I’ve Sound - Mighty heart~ instrumental Ver. ~
John Murphy - In the House, Without a Heartbeat
「じゃあまた明日~」
「また明日ね~!」
学校から帰る別れ道、二人の少女が手を振って一緒に歩いていた少年に別れを告げる。
それは彼女たちが、他の誰にも見せないような笑顔。
宮本麗は顔をめいっぱい使って笑顔を作り、元気いっぱいに手を振った。はしゃぐ子犬のように全身を使い、花が咲かんばかりに幸せをあたりにふりまいている。
胸の高さで小さくに手を振る毒島冴子は、左の唇だけを上げた、少し大人びた少女の笑みを浮かべた。少し控えめに見えて、しかし目は心の底から幸せを感じていることが見て取れる
「あ、うん・・・じゃあまたね」
何度か言葉を選ぶように躊躇った後、ポツリと少年はそう返した。
最近あった出来事から、悲しみを乗り越えた二人の少女。彼女たちのいっそう煌めく笑顔に、少年はたじたじと、少し照れ気味にそう返すしかなかった。
少女たちはクスクスと、顔を合わせながら仲良く去っていく。
クスクスと、嬉しいようなそれでいて少し戸惑ってしまうような笑い声。
そんな笑い声は恐らく、彼女たちの別れ道まで続くのだろうと、容易に少年に想像させる。
最近とみに積極的な彼女たちの想い、それを察している少年は所在なさげにポリポリと頬を掻く。その目元はどことなくうれしそうにしわを寄せる。
少年は少し呆け気味に少女たちを見送っていたが、気を取り直し、少し人通りの少ない通りへと少年は歩き出した。
それを少し離れていたところで眺めていた人影が、音もなく無く集まりだす。
複数の人影が頷き合う。彼らは嫌らしくにやけそうになる口元を抑えると、少年に気取られないように人の間を縫うように追いかけ始めた。
ひとつ、ふたつとあたりから人の姿が減っていく。そしてひとつ、ふたつと影は、人気の少なくなっていく少年を追うように増えていく。
追われている事に気が付いた様子のない少年。その後を、ギラギラと悪意によどむ十二対の目がついていく。
集団下校から別れた後の帰り道という事もあり、あたりから下校する児童の姿もなくなり始めている。
さらに進んで行くと、やがて大人の姿すらまばらになってしまった。
少し歩けば人もいるようだが、工場のような施設もちらほらと見えている。あたりには低く機械の稼働音が響き、よほど大きな声で叫ばなければ誰も気が付かないかもしれない。
何も知らずに歩く、恥ずかしがっていた少年の頬からもそろそろ赤みが抜け、透徹とした白さが顔に見える。
そろそろだと頷き合う人影をよそに、何も知らない様子の少年はふいとどこかの建物の間を曲がった。
六つの影が建物の影になった暗いその路地をのぞき込むと、少し広めのその路地のだいぶ先に光が見えた。そこは誰も通らなそうな、資材しか置かれていない店裏の小道だった。
誰もいない事を確かめると六つの影は、悪意に満ちた笑みを浮かべながら、獲物を追い詰めたことを確信した。
「おい、そこのお前!」
一番背の高い影がそう声をかけた。
獲物の少年はその声に反応するように止まり、そしてまた歩き出した。
「おい、お前だよガキ!止まれよ!」
追いかけながらそう背の高い影が怒鳴りつけると、少年の足が早まる。
背の高い影、中学生が隣の仲間に目配せすると、待てよ!と声を荒げながら走り出した。
中学生と小学生では体格も違い、すぐに小道の中ほどで追いつかれた少年は、観念したように振り返った。
追い詰められてしまった少年・・・立花洋介は、壁に立てかけてあった細めの角材を背に囲まれてしまった。
洋介の顔は青く、恐怖によって無表情に固まっているように追い詰めた少年達・・・村本健治、芦刈勝児、芦刈の兄と取り巻きたちには見えた。
怒鳴りつけてまで追いかけた少年たちはしかし、一転してニヤニヤと嘲笑うばかりで、洋介に話しかけない。誰かを痛めつけるとき、彼らはいつも相手から話をさせた。
にやにやと不気味に笑う彼らに恐怖を抱き、引き攣った音を出す
「・・・いち年上の芦刈さん、と村本さんだよね?僕に何か用?」
「お前最近ちょーしこいてんだって?」
弟からそう聞いてるよ、と続ける芦刈の兄は背も高く、体つきもがっしりとしている。
「そんなつもりはないんですけどね」
「最近受験でイライラしててさ!正義?が下せてストレス解消になるならみんなが得するじゃん?」
へらへらと笑いながら周りに同意を求めると、周りも洋介をせせら笑った。
「・・・」
「何とか言えよ!ガキ!」
黙り込んだ洋介に、取り巻きの一人が怒鳴りつける。
彼らは話しかけてはいるが、洋介の答えなど求めてもいない。それでも話させるのは、屈辱を味あわせるためであり、いたぶるためであり、相手が会話するための内容を考えている間は逃げようとしないという理由からだけだった。
ゆえに、一方的言葉をぶつけて甚振る。なんでもいいから無理やり考え込ませる、ただそれだけのための言葉。
彼らは洋介の名前すら把握していない。ただただサンドバッグを殴りに来ているだけだった。
「・・・・・・・こんな屑のために・・・」
「あん?聞こえねえんだよ!もっとデケェ声でしゃべれよ」
空手で鍛えた体を脅すようにゆすりながら、どう甚振ろうか彼は考えていた。目の前にはかわいい顔をした小学生。
整った容姿の、利発そうな顔が特に彼の癇に障るのだった。
しかし、今その有望そうな小学生は自分の目の前で、顔を青くして立ち尽くしている。さぞ殴りがいのある事だろう。
目の前にいるのは、可愛げはないが血のつながった弟の献上品。こいつを死なない程度に殴って、それでも気が晴れなければ帰り道に適当に見つけて殴ればいい。
そう彼は考えていた。
どうせなにをやっても両親が
あの蔑んだ目でこちらを見て、溜息を一つして携帯を懐から取り出す。
どうしたらこれほど兄と違うのかと言いながら、脂ぎったお偉いさんとやらに電話をして
彼は自嘲と理不尽を強いる事に、鬱屈とした想いでもって酔いしれていた。
「じゃあ悪いんだけど、黙って殴られててね~」
そういいながら取り巻き共と取り囲んでいる輪を縮める。直接のかかわりがあるのは弟だけなのだが、弟はサンドバッグを前に何も言わない。
いつも通り、下卑た笑みを浮かべながら輪の外で見ている。うざいからしゃべるな、そういうだけで弟は反抗する気力もわかないらしい。
まぁ人を殴るのをビビってる腰抜けに、ほんの少しでも邪魔されたくないからちょうどよくはある。。
すこし脅しつけただけでびくびくと顔色をうかがう弟・・・サンドバッグが襤褸切れのようになって、飽きて捨て置かれてからようやっと言いたいことが言える小汚いガキ。
それでも足の先で小突くように蹴る事しかできない、女々しさ。
彼には弟がそういう他人の残飯を漁る、ハイエナのような生き物なのだと理解していた。
そう、お頭のいい長男と同じような性根の男。
自分でもよく分かってない事を、
本当は俺が怖いくせにアイツの背に隠れて俺を見下しやがって!俺は全国大会の準準優勝者だ!見ろ!こいつはあまりの恐怖で動けないじゃないか!
ぐるぐると腹の中で妬みとも、蔑みともわからないものが彼の中で渦巻いていき、やり場のない思いがどんどんとつのる。
いつかアイツも兄貴もぶん殴ってやる!
そう彼は
拳を鳴らしながら近づくと、ガキも一歩下がった。だがもう遅い、もう逃さねえ!
そう思いさらに歩を進めると、思いのほか低い声で目の前の小学生が言葉を口にした。
「ちょっと聞きたいんですけど、もしかして・・・僕の名前も知らなかったりしません?」
お前の名前など知ったことか!心底彼はそう思った。
「・・・あん?それがどうした」
「・・・あなたがリーダーですよね?瞬きの回数が極端に少ないし、僕の目を直視しながら話してる。取り巻きからも少し間を取られてるし、周りの人が貴方伺うように視線をさっきから送ってる・・・もしかして芦刈さんのお兄さんですか?」
訳の分からない事をしゃべる目の前の小学生に、彼は少し困惑した。瞬きだと視線だとかいったいなんなんだとは思いつつ、少し主導権を奪われた雰囲気に気が付いた。
彼は確かに名前を聞いた覚えはないなと思いながら、脅しつけるようにまた一歩近づく。
「あ~、別に知らないしだったとしても、今からボコられるだけの君には何の関係もないんだよね~」
「・・・目が右に泳いでから左上へ移動。手の威嚇動作も歩幅も遅くならない・・・」
「さっきから何言っちゃってんの?」
「なにこいつ。頭おかしいんじゃないですかね?」
「ようするに、嘘をついていない、ってことだね・・・」
ふと気が付くと彼も取り巻きも、暗い興奮が失せ、興が削がれていた。
それに気が付いたかれは、気を入れようと力強く一歩踏み出そうとして。
「そしてね・・・全く持ってお話にもならないってことだよ」
そしてその一歩が地面に着くよりも少し早く、そういうと立花洋介は手を振りおろした。
ガラガラという大きな音ともに立てかけてあった角材が倒れてきて、気が付くと身動きが取れなくなっていた。聞き覚えのある声でいくつもうめき声が上がり、体中が痛みを訴えている。
「やれやれ・・・ようやっと、まともに話が出来るね?」
底冷えのするような声、背負っていたランドセルを下ろし、布とペットボトルを取り出すような音。
何が起きたのかわからないままに、涙にかすむ視界であたりを見回すと、辺り一面に角材が散らばり、その間から手や足が突き出ている。そこでようやっと彼は、自分が立てかけてあった角材に押しつぶされているのだと気が付いた。
しかし、なぜ?俺はガキをぼこりに来てたのに、何で角材の下にいるのか?
混乱する頭で考えようとするが、ぐるぐると思考が渦を巻く。瞬きをして頭を整理しようとするが、自分が一体どんな格好をしているのかも把握できない。
「っひい!?」
急に腕が掴まれ、無理やり何かを握らされる。冷たい感触のそれを必死に振りほどこうとするが、万力で潰されるような力でもって手のひらを押しつぶされる。
しばらく握らされると、今度は無理やりにそれを奪われた。
「あ~あ~、ダメじゃないですか面白半分でこんな事しちゃあ・・・」
無くなった感触に体から強張りが少し抜けていったのを彼は、彼は希望のように感じた。
いったい何がと頭をひねると目の、本当に目の前の角材に何かが突き刺さる。息を飲みながらよく見てみると、それはオレンジ色のボックスカッターだった。
「だめじゃないですか~、刃物で遊んじゃ~」
まるで暗闇の中で海に突き落とされたかのような、唐突な冷たさが心と体を満たし、抑えようが無いほどにガタガタと体が震えだした。呼吸がどんどんと早くなるが、楽になるどころかどんどんと苦しくなっていく。
「自分たちで、
声が聞こえてくる。しかし目の前のカッターナイフから目が離せない。もし、もしあと五センチずれていたら・・・彼はそう茫然と気が付いた。ズボンに生暖かい感触が広がる。
「聞いてます?・・・僕としては別にひとりひとり、気が済むまでぶん殴っても良かったんだけどね・・・でもそれじゃあ、君ら何も学ばないでしょ?」
ぎゃあぁと痛みを訴える声がそこここから聞こえてくる。押しつぶされるような痛みと共に、今ナイフを突き立てていった
頭の上の方からカチカチという音が聞こえる。それは始め微かに聞こえる程度だったが、今ははっきりと聞こえるほどに大きい。
「これは持論なんだけどさ・・・人は躾ける時に、痛みが無いと学ばない生き物だと思うんだよね」
うめき声と、すすり泣くような声に、カチカチとあたりに響く音。先ほどまで生暖かったそれは、背中に広がり、今は凍えそうなほどに冷たい。
「ハヒュ・・・ヒ、ヒュ・・・」
そのどれもが不快で、どうしようもない激情と共に怒鳴り散らそうとする。しようとするが、喉が痛いほどにこわばり、喉を手で絞めつけられたような音しか漏らすことが出来ない。
「でさ、芦刈と村本さ」
唐突にかけられた声にビクリと震える。彼の心臓は痛いほどに鼓動し、頭はあまりの鼓動の速さに、ガンガンとハンマーで殴り続けているような音が響き渡り、目の前のカッターナイフから目が離せない。
「俺がさ、何が言いたいかわかるよね?」
ひゅー、ひゅーという音を出そうとして失敗したような、そんな音が聞こえてきた。
「そっか~、じゃあこれで噛みついたら痛いよってことは学んだね」
それに対して、そう軽く返されたのを聞いて、自分が言われたのではないと彼は気が付いた。
弟だ!すべては弟に向かっていたんだ!俺じゃあないんだ!
そう気が付つくと、いつの間にか止めていた息が抜けていくとともに、涙がぽろぽろと溢れ出して止まらない。
抑えるんだ!
あとは何もかもが終わってしまうまで、静かにしていればいい!そう、彼は自分に言い聞かせるように、自分を励ます。
目はとじない。
目を閉じたというそれだけで、何かをされるのではないか?冗談のような、そんな思考がどうしようもなく、彼にはリアルに感じ取れた。
そう、ほかには何も無いのだとばかりに目の前にある
恐怖だ!
心臓が張り裂けんばかりに彼は恐怖を感じているのだと気が付いた!
二度と、何があっても二度とこんなものには近づきたくないという恐怖が、彼のありとあらゆる思考を満たしている事に、彼は全身で感じ取っていた。
「じゃあこれで、二度と僕に近づこうと思わない事を学べたね、良かったね~」
ふざけた調子で聞こえてくる拍手。しかしその事に誰一人反感を持つものはいない。
一刻も早く過ぎ去ってほしい。この場にいる一人を除いて誰もがそう感じていることを、誰もが抑えることのできない震えでもって感じ取っていた。
もう一度、じゃあ、というその声を聞くまでは。
「てめえらみたいな屑が、どうやって呼吸をして生きていけばいいのか学ぼうか?」
その言葉と共に手が彼の頭に伸び、抵抗する間もなく口と鼻を覆うようにタオルが巻かれた。頭を振るが少しも緩んでくれない。
そして乱暴な手つきで無理やり、祈るように見つめていたカッターナイフから上を向かされる。タオルの上から、手がコンクリートの道に頭を押さえつける。
「まずはお前からだ」
路地を曲がった時と、周りを囲んで詰め寄った時と、変わらないほど真っ青な顔があった。
手に水の入った、天然水とラベルの張られたペットボトルを持っていた。その手に持つ水をちらり見て、それから見たその目は、彼を金縛りにあったように動けなくさせた。
その
「 耐えろ 」
そう鈴を転がすような声が耳に届くと、芦刈省二は顔にかかる冷たい水を感じた。
立花洋介のその瞳は、氷さえも凍てつかせる、極寒の業火を映していた。
その後、しばらくしてから木材を使おうと出てきた店の店員により、ズボンを濡らして座り込んだ小学生二人と、体中を上半身を濡らした、木材に埋もれた中学生らが発見される。
かれらはとても怖い体験をしたらしく、衰弱しており、自分たちの悪戯で木材を倒してしまったことを素直に認めた。
しかしながらボックスカッターは自分たちのモノではないとして、取り上げられるのをむしろ嬉しがっている様子であったことを、店員は不思議に思いつつも無視することにした。
心の底から反省している様子でもあり、衰弱もしていることから、彼らを自らの車で店員は送り届けることにした。
自分にもこのくらいやんちゃな頃があったなと、鼻歌交じりに運転する店員は、なぜ彼らが上半身だけが特に濡れているのかを疑問に思う事はなかった。
「怒りで真っ赤になる者は、怒りで真っ青になる者よりも怖くはない」
~デカルト~『情念論』
一応ゾンビものを読んでいるという事を、みなさん理解されているとは思っています。
しかし今回いつもより字が多いのは、
僕の作品は具体的に言えばこの続きくらいなら余裕で書いちゃうよという事です。
この辺りで続きを読むか、それともやめるかを決めていただければと思います。
性的なゴア表現(リョナ等)でもなけりゃあR18にゃあしませんぜ、旦那!
僕の基準は『デクスター』は性的興奮が混じってるからNG『CSI』は性的興奮が無いからOKくらいなもんです。あとはそんなもんじゃあないくらいのグロ。
それから立花君のような立場に陥った時、このような対応をするべきだといっているわけではありません、この話はフィクションであってリアルではありません!明言しておきます。
ですから天然水も完全にただの水ですし(何とは言わないけど、チョコレートに含まれてるあれとかちょっと混ぜた方が効くし)、木材はFRP材です。
実はケガ自体はかすり傷程度ですし、取り巻き立ちと芦刈省二が所属している空手道場や、担任の持つ出席簿等を盗み見て持病等が無いことを確認したうえで実行しています。
後遺症を残すようなものは、心的外傷以外ありません。
実際には絶対に行わない事!(ここ重要)
木材の保有者に迷惑をかけますからね!(爆)
本来はこの手のテクニックはボカすのが通例なのですが、ではなぜこの手法を書いたか。
それは「こんな事聞いたこともない人が、ゾンビもの好きなはずないから」です。
普通にドラマや映画で出ますからね、このテク。
グアンタナモ関係でニュースでも取りざたされてますから、NHK見てる人なら知ってておかしくないですし、おすし。
これで気分を害された方は、申し訳ないですが、そろそろ読むのをよされた方がいいです。
僕はこういう事も含めて、書いていきたいと思ってます。
ガン、エロ、グロ、バイオレンス。元の話が元の話だからしょうがないね(開き直り)
この話が僕とみなさんとの『分岐点』かと思います。
今年の初めより大流行しているエボラ出血熱によって命を落とされた方々に、謹んでお悔やみ申し上げます。
防護具すら不足しているなか、勇敢にも医療等に従事されている方々、無事を心からお祈りしております。
現在出血熱と闘病されている方々、一日も早い回復を願っております。
私の住んでいた国も近く、友達も多数おります。少しでも早く収束することを、心からお祈りします。