救世ノラヴドール~俺とセクサロイドの気ままな旅~   作:こもれび

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第十五話 がっでーーーーーーーーむ!!

「いやあ、すいやせんでした。流石はバネット姐さんの男。御見逸れしやした」

 

「お前、手の平返すの速すぎだろう」

 

 そのまんまの意味で『壁の花』になっていたピート君達を、ニムが力づくで引き剥がして助けたあと、とりあえず大怪我した奴がいないかだけを確認し、特に大事になっていないことを見留めてほっと安堵していた。

 いやいや本気で嫌だよ、こんなところで殺人とか。ただでなくても怖いおじさんたちだらけなのに、いきなり殺し合いなんかマジでしたくねえよ。

 だが、実際大したケガもなく、この室内がぐっちゃぐちゃになったくらいの事態だったから、ピート君たちもさして怒った様子もなく、今ではこのように平身低頭。だったら、最初からそうしろよ!! と憤りたくなるのを堪えつつ、奴に案内されて応接室のようなところまで移動してきていたわけだった。

 というか、俺はバネットの男じゃねえ!!

 

 俺たちが今いるこの応接室は、地下室にあるとは思えないほどに豪奢な装飾品に彩られた部屋になっていた。窓がないのは致し方ないのだろうけど、煌々とランプの灯りが輝いているので、ほとんどの地上の部屋と変わらない様子で、実際に貴賓の来訪にも対応できるような感じであった。

 その部屋の皮張りの大きなソファーに俺とニムとメガネ痴女が座り、一段高い位置の更に豪華な椅子にバネットが堂々と座っていた。

 そのポジション、ヤ〇ザの親分の位置だろう!?

  

 まあ、いい。でだ。一気に態度を軟化させた――というよりは胡麻を擦り始めた感じのピート君の接待がいきなり始まったわけで、そのあまりの変貌っぷりに正直俺の面食らっていた。

 

「どうぞ、まあ、それでも飲んで少しゆっくりしてくださいよ」

 

 コトリと置かれた湯飲み茶わんを見てみれば、そこには熱そうなお茶が注がれていた。

 それをニコニコと笑顔で勧められれば断るのも悪いかと思い、そっと口へと運ぼうとすると、すでに隣でずずーっと音を立てて飲んでいたニムが一言。

 

「このお茶『眠り薬』入ってやすよ、ずず~~」

 

 なんてことは無いように普通ににこにこしながら飲み続けているニムに、なにやらピート君が邪悪な顔でチッと舌打ちしてやがった。

 っておい!!

 

「お、おまえ! いったい何を飲ませようとしてんだよ!!」

 

「う、うるせーこのクソガキっ!! よりによって俺の最愛のバネット姐さんを寝取りやがって!! お前だけは絶対に何が何でも、一生表を歩けないような恥ずかしい体験させてやるからな!! 覚悟してやがれっ!!」

 

「待って! ちょっと待って!! 殺さないでくれる感じなのはびんびん伝わってくるんだけど、一生の恥っていったい眠った俺に何をやらせようとしてんだよ!!」

 

「んなこと教える訳ねえだろうが、このボケ!! 何をされても全部てめえが悪いんだ!!」

 

 とか、子供みたいなことを言い始めるピート君。

 いや、だから何をしようとしてるんだよ!!

 そう気になっていたら、てくてくとニムが歩いて行ってピート君へと言った。

 

「ワッチにだけ教えてくださいよー! いったいご主人がどんなになっちゃうんすか?」

 

「ああ!?」

 

 一瞬憤ったピート君だが、次の瞬間にはにたあっと笑ってニムへとこしょこしょと耳打ち。それをニムはうんうん頷きつつ聞きつつ、言った。

 

「おおっ!! そ、それはなんともおいしそ……いえ、恥ずかしい感じっすね!! でも、それだけじゃあちょいとインパクトが薄いんで……ごにょごにょ」

 

 今度はニムがピート君へと耳打ち。聞いているピート君が何やらどんどん真っ赤になっているんだけども……

 

「お、おい!! そ、そんなことまでしちゃうのかっ!? そ、それやったらもう二度と出歩けないどころか、家に居ても恥ずかしさで死ねちゃうだろう!?」

 

「それがいいんすよ! ワッチたちが居る中でひたすらビクンビクン震えちゃうご主人!! もう考えただけでワッチも濡れます!!」

 

「き、鬼畜だ……」

 

「っておい! おまえらいったい何を話してやがる!! やめろよ本人の目の前で! それほぼ公開処刑だからな!!」

 

「いや、バネット姐さんを寝取ったてめえは死ぬくらいじゃあ許さねえ!! もう普通に生きられるとは思うなよ!!」

「そっすよご主人! これでようやくご主人がワッチたちのものになるんですからね! 一生あれもこれも可愛がってお世話してあげますよ、ふふふ」

 

 とか言いながら、ピート君とニムがグッと握手してやがった。

 どこで共感してんだよ、どこで!!

 と、そんなところへすっ呆けた声でバネットが。

 

「えっと、ピート? 私まだご主人様とは寝てないよ?」

 

「え!? そ、それは本当ですかい!?」

 

 唐突にそんなことを言ったバネットに、ピート君は満面の笑顔になって振り返って詰め寄った。

 バネットはなんてことは無い様子で言い切る。

 

「ホントだよ? いくら誘っても全然抱いてくれないんだよねーご主人様。ご主人様『とは』寝てないし、ご主人様は万人が認める童貞だからねぇ、ピートはそんなに慌てなくてもいいんだよ? いい子にしてたら後でいっぱい可愛がってあげちゃうんだから」

 

「!? バネット姐さん!! そ、それは嬉しすぎますぜ!!」

 

 ぱあっと明るい笑顔になったピート君。

 そして彼はとんでもない事を言い放った!!

 

「バネット姐さんに初めてを捧げてから、俺は数百人の女を抱いて来ましたが、姐さん以上の女にはついぞ会えなかった。バネット姐さん!! お、俺は……俺にとっての女は姐さんしかいねえんだ。姐さん、俺と結婚――」

 

「あ、それ無理。私もうご主人様と余生過ごすって決めてるから」

 

「がっでーーーーーーーーむ!!」

 

 絶叫しつつ撃沈するピート君。

 いや、そこまでへこむんじゃねえよお前。そもそも数百人の女と寝てきたのにバネットが忘れられないって、それお前の性癖がただ、『ロリコ……』

 そもそもお前バネットの実年齢知ってるのか? お前の母親より多分年齢上だぞ、いいのかよそれで。

 とまあ、そんなこんなでもんどりうっている、ユニークなピート君を眺めつつ俺達はようやくお話をする時間が出来そうだった。

 うん、眼鏡痴女、完全に空気だけど気にしない。

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