何番煎じかもう分かりませんね。
この手の小説も。
ーフリードリヒ・フォン・シラー
「神様であるわしのミスで君はトラックに轢かれて哀れなミンチになったので転生させてあげよう!」
目の前で神と名乗る老人が満面の笑みで俺を見ていた。
「・・・は?」
突然の出来事で認識が追いつかない。というか此処はどこだ?
「特典は3つ!記憶の継承と頑強な肉体、現代知識の活用法じゃ!それとサービスで言語理解も付けてやろう。転生先は剣と魔法の存在するファンタジーな世界だ。文句は無いじゃろう?」
「いやまず俺は死んだのか・・・?」
「ああ、トラックに轢かれての。どれもこれもわしの手違いのせいなのじゃがな。」
「そうか。それで俺は異世界に転生するのか。テンプレ乙」
生前はよくこの手の小説を読んでたからすんなりと状況が理解できた。
「まず容姿を変えさせてくれ。そうだな…175センチの線が細いイケメンで。あとニコポとナデポを標準装備。転生先はもちろん貴族の長男…いや次男あたりだな。長男だと跡継ぎだのなんだの面倒だ。自由に生きたいんだ俺は。最後に特典に無限の魔力を追加しろ。」
「ふむ要求が多いのぉ…じゃがこれで大丈夫じゃ。では早速転生じゃ!」
自称神様のジジイが素晴らしい笑顔でそう言い放つと同時に俺の体は光に包まれた。
新しい人生に期待が膨らむ。どんな出会いが待っているのだろう。
だから俺はちっとも気付かなかった。神の笑顔に隠された悪意に。
それから二十年後、チート持ち転生者である彼は城の地下牢に対魔力の効果を持つ十字架に磔にされていた。
王国の名門貴族の次男として転生し、現代知識チートで幼い頃から神童と持て囃され続けた彼。転落したのは、最年少の宮廷錬金術師として出世を約束され、ハーレムを築き上げようとした矢先であった。
確かに彼は賢かった。しかし時代を先行しすぎた技術は人々から疎まれるということを理解してはいなかった。過ぎた力は彼を増長させ、人格的な成長を妨げた。
宮廷の知識人たちと敵対派閥の貴族たちはこぞって彼が悪魔に魂を売り渡したと声高に叫んだ。鋼鉄の刃を突き立てても傷一つ付けられない彼の強靭な肉体をその証拠とした。
彼を囲う女性たちも洗脳を解かれ、かつては心を通わせた(と、彼は思っている)幼馴染やハーレムの構成員たちも揃って彼を憎々しげに睨んだ。
拷問の痛みに耐え兼ねた彼は死を選ぼうとした。だがあらゆる武器を持ってしても彼を傷つけることは敵わなかった。
そうして彼は今も地下牢に幽閉されている。死ねない呪いを植え付けた〈神様〉に怨嗟の声を吐き続けながらー
王国が滅んだ後の宮殿を舞台とするダンジョン経営サクセスストーリーになる予定です(大嘘)