新しく連載を始めるならこんな感じに書きたいなあとふと思い、書いてしまいました。文字数はあまり多くありません。
端本ちなみ/西野つかさ。
二人をヒロインにした二つの短いお話です。頭の中に浮かんだ設定をもとに書いていますが、分かりにくい所もあるかもしれませんが、ご容赦ください。



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最近更新が出来ていないのにこんなのを書いててごめんなさいm(。_。)m


ちいさなうそつき(仮)/夏の恋人(仮)

 繋がれた手の温もりを覚えてる。いつも手を引いてくれた、貴方の事がずっとーー

 

 

 通いなれた喫茶店。

 時代に取り残された古ぼけた店の割に珈琲が美味いこの店を、彼は気に入っている。

 きぃっときしむ扉を開くと心地よいベルが鳴り、いちばん奥の席には彼女がいた。

 真新しい紺のセーラー服を身に纏う、小柄でハニーブラウンの髪を内側へと巻いたピョンと立つ“アホ毛”と、彼を見て一瞬だけ覗かせた“八重歯”が特徴である少女、端本ちなみ。

 彼女は慣れた様子で珈琲を頼み、向かい側に座る彼を上目使いにこっそりと覗き見る。しかし彼はそんなちなみの様子には気が付く事はなく、いつも通りの穏やかな声でに尋ねた。

 

「待った? 」

 

「……んーーん、別に。さっきまでりょーくんとショッピングしてたし、今来た所だから」

 

 温くなったココアを飲みながら、彼女もまた感情を隠しながら答えた。すると彼は「そっか」と短く答えただけで、彼女の姿を見ることなく携帯を取り出し、何やら操作を行う。

 ちなみは先程の声のトーンのまま「彼女? 」と問い掛ける。すると彼は携帯を懐へしまい、ようやく彼女の方を見た。

 

「いや、さっき振られちゃってさ。まだ連絡先とか消してなかったから今消したんだ」

 

 運ばれてきた珈琲を一口飲み、彼はじっとちなみを見つめる。

 ちなみも慣れているらしく涼しげな笑みを浮かべ、見つめ返す。

 彼は言う。いつもの様に、言い慣れた言葉を。

 

「ちなみが年上だったら付き合うのになあ。絶対」

 

「……はいはい。どうせ“あたし”チビでお子ちゃまですよーーだ」

 

「ははは。そんなことは言って無いよ。ちなみは今のままで十分可愛いよ」

 

 何度も聞いた、可愛いって褒め言葉。そのはずなのに、ちなみは自分の顔を中心に、全身が熱を帯びていくような感覚を覚えた。

 現に彼女の顔はイチゴの様に真っ赤に染まり、目尻には僅かに涙が浮かんでいる。

 

「ちなみーー」

 

「今回は! 今回は、どうして振られたの? そういえばまだ聞いていなかったから」

 

 心配そうにしている彼の言葉を遮り、ちなみは分かりやすく話題を変える。彼は何かを言いたげにしながらも、「何でだろう。優しすぎるんだって、俺」と困ったように笑った。

 

「ふーーん。“あたし”にはぜーーんぜん、優しくないのにね」

 

「いやいやいや!! 大切に思ってるから、本当に! 」

 

 慌てるようにそんなことを言う彼を見て、ちなみはくすくすと笑う。分かっているのだ。彼が誰よりも優しいことを。

 

「だったらさ、“洋風特別ぱふぇ”食べたいなあ」

 

 いつものお願いをしてくる、小悪魔のように八重歯を覗かせながら可愛らしく笑みを浮かべるちなみに彼は慣れた様子で「一口食べさせろよ」なんて言って笑い、店主に声をかけた。

 

「毎回一口って言うけどさーー絶対、半分くらい食べてるよね」

 

「一人であの量は食えないだろ。ーーえ、食べれるの」

 

「ばっ、ばっかじゃないの!? あんな山みたいなパフェ一人で食べられるわけないでしょ! 」

 

「だ、だよなあ。びっくりした」

 

 言い終え、二人は息を合わせたように一緒に吹き出し、笑いあう。楽しそうに、幸せそうに。

 

 

「美味かったな」

 

「それはもう“あたし”が取っておいたイチゴを食べたんだから当然だよね」

 

「いや、いらないのかと思ったからでーー」

 

「ーー好きだもんね、い、ち、ご。取るかなあとは思ってたよ」

 

 くすくすと笑う彼女に、参ったなあと彼は残り少ない珈琲を飲み干した。ちなみも同様で、すっかり冷めたココアを飲み終え立ち上がる。

 

「そろそろ、行くね。“ちなみ”欲しいお財布があるからさーーっ」

 

 くるりと背を向け、ちなみはわざとらしい程に明るい声で言った。憂いを帯びた顔に、笑顔を張り付けるように笑いながら。

 彼がその小さな背中に「気を付けろよ。何かあったら俺が守るから」なんて言うと、ちなみの大きな真珠のように黒い眼から涙が溢れ出る。声は、頑張って出さなかった。泣いている所なんて、見せたく無かったからだ。

 

「それじゃあ、またな」

 

「……うん。またね、今日はありがとう」

 

 ちなみは振り返ること無く、店を後にする。

 ありがとうと言い残した彼女の姿が見えなくっても、彼は閉じられた扉をじっと見つめていた。

 店主の老人が新しく珈琲を淹れて持ってきてくれるまで。

 

 

 

 〈完〉

 

 

 

 

 

 

 

 灼熱の太陽は容赦なく地上を走り回っていた少年たちや、そんな彼らを応援する者達を照らし、穏やかな風すら吹かない事もあり全員が全員汗をかいていた。

 それは全校生徒の中でも屈指の美少女である西野つかさも、例外では無い。

 肩まで伸びた伸びる程に長いブロンドの前髪が汗でくっつく事も気にする事なく、彼女はピッチの上を走り回る小柄なーー周囲の大きな選手と比べるとーー少年をじっと見つめる。それも最善席で、祈るように両の手を胸の前で重ね合わせ。

 

「そこだーー!! シュートーー!」

 

 味方のパスが繋がり、相手ディフェンダーがマークをしていたにも関わらず、驚くべき速さで走り、あっという間にゴール前へとたどり着いた彼の足元へとボールが転がりこみーー西野は彼が足を振りボールを蹴る瞬間に叫んだ。小鳥のような可愛いらしい声で、歓声の間をすり抜けるように。

 

「ありがとつかさーー!!! 大好きつかさーー!!! 」

 

 ゴールを決めた少年は集まってきた味方の選手達に揉みくちゃにされながらも、するりと抜け出し両手を大きく振り跳びはねながら彼女の名前を連呼した。

 

「もうーーっばかっ」

 

 西野は隣に座っていた友人にからかわれながらも、ついついにやけてしまう口元を隠す事なく手を振り返した。すると周囲の男子生徒達を中心に大半の男子達が悔しげに彼にブーイングを始める。西野はたまらず立ち上がり、「そういうことは、禁止だよ! 」と腰に手を当て止めさせる所を彼は遠目に見ながら、再び仲間達に揉みくちゃにされるのだった。

 

 

 試合終了後。二人は部員達が帰った後の、汗と制汗剤の香りが混じった言い様の無い悪臭を放つサッカー部の部室の真ん中に置かれた、背もたれのないベンチに座っていた。二人とも制服姿で。

 

「大好きだよ」

 

 重なるくちびる。繋がれ、絡まる細く白い指。互いの熱が伝染し、指先までぽかぽかと温かくなる。

 唇が離れ、目を開くと彼女も目を開いてじっと俺を見ていた。

 俺も負けじと何も言わずにつかさの華奢で触れただけで壊れてしまいそうな身体を抱き寄せ、キメの細やかな白い頬にキスをする。

 

「ちょっとしょっぱい、かな」

 

「も、もうーーーーっ。仕方ない、でしょ!! 炎天下中、応援してたんだから」

 

「つかさの応援のおげで、勝てたもんね。本当に俺は幸せだなって思ったし」

 

 右の手は彼女の左手と繋いだまま、彼は西野の頬に手を当て首筋へとキスの雨を降らせる。

 西野は頬を紅潮させながらも、されるがまま「んっ…」と甘く悶えるように吐息を漏らし、くすぐったいのか身体を捩る。

 

「これからもずっと一緒にいようねーー」

 

「うんーー」

 

 額と額をくっつけて、二人の唇が重なる瞬間ーー「あの西野つかさが年下と付き合うとはな」なんて会話をする足音が二つ近付いて来て、通り過ぎて行った。

 

「ーーびっくりしたあ、ていうか、今の奴年下のチビとか言ってた」

 

「はいはい待とうね。良いじゃん、言いたい人には言わせておいてさ。あたしはゆうくんの、悠の全部が好きだから」

 

 立ち上がった彼の腕を引き、隣に座らせた西野は本日はじめて自分からキスをして、小さな子に言い聞かせるような優しく甘い口調で話して聞かせた。

 仕方ないと言わんばかりに、彼はそんな西野を強く抱き締め悪戯っ子の様に八重歯を覗かせ笑う。

 

「俺もつかさの全部が大好きだよ。」

 

「その笑顔、ずるいから禁止っ」

 

 紅潮した顔を彼の胸へと当てて隠しながら、つかさはぺちぺちと彼の腕を叩く。少年は嬉しそうに、西野の頭を撫でて、遠くで校舎の鐘が鳴るのを聞いているのだった。

 

 

 〈完〉

 

 


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