救世ノラヴドール~俺とセクサロイドの気ままな旅~   作:こもれび

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第十四話 世紀末な盗賊達

盗賊組合(シーブズギルド)だって?」

 

「ああっ!? なんだぁてめえは!?」

 

 思わずひぃっと仰け反りそうになったわけだけど、俺がふと一言漏らした瞬間にバネットに恭しく話しかけていた金髪刀傷男のピート君が、俺へとメンチを切りつつ顔を近づけてきた。っていうか、マジで怖すぎる!

 これ、絶対一瞬で俺の首を跳ね飛ばされるシチュエーションだろ? とか本気で怯えていたそこへ、鼠人の彼女がムッとした顔でいった。

 

「この人は私のご主人様だよ」

 

「え?」

 

 強面ピート君はさも虚を突かれたと言った感じで驚いてしまっていた。そして俺達全員を見回してからバネットへと近づいた。

 

「へ、へへへ。バネットの姐さん。悪い冗談は止しやしょうよ。姐さんともあろうお方が、よりによってこんな貧相なガキに仕えてるなんざ、冗談にしちゃあ……」

 

 言いつつ奴は俺へと顔を近づけて、邪悪に微笑みつつ……カッと目を見開いた。 

 

「最悪だぜ!」

 

 ひ、ひぃっ!!

 いや、何この人! いきなり現れてこの反応! 

 いくらなんでも過剰すぎるだろう。やめてよ別に本当になんでもないし、ご主人様ったって、それただバネットがそう呼んでるだけだし。

 そう思っていた時だった。

 

「嘘じゃないよ? 私は『買われた』んだ、ご主人様に。5000ゴールドで! ねえご主人様」

 

「ご、5000!? た、たった5000ゴールドぽっちで!? う、麗しのバネット姐さんを買いやがったってのか、てめえは!! ああんっ!?」

 

「ひゃっ!!」

 

 あまりに近くで叫ばれたので、本気で変な声が出た。

 いや確かに5000ゴールドで買ったっていえばそうなんだろうが、あれは悪徳奴隷商人のバスカーとのやりとりの一環で金を奴にくれてやっただけの、言わばただの仕返しだったんだぞ?

 なんで、わざわざ安価にお前を仕入れたみたいな話にすり替えたんだよ!

 ニマニマしているバネットの横で、怒り心頭なピート君。

 

「てめえ、バネット姐さんにこんなこと言わせるたあどういう了見だ、ああっ!? 本気でぶち殺すぞ」

 

 とんでもない悪人顔で俺へと迫って、しかも全身の筋肉をミシミシと漲らせながらプルプル震えてやがるし、こいつ今すぐにでも本気で俺をぶん殴ろうとでもしてるんではなかろうか!! やめて! 本当にやめて!!

 

「ピート、いい加減にしなよ。だいたいお前程度がご主人さまに敵うわけないだろ? 身の程わきまえな」

 

「んなっ!!」

 

「!!!?」

 

 おいおいバネットてめえ、何を言い出しやがる!!

 なんでただでなくてもちびりそうなくらい怖いってのに、こいつけしかけちゃうんだよ!! やめろよ、嫌だよこんな怖い奴と喧嘩なんかしたくねえよ。っていうか、もう何もしないし謝るから逃げさせて!!

 

「くく……くくく……こんなひょろいガキが強いですって? 馬鹿も休み休みにしてくださいよ。よおみんな、このガキ俺よりも強いんだってよ。さあどうする?」

 

「ひひひ」「へへへ」「くひひ」

 

 周囲のまるで世紀末暴力団員のようなムキマッチョモーヒー(かん)どもが、にやにやと笑い出してさしずめコンクリート詰め1分前と言った様相だ。

 おいおい本気で勘弁しろよ、やめてくれよ、と慌ててニムとメガネ痴女へと視線を向けてみれば、ニムはあっけらかんと笑っていて、メガネの方は唖然茫然。ともかく、ふたりとも俺を助ける気はさらさらないということだけは良くわかったのだが。

 そんな俺へとピート君が近づいてきた。

 

「よし分かったクソガキ。てめえが本当に姐さんに相応しいかどうか俺が確かめてやるぜ。ほら、相手してやるからかかってこいよ」

 

 ピート君はニヤリと微笑んだまま俺に向かってかかってこいと指で合図を送ってきやがった。

 とりあえずレベルを確認してみれば『23』。まあ、その辺の冒険者と比べればそんなに弱いわけじゃないが、はっきり言ってレベル1の俺じゃあ話にならない。

 っていうか、なんで俺がこいつと喧嘩しなきゃいけないんだよ! 止めろよ、だれでもいいから。おい、バネット……と見てみれば、こいつもこいつでニヤニヤしつつ俺を見ていやがったし。

 くっそ、なんなんだマジで。

 

 ええいくそ!!

 

 俺はもうわけが分からないままに叫んだ!!

 

「てめえ、もう死んだって知らねえからな?」

 

「くはは、死ぬ? この俺が死ぬって? げはははははは。てめえみてえななんの取柄もなさそうなガキに俺がやられるわけ……」

 

 そんなセリフを吐いているピート君をしり目に、バネットへこっちへ来いとちょいちょい指で合図を送る。

 そしてさも当然の様に俺の方へと近づいてきて、ずずいとその胸を俺へと差し出してきやがった。

 で、当然それに触れるわけだが。

 

「て、てめえ!! 何をいきなり姐さんの胸を揉んでやがる!! ぶっ殺す!!」

 

 だから揉んでねえから!!

 俺はいきり立つ奴に構わず、魔法を一気に放った。

 

「『風弾(フ・エアバレット)』!!」

 

「んなっ……」

 

 使用したのはただの風の基礎魔法。だけどその威力は少し弄くった。

 この魔法は周囲の気体を圧縮した上で相手にぶつける魔法で、様々な属性の同様の魔法の中ではもっとも威力が弱い。同系統の『送風(フ・ブロワー)』にどちらかといえば近く、風を発生させる類の魔法なのである。

 当然、レベルの高い奴はこれに耐えることは容易。そういうわけで俺は威力を半端なく底上げしておいた。

 ここはどうやら密閉された空間だ。だからこそ簡単だったのだが、空気の圧縮の際に、連中の周囲の空気を根こそぎ奪ってほぼ真空にした。

 そして最大限圧縮した空気を放ったのた。

 いったいどれだけ空気が暴れたのか、予想するのは簡単だろう。

 とりあえずピート君達はぶっ飛んだ。

 ぶっ飛んで、文字どおり壁にめり込んで、なにやら巨大な絵画の様になってしまったのだが。

 

「ほらね? お前じゃ敵わないっていったでしょ?」

 

 なにやらバネットが鼻を膨らませているし。

 って、元はと言えばてめえのせいだろうが!

 

「す、すいやせんでした……」

 

 ピートの謝罪が短く辺りに響いた。

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