救世ノラヴドール~俺とセクサロイドの気ままな旅~   作:こもれび

115 / 120
第三十一話 【味方殺し】と【大物喰らい】

「あの……曲刀(ファルカタ)は……まさか『味方殺し』か……」

 

「は?」

 

 ポソリとこぼしたハシュマルの不安な声に俺も思わず変な声が出た。

 というか、こいつマジでやべえ。

 登場と同時にひとりぶっ殺しやがったしな……それも極めて残酷に身体を引き裂いて。あれはもう助けられねえ、くそったれが。

 

「お兄様、おさがり下さいまし」

 

 そう言いつつ、俺の手を引いて前に出たのはオーユゥーンだ。腰のレイピアを抜き放つと、床の石畳に触れそうなほど低く構えて相手の動向を窺う。

 

「おい、無茶すんな」

 

 それに視線を向けないまま振り返らずに微笑んだオーユゥーン。

 

「そう心配してくださることが何よりうれしいですわ。シノン、マコ……バネット姉さま! お兄様を守りますわよ」

 

「はい!」「うん!」「まーかせて!」

 

 そんな三人の声が周囲から聞こえるし。

 おいおいおい、何をこいつらはまた無茶しようとしてんだよ。だいたいこんな感じで守られるのは男としてだな……

 そう思った時だった。

 

「【勇者】は……どいつだ……」

 

 フードの男がその黒いローブの内側からまるで獣の様な瞳を覗かせて、俺たちを睥睨した。

 は? 勇者?

 なんで、こいつがそんなもんを探してんだ? それを探していたのは俺の方だっての。

 当然だが、だれもそれに答えない。

 俺はちらりと、少し離れた場所にいるハシュマルを見た。

 奴の部下たちは全員剣を抜き放っているが、ハシュマル本人だけは剣はそのままにただまっすぐフードの男を見つめていた。

 なんだっけ? 味方殺し? とか言ってたよな。

 というからには知り合いかなんかか? 少しでも情報があれば多少は対策も立てられそうだけど、いかんせん完全に向こうの方が格上な感じで、悠長にそれを聞いているまもなさそうだ。

 なにしろ、相手はたった一人でこの隠れ家に吶喊してきたのだ。相応の自信がなければそんなことしないだろうし、そもそも知っているふうのハシュマルの様子もおかしい。

 

 これはまずそうだな……

 

「でやあああああああああああっ!」

「ばかものっ! 下がれっ!!」

 

 一人の兵士が、ハシュマルが止めるのも聞かずに振り上げた剣をそのままに一気にフードの男へと間合いを詰めた。

 剣はうっすらと青く輝いているして、あれは多分なんらかの強化魔法を付与したものと推察できる。そして、その踏み込みは尋常ならざる早さだった。

 シノンやマコだって相当にキレのある踏み込みをしていたが、彼はそれ以上。

 かなり高いレベルでの強さを保持していると見て取れた。

 

 だが……

 

「…………」

「んくっ…………」

 

 吐息のような声が微かに漏れ聞こえた。

 俺のはるか頭上から。

 そう、一瞬でその兵士の首が切り飛ばされたのだ。

 血を噴出しながら宙を舞い、かすかな呻きを漏らしたその首は、ごんごんと、人としてはあり得ない音を立てて床を跳ね、壁際まで転がっていった。

 あまりの展開にその場の兵たちはもう誰も動くことが出来なかった。

 フードの男は何もなかったように、再び周囲を見回し、そして、オーユゥーン達に囲まれている俺へとその視線を固定した。

 

「お前が……勇者……か?」

 

「ちげーよ」

 

 とりあえずそう言ってみたのだが、周囲の連中が不審な顔で俺を見ているし。

 いや、ほんとに違うからな、俺そんなんじゃねえから。

 いや、マジで違うって!!

 なんだか、だんだん嫌な汗が流れてきたところで、『勇者……?』とぽそりとこぼしたハシュマルがスラリと腰の剣を引き抜いた。

 その剣は黒かった。

 何かの文字が剣の中央に一列に刻まれているそれは、めちゃくちゃカッコイイ。

 しかも、奴が構えた瞬間にその剣の文字が銀色に光を放って、剣身自体も銀に淡く輝きだしたのだ。いや、それもうマジで本当にかっこいいぞ。

 

「俺がこの場をうけもつ、君たちは背後の隠し通路から脱出しなさい。そしてすぐに国王陛下の元へ行け」

 

 小声でそうオーユゥーンへとつぶやいたハシュマル。

 彼は目くばせした配下の兵たちが頷くのを見てから視線をフードの男へと戻した。

 

「よお。俺は元カーゴロードの騎士、ハシュマル・グリーンヒルってもんだ。てめえはゲッコーだな? よくもまあ、人の家に勝手に上がり込んで、部下を二人も殺しやがったな。ただで済むとは思うなよ」

 

 なんてことは無いようにそう言い放つハシュマルの声は、それだけでかなりの威圧が籠っている。

 こんなふうに面と向かって言われたら、俺はもう完全にちびってるぞ。

 ゲッコーと呼ばれた奴は、視線をハシュマルへと向け、そして言った。

 

「……聞いたこと……ある名だ。ハシュマル……【大物喰らい(ジャイアント・キリング)】……の田舎騎士か……会えて光栄だ」

 

「うっせーバカにすんじゃねえよ。カーゴロードはちょっと山と畑が多いだけだ、【味方殺し】。俺はてめえには会いたくなかったよ」

 

「……ふん」

 

 その刹那、ゲッコーがハシュマルに向かって高速の打突を繰り出してきた。

 そのまま剣がハシュマルの身体に突き刺さる……

 そう思った瞬間のことだった。

 ハシュマルは、その身を宙に躍らせ、その体勢のままで黒剣を振るってゲッコーの頭を狙う。

 が、奴はあり得ない角度まで身体を横に逸らせてその斬撃を回避、すかさず情報のハシュマルへと回転するように剣を滑らせるも、その時には天井を蹴ったハシュマルがゲッコーの背後へと回り込み、そこから突進。

 正面からかち合う形のつばぜり合いで、二人は一瞬その動きを止めた。

 

「つ、つええ」

 

 思わずそんなことを呟いてしまった。

 こいつらどっちもとんでもなく強いぞ。いや、うっすらとは分かっていたけども。

 で、俺は気になって二人へと慌てて解析(ホーリー・アナライズ)の魔法を使用してその一部だけを見た。

 

――――――――――――

名前:ハシュマル・グリーンヒル

種族:ヒューマン

Lv:49

体力:240

知力:180

――――――――――――

――――――――――――

名前:ゲッコー

種族:ヒューマン(神化)

Lv:65

体力:320

知力:220

――――――――――――

 

 おいおいおい、ちょっと待て、なんだこのレベルとアビリティーは。

 確かこの世界の連中ってレベル一桁がほとんどだったはずじゃねえか。

 で、多少強くなれて10台、20台ともなれば一級で、30以上で超一級とか、そんな話だった、

 だというのに、こいつら完全にその枠を外れてやがる。

 あの滅茶苦茶強いシシンだってレベル40とかだったはずだしな、こんなのもはや怪物の域……

 というか、あっちのゲッコーってやつ異常すぎるだろ。

 この前の青じじいにはレベルで負けているけど、アビリティーではかなりとんでもないことになってるし…… それと、あの【(神化)】ってなんだ?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。