ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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少し間を開けた上に変な時間の投稿となってしまいました。第九十九話です、どうぞ!


第九十九話「衝撃の強敵」

「~♪」

 

マルセイユが501から帰った翌日の夕方、芳佳とリーネは夕食当番でキッチンに居た。芳佳は鼻歌を鳴らしながら鍋の中身をかき混ぜていた。

 

「いい香りだな」

「あ、シュミットさん」

 

そこへ、鍋の中のスープの香りに誘われてシュミットがキッチンへ現れ、芳佳が気づき声を掛けた。そしてシュミットはキッチン内に居る芳佳とリーネを見て、今日の料理当番を確認した。

 

「そうか、今日は二人が当番か」

「はい」

 

シュミットはそれに納得し、そして周辺を見る。キッチンの中は調理途中ではあったがまだ少しスペースが開いており、シュミットはそこを見つけると二人に問う。

 

「なあ、そのスペース使っていいか?」

「え?えっと…」

「いいですけど…」

「ありがとう」

 

そう言って、シュミットは食糧庫に向かっていく。二人は何を作るのかと思い顔を見合わせるが、しばらくしてシュミットが戻って来た。

代表して芳佳がシュミットに聞いた。

 

「何を作るんですか?」

「ん?久しぶりになにかデザートを作ろうかなって…」

「デザート!?」

「わっ!?ルッキーニ!?」

 

シュミットのデザートの発言を聞き、突然現れたのはルッキーニだった。ルッキーニが材料を持ってきたシュミットに後ろから思い切りダイブをしたためシュミットは思わずよろける。

 

「ねえねえシュミット、何を作るの?」

「…それは夕食の後のお楽しみだ」

 

そう言って、シュミットはルッキーニを剥がし、手に持っていた材料を空いているスペースに置いた。

 

「さて、作戦開始だ」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

その後時間は流れ、基地のウィッチ達が揃って食堂に集まって夕食は行われた。夕食には芳佳とリーネ作の料理が出され、ウィッチ達からの好評を貰っていた。

そして、先に食べ終わったシュミットが立ち上がった。

 

「ん?どうしたシュミット?」

「あっ、シュミットさんさっき食後にデザートを出すって言ってましたよ」

「へー、珍しいな」

 

芳佳の言葉にシャーリーは珍しいと言った。基本的にシュミットは自分からデザート系を作ることは稀であり、その時の気分次第で行うからだ。

 

「お待たせ」

 

そう言ってシュミットがキッチンから現れる。彼は人数分のお皿を乗せたお盆を抱えて、それぞれの席にその中の皿をひとつづつ並べていく。

 

「にゃ~!」

「ルッキーニそんなに楽しみにしてたのか?」

「うん!」

 

最初に置かれたルッキーニは皿の中身を見て目を輝かす。シュミットはそんなルッキーニの様子に少しビックリした様子で聞くとルッキーニが頷き返した。その間にも他のメンバーへとお皿を並べていく。

 

「あら、カイザーシュマーレン」

「カイザー…えっと」

「カイザーシュマーレンだ、宮藤」

 

名前を忘れた芳佳にバルクホルンが言う。カイザーシュマーレンはカールスラント組には馴染みのあるパンケーキデザートであった。

 

「ん~!おいしー!」

「そうか、それなら良かった」

 

ルッキーニの言葉にシュミットは満足そうに言う。

 

「そういえば、なんで急にこんなの作ったんダ?」

「ん?そうだな…」

 

純粋に疑問に思ったのかエイラが質問するが、シュミットは少し間を開けてから考え出す。

 

「…特に理由は無い、かな?」

 

そう言って、シュミットは全員に配り終えた後お盆を戻しにキッチンへと歩いていく。

 

「あれ?シュミットさんのは?」

「ん?無いよ?」

「えっ!?どうしてですか?」

 

リーネが疑問に思って聞くがシュミットはサラリと言うので今度は芳佳が驚いて聞く。他のメンバーも何故シュミットの分が無いのかと思い話を聞く。

しかし、シュミットは頬を掻きながら顔を赤くして言う。

 

「あー、その…分量を間違えてしまってね…」

 

そう言ってシュミットはキッチンにお盆を返した後、置いてあった水筒を手に持ってその足でドアに向かおうとする。これから格納庫に行って夜間哨戒の準備をするのだ。

 

「シュミットさん」

「ん?なんだ…い?」

 

シュミットがサーニャの横を通り過ぎて格納庫に行こうとした時、サーニャが呼び止めた。シュミットは何かと思い振り向き目線を座っているサーニャに向けた。そして、そこにある光景を見てシュミットは驚いた。

なんとサーニャがカイザーシュマーレンをフォークに乗せ、その下で空いている手を落ちないように添えていた。そして、シュミットの方を少し微笑みながら向いていたのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「~♪」

 

現在雲の上の空、夜間哨戒をしながらサーニャは唄っていた。その横ではシュミットが並んで飛行しているが、サーニャと違って顔を少し赤くしている。

どうしてシュミットは顔を赤くしているのか、それは先ほどの後の出来事によるものだつた。

あの後、シュミットはサーニャからカイザーシュマーレンを分けてもらったのだが、なんと皆が居る場で食べさせてもらったのだ。すなわち「あーん」をさせてもらったのだ。

その行動に見ていたエイラは驚きで口をパクパクし、されたシュミットは恥ずかしくなり顔を赤くしていた。いつものシュミットとサーニャのイメージからかけ離れた二人を見たウィッチーズは驚かされたのだった。

 

(なんだか、いつの間にかサーニャはたくましくなったなぁ)

 

シュミットがそんなことを思っていた時、サーニャが突然唄うのを止めてシュミットの方を向いた。

 

「シュミットさん」

「え?なに?」

 

シュミットは突然名前を呼ばれて一瞬驚きサーニャの方を向く。

 

「どうして、あのお菓子を作ったのですか?」

 

サーニャは質問した。それはエイラがした質問と同じ内容だった。しかし、サーニャはシュミットが特に理由もなくお菓子を作ることが無いと理解していたのだ。そのため、あの時シュミットが言ったことが何か答えをはぐらかしたと理解していたのだ。

その質問に対してシュミットはじっとサーニャの方を見る。そして、観念したように肩をすくめた。

 

「やっぱりサーニャにはかなわないかな…」

 

そう言ってシュミットは頬を掻く。彼は上手くごまかしたつもりでいたが、サーニャ(恋人)にはバレてしまっていた。しかし、そのことにシュミットは純粋に嬉しさを感じていた。

そして、シュミットは答えた。

 

「…もうすぐ2年だから」

「え?」

「もうすぐ、私がこの世界にやって来てサーニャが出会って二年になる」

 

そう、二年前の7月はシュミットがこの世界へ流れ着いた月だった。そして同時に、サーニャに出会った日でもあった。

 

「去年はゴタゴタしていてできなかったけど、今年はちゃんとやろうと思ってさ。大事な出会いのあった日だから、忘れるなんてできないから」

 

シュミットは静かに言った。しかし、サーニャの耳にはユニットのエンジン音に紛れるその声がしっかりと聞こえた。そして、その言葉にサーニャは頬を赤くして驚き、そして笑った。

 

「フフッ」

「え?」

「シュミットさんって結構ロマンチストなんですね」

 

サーニャは思わず笑った。そして、心の中で喜んだ。それは、シュミットの持つ意外な一面を見れたことに対する嬉しさだった。

そんなサーニャを見てシュミットは少し恥ずかしくなったのか赤くなる。だが、サーニャが笑っている姿を見て彼も心の中で嬉しかった。

その時だった。

 

「…っ!?」

「っ!」

 

突然、サーニャの頭の魔導針が一瞬だけピンク色へと変わった。それは警戒色に変わったことを意味しており、近くに(ネウロイ)が居ることを示すものであった。

しかし、ここで魔導針の警戒色は突然解かれる。いつもなら長く色を変えているはずなのに、僅か1秒にも満たない時間で解かれてしまった。その短さにシュミットが聞く。

 

「どうした?」

「反応が消えた…!」

「なにっ!?」

 

サーニャの不安げな言葉にシュミットは驚く。そして、どこからネウロイが現れてもいいように背負っていたMG151を構えた。しかし、ネウロイはどこからも現れなかった。

だが、サーニャは目を瞑ったまま魔導針で探索を行う。そして、シュミットに言った。

 

「…違う…反応がある…でも、弱い…」

「反応が弱い?」

「うん…」

 

反応が弱いという言葉にシュミットが反応する。それを聞いて、シュミットはネウロイは間違いなく何処かに居ると理解した。そして、念のためにゼロの領域を発動する。

 

(…何処だ…何処に居る?)

 

シュミットはサーニャ同様ネウロイを懸命に探る。そして、ついにその時がやって来た。

 

「っ!?サーニャ危ない!」

「えっ?きゃあ!」

 

シュミットはゼロの領域で見えた未来を見て目を見開いた。そして、横に居たサーニャを急いでその場から離れるように抱き寄せ、そして引っ張った。突然抱き寄せられたサーニャは驚き悲鳴を上げるが、次の光景を見てさらに驚かされた。

先ほどまでサーニャとシュミットの居た地点に赤い線が伸びた。それは雲の下から現れたものであり、紛れもなくネウロイの攻撃であった。

シュミットはサーニャに容体を聞く。

 

「大丈夫か、サーニャ!?」

「は、はい!」

(くそっ、ゼロの領域に居て正解だった…!)

 

シュミットは心の中でそう思った。彼の未来では突然現れた攻撃に回避できずに被弾をする姿が映った。慌てて行った行動は功を奏したのだ。

そして抱いていたサーニャを放すと今度は雲に向けてMG151を向けた。

 

「出てこい!」

 

そう言ってシュミットは引き金を引いた。強化を使って放たれた弾丸は勢いよく雲の中へ刺さっていく。

そして、その中の数発が雲の中で命中したという合図を出した。雲の内部で被弾した音をしたのだ。

 

「そこか!」

 

シュミットは音のした方向へ照準を合わせ弾丸を放つ。すると、先ほど以上の手ごたえを示した。

 

「っ!ネウロイが上昇します!」

 

サーニャもネウロイを正確に捉え、すぐさまシュミットに報告をする。

その言葉の通り、雲から徐々に黒い物体が姿を現して来た。その形状はまるで矢じりのようであり、規模は中型であった。

しかし、サーニャの魔導針は未だに反応が弱かった。それはこのネウロイの形状がレーダーの電波を殆ど跳ね返さない構造をしてるからであるが、その事実をシュミットとサーニャは知らなかった。

 

「サーニャ、援護を頼む!」

「はい!」

 

シュミットはサーニャに指示をしてネウロイに突撃を加えた。サーニャもそのシュミットの言葉に返事をしフリーガーハマーを構えた。

シュミットとサーニャの姿を見て、ネウロイも攻撃を加えていく。しかし、シュミットはゼロの領域に入っているためネウロイの攻撃が何処に来るかを分かっており全て回避をしていく。そしてシュミットが殆どの攻撃を請け負っているためサーニャも回避しやすくなっている。このスタイルが、この二人のロッテにおける基本戦術と最近ではなっていた。

そしてシュミットは攻撃を掻い潜りながらネウロイに反撃を行い、そして一撃離脱でネウロイを通り過ぎて行く。ネウロイは攻撃をしたシュミットに反撃とばかりに攻撃をしようとするが、今度はサーニャのフリーがハマーによってその体を大きく削られる。

 

「こちらシュミット、501聞こえるか!」

『こちら501基地、リーフェンシュタール大尉どうしました?』

「ネウロイ発見!現在交戦中!」

 

シュミットはネウロイが怯んでいる今の間に急いで緊急報告を501に向けて言う。しかし、インカムの向こう側に居た索敵班の人間は信じられないといった様子で応えた。

 

『何ですって!?こちらには何も映っていません!』

「恐らくレーダーに映らないネウロイです!早く基地のウィッチに知らせてください!」

『わ、わかりました!』

 

シュミットの言葉に索敵兵は慌てた様子で動き出した。これで基地の方では警報が鳴り、ウィッチ達が数分後に到着することになる。

しかし、シュミットはそれまでの間にこのネウロイは片付けなければいけないと本能的に感じていた。それはこのネウロイの特性を理解したからだった。

 

(もし索敵班の言葉が本当なら、このネウロイはレーダーに映らない。取り逃がしたら厄介だ)

 

シュミットは再びネウロイに向けて武器を構え引き金を引く。先ほどまでサーニャに気を取られていたネウロイは疎かにしていた下方から強力な攻撃を受けたために怯む。

そして、シュミットは急上昇をしてネウロイの真上に来ると、こんどは雨のように機関砲弾をばら撒いた。凄まじい攻撃を受けたネウロイはその表面を大きく削られ、そしてその右翼の部分から赤いコアを露出させた。

 

「コア発見!サーニャ!」

「はい!」

 

シュミットとサーニャは露出したコアに向けて引き金を引いた。シュミットの弾丸が真っ先にコアに到達しコアを破壊、その後にサーニャのフリーガーハマーの爆風によって原型をとどめないままにコアは爆発四散する。

 

「よし!」

「やった!」

 

二人は思わずそう声に漏らした。しかし、ここで衝撃的な光景を二人は見ることになった。

 

「えっ!?」

「な!?」

 

コアを完全に吹き飛ばしたはずのネウロイは、どういう訳かその形を保っている。それどころか、()()()()()()()()()()()が徐々にその姿を修復させてきているではないか。

 

「バカな!?完全にコアは破壊したはず!」

 

シュミットはありえないと叫んだ。例えこのネウロイが、以前ペテルブルクで出会った真コアを持つネウロイであったとしても、先ほどの攻撃では真コアもろとも完全に破壊できるものであった。しかし、このネウロイはそんなものお構いなしにコアを修復させていくでは無いか。

シュミットはもう一度コアに向けて機関砲弾をお見舞いする。今度もまた弾丸は修復中のコアに飛来して行き、コアを粉砕する。しかし、先ほど同様コアは徐々にその姿を戻していく。

 

「くそっ、皆が来て一斉に叩くしかないか…サーニャ、ネウロイの注意を引き付ける!援護してくれ!」

「はい!」

 

シュミットはサーニャに指示をし、そしてネウロイに向かっていった。このままでは弾薬を無駄に消費するばかりであり、ネウロイに対して有効ではない。ならばウィッチーズの総力を挙げてこのネウロイを叩くしかない。その為に到着までシュミットは囮となる道を選んだ。

そして、シュミットは再びネウロイを攻撃していく。こんどはコアの部分だけでなく、全体的にネウロイの体に向けて弾丸をお見舞いしていく。シュミットの放った弾丸はネウロイの体広範囲に着弾していく。

そして、被弾した爆煙が晴れると、そこにはシュミットとサーニャの度肝を抜く衝撃的な光景があった。

 

「なにっ!?」

「うそっ…!」

 

右翼側には先ほどのコアがその装甲に姿を消そうとしていた。それとは反対の左翼側に、()()()()()()()が顔を出していたのだ。

 

「コアが二つだと!?」

 

シュミットはその光景に思わず空中で立ち止まってしまい、攻撃の手を緩めてしまった。その一瞬をネウロイは逃すまいと、シュミットとサーニャにに向けて攻撃をする。

すぐさまシールドを張る二人であったが、ネウロイは二人に攻撃をしながら今度はその体を雲の中へと沈め始めた。

 

「待てっ!くっ…!」

 

シュミットは行かせまいと叫ぶが、ネウロイは自分の体が消えるまで二人に対して攻撃の手を緩めなかった。その為攻撃に回ることができない二人はシールドの向こう側で二つのコアを見せながら雲の中へ逃げようとするネウロイを見ることしかできなくなってしまった。

そして、ついにネウロイは雲の中へ入り、二人の視界から完全に消滅した。

 

「サーニャ!位置は!?」

「…駄目、反応ロスト…しました…」

 

シュミットはすぐさまサーニャの魔導針を頼るが、サーニャの魔導針は雲の中へ逃げたネウロイの姿を捉えることができなかった。完全にネウロイは二人の前から離脱に成功したのだった。




う~ん、ちょっと甘かったかもしれないですね(渋い緑茶を飲みながら)
そしてステルス性と二つのコアを持つネウロイの登場です。二人は一体どうやってこのネウロイを攻略していくのか!?
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!
※補足でカイザーシュマーレンはオーストリアの料理ですが、バイエルン地方でも人気があったります。(シュミットはハンブルク出身ですがそこはご愛敬ということで)
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