東方幽棲抄 ~ 今日も今日とて、ツンデ霊夢に殴られる   作:風鈴.

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第14話 早苗と再会 その3

 

「まあ、なんつーか……必ずしも変だとは言わないよ。優の言う通り、一般知識的で一般常識的だ。でもな、年頃の問題? 年齢不相応? 赤子がコップで湯冷ましの粉ミルクを飲むって言うか、大人が哺乳瓶を使って牛乳を飲むと言うか」

 

「そんなに大して問題ではないじゃないですか!」

 

 えー。

 

「いや、待てよ早苗。大きな問題だろうよ。だって、赤ちゃんが粉ミルクをコップで飲むんだぜ? 大人が哺乳瓶で牛乳を飲むんだぜ? 想像してみろよ。とんでもない光景だぞ」

 

「飲める分には問題ないじゃないですか!」

 

 えー。

 

 えぇー。

 

「いや、だから違うって。論点は飲める飲めないの機能性じゃねえって。いや、機能性としても大きな問題があるか? 赤ちゃんが哺乳瓶無しに粉ミルクを飲めるとは……ああ、もう何でも良い! 面倒くせぇ! とにかく、駄目なんだよ! 主に光景が! 視覚的訴えが! 特に大人が哺乳瓶で牛乳を飲む方! まるで幼児退行化した変態じゃねえか!」

 

「それは一般的な常識の話でしょう! この前、優君が言っていました! なんでも常識や社会規範ばかりに囚われてはいけないって! 常識や社会規範は、過去の風習が多大な影響を与えているものが多くて、時には悪弊が含まれているから、鵜吞みにせずに自分の頭で判断しなくちゃいけないって! 常識に囚われちゃいけないんです!」

 

「いや、確かに正論だけれども、優はそんな意味でそれを言ったわけでは絶対ないと思うぞ!? 間違ってんだよ、早苗のその考え方!」

 

「正論だけど間違っているってどう言う意味ですか!? 何が言いたいんですか!? 正論なのか、そうじゃないのかハッキリさせて下さい!」

 

「正論だよ」

 

「なら、別に良いじゃないですか!」

 

「全く良くねえよ!」

 

「もう! 颯君が何を言いたいのか分かんないです! 頭の中が混乱して来ちゃいましたよ! 完全にちんかんぷんかんです!」

 

「本当にちんぷんかんぷんだな!」

 

 つーか、話が指切りから完全に脱線している。

 

「とにかく、早苗はどんな風に思うんだよ。たとえが変だけれど、赤子が粉ミルクをコップで飲んで、大人が牛乳を飲む光景が変と思わないのか? 確かに、優の言うことは正論だ。だからこそ、正論の論理に則って、あべこべな状態の是非を早苗の倫理観に問おうじゃないか。なあ、どうなんだ? おかしいと思うのか? それとも、おかしく思わないのか?」

 

「全くおかしくないです!」

 

「精神科を受診して来い!」

 

「ひ、酷いことを言いますね! じゃ、じゃあ、私に説明して説得してみて下さいよ。颯君がそう言うなら、それを論理的に私に証明してみて下さい」

 

「は、はあ!?」

 

 まさか、そんなことの説明を求められるとは夢にも思わなかった。

 

 本当に早苗は赤子が粉ミルクをコップで飲み、大人が牛乳を哺乳瓶で飲むのが常識的だと考えているのだろうか。

 

 ……いや、さすがに違うだろう。確かに、早苗は世間ずれしている節はあるけれど、馬鹿じゃない。自分の主張が滅茶苦茶だと理解しているものの、強情を張っているのだろう。

 

 早苗は、普段の物腰柔らかだけれど、変なところで意地っ張りになるところがある。こうなると、ちょっとやそっとのことでは、我を曲げない。

 

 面倒臭いなぁ。

 

 ふと、こちらに近づく足音が聞こえた。振り返ると、ひとしきり笑って気が治まったのか、平素の表情の優が戻って来た。

 

 ただでさえ面倒な要求をされているのに、もっと面倒な奴が帰ってきやがった……。

 

「さっきから怒鳴り合っているようだけれど、何かあったの?」

 

「いや、これはだな……、つーか、こうなった原因は、お前が早苗のことを弄ったからだろうが。こうなった責任をとれ」

 

「は? オレに責任があるの?」

 

「ある!」

 

「ふむ……じゃあ、仕方ないね。責任を取るとしよう。で、掻い摘んで今の状況と経緯を説明してくれない?」

 

「かくかくしかじかだ。これで分かっただろう?」

 

「あ、そう言うことね」

 

「マジで分かったの!?」

 

 ネタで言ったつもりだったんだけどな、かくかくしかじかって!

 

「まあ、あれだけ声を上げていれば、話の内容は聞こえてくるさ。境内は静かだからね。そのお陰で、ここに戻ってくるまで数分ばかり遅れちゃったよ」

 

 どうやら、俺と早苗の会話の内容を聞いて、また笑っていたらしい。

 

 あとで腹パンを1発お見舞いして、憂さ晴らしさせてもらうとしよう。

 

「さっさと何とかしてくれよ……」

 

「個人的には、颯がどんな論証で早苗を納得させるのか楽しみなんだけどね」

 

「素直に責務を果たすか、腹パンされて痛い思いをするか。どちらかを選べ」

 

「3番目の、颯が早苗に八つ当たりビンタされるで」

 

「ヘイ、腹を出せ」

 

「ノーサンキュー」

 

 優は肩を竦めると、不機嫌そうな早苗を一瞥する。

 

「この場を簡単に収めたいんでしょ? なら、話は簡単だよ。こんな議論をしたところで不毛だ。時間と体力の空費だよ」

 

「んなことは分かってる。さっさと場を収める方法を教えろって」

 

「そんなの簡単だよ。颯が素直に早苗と指切りをすれば、それだけで場は収まるじゃないか」

 

「……」

 

 かくして。

 

 仏頂面の早苗と指切りをすることで、問題は落着したのであった。

 

  

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