救世ノラヴドール~俺とセクサロイドの気ままな旅~   作:こもれび

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エピローグ①

 救い出した女性達を連れて街へと帰還すると、そこは酷いありさまだった。

 街のあちこちから火の手と黒煙が立ち上り、多くの人が駆けまわって水魔法などを使用して火の消化に当たっている。

 そしてそんな街並みのところどころに、まるで小山のようなあのヘカトンケイルの遺骸がいくつも転がっていた。

 こいつら家を破壊しながら進みやがったな、まるで道路のように、ヘカトンケイルの通ったであろうその個所の家屋が完全なまでに破壊しつくされていた。

 

 これは酷いな。

 

 街の入り口で呆然と眺めていると、そこへ女性たちの声が聞こえてきた。

 

「オーユゥーンお姉さま!」「ご無事で!」「お姉さまぁ」

 

 駆け寄り群がり始める女達。彼女達はあの娼館で俺が梅毒から助けた連中の一部だった。

 みんな薄い下着に防具を着け、手に手に鳶口を持って、全身すすだらけの状態だった。

 

「あなた達! 無事な様で良かったですわ! こちらも全部終わりました。 全部……お兄様……賢者(ワイズマン)様が終わらせてくださいましたわ」

 

 そう言って俺を見て微笑むオーユゥーン。

 周り中の女たちが一斉にわあっと笑みを浮かべて歓声を上げた。

 そして今度は俺達の背後にいた穴倉に囚われて怪物の苗床にされていた女達を認めて、そして知り合いでもいたのだろう、駆け寄り抱き合い悦びに声を弾ませていた。

 

「おい、オーユゥーンてめえ、人のことをまたそんな風に言いやがって」

 

「良いではありませんの? みんなを助けて下さったのは、まぎれもなくお兄様ですのよ? それとも、本名でお知らせした方が宜しかったでしょうか? 木暮紋次郎様?」

 

「ぐぬぅ」

 

 俺を上目づかいで見上げながら悪戯っぽくそう微笑むオーユゥーンは、当然俺の内心を見透かしているわけで、弄ばれてる感じが非常にムカついたが、さりとて目立ちたいわけでもないのでここは我慢して黙ることにした。

 人を手玉にとりやがって、この性悪め。

 このままこんな大勢の中に居たら、どんな風評被害をうけるか分かったもんじゃなかったので、俺はさっさと終わらせようとヴィエッタの手を引いて例の隠れ家へと急いで向かった。

 

 と、その途中で……

 

「おい。お前は何やってんだよそこで」

 

「あ、ご主人、お帰りなさいでやんす。ワッチもうここから出てもいいすかね? でーもんばーばりあんさん達もみんないなくなっちゃいやしたし、べリトルさんも帰ってきませんけど」

 

「はあ?」

 

 何やら通りの真ん中で魔法陣のような幾何学模様に掘られたその円の内側に、二ムが一人で正座しているのだが……

 奴の目の前には裏返しになったトランプが散乱している。

 いったいこれはどんな状況なのかと思い聞いてみれば、なんとあのべリトルがこいつに会いにやってきて、二ムを魔法でここに縫い付けたらしい、というより、メインリアクターを停止させられたようだ。

 正直俺はそれを聞いて愕然となった。

 陽電子リアクターは放射能が絶対漏れない構造をしているが、その実超小型の『核融合炉』だ。通常は燃料でもあるリポジトロニウム……もしくはこの世界であれば魔晶石が反応している限りはリアクターが止まることは通常あり得ない。

 だが、少量とはいえ、まだ魔晶石は二ムのリアクター内に残っているのだ。

 この状況で核融合反応だけをとめるなんて、そんなことが可能なのか?

 しかも魔法でだ。

 俺は改めて自分が知る全ての魔法の知識を動員して、その方法を思案してみたが、今はまったく思いつかなかった。これは改めて色々な角度から術式や方法の検討が必要だろうが、それよりもまず驚いたのは、あのべリトルがそれを為したという事実。

 あいつは俺達の世界の技術に精通していたわけではなかった。にも拘わらず、ほぼ初対面に等しい二ムの、しかもその基幹部品とも言える陽電子リアクターを停止させたことは衝撃以外のなにものでもない。

 この世界にはもともとそのような技術があったのか、それとも、奴が特別天才であったのか……

 世の中上には上が絶対いるもので、俺だって多少は自分の技術に自信もあったが、これはやはり慢心だった。

 くそう、さっきいろいろムカついたからあの半分精霊体の奴を遠慮なく消滅させちまったが、これは早まったかもしれない。

 どんな技術を持ってるのかもっと話を聞いておくべきだった。

 

 そう、色々後悔はあったのだが、とりあえずは目の前のこいつだ。

 

「で、お前はそこで何をしてんだよ?」

 

「あ、それがですね、聞いてくださいよご主人」

 

 聞けば、べリトルの奴にリアクターを止められて、いちおう内臓バッテリーの僅かな電力で電子頭脳と一部の身体の駆動は可能な状態であったようだが、見張りと称して4体の悪魔蛮族(デーモン・バーバリアン)というモンスターに取り囲まれ、後で殺しにくるからそこで待っていろと言われてジッと待っていたようだ。

 

「まあ、ご主人のことですから、どうせ返り討ちにしちゃってると思ってやしたけどね」

 

「うるせいよ! 俺だって死にそうだったんだよ、まったく」

 

「えへへへへ」

 

 二ムはパンパンとお尻の土を叩いて落としつつ立ち上がる。この感じからしてリアクターの再起動も無事に完了したようだな。

 

「それで、そのトランプはいったいなんだ?」

 

「あ、これはあれですよ? 結構暇だったもんで、でーもんばーばりあんさんたちとババ抜きでもして遊ぼうと思ったんでやすけど、あの人たちムスッとして相手してくれなかったもんで、こう地面に並べて神経衰弱のデモンストレーションをやりやしてね、ワッチが百発百中で同じ数を当てるのを見せてたら、結構興奮した感じになってやしたよ? 顔はムスッとしたままでやしたけど、かなり心拍数とか上がってやしたし、同じ数を充てるたびに、びくんびくん反応してやしたし、あれきっと本当は遊びたかったんでやんすよ」

 

「お前、モンスター相手に何しちゃってんだよ」

 

 俺は結構真面目にその悪魔蛮族(デーモン・バーバリアン)さん達に同情した。

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