救世ノラヴドール~俺とセクサロイドの気ままな旅~   作:こもれび

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第二十五話 ほ、本当に連れてきてどうするんだぁっ!!

「ということで、王様連れてきたから」

 

「え?」

 

 その少年は呆気にとられた様子で顔面蒼白になっていた。

 目の前でそんな反応をしているのは当然彼、アレックス君だ。

 俺達は、眠った王様を袋に詰めて荷車に乗せ、例のニムが探り出した孤児院へと向かった。そしてそこの職員と思しき年配の女性に、アレックス君を呼び出してもらい、人目があるところで話すのもあれなので、路地裏に行って袋から王様を出して彼へと渡した。

 といっても、ここで渡しても運びようがないので、結局は俺達がこの後も運ぶことにはなるのだろうけれど。

 俺はまったく身動き一つできないでいるアレックス君の顔を覗き込んだ。

 

「どうした? お前が言ったんだぞ? 王様連れて来いって」

 

「あ、あ、はわわ……」

 

 口をパクパクし始めたアレックス君。

 驚いたってのは分かっているけど、彼はばっちり横たわる国王を見ているし特に問題はなかろうと思っていたのだけど、唐突にアレックス君が叫んだ。

 

「ほ、本当に連れてきてどうするんだぁっ!!」

 

「はあ?」

 

 いや、だって言ったのお前なんだよ? そう思っていたところで、その当人の国王が身を捩った。

 

「う、うう……こ、ここは……?」

 

 地面の上で周りを見回す国王の目の前にはばっちりアレックス君の顔。

 それを見た瞬間に国王は目を大きく見開いたわけだが、同時にアレックス君も顔を背けて俺の背後へと回り込む。

 そして声も大きく言った。

 

「と、とにかくだ!! そ、そんな奴連れて来られたって国王かどうかなんでわからないだろ? だからさっさと連れて帰れ!!」

 

「いや、だって城から直接誘拐してきたから本人に間違いないし、そもそもお前の父親だろうが、顔くらいみりゃあわかるだろう?」

 

「え、えええ!? し、城から連れ出し……」

 

 アレックス君の顔からいよいよ血の気が失せて、青を通り越して真っ白になってしまっているし。そして彼は言った。

 

「ま、まさかそんなことまでするなんて。な、なんてことを……このままでは兄たちの歯止めが利かなくなる。ほ、本当にこの国が終わっちゃうじゃないか」

 

「いや、大丈夫だって、王様の影武者を放り込んであるから、暫くは大丈夫だって」

 

 俺がそう言うのをがくがく震えながら彼は聞いて居たが、いよいよ声高に言い放った。

 

「とにかくダメなものはダメだ!! すぐに城に返してこい!!」

 

 その言い方、捨て猫拾って帰ったときの家族の反応そのものなんだけどな。一応国王だし父親なんだからもう少し言い方考えてやれよな。

 うん、まあこれではっきりしたけどコイツ俺達が完全に失敗して諦める前提で話してやがったんだな。不可能な言いつけをして俺達を諦めさせて……って筋書きだったんだろうけど、一日二日でまさか本当に連れてきてしまうとは夢にも思わなかったんだろうな。

 それが分かったとしても、ここまできて引き返せるわけねえだろうが。

 俺は冷や汗を垂らしているアレックス君の方を向いた。

 

「まあお前の言いたいことはわかった。だけどな、こっちもそう簡単には引き下がれやしない。そもそもやってこいと命じたのはおまえなんだからな」

 

「な、な、何が望み……だ……?」

 

「決まってるだろ? 金だよ金。それと仕事をよこせ」

 

「ちょっとご主人、いよいよ悪い人って感じになってきましたね!」

 

「う、うるせいよ!! こっちは今真剣なんだよ!!」

 

 まったく人がこれだけ気を使って話しているってのに余計なちゃちゃを入れやがって……マジでくそムカつくぜ。俺は困っているアレックス君を助けたい一心でやってるだけだってのに。

 あれ? その困ってるアレックス君が今はもっと困っているような……しかもその原因が……俺? あれ?

 

「ええい! もういい、とにかくだ!! すぐには連れて帰る気はねえからな。いらねえならいらねえでいいからここで暫く面倒みとけ!! いいな!! 分かったな!!」

 

「え? ちょ、ちょっと……」

 

「ニムっ! さっきのこの施設の人に言っておけ。老人一人預かってくれって。それとお前はこのままここに残って俺が帰ってくるまで王様のお世話とかしとけ。ここで死なれちゃ色々面倒だからな」

 

「いえっさー!!」

 

「え? え?」

 

 ちょこんと敬礼するニムの脇で、挙動不審になってしまったアレックス君。

 俺は戸惑うアレックス君とやはり困惑顔の王様の二人を眺めつつ、俺達はそこを辞した。

 

 

   ×   ×   ×

 

 

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