救世ノラヴドール~俺とセクサロイドの気ままな旅~   作:こもれび

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第九話 襲撃のちSMプレイ

 目の前の3人は唐突に俺たちに向かって駆け出してきていた。

 

「………………」

 

 おいおいおいおい……いきなりかよ。黙って突っ込んでくるんじゃねえよ!

 俺は咄嗟にどうにかこの現場を切り抜けられないか思案を巡らせるも、腕の中で蹲って震えるヴィエッタを抱えてはどこに逃げることも出来ない。

 ちぃっ‼ ここに万全のニムが居やがれば、ヴィエッタを抱えて逃げようとも、この連中を叩きのめそうともどうとでも出来るのだけどな……まあ、しかたねえ。

 

 俺はしがみつくヴィエッタを剥がすように立ち上がってから、腰のホルダーから闘剣(グラディウス)を抜き放って、突っ込んでくる3人に向かい合った。

 連中はその俺の挙動に走行を止め、少し距離を取った地点で俺に対峙した。

 よしよし、とりあえずはこれでOKだ。ひとまず【ゴードン】じいさんに感謝だな。なにしろこの剣はゴードンじいさんが打って研ぎに研ぎまくった業物だ。それほど高価な剣じゃないとは言っていたけどな、見る奴が見れば相当なものであることが分かるのということを、他の冒険者連中からの話で理解していた。

 つまり、後は俺がどうどうとしていればいいのだ。

 業物の武器を持った威風堂々な冒険者……言っててなんだが俺のことだからね、悪しからず。

 そりゃ、一旦は足を止めるだろうさ。メッキが剥がれるまでの短い間だろうけど。

 

 でも、今はそれで十分だ。

 俺は奴らを注意深く観察しつつ口の中で呪文の詠唱に入った。

 所詮レベル1の俺に明らかにレベルが上の連中と渡り合うことなんて出来ないことは十分身に染みて分かっていることで、とにかく今はこの『土魔法』に頼るしかないんだ。

 問題は例の矢だ。この目の前の連中が弓を持っていなかった以上、どこかに弓術師(アーチャー)がいると見て間違いない。俺が魔法を完成させる前に射られたらそれこそ一貫の終わりだが……これだけこの3人が接近しているんだ、いきなり乱射してきたりはすまい。

 そう考えながら目の前の三人を見るも、三人ともがまるでニンジャの様な真っ黒な衣装で全身を覆っていた。これではいったい何者なのやら見当もつかないが……

 

 今は考えはすまい! よし、完成した!

 

「『土壁(ド・ウォール)』‼」

 

 足元の地面に手を押し当てそう俺は宣言した……しかし。

 

「……………」

 

 あ、あれ? 何も起きないぞ?

 そう、魔法は発現しなかった。

 いやいやいやそれはないだろう。ここに来てなんで肝心かなめの魔法がどうして使えないんだよ! この後いったいどうすれば……

 焦って顔を見上げてみれば、そこに俊敏に動きだした3人の姿が……一瞬で間合い詰め、俺達を包囲しにかかった。

 

 や、やばい! どうすれば……

 

 

 その時……

 

 

「伏せて!『閃光(ホーリー・フラッシュ)』‼」

 

「うわぁ!」「な、なんだ?」「おわぁっ」

 

 甲高い女の声が呪文を唱えると同時に、辺り一面が真っ白な光に包まれる。暴漢達のものであろう三つの男の悲鳴があたりに響いた。その空間に広がったのは超強烈なカメラのストロボとでも言えばいいのか。俺はとっさに目を瞑ったのだが瞼越しに鋭い白色が襲い掛かってきていた。

 

「なにやってんの! 早くっ! こっち!」

 

「え? え?」

 

 殆ど何も見えないその状況の中にあって、俺の耳に届いたのはそんな声。さっき呪文を唱えた女性と同じものであることが容易に想像できるのだが、とにかくどこにいるのか分からない。

 そんな中、急に俺の右腕がぐいっと引っ張られる感覚があった。

 俺は慌ててうずくまるヴィエッタを抱きかかえる……と、同時に急に足元が消滅したような妙な感覚に囚われ、そのまま本当に落下した。

 

「んぐっ!」

 

「しぃ! 静かにっ!」

 

 背中に強烈な痛みを感じた次の瞬間に抱えていたヴィエッタの全体重が俺の腹へとめり込む。

 内臓が破裂したんではなかろうかというくらいの激烈な痛みに悲鳴を上げたかったのだが、誰かの手が俺の口を力いっぱい抑え込んでいた。そんな俺とヴィエッタに誰かが覆いかぶさってきていた。

 とにかく俺は身動きせずに全てをその存在に委ねた。

 魔法も使えずどうしようもないのだから、今更じたばたしても始まらない。

 ここはいったいどこなのか?

 真っ暗闇の中にあって自分がどっちを向いているのかも分からない。だが俺達を押さえつけている存在は非常に柔らかい肌の持ち主でどうやら女の様だが果たしてこいつは味方なのか……突然凶行に走ってぶすりとやられては堪らないがそれならもうとっくにそうしているか……

 一応さっきの黒ずくめたちとは別グループの様ではあるし、奴らがまだ近くにいるであろうこの場所で何かすぐに行動に移るとも思えない。

 

 どれくらい時間が経ったのだろうか。

 自分の鼓動とヴィエッタの鼓動、それに複数いるであろう周囲の人の微かな吐息だけを感じながらじっとしていた俺の身体を誰かがトントンと小突いた。

 

「もう、行ったみたいだよ」

 

 聞こえてきたのは先ほどの女の声。そして俺のすぐ直上からは別の女の声が聞こえてきた。

 

「お疲れ様でしたわシオン。マコ、灯りを点けてくださいますかしら?」

 

「うん、わかった! オーユゥーン姉。ちょっと待ってね」

 

 どうやらここには女が3人はいるようだが、はて……この声どこかで聞いたような……

 

 暗がりでもぞもぞと動いていることだけははっきり分かり、いろいろと柔らかい物が俺達の身体の上を移動していく……というか、俺の上を這っていた。

 

「ええい、鬱陶しいというか、重いんだよてめえら……ひぐぅっ‼」

 

 言った瞬間的確に俺のみぞおち二肘鉄が三本突き刺さる。

 

「レディにそんなことを言うとは、まったく……さっきといい今といい、貴方は本当に無礼なお兄様ですわね」

 

「ったく懲りないんだね、ダメダメなお兄さんだ」

 

「もっかい死んどく? クソおにいちゃんっ‼」

 

「……げふっ……げふげふっ……やっぱりてめえらか……」

 

 鋭利な三連ストンピングを腹に叩き込まれて悶絶した俺が見たのは、誰かが点けたのであろう小さなランタンの灯りに照らされた3人の女の顔。

 それはこの街に着いて早々俺に絡んできた連れ込み宿にいた女達だった。

 彼女達はこの狭い空間にあって俺達を跨ぐようにして座ってこっちを見つめてきているのだが、その服装が先程の薄着の娼婦装束とは全く別の、皮の装備をしているところなどはまるで冒険者であり、一見してあの娼婦達であると判別するのは難しいはずだが、そこはそれ、一度こいつらにリンチされた俺が間違えようはずがない。とりあえず股間はガードしておかなければ、また潰されてしまうかもしれない。

 兎に角まずは現状を確認することが重要だろうな。

 

「ここはどこなんだよ? お前らはいったい何をしてるんだ?」

 

 3人の女達は一度顔を見合わせてからはぁっと大きくため息をついて、そしてオーユゥーンと呼ばれていた一番背の高い……胸も尻もボリュームたっぷりのまさにボンキュッボン(死語)な女が口を開いた。

 

「お伺いしたいのはこちらの方なのですけれど……まあ良いですわ。ここはワタクシたちの隠れ家ですの。そして今ワタクシたちは夜警をしていたところでしたのよ」

 

「隠れ家? 夜警?」

 

 夜警と言われて、ムキマッチョ軍団と戯れていたであろうあのクソビッチを思い出して一瞬目眩を覚えるも、まさかこいつらまでこんなところで『夜警』なんてしやしねえだろう。

 いや、まさか、女だけで? 夜警を? こ、こいつらまさかガチかっ! ガチ百合か!?

「お兄様がどうしてそんな気持ち悪い顔なされているのか知りませんけれど、ワタクシ達はここ最近多発している娼婦の誘拐事件を調べておりますのよ」

 

「はあ? 誘拐事件? 娼婦の?」 

 

「そうですわ。お兄様はご存じありませんの? 今この街では毎晩の様に娼婦ばかりが連れ去られておりますのよ」

 

 呆れた感じで俺を覗きこむオーユゥーンにそんなことを言われるが……

 

「ご存知ありませんの? って当然ご存知ねえよ。俺らは今日この街に来たばっかだぞ」

 

「まあそうでしたの……でしたら知らなくても当然ですわね……あら?」

 

 オーユゥーンは俺から視線を外して俺の股の間で蹲っているヴィエッタへと視線を移していた。

 

「あら? 貴女は……?」

 

 ヴィエッタはその視線から逃れるように俺の腹へとその顔を埋めてきた。

 っていうか、なんで俺の身体を腕でがっちりホールドしてんだよ! これじゃマジで身動き一つ出来ねえだろうが。

 

「貴女はお店でお兄様と一緒にいた……お連れの方ではありませんわね? えーと、どこかでお会いしたことがあったような」

 

「あー! この子あれだよ、あの子だよ。ほら、えーとえーとこの街で一番人気があるっていう娼婦のえーと、名前は……」

 

 赤髪の女がヴィエッタを指さしながらそんなことを言うと、今度は金髪の小柄なまるで子供のような女が……

 

「そうそう、ヴィエッタちゃんだよ! ヴィエッタちゃん! この前マコを買ったおじちゃんが、『あー、ヴィエッタちゃんを抱きてぇなぁ』とかマコの上でそんなこと言ったからね、思いっきりアレ潰してやったの!」

 

 ヒュン……‼ おおう、何もされてないのに股間にダメージが。 言葉ってホント暴力。

 というか、そのおっさんがこの小っちゃいのの上で何をしていたかは触れないでおくことにしよう。うん、そうしよう。

 ヴィエッタはそんな興味津々な感じで覗き込んできている三人に恐る恐るといった具合でそっと顔を向けるも、明らかに動揺していて言葉が出てこない。

 そんな膠着状態の中、オーユゥーン達がポツリとこぼした。

 

「そういえばヴィエッタさんは、確か娼館『メイヴの微睡』の……」

 

「奴隷娼婦……だったよね?」

 

「で、なんでクソお兄ちゃんがその奴隷娼婦ちゃんを連れて歩いているの……かなぁ?」

 

 最後のマコのその言葉で、3人が一斉に俺へとゆっくり視線を向けてきた。

 その眼はしっかりと座っていて、確実に俺を訝しんでいる様子で……

 

「娼婦誘拐犯‼」「現行犯‼」「確保~~~っ‼」

 

「へ? いや、ちょ、ちょい待てお前ら!」

 

「「「問答無用‼ 御用(よ)(だよ)(ですわ)‼」」」

 

 狭い穴倉の底で俺は……

 ヴィエッタを抱いたままで、3人の女に圧し掛かられて緊縛されるのであった。

 

 なんだこれ?

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