そんな世界に転生したことを自覚した私がハッピーエンドを目指す。
ジャンプ+で全話無料公開されてたのをさっき読んだ勢いです。
面白かったです。
※原作のシュールギャグ的な要素は欠片もないがっつりシリアスです
原作のあの空気出せませんすごい
突然だが、ラブデスターという漫画を知っているだろうか。
2017年6月22日現在、ジャンプのスマホアプリのジャンプ+で全話無料公開をしているネット漫画のことである。
6月27日まで無料公開しているので知らない人は今すぐアプリをダウンロードして見て欲しい。
端的に本編の内容をまとめると、お互いを本当に愛している男女が相手に告白し、真実の愛だと認められたら二人とも脱出できるデスゲームものだ。
デスゲームと言うからには当然真実の愛だと認められなかった場合告白した人間は死ぬ。
告白されたから付き合うなんてことが当たり前な現代の恋愛観からするとなかなか厳しいゲームで、当然登場人物の多くは偽りの愛で身を滅ぼしていく。
真実の愛かなんて、告白した瞬間の一瞬の高まりしか判定せず言っているのだから本当にそれは真実なのか甚だ疑問に思うが、判定者が人の心を持たない人外なのだから仕方ないかもしれない。
さて、恋愛が中核にあるこの漫画でメインとなるのが主人公の若殿ミクニと幼なじみの皇城ジウ、愛月しのの3人の三角関係だ。
本編をお読みになられた方は解るだろうがこの三人の関係は、正直救いがない。
どこもかしこも一方通行で、辛うじて繋がっている線も真実が明るみに出たときどうなるか解らないものだ。
あくまでジャンプ+の漫画であるというメタな視点を持てばこの三人が死ぬことはほぼあり得ないことが解るが、当事者としてあの三角関係を見るといかに未来がないか解る。
奇数、男女混合、幼なじみの三大泥沼要素仕事しすぎである。
恐らく生徒の中で最も近くで見ている、月代学園生徒会会計の私が言うのだから間違いない。
そう私は今、月代学園(デスゲームの舞台)に物語の当事者としていた。
「……っ!」
塾が終わり家に着いて大量の参考書が沢山詰まった鞄を玄関に下ろしたとき目に入った、それ。
日曜日の朝にCMで宣伝していそうなチープな装飾のブレスレット。
朝見たときは無かったはずの異物がそこにあった。
ついに、このときが来たのだと解った。
私は月代学園に入り、内申のために入った生徒会のメンバーを見た瞬間に思い出した記憶のせいでずっと怯えてきた。
勉強し、受験し、大人になるという当たり前のように思っていた未来が全て消えて無くなる可能性に怯えて、でも誰にも言えなくて病んで、塞ぎ混んでいくだけだった。
そんな私を理由も聞かずに助けてくれた会長。
怯える私に根気強く話しかけてくれた優しいしの。
幼なじみ以外に興味がない素振りだったのに私の成績が落ち始めた時に勉強を教えてくれた皇城くん。
みんなみんな、感謝してる。
今目の前のブレスレットを無視したらきっと原作と同じようにみんな傷付いて、苦しんで、恋をする。
でも、今私がこのブレスレットを手に取れば未来は変わる……!
もう、覚悟は決まっていた。
「 !」
ブレスレットに手を伸ばした瞬間、世界が白く塗りつぶされ、私は被験者となった。
今最初の死人と偽りの愛による死人が出た。
制止の言葉空しく、あまりにあっけなく11人死んだ。
正直あまりにあっさりとことが進んだので現実味が無い。
女子たちはバラバラになるのが怖くて休めと言われてもなんとなく固まって行動していた。
みんな本質的に寂しいのだ。
同じ生徒会といっても、幼なじみ三人の中に割って入るのは無理なので私はざわつく生徒たちと行動を共にしていた。
「愛試死実験(ラブデスター)、か……」
独り言のつもりだったが、言語化できないざわつきの中思ったよりも目立ってしまった。
私の横に座り込んでいた子にも聞こえてしまったようだ。
「ねぇ、エイリ。私たち帰れる、よね……?」
「由香……」
同じクラスの由香は、ひきつった笑みを浮かべて震える声で言った。
由香につられてか、今作戦会議中の幼なじみ三人以外の唯一の生徒会ということで、藁にもすがる思いなのだろう。
微妙に距離を保ってうつむいていた女子たちが私の周りに集まってきた。
「帰りたいの……!」
「明日お祖母ちゃんの誕生日なのに」
「怖い……助けてよ」
「みんな……」
これが、集団の怖さ。
パニック寸前の女子達をひとまず納めなくてはならない。
「ねぇ、聞いてみんな」
じっとこちらを見る視線を感じる。
震える声を誤魔化して、一生懸命顔を作った。
「お腹、空かない?」
「何言ってんの!」
「ふざけないでよ!」
「ふざけてないよ」
これから約1ヶ月、ここで暮らさなくてはならないことを彼女たちは知らないのだ。
「今何か考えてもみんなショックと空腹でろくに考えられないよ」
とりあえず、体を休ませよう。
そしたら食べ物を探しにいこう。
ふさぎ込んでいたって何も未来は生まれないのだ。
でも、先に一つだけ釘を指しておこう。
「ねぇ。告白するのは、手を合わせる前に一度お互いの意思を確認してからにしよう」
じっとこちらを見る視線、視線、視線。
牽制かはたまたお節介か、疑っているのだろうか。
「佐藤くん達の死にかた見て思ったんだ。あんな一方的な告白じゃ自殺にしかならないって」
彼らの死にかたを思い出したのか、顔色が悪くなる子もいる。
「期間は1ヶ月ある。お願い。焦って急いで死なないで。本当にお互い愛し合ってるってみんなの前で信じて言えるような人とだけ告白してほしい」
皇城くんの女殺しは、みんなみんな一方的な好意の押し付けによるものだった。
焦りで視野が狭くなって、名前も認識されてないのに告白しにいった女子たちがどの子かは解らないけど少しでも被害が減るならきっとより良い未来があるはずだ。
「暗い話してごめんね。寝よっか」
少しでも良くなると良い。
そう願って一日目の夜は終わった。
二日目。
私は早速原作改変に成功した。
皇城くんの最初の被害を食い止めることが出来た。
皇城くんを取り囲む女子に間に合わないかと一瞬本当に焦った。
「皇城くん!彼女達の名前解る!?」
「本郷……!?……すまない、君たちの事が解らないんだ」
「そんな……!」
個人として認識すらされていなかった事にようやく気づいた彼女たちが立ちすくむなか、皇城くんから守るように彼女達を抱き締めて皇城くんには離れるようにアイコンタクトした。
私の意をくんで立ち去る皇城くんを横目に、失恋のショックと帰れないという絶望に涙する女の子を一生懸命慰めた。
皇城くんが完璧超人だったことが幸いした。
あまりに非現実的な存在だった皇城くんへの失恋は、比較的穏やかに収まった。
それより厄介だったのは帰れない焦りの方だ。
泣き声に混じるのが皇城くんの名前から家族の名前に変わった頃、ようやく告白自殺を止められたことに安心できた。
三日目。
初めてのカップルに、みんな帰還の希望を抱いた。
四日目。
皇城くんが死んだ。
「ど、どうして……!?」
泣き崩れるしの。
血が手から滴るほど握りしめているのにしのを慰める様子のない会長。
二人の間に微妙に横たわる冷たい距離に私は二度目の困惑を感じた。
もしかして、皇城くんは告白をしてしまったのか。
本編でも、あまりの脈のなさに告白したら絶対に死ぬなとは思っていたが終盤まで告白していなかったことから油断していた。
その原作知識から最初の女殺しを防いだと思ったら、まさか皇城くんが死ぬなんて思いもよらなかった。
「しの、ちょっと場所を変えよう」
思いでの詰まった生徒会室ではあまりに辛すぎる。
ほとんど力の入っていないしのをなんとか担ぎ上げ、生徒会室からほど近い準備室に連れ込んだ。
「…………エーちゃん……!私、私……!」
二人っきりになった瞬間、能面のように強ばっていたしのの表情が崩れた。
やはり、会長の近くにいるのが辛かったのだろう。
解っていても今皇城くんの話題を降るのはあまりに惨いことだった。
私にできるのは、黙って抱き締めて胸を貸してあげることだけだった。
「う、うわぁぁぁぁぁ」
子供のように大声をあげて泣きじゃくるしのは、あまりに痛々しかった。
五日目。
昨日、しのを抱き締めながら出来ることを考えた。
皇城くんの穴をどう埋めるのか、必死で考えた。
今、しのと会長の仲は微妙としか言えない。
それだけ、二人にとって皇城くんの存在は大きく、爪痕も大きい。
特に重症なのが会長だった。
原作では、前向きに前向きに行動していたが、それはあくまで大切な幼なじみ二人が無事だったからだ。
今最序盤でその幼なじみがもう一人に告白して死んでしまったことがどれだけ会長の心のキズになっていることだろう。
少し時間があれば、会長も立ち上がれたかもしれない。
でも、たった今、皇城くんの死に想い人を失った女子達のパニックを納めるのは今やるしかないことなのだ。
「ジウくんがなんで……!?」
「副会長のこと、好きだったのに……!」
「四日目に死んだのはジウくんだけだから」
「誰かがジウくんを振った!?」
こういう時、真っ先に矛先に上がるのは幼なじみのしのである。
彼らの仲の良さは少し見れば解るものだった。
だからこそ、告白相手を失ったショックが、しのに向かう。
「なんであんたなんが!!」
「幼なじみだからって無理やり言わせたんでしょ!?」
「ビッチが」
「最低!」
傷付いたしのに、言葉の刃は鋭すぎた。
「違う!」
一歩、前に出た。
こちらを振り向いた女子達の隙間から見えたしのは髪の毛を引っ張られたのか綺麗なポニーテールがほどけていた。
「皇城くんを振ったのは私」
驚きの声が上がる。
「生徒会でよく勉強を教えてもらったから、それで勘違いさせちゃったみたい。皇城くんのこと、嫌いじゃなかったけど、好きな人は別にいたから真実の愛にならなかったの……」
嘘だ。
私が庇ったことを知っているしのが口を開くのが見えたから思いっきり睨んだ。
私に睨まれたと勘違いしたしのの周りの女子が後ずさった。
「これがラブデスターだよ。自分はどんなに好きでも、相手からも好かれてるとは限らないって忘れないで」
そう言い捨ててその場を立ち去る。
しのの時と違って私に対して攻撃的にならないのは、私の性格がキツいからか、それとも私がそれなりに認められているからだろうか。
好きな人には振り向いてもらえなくても、そこそこ男子からしたらステータスになりそうな容姿だと自負している。
バストだってEは無いけど、ウエストが結構細目だから大きく見えるはず。
小学生から続けているプールの影響か髪の毛は染めてないけど明るい色をしているし、猫目ぎみだけどブスではないはずなので、総合的に見たらそこそこいい線行ってるんじゃないだろうか。
「バカみたい……」
全部意味ないのに。
とりあえずこれからのことについて考えなくてはならないのだ。
アイテムの位置を覚えていた皇城くんが居ないことによって、きっと沢山の変化がある。
そもそも死者が違いすぎてこれからのイベント全て変化があるだろう。
とりあえずはまず、会長を立ち直らせてしのとの仲を何とかしなくてはならない。
ハッピーエンドの為にやれることはやる、そう決めたのだから。
この後どうなるか
①若殿としのの恋を応援する(平和)
②私が生徒Aになる(地獄)
③ファウストルート(??)
の3パターン