行けるように力を付けさせる事なんですよ。」

 

 決して弱くはない。大妖怪には及ばないながらも強さはあった。ただ、それでも力の無さで救えなかった者達もいたと聞いた。後悔と成長の果てに未来の彼女がいた。

 例え未来の様な結末が待っていたとしてもチルノが救える存在が増え、チルノを助けてくれる存在が現れるようにしたい。

 

「なるほど、それほどの存在になるのか。」

 

「そうですね。チルノの在り方は結果として、地底や妖怪の山からの群を人里から退ける事にも繋がった。あの時、チルノが居なければ確実に幻想郷は崩壊していました。」

 

 俺と凶が萃香を討つ前に全てが終わっていたかもしれない。チルノが動かない時点で美鈴さんも風見幽香も動くことは無い。

 

「影響力だろうか。今のあの子を見てそれほどの力は感じないのだがな。」

 

「いずれ分かりますよ。」




来年はもう少し更新頻度を上げたいですね
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