救世ノラヴドール~俺とセクサロイドの気ままな旅~   作:こもれび

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第十一話 二人の皇子【エドワルド、クスマンside】

「はぁん……は、はげしっ! 激しすぎますぅーー、ああっ!!」

 

「殿下ぁ……次……次はワタクシめをお使いくださいませぇ」

 

「いやいやぁ、私! 私に欲しいですわぁ!! お願いします、殿下ぁ!!」

 

「へへ……」

 

 室内には激しく腰を女へと打ち付ける乾いた音と、ぬちゃぬちゃと液体が溢れかき混ぜられる音が響き続けていた。

 巨大なベッドの上には複数の女と、そして大男と評しても差し支えがないほどに筋骨逞しい偉丈夫の姿。その男はあられもない様子で四肢をベッドへと投げ出した一人の女の腰を両手の平で軽々と掴み、彼女へと自らの欲望を叩き続けていた。女はといえば、もはや痙攣したまま恍惚とした表情でだらしなく開いた口から自分の舌をだらりと垂らしてしまっていた。

 そのあまりの激しい様に、周囲に群がる女達は同様の情けを受けようと、皆必死になってその美しい裸体を男の身体へとこすりつけ、懇願するように愛撫を続けていた。

 

 その時、部屋の入口の扉がおもむろに開く。

 付き従っていた官吏を廊下に立たせたまま、その政務服姿のやはり長身の男が静かに部屋へと入ってきた。女達は自らの快感に溺れ、その存在に気付いてはいなかったが、大男だけは腰を振りつつそちらへと視線を向けた。

 

「おお……兄者。よく来たな。どうだ女ならいくらでもいるぞ、兄者も一緒に楽しまないか?」

 

 何も気にした様子もなく、へらへらと笑みを浮かべたままで、その大男は最後の仕上げとばかりにもはや気を失ってしまっている女へと欲望の限りをぶちまけた。

 そしてそのままの態勢で、次に狙いをつけていた女へと手を伸ばし、乱暴にその身体を弄ぶびつつ、失神した女の身体がぴくぴくと痙攣する様を楽しんだ。そして次なる獲物でいかに楽しんでやろうかと動きかけたその時、彼の兄が声を出した。

 

「いい加減にしておけよ、クスマン。貴様も神教の忠実なる僕なのだ。昼間から女になど(うつつ)を抜かして世間から疎まれないように気をつけることだ」

 

「へっ! 別に俺は自分から神教の信徒になったわけじゃあねえんだがな。まあ、人前じゃあそれなりに気を使うとするぜ……で、どうする? 兄者も女を抱くのか?」

 

 そう言いつつ、次なる女を組み伏し腰を振り続ける弟を見ながら、兄……エドワルド・エルタニアはその場にいる女達全員へと言った。

 

「お前達、すぐに失せろ。これから大事な話があるのでな、もし消えねばすぐさまここで死んでもらうことになるぞ」

 

 低く、心地よいほどのテナーに響くその声に、一瞬で心を奪われた女達であったが、その内容の重大さに遅れて気づき、小さく悲鳴を漏らしつつ、矢継ぎ早に部屋を後にしていく。

 大男……クスマンに組み伏せられていた女も、慌てて彼の腰から逃れて部屋を飛び出していった。

 その様を呆気にとられた様に見ていたクスマンは、渋い顔をしつつ、その腰にタオルを巻いた。そして開いたままになっていた重厚な扉を自ら閉め、そこを施錠した。

 

「ひでえな兄者。これからが良いところだったってのに。まったく欲求不満もいいとこだぜ。で? なんの用なんだ? もうじきこの城を捨てるんだろ? 時間がねえんだ、手短に頼むぜ。俺はまだたりねえんだからな」

 

 クスマンはもう一枚タオルを手にすると、今度は筋肉質なその全身から噴き出している汗を拭い始める。

 それを眺めつつエドワルドは言った。

 

「ギードとの合流は中止だ。今しばらく我々はこの地で『狩り』をすることになった」

 

「はあ? いまさら『狩り』かよ? おいおい兄者、それはなんの冗談だ? もうこの国は『あの連中』にくれてやったも同じだったじゃねえか? 俺らは王族の生き残りとしてギード経由でジルゴニア帝国に亡命するって話だったろ? それに早くしねえと、ここも襲われるだろうに。それがどうして……?」

 

「『あの連中』が計画を失敗したようだ。『アンデッドナイト』どもも、『終末の獣』たちも、そして『魔の存在』もその復活を阻止された。このままではこの国は『存続』出来てしまう」

 

 それを聞いたクスマンは大声を張り上げた。

 

「なにっ!? それは本当のことなのかよ、兄者!!」

 

「嘘など言わぬ。今ギードと合流したとしてもこの地は『滅びぬ』のだ」

 

「ちくしょうがっ!! いったいなんでだよ!!」

 

 だんっ‼ と激しく机を殴りつけたクスマンはその顔に怒りを貼りつかせ、歯を噛みしめつつ言い放った!

 

「あれかっ!? 国王(おやじ)が用意した連中のせいか? あいつらが先回りして全部片づけやがったってのか!?」

 

「いや、ラインハルトを始めとした他の連中には、魔王モンスターを(けしか)けることで足止めをしたのだ。あの者達がやったとは考えにくい。それよりも問題なのは、『あの連中』の仲間の一人も殺されたらしいという事実だ。これは全ての『予言』にはなかった事態だ」

 

「くそがっ!! やっぱり俺が直接行くべきだった。俺ならばどんなイレギュラーでもぶち壊せたっ!!」

 

 そういきり立つクスマンに、エドワルドは冷静な声で諭すように言った。

 

「落ち着けよクスマン、まだ手は残っている。といっても流石にあの『遺跡』を動かせばこの国だけの被害には留まるまい。ギードも小国連合もジルゴニアにも被害が及ぶだろう。だが……」

 

 エドワルドは一度目を閉じ、そして冷徹な微笑みをその顔に浮かべた。

 

「このような穢れた大地……破壊されたとて痛くも痒くもない。一度壊し、そして『あ奴ら』へ全てくれてしまえばよいのだ。もう少し世界は、すっきりするべきなのだからな」

 

 巨漢であり力自慢でもある弟クスマンであったが、そのような兄の表情に全身粟立つのを感じた。

 そのあまりの冷酷さがいかに本気であるかを知っている彼にとって、その言葉はまさに死の宣告そのものであったのだから。それに気圧されつつも、クスマンは兄へと言った。

 

「お、おう……そ、その通りだぜ兄者! この世界は絶対にぶっ壊す。まあよ、気に入った女の何人かは連れていきてえところだがな、へへ」

 

 その軽口にエドワルドは何も答えなかった。

 冷たい視線を一度向けるだけに留め、更に続けた。

 

「だが……確かにお前も言った、ラインハルト()父上が用意した連中は厄介なのだ。様々な『祝福』と『スキル』を持つあれは普通ではないからな。だからこちらも手ゴマを用意した。ゲッコーとスペリアネス。貴様も良く知っていよう?」

 

「おおっ……!! 『味方殺し』と『災いの魔女』か! あの連中ならば良いぞ! 良い! 躊躇なく人を殺すからな、駆け引き無しで楽でいい」

 

 そのように絶賛するクスマンに、エドワルドはもう一言付け加えた。

 

「それと、ノースウィンドゥのカイラードという小僧も、『あの連中』の命令で呼ぶことになった。この男のことを私は良く知らぬのだが、貴様はどうだ?」

 

「ああ、聞いたことはあるな。なんでも滅茶苦茶美人の女を3人侍らせて盗賊狩りを行ってるとか……確かこいつは、闘った相手を必ず殺すらしくてな、『殺人狂』なんて一部では言われている英雄様らしいぜ。へへ、そうか、こいつも来るのか……だったら、その女どもの味見をしてやらねえとなあ」

 

 よだれを垂らしそうな勢いで興奮し始める弟を兄は諫める。

 

「やめておけ。どのような人物にしろ、今は共闘するときだ。例のラインハルトも一度王都へ戻り着くころ合いだろう、邪魔をされぬように連中を(けしか)けるのだ。大事は他にあるのだからな」

 

 それを聞いたクスマンはまた先ほどと同様ににへらと笑みを浮かべた。そして問うた。

 

「で? 兄者、いったい今回は誰を殺せばいいんだ?」

 

「決まっている。我々の妨害をしている『何者』かと……」

 

 エドワルドは目を細める。

 そして邪悪な冷気の宿ったその瞳でクスマンを射抜くように見つめつつ、言った。

 

「この忌まわしい国にいる全ての人間だ」

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