救世ノラヴドール~俺とセクサロイドの気ままな旅~ 作:こもれび
「じゃあ、俺らそろそろ行くわ」
と、そんな感じで声をかけた途端に俺は女どもの猛烈なタックルを食らうことになった。
飛びかかりたいのは当然と言えば当然なのかもしれない。さっき俺が病魔を石化して治癒魔法をかけて回復してきた娼婦たちは目が覚めた順に震えながら、泣きながら、俺を視界に収めると同時に抱き着いてくるのだ。
「ぐっは、てめえらやめろ、いい加減にしやがれ!」
そう喚くも泣きながら俺に抱きついてくるそいつらは離れるどころか尚も泣きながらぎゅうぎゅう俺に身体を押し付けてきやがるし。
もともと殆ど何も着ていない連中ばかり。そんな女どもが俺に覆い被さってくればいったいどんな光景が展開されるか想像は簡単だろう。
「てめえらふざけんなっ! 近寄るんじゃねえよっ!」
力の限りそう吠えた時、甲高い女達の喧騒の中にその涼やかな声が凛と響いた。
「お止めなさいな、貴女達。命の恩人を殺す気ですの?」
その声に一瞬でその場が静まり返る。そして一人また一人と泣いてぐずりながら俺から離れて行った。
と、その最後の俺にまだ馬乗りになったままの奴の顔を見てみれば、なんとそいつはヴィエッタだった。
「なんでてめえがそこに居るんだよ」
「え? だって、なんか『やるなら今でしょ!』って閃いちゃって……」
「閃いてんじゃねえよそんなこと! しかも一番乗りかよ」
「えへへ」
このど阿呆が。
まったくどいつもこいつも本当にすぐにそっち方面に行こうとしやがって。
まあ、この女どもに関しては仕方あるまい。ずっと病気で苦しんで、もう後はどうやって死ぬのかだけを考えてずっと怯えていたんだろうし、それを表面上は俺が助けた訳だからこうやって、嬉しさに飛びかかりたい気持ちが出てくるのものなんとなくわかるしな。
でも、本気でそれはノーサンキューだから!
俺は純愛一筋だから、こんなところで商売女にうつつを抜かす気なんてこれっぽっちもないから。
とりあえず、ヴィエッタはアウト。
俺はヴィエッタの頭をペチりと軽く叩いてから立ち上がった。そして見回して見れば、泣きながら抱き合って喜び合い続けているたくさんの娼婦達の姿と、やはり涙が止まらなくなっているシオンとマコの姿。
オーユゥーンだけは泣いてはいなかったが、目の下が赤くなっているところを見るに、泣くのを我慢しているって感じなんだろうな。
そんな彼女に寄り添うように、先程回復したばかりのミンミが立って俺達を向いていた。そして泣き腫らした顔で笑顔を作ってペコッとお辞儀をする。
うん、これくらいの反応でいいんだよ、俺は。返ってさっぱりすっきりするってもんだし。
俺も彼女に倣って頭を下げると、隣のヴィエッタもお辞儀……すると、さっき俺に抱きついて来てやがった他の連中もペコリとみんなで頭を下げるのだった。
さーて、じゃあ行くとしますかねー
と、くるりと向きを変えたところで、俺の手をぐいっと引っ張られた。
またかよ……と振り向けば、そこにいたのは、オーユゥーンとシノンとマコの3人。
そんな光景の中でオーユゥーンが微笑みながら口を開いた。
「妹達をお救いいただいて本当にありがとうございます。お兄様にはどんなに感謝してもしきれません。このご恩は私達の生涯を持ってお返しさせていただきます所存ですので」
「いや、重いよ! 重すぎるよそれ。普通にありがとうで終わりで良いじゃねえか」
「そ、そういうわけには参りませんわ。私たちはそれに、お兄様に大変失礼なことも働いてもしまいましたし。ですから、この命、すべてをお兄様へ捧げます。どうか私をお兄様の道具にして、なんなりとお命じくださいまし」
そう言いながら、再び服を脱ぎ捨てようとしているし!
「もっと重くなってんじゃねえかっ! だから別にいいんだって……」
ったく娼婦の連中はどいつもこいつも身体で支払おうとしやがって。
本当に別にそんな感謝どうでもいい。そもそもそこまで大層なことを俺はしたわけではないしな。
土魔法で梅毒菌を石化して、無理矢理ウンディーネから吸い上げた水の魔力で、全員を治癒させただけだ。
使った神秘は解析や石化の呪いを含めてもたったの4つのみ。しかも、その全部が俺の魔力じゃないときてる。そもそも俺には魔力はないしな。
でも、そんなこと言ってもこいつらは聞きゃしねえだろうしな。さぁて、どうしたものか……
うーんと唸っていたら、何やら外が騒がしくなっていた。ガヤガヤと人が集まっている感じの喧騒が耳に届き、なんだと思って入り口と思える辺りに視線を向けてみれば、ガラス戸の向こう側に松明だろうか、炎に照らされた人の姿が揺らめいて写っていた。
そして、突然ドンドンと強く入り口の扉が叩かれたかと思うと、次の瞬間激烈な破砕音を轟かせてその扉が一気に押し破られた。
× × ×
館内に響き渡る娼婦達の悲鳴。
戸に突き刺さったままになっている巨大な丸太を放置したままに、その周囲を更にバリバリと打ち壊しながら侵入ししようとしてきている何者か。
俺はその姿を見て、つい先日出会ったお調子者のことを思いだしていた。
ああ、くそっ! なんで俺のいく先はいつもこうも面倒なことが起きやがるんだよ!
そこに居たのは紛れもない、銀の軽鎧と青い衣に身を包んだ、あの独特な聖騎士の姿。俺の知っている聖騎士のジークフリードの奴と違う点と言えば、チビでもデブでもなくそれなりにがっしりとした強そうな感じの連中だってとこだな。
だがまあ、どうせこんな状況なんだから面白くない用件で来やがったに違いない。こいつらの卑しい笑い方を見ていれば考えなくてもわかる。
そう見ているうちに、完全に扉を破壊した連中が次々に店内になだれ込んできていた。
が、それを連中の正面に立ったオーユゥーンが手を拡げ一喝。
「こんな夜更けにいったいこれはなんの仕打ちですの? ここはお休みしているとはいえ娼館ですのよ。 いくら聖騎士様でもこんなことをされれば、お客様としておもてなしすることはできませんわよ」
語気を強めてそう言ったオーユゥーンに、剣を持ったままの一人の聖騎士歩みでて、言った。
「これはこれはオーユゥーン姉さんじゃあねえか。こりゃあラッキーだぜ」
その聖騎士がニヤニヤ笑いだすと、後ろにいた他の聖騎士達もひひ、へへと卑しく笑い始めた。
全員が全員手に何かしらの武器を持っている。とても話し合いに来た感じではない。
「だけど、悪いが今日は客として来たんじゃあねえんだよ。今日はお仕事だお仕事……へへ」
言いながら聖騎士はオーユゥーンの豊かな乳房の円みにその鋭利な刃を当てて、器用にその上着を切り裂いていく。時おり刃が皮膚を切り裂き、赤い血の筋が流れるも、オーユゥーン自身も全く動じた風ではなくそのまま無言で睨み付ける。
そしてぼろんと彼女の大きな乳房が露になると、それと同時に周囲の連中から歓声が上がった。
「へへへ、相変わらず良い身体してんじゃねえかよ。おし、決めたぜ。お前は殺さないでやるよ。お前は今日から俺たちの奴隷だからな。あとでいっぱい可愛がってやるからよ」
「はあ?」
思わずそんな声が漏れてしまった。
いや、だってそりゃそうだろう。どう考えたってこいつらはただの押し込み強盗で、入ってそうそういきなり女に傷をつけてしかも奴隷にしちゃうぞ宣言。いったいなんのお仕事だが知らないが、これが罷り通るなら普通に暮らすのはマジで無理だ。
「誰だてめえは?」
俺の声に反応してこっちを向いたその聖騎士は訝しい視線を俺にむけて来ていた。
そしてこっちに歩み寄ろうとしたのだが……
「お、お待ちくださいまし。この御方はこの場に居合わせただけのただのお客様ですわ。お望みのままになんでも致しますので、どうかこの方はご容赦くださいまし」
オーユゥーンが急にそんなことを言った。
懇願するように聖騎士に抱きついた格好のオーユゥーンに、聖騎士は抱き寄せるように顔を近づけてその頬をべろりと舐めた。それに身を震わせているオーユゥーン。明らかに怯えている様子。
「まあ、オーユゥーンがそこまで言うなら……俺たちは手を出さないでやるよ。よし、お前ら、どいつでも好きな女を選んでいいぜ」
「やったぜ」「そうこなくっちゃ」
口々に歓声を上げて、若い聖騎士達が雪崩れ込んでくる。そして目についた娼婦……先ほどまで看護をしていた娘や、マコやシオン達へも殺到してその手を掴んでいる。
そんな中、ある一人の聖騎士が俺の背後に隠れていたヴィエッタを認めて、その目をひん剥いて叫んだ。
「ま、まさか、お前ヴィエッタか? あのヴィエッタちゃんか? おいっ! 見ろよ。ヴィエッタがいるぜ!」
「本当かよ!」「うおっ! ほ、ほんものだ」「俺だよ俺昨日店に行った……」
困惑顔で周りと俺をちらりちらりと見回しているヴィエッタは完全に連中に取り囲まれてしまった。
その人の垣根を押し分けてヴィエッタに近づいてきたのはあの聖騎士。
「本当にヴィエッタかよぉ……けはは、これは大収穫だぜ。お前らヴィエッタは俺が最初だからな」
「そんな」「エリックさんそりゃないっすよ」
「あぁん? 文句あるやつぁぶっ殺すぞ。おし、ならさっさとこんな
愉快そうに哄笑したそのエリックと呼ばれた聖騎士がヴィエッタの手首を捻り上げるとそのまま引きづりだそうとしている。
「も、紋次郎……」
怯えた目で俺を見てくるヴィエッタ。
聖騎士の奴は俺を見下した目で笑みを浮かべながら、周り全員に聞こえる様に吠えた。
「お前らさっさと仕事を終わらせるぞ。いらねえ残りの女と病人どもを閉じ込めて
その言葉の直後、まだ戸外にいた聖騎士の何人かが、鉄製の重たそうな檻を持って現れる。
その中にはどす黒い色彩で、細い腕が無数にその両肩から生えた異形の怪物の姿が。
これがやつの言う『アレ』の正体なのだろう。
人の頭部に似たその顔は異様に大きく、ただ骨に皮を貼り付かせただけのようなその大きな眼窩に、左右に3個ずつ、計6個の目玉が存在しており、器用にそれをくるくると回してこちらを見ている。大きく開いた口には歯が一本もなく、入れ歯を外した老人の様でさえあり緑色の涎なのだろうか、粘液を絶え間なく滴続けており、それが不気味さを増していた。腕は本当に何本あるのだろうか……普通ひとつしかないはずのその肩に、枝が生えているかのように無数の細く長い手が伸びている。
そしてその身体……
腕に比べて非常に短く小さな子供のような足が2本で、器用に立っているが、その股間からはウネウネと蠢く無数の巨大ミミズのような触手が生えていた。
「な、何をする気ですの?」
「ん~~~?」
オーユゥーンに言われ男は顔を卑しく歪めながら笑った。
「さぁてなぁ。俺らは
「なっ! そ、そんな、それでは話が違いますわ!」
「違うかぁ? 違わねぇけどなぁ? そもそも俺たちは約束通り手は出してねえだろぉ?」
「そんな……」
髪を引っ張られて同じように連れ出されていく女たち。そんな中、館内を確認していた一人の聖騎士声を張り上げた。
「エリックさん。ここに病気の女が一人もいませんぜ?」
「あん?」
聖騎士の言葉に大部屋内を確認するエリック。そして、他の部屋を探索していた団員達も同じように首を振っているのを見て、顎を撫でた奴はなんの感慨もなしに言い放った。
「もうどうでもいいや。『いらねえ女』を全部その怪物に犯させちまえ! けはははははははははははははははは」
プッツン……
その時……
俺の中の『何か』が確実に切れた。
そして、まるで息を吐くかのように静かに言葉が漏れた。
「女達を放せよ、このクソ野郎ども」
「ん?」
俺の目の前で再び立ち止まって振り返ったその男。
「紋次郎……」「お、お兄様?」
そして心配そうな視線を向けてくるオーユゥーンとヴィエッタの二人。いや、その場の全員が俺に視線を向けてきていた。
俺は目の前の、如何にも清廉そうな神々しい銀と青の衣装に身を包んだ『完全なくそ野郎』を睨んだ。
奴は今にも血管が切れそうなくらい額に青筋を立てて睨み返すと同時に、その手にした剣を俺に向かって一気に振り下ろしてきた。
「きゃああああああっ!」
悲鳴を上げたのは果たして誰だったのか。きっと俺が真っ二つに両断されるとでも思ったのかもしれないな。
でも、そうはならない。なぜなら。
ガッキンッ‼
「なっ! なんだてめえはぁ!」
その聖騎士は甲高い金属音が響いた直後にそう吠えた。
そう、音がしたのだ。金属が弾け砕ける音が。
男が振り下ろしたその剣の刃は、俺が伸ばした手の平に当たった瞬間に粉々に砕け折れた。
俺の伸ばした手……それは数多の鉱石を纏った巨大な怪物の手と化していたのだから。
『
俺が使ったのは当然『土魔法』。広大な空間に事象を発生させるこの魔法系統の中にあって、これは珍しい『身体強化』の魔法である。
といっても、水や光の様にアビリティ強化をするわけではなく、単純に自身を防護するための『鎧』を作り出しているだけ。とはいえ、防具等が損傷した時の急場凌ぎにはもってこいの魔法だとも云える。
俺は下方……地中深区に存在しているであろう鉱石を適当に吸い上げ高密度で結着させた。硬度だけなら炭素繊維をも勝るのではないか?
めっちゃ重いのが欠点だけど、俺の周囲の重力を軽くしておけばそんなに苦でもないし、まずそうならすぐに砂化させて消せばいいだけなので使い勝手はそんなに悪くない。まあ、土の基礎魔法のひとつって感じだ。
正直こんな魔法のひとつで驚愕する必要はない。
この後もっと凄いのを体感させてやるんだからな。
俺は『石鎧』をそのままに奴へと近づきながら聞いてみた。
「お前らなんだ? 聖騎士ってな、いったい何なんだ? お前らは人でなしのろくでなしか? 犬畜生なのか? いやそれじゃあ犬たちが可哀そうか。やっぱりお前らはただのクソでいいな」
得も言われぬ憤怒が俺の内から沸々と湧き上がってきていることを確かに感じていた。
そして自分らしくもなく発したそれらの想いは、自然と言葉となって口から洩れ続けている。
俺は心底この目の前の連中にむかついていた。
「い、岩のねえところは生身だ。てめえら、全員でかかれ!」
「い、いやぁ……」
聖騎士の男はそう言うや否や、他の連中にけしかけておいて、自分はヴィエッタをぐいっと引きずって下がろうとしていた。
当然、そんなことさせる気は毛頭ねえ。
「『
右手を突きだして今度は土の壁をやつの後方に競り上がらせた。今回のはきちんと加減して奴を囲むように『 ) 』型に綺麗に壁を構築。当然万里の長城にはなっていない。まあ、この店の床は破壊してしまったが。
「なあお前。俺は質問してるだけなんだがよ、なんで答えねえんだよ」
「ひ、ひぃっ! く、来るな」
先ほどまで息巻いていたエリックと名乗った男はその身体をぶるぶると震わせ始めやがった。
「お前、言ったよな? 『いらねえ女』をなんとかって? それが騎士の言う台詞なのかよ。人の言っていい言葉なのかよ」
「ひ、ひぃっ!」
突然数人の聖騎士が外へと走って逃げようとした。
俺は自分の足元の地面に向けて呪文を構築、すぐさま連中全員を『
使ったのは当然この『
「『
地面を伝わせて多少離れている奴に対しても同時に一気に
「うああああ………」
聖騎士の連中が悲鳴を上げつつ走り逃げようとするその恰好のままで次々に石にその姿が変わっていくも、だが、少し発動が遅かったようだ。再度『
「ちっ……これは面倒だな……おい」
「ひっ!」
俺は土の壁に退路を阻まて尻餅をついたままの聖騎士エリックへともう一度詰め寄った。
逃げ出したやつがいる以上、ここに長居するのは得策じゃない。
「聖騎士ってのは、俺はてっきり『国民や信徒を守る正義の味方』だと思っていたんだがな、それは勘違いだったみてえだよこのクソ野郎? お前は誰の命令でこんなことをした? この怪物はいったいなんだ? おら、さっさと吐きやがれ」
俺は腕に纏わせていた『石鎧』を砂化させた後で、今度は腰のホルダーから
奴はガクガク震えながら、必死に後ずさろうとしているも、壁があってそれ以上逃げられない。そして、そのズボンの股の部分は盛大に失禁してしまっている。
「ひっ……よ、寄るな、この化け物……!」
「誰が化け物だ! 化け物ってな、この檻の中の奴やてめえみてえなクソのことを言うんだよ。おら、誰に命令されたかさっさと言え」
ぐいっと俺は剣を奴の喉へと少し押し込んだ。
鮮血がピッと跳ねるもただのかすり傷だ。この程度では死なない。
正直殺人なんて絶対したくはないが、多分今は平気だ。この目の前のクソが、本当のゴミにしか見えていないのだから。
「殺すぞ」
「…………‼」
言った。
モンスターを殺すことこそ多少慣れてきたとはいえ、俺は今確実に殺意を持って目の前の人間にそう言い放った。
奴はいよいよ涙目になって、おお……神よ……なんてほざいてやがる。そのあまりの胸糞悪さに本当に殺してやりたい衝動に駆られたが、それを彼女が制した。
「やめて紋次郎。殺しちゃだめ」
「ヴィエッタ」
俺の背中からぎゅっと抱き着いてくるヴィエッタ。彼女はぎゅうぎゅうと俺を締上げるように抑えつける。
振りほどこうと思えば、多分今の俺なら振りほどくことは可能だったろう。だが、それはしなかった。
密着した彼女の身体は小刻みに震えていた。そして声も……
きっと怖いのだろうな……多分俺のことが……
そう思ったとき、ふっと身体から力が抜けるのが分かった。そして俺はすぐさま奴へ向けて唱えた。
「『
言葉もなく奴はたちまちのうちに石へとその姿を変じた。
俺はそのまま振り返る。
そこには言葉もなくただ俺を見みつめてくるたくさんの女たちの顔。
その顔殻は怖れや困惑の感情が見てとれた。
そりゃそうだな、ただでなくてもこんな身元も分からないような急に現れた男が、魔法だけでなく呪いまで使って人を石に変えちまったんだしな。自分もそうされるんじゃないかって不安に駆られるのも分かる。
やっぱり俺が一番クソ野郎だよなぁ……
そう思った時だった。
「ありがとう、紋次郎」
「え?」
いきなりそんなことを言われて顔を上げてみれば、そこには俺に笑顔を向けているヴィエッタの顔。彼女はにこやかに微笑んで俺を見ていた。
「私が殺さないでって言ったから、石に変えたんでしょ? えっと、石になっても死んでないんだもんね?」
「あ、ああ……まあそうだな」
「やっぱりありがとうだよ! それと……紋次郎、私のことも助けてくれて本当にありがとう!」
その満面の笑顔に心が軋む。
何故か急に込みあがってくるものがあって、自分の目頭が熱くなるのを感じてしまった。
「紋次郎?」
俺は慌ててそれを拭って彼女に向き直る。ヴィエッタは不思議そうに俺を見ていたが、その後ろからオーユゥーンやシオン、マコ、それに先ほどまで怯えていたこの館にいた女連中が全員また俺の元に集まってきた。
「すっごいねお兄さん! やっぱり『
「ちがうよ、クソおにいちゃんはきっと『
シオンとマコがそんなことを言いやがるし。
「はあ? お前ら何言ってんの? 『戦士』だって言ってんだろうが」
「またまたぁ、お兄さんそんなこと言って、実はそれは世を忍ぶ仮の姿で、その実態は! ってやつなんでしょ?」
「えー! なにそれ超かっこいい! クソお兄ちゃん正義の味方だったんだ!」
「どこのヒーローだよそれは! んなわけねえだろうが!」
「でも、紋次郎は私のヒーローだよ」
「「「「「「「「「えっ!」」」」」」」」
唐突に俺の背後から声がしたかと思えば、そんなことを言ったのはヴィエッタだった。周りの女どもも一様に絶句して俺達をみているし。
そんな様子に少し困惑したヴィエッタは……
「あ……れ? 紋次郎は最高にカッコイイと思うんだけど……違う……の?」
「思っててもなかなかそんな恥ずかしいことは言えないものですのよ。純ですわね、ヴィエッタさんは」
オーユゥーンのその言葉に、初めてヴィエッタは赤面したのだった。