立花くんのゾンビな日々   作:昼寝猫・

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 年代的におかしなパーツなんかが出てきてます。後で直すかも・・・?

 興味の無い人はパパーっと読み飛ばしちゃって構いません!すみません、前から書いてたやりたかった事って、こういうのです!(あと次話)



 俺と同じくボッチの人、メリークリスマス!
 相手がいる人は、その人に祝ってもらってくださいww


Carol of the bells

 

 駐車錠前の日蔭で階段に腰かけていると、黒いSUVが一台入ってきた。FordのEscapeだ。

 見覚えのあるエスケープは僕の立っている、入り口の一番近くで止まると、中から三人の知り合いが出てきた。

 

「ミスタジェームス今日はよろしくお願いします」

「おう、銃が好きってガキは多いが、銃が好きで礼儀正しいガキは少ないからな!お前は大歓迎だよ、ボウズ」

 

 ワハハと豪快に笑う彼はリカの父親だ。

 

 

「ハーイ、洋介。手ぶらだけど何撃つの?」

 

「洋介ちゃん、ハイタ~ッチ!」

「ハーイリカ、イエーイ」

「イエ~イ」

 

 会話をぶった切る静香とハイタッチついでに、リカともハイタッチをする。リカと僕の付き合いで来た静香は、銃に全然興味が無いから先にご機嫌を取っておくのだ。興味ないながらも、最近リカのスポッターをやるのが楽しそうだが。

 

 リカも三回くらいハイタッチを求められてるが、遠い目をしつつ全部受けている。引っ張り込んだ自覚はあるのだろう。

 

「さては洋介、俺のスーパーカッチョいい銃に触ってみたいってところか?」

 

 ライフルケースを車から降ろしながら、ニヤニヤとするジェームスさん。

 タンカラーのカーゴに黒いポロシャツを着ている。多くの州でそうであるように、彼は刑事とSWATを兼任しているため、ごっつい体つきをしている。

 黒い短髪の髪にNOPD SOD(ニューオーリンズ警察特殊作戦課)と書かれたキャップを被っている。

 

 というかいいのかそのキャップ。僕の記憶が正しければSWATは身バレダメなんじゃないのか・・・?

 

 

 まぁリカも父親とお揃いの格好をしていて、二人ともキャップの上にオークリーのシューティンググラスを着けているから、たぶん帽子くらいじゃ誰も真に受けないのだろう。

 

 

 刑事のジェームス・ミナミ・・・そう、初対面の時の反応。どっかで覚えがあるなと思っていたが、俺の時にされた「被疑者を質問するときの警官の位置取り」そのまんまだったのだ。

 どうりで!という気もするし、自然にそんなことできるまで教え込んだ意義を問いただしたい気もする。しないけど。

 

 

 確かにマジモンのSWATの狙撃銃にも興味があるが、違う違うと軽く手を振って否定する。

 

「このガンレンジは父の会社の建物だから、僕の銃は既に中にあるんですよ」

 

 送ってくれた父は、出社したのでもういないが。

 

 

「あら、そう。私も貸してもらっていい?」

「・・・なんでもあんな、ホント」

 

 すこし興味ありげなリカと、肩を落とすジェームスさん。

 お前のとこのが来るまで成金は嫌いだったんだけどな~と、彼は肩を竦めた。

 

 最近できたばっかりだから、利用者でもオーナーなんて知らなくても無理はないけどね。

 社名出してないし。

 

 

 彼の感想に関しても、まぁ俺の頃なら同意見だが、何を隠そうオールザワイズメンが支部寄付しまくってからこの町、犯罪発生率が10%近く下がり、検挙率が30%近く増えたのだ。たぶん嫌いな奴は犯罪者くらいだろう。

 

 いや~、働き口はあんまり増やしてないから健全ではないけど、寄付物と特定のプログラムの推進だけで結構何とかなるもんだ。

 

 

「じゃあ、そろそろ行こうか?」

 

 建物に顔見知りの受付のお姉さんにメンバーズカードを見せると、僕たちはファミリースペースのレンジに入った。

 

 さて、今日は何を撃とうか!

 

 

 

 

 

 

 学校に通いだしてから、1年ほどが経った。

 

 

 思っていたよりも米国のいじめ問題は根が深いんだなぁと実感しつつも、何とか僕は学校になじみつつある。

 呆れるほど大きな家も、何があるかようやく把握しつつあるし、英語ベースの生活にも慣れつつある。何もかも順調に動き始めてはいるが、実は最初は結構危惧する部分もあった。

 

 というのも、日本時の多くは私立に通っているが、実は日系アメリカ人がいるという事を僕がすっかり忘れていたのだ。

 実際に見るまで忘れていたが、スクールカーストよりもよっぽどデカい問題だったというにもかかわらずだ。

 

 そのへんは流石人種のサラダボールと思いながらも、如何にもアメリカらしく、肌の色でグループ分けが、されていることが問題だったのだ。

 たかが小学校と思えどこれが中々にやっかいで、オタク(ナード)スポーツ系(ジョック)イケてる連中(ガーイズ)同士、日本でもある棲み分けでつるむほかに、人種ベースのつながりというのがあるのだ。

 

 

 すなわち上級生、下級生の垣根を越えて、親戚や付き合いのある家族の子供達の結びつきがとても、とても強い。

 

 

 だから下手に苛めが発生した時に、グループ間の闘争だけでなく、人種問題やグループ問題に発展し、超めんどくせーのだ。

 

 

 それを嫌が応にも実感させられたのは、登校し始めてから一週間目くらいだった。

 フランス系グループと日本人グループで「某有名ゲームの本家はどちらの国か」で喧嘩が始まった時だった。起きた時には不覚にも呆気にとられて、逃げる事も忘れてしまった。

 最終的にそれは学年問わずの大規模な乱闘になり、十人を超す停学者を出した。

 

 いやぁ、唖然としたね。だって理由が「ポケ○○」だぜ?

 多くはは発端なんて知りもせずに参加していたというのだから、驚きだ。

 

 

 何とか手を出さずに逃げ続けたというのに、その場にいたというだけで僕も処分されかけたのにはホント困った。駆け付けたリカと静香に弁明してもらい、何とか処分を免れたが、学校ってこんなにスリリングな場所だっただろうか?

 

 後々理解にではあるが助かった理由は、比較的大人しいイメージが強いらしい日本人であることと、アッパーステート(高級住宅街)に住んでいるという事もさいわしたようだが・・・ミスタジェームスが警官だったことが大きな役割を買っていた事が分かった。「問題を全然起こさない、警察官の娘が言うなら」みたいなもんだ。

 

 学校は社会の縮図だとは日本でも言われているが、これほど政治力が必要な団体だったんだなとつくづく学ばせられたよ、まったく。

 

 

  あ、ちなみに僕のコミュニティーはマジモンのガン&ナイフコミュだ。特性上人員は少な目だが、その分学外にコネクションが多い。

 リカやほかの上級生が大会にも出場しているため、影響力とかは微妙だが、地味に一目置かれているコミュニティーだ。

まぁそりゃあ、南部だから銃社会だし、銃大好きな常に銃やナイフ持ち歩いてるおっさんたちとコネがあればちょっとした不良なら怖がる。

 なんせ南部の銃好きというのは、店によっては平気で自分の強面のナイフでステーキとか切り出すのだ。

 

 始めてみた時はギョッとした。正直日本にいたら絶対に関わり合いになりたくない感じの人種だ・・・。

 

 それに銃好きな子供が影響力を持てば教師だって過剰反応しかねないから、こちらとしても変な事件は起こせない。

 

 

 

 

 なんにせよ、その縁あってリカと静香とも仲良く付き合いがある。正直リカと仲良くなったら、静香とも・・・と言った面もある。あの二人いつも一緒だからね。

 

 美人二人と仲がいいから、日系グループからはちょっと嫌われてるけどね。

 ・・・さしずめオタクの可愛い子に、非ヲタのイケメンが近づいたみたいな感じだろうか?他にもかわいい子いるんだからウチの界隈から取るな!的な・・・?

 

 

 

 僕の感覚としては、結構散財してるし、普通に金持ちしてるつもりだから、ちょっとくらい隔意を持たれるかな?と思っていたが「君といると楽しいし、金持ちっぽく鼻につかない」らしくそんな事は無かった。

 

 どの辺がプラスに働いたのか、未だによくわからないが、ジョエルさんも似たようなことを言っていたのでこのままのスタンスで構わないのだろう。謎だ。

 

 

 

 リカからは、派閥の取り込みなんかをそそのかされた時は、迷わず相談するよう言われた。なんでもリカの父親のジェームスさんが割と影響力の強い刑事で、日系コミュニティーの調停役のような人なのだそうだ。

 

 彼によると、えてしてアンダーグラウンドはヤンキー、族からヤクザへと、段々とつながりがあるらしい。一度入ったら中々抜け出せないといわれる由縁は、この辺りにあるのだろう。

 

 

 

 もちろん頻繁にこんな事に巻き込まれる人がいるわけではないが、いざとなったら結構本気でコネがモノを言う世界らしい。

 

 

 

     そんなこんなで、色々と学ばさせられる二月だった。

 

 

 

 悪いことをする気はないが、警察とは仲良くしておくべきなんだな~と実感した僕は、すぐに父に相談して色々とばら撒く事に決めた。

 

 

 まずニューオーリンズ警察宛で

パトカー10台

ハイエース5台

白バイ6台

タクティカルベスト150着

タクティカルベルト1000個

メディキット500個

ペッパースプレー1000個

ミル サンダー5  120丁

.410ショットシェルの非殺傷弾50000発

Glock21 50丁

M4 15丁

RemingtonM24sws  15丁

MP5 15丁

MP5K 5丁

Keltech KSG 40丁

非殺傷ショットシェル4000発

電気式閃光弾50個

シェアファイアーローマンフラッシュライト400

サーマルカメラ10台

暗視スコープ10台

化学防護服50着

遠心力分離機1台

薬物測定機1台

DNA測定器1台

携帯指紋照合機10台+ソフト

携帯臭気分析器5台

FAXコピー機30台

鑑識用カメラセット3台

薬物鑑定試薬セット500個

非常食500食

毛布200枚

 

 基本は、それだけではないけれど、警察のレスリーサルな質を全体的に上げる感じの寄付だ。

 非殺傷を選べる武器というのは結構知名度低いし、いざ導入するとなると抵抗が出るもの。なので、一方的に手段を増やさせたのだ。

 

 .410ショットシェルというのは45口径と円周がほぼ同一という、かなり小さめのショットシェルで、ハンドガンで撃ってもそこまで反動が強くない。

 そのためにリボルバーに詰めて使えるようにしてしまえ!というのがこのミル社のサンダー5だ。むろん開発元はレスリーサルとか考えていなかったが、未来知識で知っているので先取りしてしまった。

 

 というのも通常弾薬を非殺傷にするのはとんでもなく難しいが、ショットシェルなら割と簡単なのだ。

 バードショットくらいの小さい鉛玉なら、袋詰めにしてしまえばよほど当たり所が悪くなければ人は死なない。しかもリボルバーならショットガンほど嵩張らないので、現場の警官も使い勝手が良いという寸法だ。

 

 

 次に市に対して

消防車2台

はしご車1台

消火器500個

インパルス消火システム8個

救急車5台

簡易血圧測定器50個

体重測定器25台

音波測定器3台

薬物測定器3台

CTスキャナー一台

毛布3000枚

非常食1万食

組み立て式二段ベッド50個

中古図書8000冊

中古パソコン300台

 

 

 

 とそれからホームレスシェルター基金に15万ドル、職業支援基金に30万ドル、軽犯罪者職業支援プログラムに50万ドル、負傷警官支援基金に30万ドル募金した。市のチャリティーオークションでは50万ドル分の落札を行った。

 

 かなり無茶したかな~と思ったが、父親は良いことに使う分には全く問題ないとのこと。当たった宝くじが元手で、それをすべてチャリティーに使ったため、結構な節税になったらしい。

 アメリカの寄付をする金持ちには多いらしいが、税金でわけわからん使われ方するくらいなら!(寄付の総額で税金が減るため)という事らしい。

 流石金に困らん神様特典・・・。

 

 

 というかはしご車、測定器とかCTスキャナーって死ぬほど高いのな。

 

 

 市長も飛び上がって喜んでいたけれど、警察署長に至っては車両を見るなりモミ手ですり寄り、コンテナ二個に詰めた寄付物を見て父親に抱き付き、寄付金に気が付いてキスの嵐を降らしていた。

 

 40も後半に近いメタボリックの濃ゆい顔のおっさんに、サバ折りとデスキッスを頂いた時の親父の顔を、俺は一生忘れられないだろう。

 

 

 あ、Glock17(9ミリオート)じゃなくてGlock21(45口径)なのは、米国警官が基本的にフォーティーファイブ信者だからだよ。

 

 40S&W?聞こえんなぁ~・・・。

 

 

 

 

 

 

 現物ばっかりで目に見える形だったのもあって、現場の警官たちからもかなり支持を得た。特に5.11社のZeroG plate付きのタクティカルベルトは、腰にメチャクチャ優しいと好評だった。

 

 ややこしいがなんでも全米で、身に着ける道具の多さゆえに退職までに腰痛になる警察官が4割近いとかなんとかで、それを解消するために医者やカイロプラクティシャンと共同で開発したと持ち込まれたものを、パテント取って販売してる代物だとか。

 

 コンセプトは良いものだけれど、流石に子供用は無いので、僕は使っていない。

 

 

市の検挙率が上がったのは、 何よりもDNAや指紋照合がより早くされるようになったからだろう。これには本当に感謝された。

 

 

 そんなこんなで、立花家は地元に好意的に受け入れられている。

 

 おかげで警官の娘リカや医者の娘の静香とも、家族ぐるみで仲良くなったし、万々歳と言ったところじゃないかな!

 まあそのあいだに色々とあったが、それはまた別の話だ。

 

 

 

 

「で、今日は何を撃つつもりなの?」

 

 流石に自分自身の銃を持っているわけではないので、父親が射撃台の後ろにあるデカい作業台でセッティングをする間、暇だったリカが尋ねてきた。目がキラキラと輝いている。

 

 リカが銃を趣味にしていると聞いてから、何度か射撃に行った時に父が調子に乗って色々見せたことがあるからだろう。あの時の食いつきようは凄かった。

 

 苦笑しながら保管室に入り数ある中から自分用のと、彼女の好きそうなライフルを持ち出し、一丁彼女に渡した。

 

 

 

 

 この射撃場は他に何もなさそうな草地のど真ん中にあり、縦2.2キロあり横は200メートルほどある。社の持ち物とは言ったが、法律と経営がめんどくさいので新しくやりたい人に丸投げした、厳密には85%以上の出資者って感じだ。子会社だね、ようするに。

 

 縦が長いのは先に飛び過ぎた時に人がいると困るからで、ターゲット側には四メートル程の土壁がある。45度で撃つような馬鹿には対応できないが・・・その先は誰も来ないような草原しか広がっていないし、壁を超えるような撃ち方したら一発出禁になっている。

 弾着の確認やターゲット替え用に簡単な車道も用意されているので、誰かほかに使っている人がいる場合は注意が必要だがかなりいい設備なんじゃないだろうか?

 

 屋外射撃場の隣にはキリングハウス風の室内射撃場、とスリーガン風やその他イベントに使える広場があるしね。

 

 メインは入り口にある駐車場と白い受付兼管理事務所な建物と銃砲店以外、人避けのフェンスをグルーッとめぐらしただけの簡単なものだ。

 ちょっと安っぽく感じるが、38のゆったりとした射撃スペースにしっかりした屋根と柱という、スタンダードなものよりちょっと良い設備だ。

 

 よくある柱とフラットな屋根だけみたいな構造だが、仕切りもあるし冬場は寒いので、開いてるところはすべてシャッターを下ろせるようになっている・・・とはいえニューオーリンズは雪なんて滅多に降らないので、密封という感じではないが。

 

 50メートルまでならペーパーターゲットを、紐を使って移動させるリールも備え付けられている。

 またファミリー用の四つあるファミリースペースはソファーがあったり、射撃場からもはいれる銃砲店は中々の品ぞろえだ。ちなみに銃砲店の方にも頼んで、店のガンロッカーの一部を社人専用ガンロッカーとして使っちゃったりなんか・・・。

 まぁ、マニアな店主なので、銃は好きに使っていいよと言ったら、速オーケーを貰ったが。

 

 

 

 

 リカは渡した銃をすぐさま気に入ったようで、スコープを覗いたり、ボルトを開け閉めして感触を確かめている。

 女の子とゴツイ銃って・・・良いけど、リアルに見るとクルものがあるなぁ・・・。

 

 

 

「・・・おい、おいおいおい!

よく見たらそのボルトハンドル、トリガーにマズルってことは、それM24SWSか!?純正品が手に入るわけが・・・!?」

 

 

 自分のライフルを用意していたジェームスさんが、ふと娘に渡された銃を見てあわて始めた。

 

 しかし、一見してわかるとは流石だ。コアメカニズム以外ほとんど改造してあるのになんでわかるかな・・・刻印すらないぞ?

 

 思わず「秘密です」と音符でも付きそうな感じで返すと、頭を抱えてぶつぶつ言い始めた。

 

 

「馬鹿みたいにカスタムされまくってるけどそうだよな・・・・・・・・・そうか、寄付できるくらいなんだから、どうにか調達ぐらいできるよな・・・」

 

「?変なパパ」

「アハハ~、まぁ特殊な銃なのは確かだよね」

 

規制品だからね~。

 

 

 しかしぶつぶつ言いながらも手の止まらないところも、流石だ・・・。

 

 

 

 

「ねぇ、撃つなら早くしようよ~」

 

 静香はいい加減じれてきたようだ。今日はジーンズ地のワンピースなんて珍しいものを着ている。

 

「はいはい、じゃあ撃ってていい?」

 

「うん、これが弾だよ。僕でも撃てるように、かなりストック調整できるようにしてあるから、匐射がいいかも・・・あと反動強いからストックの間にこれ挟んでね?」

 

 二ミリほどのウレタンシートと7・62x51精密射撃用NATO規格 FMJBT弾(M118LR)を手渡すと、リカは静香の手を引き、射撃台脇のスペースにマットレスを敷きマガジンに弾を込めだした。

 

 これセミオート用じゃないとか言っているが、聞こえない振りをする。

 

 

 精密射撃弾とは文字通り、精密射撃用に通常の工場規格ではなく、通常のNATO弾よりも厳格な検査規格を求められた弾だ。作り方も違うわけで、その分お高くなるが弾のバラつき方が全然違う。

 もちろん職人のハンドメイドカスタムの専用狙撃用弾丸より精度は低いが、手間が省けるし僕はその精度の射撃技術は持っていないので、こちらで十分なのだ。

 

 

 FMJとは鉛の弾丸を鋼で完全に覆ってしまっている完全被甲弾の事で、貫通力を高めた弾丸規格の一つである。別にそんな物騒な弾丸が欲しかったわけではないが、サープラス・・・つまり軍、法執行機関用品の払下げを買い取ったのでこうなったのだ。

 ちなみに、BTはBoat Taleの略で、船尾のようにフットボール型じゃなく切り落としたみたいな形になっているという意味だ。

 この後ろの形一つで結構精度が変わるのだ。

 

 

 

 いや~しかし、父親がSWATのスナイパーという事もあって、ボルトアクションを好むとは思ってたけど・・・すごい目がギラついてるな・・・。

 よっぽど気に入ったようだ。自信作の一つではあるんだけどもね。

 

 

 込め終わったのか肩幅に両足を投げ出した形のプローン姿勢を取るリカ。流石に親仕込みとあって堂に入った構えだ。つま先も立っていない。

 

 そしてそのまま色々ギミックを調整しだした。

 静香は胡坐をかいて座り、三脚に乗せたレンズのついたデカいメガホンみたいな単眼鏡をのぞき込んでいる。

 

 中々面白そうなことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 リカの構えている銃だが、元はジェームスさんの言う通りM24SWSという銃だ。レミントンM700をベースにした軍用高性能狙撃銃で、一部警察などにも使われている。

 

 名前ももうそのまんまで、M24 Sniper Weapon System(狙撃兵器システム)である。

 販売元のレンミントン社は、付属するパッケージまるまる含めて一つのシステムであると豪語しているわけだ。

 

 

 元々高性能なM700をベースにしているとはいえ、言うだけあって相当優秀な銃である。がどうせだからもっと使いやすくしよう!と七十万ほどのこの銃を徹底的に改造したものがコレである。

 

 本体とストックのジョイント部分には折り畳み機能を着けて持ち運びを容易にし、ストックはMagpulPRSという強化ポリマー素材のものに変えた。丈夫で軽いうえにチークライザーやストックの長さの調節が効く優れものだ。

 このストックは下部にピカデニーレールが付いているので、そこにはAccushot社のモノポッドを着けた。このモノポッドは伸縮だけでなく、折り畳み機能が付いているため、砂袋をストックに当てるより早く調整が出来、無くしようが無いため持ち運びも楽なのだ。

 

 

 本体はそれほどいじらなかった。

 代わりに固定マガジンを廃止し、Surgeon社の、AI社のAICSマガジンを着けられる、マガジンシステムをところどころ削りながら着けた。

 元の銃は五発の固定マガジンしかなく、トップロード式だから若干使いにくかったのだ。まさかライフルで『ニューヨークリロード』するわけにもいかないしね。

 

グリップも取り外し可能にし、今はBCMGunfighter社のMod0グリップを着けてCQBにも対応させている。

 トリガーガードは手袋をはめても使えるよう、ぶった切ってから広く取り、かつ下に出っ張りを作りフィンガーレストとした。とげみたいな形になっている。

 トリガーは、特に変える必要性を感じなかったので純正のままだ。

 

 本体も必要部分はすべてアルミ合金だが、穴あきしまくり残りはポリマーにし、強度を確保しつつ極限まで軽量化を図ってある。

 

 

 銃身部分は当然、一体化したアッパーレシーバーではあるが、穴抜きしたアルミ合金フレームで20インチ銃身をフリーフロート化。上部はすべてピカデニーレール化してある。

 上にはカスタムオーダーして調整器と照準器に、距離目盛のついたMMil基準(メートルミル基準)にしたLeupold社 のLR Mk4スコープが載っており・・・それとMagupul社のMBUSオフセットサイトがついている。これはマグプル社には珍しく金属製のサイトだ。プラスチックのモノより小さくいところが気に入っている。

 

 またスコープにはDefence age社のACI/ACD MOUNT COMPLETE W水準器とクリアー光学のボタンコンパスを張っ着けてあるため、方位と銃の横と上下の傾きが分かるようになっており、観測手なしでも銃単体でもかなりの精密射撃が出来るようになっている。

 

 

 バイポッドはハリス社のHBRSという銃を傾けられるバイポッドに、同社のSLockという銃の傾き固定器具と、RBA-1という銃本体とバイポッドのジョイントを横方向に可動させられる器具が付いている。バイポッドの位置を変えずとも照準を横に振る事の出来るもためのものだ

 これにより、動いているものにも対応できる。そしてオフセットサイトを、バイポッドを着けた状態でも銃本体を傾けて、使用できるようにしているのだ。

 

 さらにこのバイポッドには固く締めるためのロックがついているから、移動時には可動して音を立てたりしない。

 射撃時にこそ必要なそのゆるみだが、持ち運びの時に鳴って相手に気が付かれないための配慮だ。

 

 

 スリングはMagpul社のMS4QDスリングを使っているので、銃にはストックとレールの先端とストック後ろにQDマウントが付いている。

 QDマウントはスリングと銃のジョイントが挿入式なため、特別なアタッチメントを着ける必要があるが、カチャカチャと耳障りな音を立てない。スリングの音が気になる人には必須といえるだろう。

 このスリングは一点スリングの他、二点スリングにもなる使い勝手の良いスリングだ。このスリングとストックの折り畳み機能を併用することで、室内でも取り回しの良い運用ができるので、『CQB対応長距離狙撃銃』という相反した特性を、この銃に持たせることが出来たのだ。

 ストックがある場合は体に引きつけるように、折りたたんだ場合は銃を突き出すようにして固定する。無論ボルトアクションライフルだから、連射性は低いが、それでもCQBに対応していれば運用の幅が広がる。

 

 

 レミントンMSRが発売されたり、アキュラシーインターナショナルのAICSがGen6(第六世代)くらいまで進めばベースをそこから始めても良かったが・・・MSRは当分先だし、現行AICSは七キロ近い上にライトや暗視スコープやQDスリングを着けようとすると、そこここに穴を空けまくらなければならない。

 

 

 そしてなによりも・・・重い!

 

 スコープ、バイポッド、マガジン無しで7キロ強とメチャクチャ重い!

 アルミ合金とポリマーを使いまくった今の銃は、弾丸も全部合わせて6キロにぎりぎり届かないといえば、どれほど違いがあるかがわかると思う。

 頑張っただけあって、満足の行く出来に仕上がった。コストパフォーマンスは・・・。

 

・・・・・・。

 

 

 

 

 ・・・・・・製作費は千万を超えたとだけ言っておこう・・・。

 

 

 

 

 

 いずれにせよ、使い方さえ知っていればとんでもなく懐の広い銃だが、わからなければどうにもしようがないものだ。リカはどうするのだろう?

 








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