東方幽棲抄 ~ 今日も今日とて、ツンデ霊夢に殴られる   作:風鈴.

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第8話 レストランで昼食 その2

 

 

「……そう言えばさ、俺はもう大分長いこと守矢神社を訪れていないけど、あの神社って、今はどんな感じだ?」

 

「どんな感じ……? 具体的には?」

 

「具体的に、か。そうだな……本殿の外観とか境内の雰囲気とか参拝者の数とかかな」

 

「神社の建物自体は、特に変わった点は無いよ。数年前から全く変わっていない。境内の方は、きちんと掃除の手が行き届いていて綺麗だけど……でも少し活気が無くなっているかな」

 

「活気? 参拝者が少ないとかか?」

 

「参拝者の減少……それもあるね。そのせいかもしれないけれど、神社の霊気に引き寄せられるようにして散在していた霊的な存在も少なくなってきている気がする。人々の信仰心が薄れ、祀られている神の霊威が弱まっているからかもね。霊的な存在は、霊的な存在に惹かれるから」

 

「えっと……神の霊威の衰退で……何?」

 

「後半の話については、あんまり気にしなくても良いよ。気にしても仕方が無いし。とにかく、以前よりは参拝者が減ったような気はするね。まあ、時代が時代と言うか、仕方ないさ。ひと昔前ならばともかく、現代は霊的な存在を信仰して霊寵(れいちょう)(たまわ)ろうとする人は、滅多にいないからね」

 

「やっぱりそうなのか……」

 

 昔から親しんでいた場所が廃れ始めていることに、そこはかとなく寂しさを感じた。

 

 守矢神社に参拝しなくなって久しいが、それが負い目に感じられる。

 

「……でもさ、参拝者が少なくなっているような気がすると言っても、途絶えたわけではないんだろう? 今でも、それなりに参拝者はいるんだよな?」

 

「いるよ。差し当たり、参拝者が途絶えることは起こらないだろうね」

 

「……そうなのか?」

 

「信心深くない人でも、たとえば受験や恋愛成就のために、願掛けやお守りをもらいに来るでしょう? 神社の管理が完全に放棄されない限りは、そう言う参拝者は尽きないものだよ」

 

「ああ、そっか。初詣の時、いっぱい参拝者はいたもんな」

 

「そういうこと。安心した?」

 

「まあな」

 

 優の手中からレジの伝票をつまみ取る。

 

「さて、料金の支払いなわけだが……別々で良いよな」

 

「もちとん、別会計で。ああ、もし颯がオレに昼食を奢ってくれるって言うなら、お言葉に甘えるけれど? オプションとして、猫耳でも付けて甘えようか?」

 

「冗談。死んでもお断りだ。お前の猫耳付き姿なんて、金を払っても見たくねえよ。可愛い女の子がするから、奢りたくなるんだろうが」

 

「まあ、そうだね。……いやしかし、金を払っても見たくないということは、猫耳を装着して颯に甘えれば昼食代が――」

 

「浮くわけねえだろ。単なる言葉の綾だ。真に受けんじゃねえ」

 

 諧謔(かいぎゃく)を弄する優を一蹴すると、レジを目指して、店内の通路を歩き始める。

 

 すぐ後ろから優が追いかけてくる。

 

「……それにしてもさ、結構安心したよ」

 

 後ろを振り返り、優に言った。

 

「何が安心したの?」

 

「守矢神社の参拝者の話。俺は初詣くらいしか神社の状況が分からなくなってたからさ。優の話を聞いて、なんか妙に安心したんだよ」

 

「あの神社、3人の昔からの遊び場でもあったからね。気持ちは解らなくはないよ」

 

「そう言えば、守矢神社は、俺達の遊び場でもあったよな。懐かしいな……よく鬼ごっこや隠れん坊、缶蹴りをして遊んだよな」

 

 懐古の念と共に、思い出が胸に浮かぶ。

 

 まるで暗黙の了解であるかのように、毎日放課後は守矢神社に集合して……。

 

 一緒に楽しく遊びたい一心で、服が汚れることも気にせず、無邪気に遊び続けて。

 

 ……そうだった。俺にとって、守矢神社は、優や早苗と同じ時間を過ごし、さまざまな思い出を共有した場所でもあったんだ。

 

 だから、神社が当分の間は廃れないと聞いて、ほっと安心したのか。

 

 人々が願いを抱く限り、あの思い出の神社は、いつまでも荒廃することなく存在し続ける。

 

 本当に喜ばしいことだ。

 

 

 

 うら寂れてしまった――博麗神社のようにならなくて。

 

 

 

 ――――――ドンッ!

 

 突如、優が急に背中にぶつかって来た。

 

 いや、俺が急に立ち止まったことで、優が背中に衝突したのだ。

 

「うわっ! 何だよ、急に止まらないでよ」

 

「あ……悪い」

 

 俺は生返事で謝った。

 

 ……。

 

 なんだ……なんだ、この胸騒ぎは。

 

 どうして博麗神社という言葉に動揺しているのだ。

 

 そもそも、博麗神社とは、どこの神社だ?

 

「どうかしたの? ……ああ、もしかして。偶然に吹いた風によって、外を歩いている女性のスカートがまくれ上がった光景に目を奪われたの? ふむ、実に颯らしいじゃないか」

 

「ちげえよ。ただその……いや、何でもない。早く通路を進もうぜ。他の客や店員の通行の邪魔になると悪いからさ」

 

「……はぐらかされた気がしなくもないけれど、まあいいか」

 

 優は特に言及することなく、再び通路を進み始めた俺の後ろを付いて来る。

 

 ……なんだったのだろう、あの感じは。。

 

 何か重要なことを思い出せそうなのだけれど……もう少しで閉じられた記憶の箱を開けられそうな感じがする。

 

 胸中に不快なわだかまりを抱えながらも、ひとまずレジで店員に伝票を渡した。

 

 その後、優の提案通り、守矢神社に向かう為にファミリーレストランを後にした。

 

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