もしも、ぐだ男とぐだ子が笑顔の素敵な公務員だったら 作:MAGMA
原作:Fate/Grand_Order
タグ:R-15 オリ主 残酷な描写 Fate/Grand_Order マジンカイザーSKL ぐだ男 ぐだ子
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1
マシュ・キリエライトは困惑していた。
今日は最後のマスター候補生がやってくると聞いていたし、初のレイシフトがあることも聞いていた。その前に気を落ち着かせるべく散歩をしていたところ、カルデアの特権生物フォウに先導され辿り着いたところで、一組の男女が眠っているのを発見した。
清掃が行き届いているとはいえども、固く、皆土足で踏み荒らす床で眠るのは如何なものかと思い、起こそうと近寄った瞬間だった。
「誰よあんた」
オレンジ色の髪をサイドポニーにした少女に壁に押し付けられていた。寝ていた男女の片割れであることは直ぐに理解したが、壁に押し付けられるまでの行程が速すぎて、マシュが壁に押し付けられたと理解するのに数秒の時間を有したのだ。
所謂壁ドン状態、しかも両手を上で拘束され、首に手がかけられた状態でロマンスが発生するものなのか? しかも女性同士で。一瞬変な考えが頭をよぎったのは、まだ事態を飲み込んだ上で混乱しているからなのだろう。
「三度目は言わないわよ? あんた、誰?」
茶色の瞳から発せられる、拳銃の銃口にも似た鋭い視線に射抜かれ、マシュの口から小さく息が漏れた。圧迫される両手首と目の前の少女から発せられる威圧感と徐々に強くなっていく殺意にいよいよ恐怖が鎌首をもたげ始めた時だった。
「フォーウ! フォウフォウ!」
「んが? 寝てたのか俺? お、寝起きの飯にウサギとはなかなか乙なもんだぜ。立華! ナイフかせ! さっさと血ィ抜いて捌こうぜ!」
「ファーーーー!!?」
眠っていた男が起きたようだ。どうにもフォウを食うつもりらしい。
「あ、あの……フォウさんは食べ物ではありませんので」
マシュの声に気が付いたらしい男がこちらを見る。サファイア色の瞳は資料で見た刀剣のように鋭く、フォウを捕まえている腕は義手だろうか? 漆黒の金属が光を反射し、鈍く輝いていた。
「あ? 何だ嬢ちゃん? 立華は壁ドンなんかしてなにやってんだ? まさかマジでそっちの
立華と呼ばれた少女が、マシュの首を抑えていた素早く腕を振るうと何かが男の元へ飛ぶ。男は瞬きもせず、無造作にそれを掴んだ。コンバットナイフと呼ばれるそれは男の眉間に向かって投げられた。明確に殺すつもりで投げられたナイフに、マシュは血の気が引くのを感じた。
「冗談のつもりでも殺すわよ、立香」
「もう殺す気だったじゃねえかよ、危ねえな」
2
マシュ・キリエライトは驚愕していた。
カルデアにていろいろあって、マシュと立香たちは2004年の冬木市へとレイシフトしていた。その際色々な事情があり、マシュはデミ・サーヴァントと呼ばれる存在になったのだが、目の前の光景はそれらの出来事を上書きするには十分すぎる衝撃を持っていた。
「どけ、骸骨共ォ! 閻魔様に変わってあの世に叩き返してやらぁ!」
現代的なビル街を炎が照らす地獄さながらの光景の中、骸骨たちがひしめき合いながら襲い掛かってくる。しかし、そんな光景に恐れることもなく、むしろ嬉々として立香が日本刀を手に骸骨の集団を切り刻んでいき、時折義手が射出されて何体もの骸骨を穿つ。
「下がんなさい立香、あんたの闘い方はブサイクなのよ」
「あぁ!? んだこら立華ァ!」
「吠えんじゃないわよ、これからプロの
そういうと、マシュの傍に控えていた立華が懐から刃のついた
「さあ、どこを撃ち抜かれたいかしら? 5秒以内ならリクエストを受け付けるわよ」
そのまま骸骨の群れの中に身を躍らせ、骸骨が剣を振りかぶった瞬間にはその銃口が眉間を捕えていた。
「時間切れよ」
凄惨な笑みの後に、骸骨の頭が吹っ飛ぶ。その銃声を合図に、踊るように身体を翻しながら銃を撃ち始める。弾丸はどれも正確に骸骨を捉え、一分の無駄もなく撃ち込まれていく。
最初のマガジンが空になると、立華が跳んだ。美しく弧を描いた後方宙返りを決め、着地点の骸骨を踏み潰す。その両脇には頭にマガジンの刺さった骸骨。拳銃を叩き付けるようにマガジンを装填し、そのままの勢いで骸骨の頭を粉砕する。そのままの勢いで再び始まる乱舞がさらに骸骨たちを殲滅していく。やがて二つ目のマガジンすら撃ち切った立華は、熱を持った銃身を気にせず握りしめる。よくよく見れば立華の手には手袋が嵌められていた。マガジンの底に付けられた斧のような刃が炎に照らされて鋭く光る。
「まだよ!」
今度は刃を用いた近接格闘で次々と骸骨を切り刻み始めた。どこまでも洗練されたその乱舞は神々しささえマシュには感じられた。
「どおおりゃああああ!」
立華が深く屈んだ瞬間、立香がその背を踏み跳躍した。振り下ろされた刃は骸骨の骨盤までも両断し、返す刃で首を刎ねた。
「神に会うては神を斬り」
何かが降ってくる。それは銃のマガジンだった。跳躍の際に立香が放ったそれは寸分違わず下で構える立華の銃へ装填される。
「悪魔に会うては、その悪魔をも撃つ」
背中合わせの二人に骸骨が何体も飛びかかる。立華が撃ち落とし、立香が薙ぎ払う。
「戦いたいから戦い」
「潰したいから潰す」
立香が刀を構え、立華が狙いを定めた。
「俺/私たちに大義名分などないのさ!」
骸骨の群れを蹴散らしながら、二人はマシュの傍へと駆ける。盾を構えた少女の傍に二人の悪魔が、否―――
「俺/私たちが、『地獄』だ!」
―――地獄が並び立った。