かくして幻想へと至る   作:虎山

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1年以上ぶりの更新です。



魔法少女の再燃

 アリスが来た翌日、神社を離れる。言っていた通りに数日間は製作に費やすとのことで手持無沙汰になった。巫女も一人で問題なく動けており、何かがあったとしてもアリスがいれば対処はできる。出ていくときに巫女から睨まれてはいたが、俺が居たとてやることもないのだ。

 

 

 

 暫く放置していた異変後の後始末に戻る。というのも藍さんがほぼほぼ終わらせているため、やることは多くないが、気にしていることは幾つかある。

 

 先ずはその一つを片付けるため、魔法の森の一角にある自称魔法店に向かう。迷いやすい魔法の森だが、かつては自身の庭のようなものだ。すぐ目的地周辺に着く。

 

 だがぱっと見で以前あった住居が見えない。そのかわりに僅かな違和感を覚える。

 

(・・・結界か。)

 

 限定的な範囲だが、認識疎外の結界を感じ取る。結界はアリスの魔法と同じだが、術の精度はアリスのものより低い。アリスの結界に対処できるのであれば、抜けるのには苦労しない。

 

 結界に触れ、気力を同調させてすり抜ける。結界を抜けるとぼろぼろの魔理沙が仰向けで倒れている。

 

 意識はあるようだが、こちらに気づいた様子はない。修練に打ち込みすぎという感じか。

 

「無理のし過ぎだぞ、魔理沙。」

 

「!?師匠、何故ここに!巫女様の看病では無いんですか。」

 

 跳ね起きるようにして立ち上がった。

 

「巫女はもう動けるくらいにはなっている。それに今はアリスが付いてる事もあって、俺が離れても問題ない。」

 

 実際巫女には睨まれるだけでなく、何をしに行くのかと少し詰められはした。魔理沙の状況は教えているのもあり、様子を見に行くと言えば納得はしてくれた。

 

「アリスが?何で神社に?」

 

 色々と情報が飛び交って混乱したか。少し時間をおいて答える。

 

「巫女の義手製作を依頼している。それで暫くは神社にいるようだ。」

 

「・・・神社に人外を住まわせていいのですか?」

 

「悪いという事はない筈だ。八雲主従が特別というわけではないが、そもそも妖怪は神社に寄り付く利がないだけだ。」

 

 魔理沙が疑問に思うことも分かる。霊夢の時代では人間より妖怪の来訪が多いと聞いていたが、この時代までは八雲以外の妖怪は基本来ない。

 

「でだ、聞いた話ではアリスの家に行ったそうだな。あいつの家は結界もそうだが、罠が危ないと言った筈だが。」

 

 結界を越えた後は家に近づく度に危険性を増す罠になっている。無作法に危害を加える罠ではないが、妖怪の拘束用ということもあり、人間の、それも少女が無事でいられるかは分からない。魔法使いとしての意匠が施されただけあって、物理的な罠でも回避や解除をするには魔術への理解と観察力がいる。

 

 アリスにとっては魔術をある程度知っている存在とそれ以外を線引きする仕掛けになっている。

 

「力試しか?」

 

 逆に言えば通り抜けることができれば、アリスという魔法使いにとっては最低限認められるレベルにはある。

 

「・・・合ってますよ。ぼろぼろのチルノを見て、戦えなかった自分が力不足だと思ったまでです。」

 

 思うところがあるか。かつて母を救えなかった頃の自分を思い出しているかの様だ。

 

「今回は相手が相手だ。普通の人間なら戦いにもならない妖怪だ。」

 

「・・・私だったら戦いになりましたか?」

 

 チルノとの模擬戦闘を経ていく中で自分の力量は理解している。自分の力が人里の人間とは違うことは分かっているようだが、他の相手を知らない故の疑問か。

 

 チルノを運んだ小傘からチルノが奮闘していたことも聞いているのだろうな。

 

「正直に言うなら無理だ。大妖怪相手にはいつも通りの動きが出来たとしても難しい話だな。」

 

「でも、倒せなかったら次はない。師匠が自分より強いと言った巫女様が重傷となったんだ。」

 

 巫女の怪我も相まって不信になっている。これが博麗の巫女に敗北が許されない理由か。

 おそらくは魔理沙だけではない。人里の人間であればこうなるのは必然か。

 

「巫女は傷を負いながらでも戦えてはいた。人里の人間はあまりあてにしてないかもしれないが、一応は俺という存在もいる。博麗の巫女ほど頼りにならないのは自覚しているがそれなりに戦える。お前から見ても俺だけでは不安か?」

 

「いえ、そうは思いませんが、、、でも、」

 

 少し意地悪な問答だったか。そもそも俺にそれだけの力はない。

 

「お前がそう思うのも分かる。だから力を求める事が悪いと言いに来た訳じゃない。」

 

 ぽふと魔理沙の帽子を抑え、労う様に撫でる。

 

「少し前のお前みたいな無理の仕方なら止めたんだが、最低限の警戒はしてるようだし、ただの様子見だ。結界はアリスの魔法を真似たのか?」

 

「・・・規模も精度も良いとは言えませんが。」

 

「そう卑屈になるな。形にしただけでも十分。」

 

 人間や妖獣ならまず気付かないが少し力を持った妖怪なら違和感を持つ程度。十分すぎる出来だ。

 

 知っている俺やアリスだから簡単に対処できるだけで、無理矢理入れば術者が感知できるものだ。結界としての役割は十分に果たしている。

 

(紅魔館での異変から対して経っていないが、魔法の理解と実現が出来るとは。魔法使い共と同等の知識があれば可能なレベルの短期習得だ。)

 

 魔法を使う能力という才能があってこそだが、魔術書を盗んだだけで出来るわけではない。本人の執念も生半可なものじゃない。

 

「同じ条件としても俺ならこう早くも形にはできない。焦らずともこのままやっていけばいい。」

 

「・・・それで私が大妖怪に勝つにはどれくらいかかりますか?」

 

 気になるのはそこか。人里を守れるような力を得るにはどの程度か。幼き頃の自分も大きな存在に勝つにはどれくらいかかるかというのは常々思っていたな。

 

「大妖怪に戦闘で勝つことを目標とするのは止めておけ。相手次第だが、博麗の巫女ですら単身での撃破は楽じゃない。そもそもの話として大妖怪と言われる奴らの全員が全員強いというわけでないのだがな。」

 

「強い妖怪の総称が大妖怪ではないのですか?」

 

「イメージとしてはそれでいい。だが本質は圧倒的な恐怖感を与える事が出来るかどうかだ。立ち向かう事さえも無謀と感じる程の何かを持った妖怪。力であれ、知識であれな。長く生きた妖怪ほどその強み、恐怖の根源を理解しているから上手く使え、大妖怪と言われる。」

 

 純粋な妖気の大きさや強さというよりは存在感と言うべきか。実際には相対した者にしか分からない。

 

「基本的に大妖怪を相手した人間は立ち向かうことさえも考えることはできない。」

 

「でも師匠や巫女様はそんな存在と戦ったじゃないですか。どうやって立ち向かう事が出来るんですか?」

 

「言ってしまえば経験、慣れだ。お前も初めて妖怪と接敵した時と今は違うだろ?俺も大妖怪と最初に戦った時は歯が立たなかった。とはいうものの俺の場合は相性次第では戦いにすらならない事もあるだろうが。」

 

 今までは基本的に物理的な攻撃を主体としていた大妖怪が相手だっただけに戦いにはなっている。実体の無い存在や術や能力を主体とする妖怪と相対して戦えるかは分からない。

 

 実体の無い存在に対してだけは切り札はあるが、条件が限られる技だ。

 

 

「巫女はそもそも恐怖に支配されない存在だ。博麗の巫女が共通してあらゆるものを拒絶する性質を持つ。恐怖を理解した上で考えから弾いている。真似できるものじゃなく、天性のものだ。」

 

 かよ、今の巫女、博麗霊夢の三者の共通点がそれだ。恐怖による思考、動作の硬直を否定する才能。

 

「ではチルノはどうですか?あいつも大妖怪と戦ったのでは?」

 

「チルノは、、、おそらく俺に近いだろう。」

 

「チルノも経験や慣れですか。」

 

「・・・ちょっと違うかもな。良い言い方をすれば勇気だな。悪い言い方をすれば無謀。だがあいつも馬鹿じゃない。俺や魔理沙との修練で相手と自分の力量差が分かるようになっていた。だからまあ、土壇場での勢いだろうな。」

 

 あの絶望的な状況から光を見出す存在だ。その片鱗だったのかもしれない。

 

「参考にはならないですね。でも慣れるということは分かりました。」

 

「どちらにせよ強くなるには地道に地力を付けるほか無い。慣れにしろ、勢いにしろ最低限の力無しに立ち向かうことはできない。」

 

 納得した様子ではあるが、腑に落ちない部分もあるか。

 

(危ない橋を渡せる前に慣らしておいた方がいいのかもしれない。)

 

「まあ、経験は大事だ。明日でかけるぞ。」

 

「どこにですか?」

 

「明日のお楽しみだ。戦闘の準備も含めて今日はゆっくり休め。」

 

 

 

・・・

 

 

 

「妖怪退治ですか?以前巫女様が春とか秋とかにやってるのは見てたんですけど、この時期というのは珍しいですね。」

 

「吸血鬼達の影響が出始めている。闇の妖怪が妖精を一時的に食らったおかげで、自然の歪みが起こっている。一応妖精の復活は確認できているが、以前より数が少なく、妖怪が増えている。それも一部に自然を形どってる妖怪が多い。」

 

 未来の幻想郷では良く見られた妖怪だが、自然の象徴たる妖精が消えることによる異形な妖怪の発生は無視できない。荒れ果てた自然ではないため、時間経過で戻るだろうとは思われるが、未来の景色があるだけに早期に対処しておきたい。

 

 

 泉周辺にたどり着くと異変前後の変化が見える。木々が生えている妖怪や水場をうろつくヒレの生えた獣の妖怪。未来では見かけることも多々あったが、今の時代では稀に発生する程度だ。そういった妖怪がそれなりの数居る。

 

(隠れている奴らも含めてざっと十体か。感知範囲を見てもやはり多いな。多少は逃げられるとしても半分は退治しておきたい。)

 

「!なんだこいつら。」

 

 妖怪どもの体格は巨体でも無ければ、威圧感があるわけではない。ただ、不気味な形や特徴が人に嫌悪感を抱かせる。

 

「その怯えは大事だ。その上で戦えるか?」

 

「・・・やります。」

 

 魔理沙が近づくと何体かの妖怪が反応する。

 

 枝のような手足を伸ばして、魔理沙を捕まえようとしたが、あっさり躱される。そのままミニ八卦炉を向ける。

 

「マスタースパーク!」

 

 木の生えた妖怪を消し飛ばした。

 

「ふぅ、っ!」

 

 足元に迫っていた蔓に気が付き、上空に逃げる。

 

「一体を仕留めて気を抜くな。最初に何体捕捉した。お前の敵は一体づつ襲ってくる様な奴らか?」

 

「分かってます!」

 

「よし、続けろ。」

 

「はい!」

 

 索敵と攻撃を繰り返しながら妖怪退治を進める。

 

 

・・・

 

 

 

「ふぅー。」

 

 魔理沙が少し息を整えて周りを見渡した。周囲に妖怪の気配はない。

 

「とりあえず周りの妖怪はあらかた片付いたようだな。十分だ。」

 

 中級妖怪が七体か。飛行能力も俊敏性も無い妖怪だが、魔理沙のマスタースパークで消し飛ばない奴もいたりと人里の人間ならどうだったかは分からないな。

 

「なあ、師匠。こいつらは悪い妖怪なんですか?」

 

「悪意を感じなかったから、そう思ったのであれば考え直せ。本能かどうかはわからないが、こいつらは人間だけじゃなくて妖精も食らう。人を食らわない妖精とこいつらの繁栄はどちらが良いかは妖怪と人で変わるだろうが、俺達は人だ。」

 

 ここが難しいところではある。妖精と妖怪は元を辿れば同じだ。紫さんや藍さんでは重視しないところの一つだ。幻想郷のパワーバランスから見てどちらが多いかはどうでもいいらしい。

 

 人間からしてみればいたずらで済む妖精とあくまでも捕食を目的とする妖怪のどちらが多い方が良いかと言われたら後者だろう。

 

「分かりやすく暴れる妖獣の危険性は理解しているようだが、こいつらは擬態や隠密による狩りが基本だ。姿を隠したり、潜める事がほとんどだ。人里の人間は妖獣で怪我を負うことは多いが、比較して死者は少ない。死者を出すのはこういった妖怪だ。」

 

 普段の光景に溶け込み一瞬で仕留める技を持っている。魔理沙はしっかり避けていたが、こういう妖怪は自然由来の毒を含む攻撃を仕掛けてくる。それが意識外から飛んでくれば人は簡単に倒れる。

 

「どの妖怪が良い妖怪か悪い妖怪かは俺も分からない。だが、話を聞いてくれたり、話してくれる妖怪なら話して判断するようにはしている。問答無用で攻撃してくる妖怪は基本的に敵と見なせ。」

 

「分かりました。それにしても妖怪にもいろいろいるのですね。」

 

「大妖怪だけが厄介な存在じゃない。恐怖の形も様々だからこそ、妖怪と相対する経験が重要になってくる。今回は威圧ではなく不気味さが強かったが、忌避感で動きは多少変わる。まあ途中からは問題なさそうだったな。」

 

「森の植物にも奇妙な物はあるので慣れれば大したことないです。」

 

「頼もしいな。さて、あいつらの様子でも見に行くか。」

 

「あいつら?」

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 複数の妖力が集まっているのを頼りに近づくと見知った奴らが集まっていた。妖精組とルーミアが居た。

 

 大妖精がこちらに気づいたようだ。 

 

「あれは、霊吾さんと魔理沙ちゃん」

 

「お~、魔理沙とレイアか。」

 

 近くに降り立つと二人が近寄ってきた。

 

「最近の近況を聞きに来た。どうだチルノ?」

 

「ここいらはだいぶ戻ってきたよ。」

 

「そうか、、、お前も大人しそうでなによりだ。」

 

 ちょっと離れたところで不服そうにこちらを睨め付ける存在に声をかける。大妖精も一緒にいることから受け入れられてはいるようだ。

 

「・・・まだ体が慣れてないだけよ。」

 

「相変わらず威勢はいいな。」

 

「師匠、この妖怪は?」

 

 そういえば魔理沙はまだ見たことがなかったか。

 

「吸血鬼と共に攻めてきた闇の妖怪だ。今はこの姿だが、元々は大妖怪だ。安心しろ、今は敵対する関係ではない。」

 

 僅かに魔理沙が強張る。妥当でありいい反応だ。

 

 ルーミアも見定めるように魔理沙を見る。

 

「その人間は随分と美味しそうね。年に合わない洗練された感じは本能で分かるわ。」

 

「はっはっは、ルーミアには無理だな。魔理沙は今のあたいと同じくらいに強いぞ。」

 

「何を誇張してんだよ。私の方が勝ってるだろ。」

 

 戦績的には魔理沙が上だが、負けん気が強いな。

 

(そういうところが可愛いところでもあるんだがな。)

 

「・・・あんたの弟子?」

 

「そんなところだ。」

 

「ふーん、見た目が魔女っぽいからあんたとは違うと思ったけど。」

 

「お前には見せてないだけで俺も魔術は使う。紅魔館の住人と交流があったかどうかは知らんが、パチュリー・ノーレッジの様に多彩な魔法や魔術は使えない。限定的なら迫れる魔術はあるがな。」

 

 限定的と言うが、事実上は二つだ。

 

「限定的とは言え、あの魔女に迫れる練度ね。厄介ね。」

 

 知ってはいたようだな。こいつと紅魔館の関係はよく分からない。

 

「それ以外の魔術は足元にも及ばん。」

 

 ルーミアと話していると何かを思い出しかのようにチルノが話しかけてきた。

 

「そうそう、レイア、明日とかって暇?」

 

「時間はある。どうかしたか?」

 

「リグルがな、レイアを紹介したい妖怪がいるんだって。暇だったら一緒に行こう!」

 

 リグルからの誘いか。俺達ではなく、俺個人だとするとあいつの可能性が高いな。

 

 だが、いい機会にはなるかもな。

 

「・・・ああ、行こうか。魔理沙も来るか?」 

 

「行きます。いろんな妖怪は知っていた方が良いので。」

 

 いい判断だ。

 




少しストックができたので更新が少し早くなるかもしれないです。
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