立花くんのゾンビな日々   作:昼寝猫・

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「悪意というものは、他人の苦痛を目的とするものにあらずして、我々自身の享楽を目的とする」      
                  ~ニーチェ~『人間的な、あまりに人間的な』



Dirty deeds done dirt cheap

「っち!・・・最近ガッコたりー」

 

 背の低い痩せた少年がそう呟いた。

 

「そうだよな~、たけしのやつ腑抜けちゃってよー、マジ使えねえんだけど・・・」

 

 それに背の高い痩せた少年、村本健治がそう返した。

 

「あれ、お前この間までたけしくんとか言ってなかった?」

「あ?あんなやつ呼び捨てで上等っしょ!・・・てかお前もっしょ!」

「まあね~」

 

 自室でだらしなく寝そべりながら、つい最近まで取り入っていた人物の衰退に、下卑た嘲笑をする二人。顔には侮蔑と倦怠感、そして苛立ちが浮かんでいる。

 

 

「にしてももう毒島と宮本にちょっかい出すの無理じゃね?」

 

 しばらくたわいもない話を続けていた彼らだが、背の低い方の、芦狩勝児がそうぼやいた。

 

 その通り現実的ではない。

 

 廊下で言い争いをした事で、彼女たちは教育指導を受けそうになっていた。

 たとえ理由があろうとも、騒ぎを起こしてしまう事に、人間は本能的に忌避感を持っている。

 

 また本能的な話を別にしても、学校で騒ぎを起こした事で、被害者までもが怒られケースは稀ではない。それは不条理ではあっても、学校においてはおかしなことではない。

 なぜならば学校とは、騒ぎを起こさずに物事を解決する、すなわち社会性や組織統括力を教育する場でもあるからである。

 

 教育を受けた者に求められるのは、問題解決能力や円滑に物事を進める事であって、救済されることを待ち望む事ではないからだ。

 

 もちろん不条理を訴え、人を動かすことも問題解決能力だ。それに学校では不条理が許されているわけでもない。

 

 そもそもそのようなことが起こらない事こそが、学校側としても望ましいのだ。

 

 しかし集団である限り、自己と他者の摩擦は必ず発生する。特に未熟なもの同士が集まる集団であれば、それが大きく顕在化することもしばしばだ。

 

 学校とは社会に出た際、圧倒的理不尽に、少しでも耐えられるように理不尽先に経験させるための機関である。そのように捉えることもできるかもしれない。

 

 

 

「だよな~、センコー黙ってんのは予定通りだけど、向こうにまでだまっちゃうんだもんな~」

「な!マジ空気読めよ~」

 

 

 しかしこの二人は自分たちは、親が学校に多額の寄付をしているからそんな事にはならない、とふんでいた。

 呼び出されたとしても、はいはいと適当に言っておけばどうにかなる。

 

 

 そう、自分たちは理不尽を強いる側であるという無意識な自負。

 

 

 そして一方、冴子は剣術道場の娘でしかないし、麗に至っては公安の

いち捜査員の娘でしかない。そんな人間がどうにかできるほど、安い学校(・ ・ ・)ではない。

 故に加害者はお咎めなしで、被害者たちだけ怒られるというその理不尽を、彼らは期待していた。

 

 無力感にさいなまれ、抵抗する力も失っていき、屈辱に塗れた顔を、彼らは期待していたのだ。

 

 

 

 もちろん道場主の~だとか、公安の~だとかは意味も分かっていない二人だったが、大事なことはそこではない。二人の親は、娘を護れないという事さえわかっていれば結果は同じだからだ。

 

 そうすればあの綺麗で、手に入れれば宝石のように目立つだろう二人。

 

 その二人がいずれ自分のモノになると、大人ならざる純粋な物欲で、しかして権力者の子供としての傲慢さをもって、彼らは期待していたのだ。

 

 なぜなら彼ら二人はそのようにしてきた( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)と聞いて育ち、そのようにするものなのだと教えられて育ったのだから。

 

 

 

 だがその期待は裏切られた。

 

 いったいどのような手段を用いたのか彼らは理解できなかったが、毒島冴子も宮本麗も軽い口頭聴取だけで済んでしまうという形で裏切られたのだ。

 

 

 恐らく副校長が問題の顕在化を恐れて無かったこと(・ ・ ・・ ・ ・)にしたのだろう、そう彼らは判断した。

 それが彼らにとって、面白くなかった。

 

 まったくもって面白くなかった。

 

 

 学校は自分たちの思い通りに動かない。故にあの二人にはしばらく手を出せない。

 それは、同じことが起きても副校長はまた罰することはしないだろうし、あまり無茶をして思い切られても困るからだ。

 彼らの計画は水の泡と消えてしまったのだ。

 

 

「梅田空気よめ~!」

「だからハゲなんだよハゲ梅~!」

 

 

 寝転がったまま、二人は足を乱暴に振り回しドシドシと音を立てる。

 

 

 使用人に、『立場の低い人間に』育てられた彼らには、それがとてつもなく苦痛であった。

 

 ではすぐに手を出せないならどうするか?

 

 

 

 

   直接が無理なら、彼女たちの大切な物から壊してしまえばいい。

 

 

 

 

 この二人・・・この一家の常套手段である。

 

 

 

「なあ・・・じゃあやっぱりさ」

「あぁ、立花・・・だっけ?あいつしかないね」

「あいつマジちょーし乗ってるしね~」

 

「な、宮本と毒島に手出すとかまじちょーし乗ってるよね!」

「な、しめるしかないっしょ!・・・あの「めす共」の顔がまじ楽しみなんですけど!」

「じゃあいつものいっても?」

 

 

 彼らはテレビの有名なフレーズを声を合わせて叫ぶと、笑い転げた。

 

 しばらく笑い続けると、勝児がベッドの下からランドセルを乱暴に取り出し、中に入っていた携帯電話を取り出す。短縮ダイアルに入っている名前から一つの名前を選ぶと通話ボタンを押した。

 しばらくコール音がすると、不機嫌そうな男の声が聞こえてきた。

 

 

「あ、にいちゃん?今平気?あのさあのさ、すっげえ生意気なガキがいるんだけどさ!」

 

 電話の相手は勝児の近い方の兄だ。

 

 頭脳明晰と言うわけではないが、体つきが良く、黒いうわさが絶えない。

 とかく人を殴るのが好きな男で、最近ではボクシングジムにも通いだした。誰かを痛めつけたいときに、勝児はよく彼にいけにえ(・ ・ ・ ・)を捧げている。

 

「・・・そうそう、お願い!え、ほんと?ありがと~いま受験前でイライラしてるっしょ?もうみんなでぼっこぼこにしていいからさ~・・・・・・そうそうやっちゃってほしいんだよね!」

 

 

 その後もいつどこで、どんな相手か。

 

 悪意はどんどんと具体的にその形をあらわにしつつある。

 

 

 

 彼らの悪意に満ちた夜は更けていく。

 

 

 

 

 

 

 カーテンの閉められていない部屋で、窓ガラスに反射する、赤い光点がふと消えたことにも気が付かずに。

 




 遅くなって、すみません!
 北海道行ったり、卒論書いたりでてんやわんやでして・・・。おれ、なんでこんな論題にしたんだろう・・・(絶望のまなざし)


 今回はコバンザメ二人です。金魚のフン二人だと思ったら黒幕だったでござるというお話。
 ゲロ以下のにおいがプンプンしてくるように書こうと思ったのですが、どうですかね?個人的にこういう利益的じゃない、訳の分からん理由や、意味もなく相手を害することだけを目的とした悪意は大嫌いです。

 リアルの人物挙げると大問題になるのでやりませんが、デモンベインのティベリウスとかトキノ戦華の大道宗雲とか、バチュラのバッドルートのゲンハとかあまりの怒りに手まで震えましたね、ええ。


BGM
五月天 - Do you ever shine?
Macklemore & Ryan Lewis – Can’t hold us Feat. Ray Dalton
Tetsuya Shibata & Shawn McPherson – Devils never cry
Eminem – Mocking bird
– Lose your self
– 8miles



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