誰でもない主人公の話
マルチプレイしてるときの各々の立ち位置ってそれぞれが主人公だけどみんなが主人公じゃないんだよなとそんな感じの話
御都合主義大好物
仕方ない。
割り切れない数字を割り切るために小数点以下を消すことは、悪い事じゃない。
ただ偶々自分が、小数点以下の数字だったという、ただそれだけのことなのだ。
生まれたとき、自分が主人公ではないと何となく悟っていた。
産まれたのではなく生まれた。
母も父も兄弟もいない。
ただそこに生まれた。
発生したと言っても過言ではなく、自分は唐突にこの世界に存在した。
そして、神薙ユウを見て直ぐわかった。
そして、同時に理解した。
自分がイレギュラーだと言うことを。
自分の存在が、人物欄に無いことを。
他人から認識されないと言うのは語弊があるかもしれない。
積極的に、と、つけるべきかもしれない。
そう変わらないのだけれど。
そう、認識はされる。
ただそれが、継続しないだけで。
自分の存在が忘れられるとわかったときは、あまりの理不尽さに泣いた。
リアルボッチである。
背中を預けて戦った相手が一瞬自分から認識を外しただけで次の瞬間には記憶から消えるのだ。
自分の事に一ミリだって触れなくなる。
居る、と言う認識で終わる誰か。
モブ、と言うのが一番伝わるのだろうか。
そんな物語じみたモノと笑い飛ばしたくなる。
だって此処は現実だ。
食べなければお腹が空くし、眠らなければ眠くなる。
疲れれば休みたいし不可能は可能にならない。
今日も人は死ぬし死んだ人は生き返らない。
夢ではなく現実なのだ。
自分は確かに現実に存在している。
一個人として認識されるはずなのだ。
自分は紛れもなくここにいるのだから。
そこにいる誰かと認識されることに慣れたのは、いや、慣れたのではなく諦めたのか。
一個人として認識されることを諦めたのは割と早かった。
泣いてもすがっても個人を特定されないのだ。
さっきまでそこにいたのに。
冷めた。
心配してくれたのに。
自分から一瞬、たったの一瞬だ、名前を呼ばれ目を背けた瞬間に、自分の事を忘れた。
諦めもつくと言うものだ。
これが修正力と言う奴なのかと、妙に納得したものだ。
カウンターへ向かいいつものように任務を受け─ディスプレイに名前が表示される。
任務の間だけは、自分の事をきちんと一個人として認識してもられるらしい─荒神の討伐へと向かった。
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「貴方、ゴッドイーターなんでしょう?おに、じゃなかった…エリックを見なかった?」
いつものようにノルンのデータベースへアクセスしているときだった。
そんな、場違いな幼い声が聞こえたのは。
振り向くとすこし離れた場所で裕福そうな少女、エリナがこちらを見ていた。
いや、こちらをと言うのはおかしい、恐らく近くに誰か居るのだろう。
一個人として認識されない自分を、そう、誰かが呼び止めるなどあり得ないのだから。
ふと端末へと視線を戻す。
「ちょっと…!なんで無視するのよ!」
服の裾を引っ張られた。
死ぬほど驚いた。
悲鳴を上げて振り向くと、エリナが、自分の服の裾を引っ張っていた。
思考が止まる。
「エリックを探してるの!聞こえてたんでしょ?なんで無視したのよ!」
うまく回らない頭で、エリナはよっぽとエリックに会いたかったんだな。
だから自分すら頼らなければならなかったのだと、周りには誰も見当たらなかったのだと、無理矢理納得させ、オペレーターに確認する事を伝えた。
「ありがとう!」
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ヒバリさんにエリックの居場所を確認すると、先ほど任務に出たばかりだと言う。
何の任務かと次いで確認する。
長くかかる任務でなければすぐに帰ってくるとエリナに伝えられるから。
「はい、先程ソーマさんとユウさんと討伐任務」
そこまできいて、自分は神機保管庫へ走った。
驚くヒバリさんとエリナの気配がしたが、それどころではないしどうせすぐ忘れる。
それより今はエリックの死を防がなければと、それだけだった。
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結論から言えば、エリックは死ななかった。
ロングブレードだったらもう少し余裕があったかもしれないが、ショートブレードしか使えない自分には無理だった。
ガンフォームとか、アサルトの威力じゃ荒神を殺しきれないかもしれないし。
助かったのだから多少は許してくれるだろう。
まぁどうせ命の恩人、カッコ笑いカッコトジ、のことも忘れる事だろうし後から何を言われるわけでもない。
矛盾点は残るからきっともやもやしたままだろうけれど、逆に言えばそれだけだ。
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「…ねぇ、もしかしてエリックのこと助けてくれたのって、貴方なの…?」
デジャヴのように服の裾を引かれ振り向くと、エリナが居た。
「エリックの事確認してくれた時、すぐ走り出したじゃない…あれって、エリックを助けに行ってくれたんじゃないの…?」
まぁそうなのだけれど、いや、そうじゃない。
それより今はエリナが自分の事を記憶しているということの方が、自分にとっては重要だった。
乾いた口で、覚えてるのかとなんとか絞り出した。
「?当たり前じゃない。あんないきなり飛び出していったりしたら忘れられないわよ!」
いや、そうだけどそうじゃなくて。
「それより、ありがとう。貴方がいなかったらエリックは、居なくなってたって…エリックが、誰か良くわからないけどあの人が来てくれなかったら僕は死んでたって…探しても見つからないんだって言ってて…なんとなく、貴方な気がしたから」
探しても見つからない、か。
誰かに助けてもらった事は覚えてるのか。
ソーマでもユウでもない誰か。
ちょっとだけ、嬉しくなった。
今度は気を抜くなと伝えてくれと言って踵を返そうとすると、エリナは服の裾を掴んだまま引っ張る。
「貴方が直接言えば良いじゃない!エリックも会いたがってたわ!」
どうせ忘れるくせに何言ってんだ。
顔をしかめただけだと思ったら、どうやら口にでてたらしく、エリナがびくりと震えて手を離した。
「え、と、あの、ごめんなさい…私…」
泣き出しそうなエリナを必死になだめた。
書きたいところだけ書いた。
後悔はしていない。
続きは飛び飛びで書くかもしれないし書かないかもしれない。
書きたくなったら書きたいところだけ書くスタンスで。