「サーニャっ!!」
「シュミットさん!!」
エイラと芳佳は、爆風に飲み込まれた二人の名前を叫んだ。その間にも、ネウロイは離脱を図ろうと移動を開始しようとしていた。その時だった。
ダダダダダンッ!という音が、煙の中から聞こえると、ネウロイに向けて何かが飛来していく。それは弾丸であり、ネウロイは離脱を使用としていた最中に撃たれ、悲鳴を上げた。
二人は何が起こったのかと思い、思わず煙の立ち込めている方向を見た。立ち込めていた煙は風によって流され、そこから現れたのは、サーニャを庇いながら片手でMG42を構えているシュミットの姿が現れた。
ネウロイは、攻撃を加えたシュミットの姿を確認すると、ビーム攻撃を放った。しかし、事前にシュミットはシールドを張ってそれを防ぐと、エイラと芳佳に言った。
「二人とも、時間を稼いでくれ!」
「な…」
「早く!!」
「わ、分かっタ!」
シュミットの大声に、今まで固まってしまっていた二人はすぐさまネウロイに対して臨戦態勢を整え、そして攻撃に向かった。
二人が攻撃に向かったことにより、ネウロイはシュミットだけに対応することをやめ、二人に対して攻撃を加え始めた。
「無事か、サーニャ?」
そして、シュミットは後ろに庇っていたサーニャのほうを向く。サーニャは目をつむっていたが、シュミットの声に反応して目を開け、彼の顔を見る。
「はい…血が!」
「ん?」
サーニャの声に気づき、シュミットは顔のヒリヒリと痛む個所を触れる。彼の体は煙によって黒く煤けていたが、傷の残っていた彼の左頬には真っ赤な血が垂れていた。
しかし、手に一日をジャケットで拭い取ると、サーニャに行った。
「かすり傷だ。この程度どうということはない…それより、サーニャのほうは大丈夫か?」
「は、はい。シュミットさんのおかげです」
「そうか」
そう言って、シュミットはサーニャを見る。サーニャもシュミットほどではないが、爆発の煙によって特徴的な銀の髪にも黒い煤がかかっていた。しかし、外傷らしきものは見当たらなかったため彼は安心した。
「サーニャ、これを使ってくれ」
シュミットは、重量から弾丸がまだ残っているほうのMG42をサーニャに差し出した。サーニャはそれを受け取った。
彼は、武器を失ったサーニャに少なくとも自衛の手段がなければいけないと考え、間に合わせでMG42を一丁渡したのだ。
「フリーガーハマーとは完全にものが変わるが、武器がないよりマシだ。だが、あまり前衛には…」
「大丈夫です、シュミットさん」
シュミットの言葉を遮って、サーニャは口を開いた。その言葉にシュミットはビックリしてサーニャを見る。
「だが、突然機関銃に持ち替えて対応できるかい?サーニャは基本フリーガーハマーを使うじゃないか」
「使えます」
またも、シュミットの言葉にサーニャは返す。
「たとえ別の武器でも、しっかりと戦えるように訓練をしてきましたから。それに…」
サーニャはそう言って、シュミットの目をしっかりと見て宣言した。
「怪我をしたシュミットさんをほっといて、後ろから戦うことはできません」
その言葉を聞いて、シュミットはサーニャの目をじっと見返す。そして、その瞳に宿る曇りの無い眼を見て、その言葉が本心から来ているものであると理解し、頷き返した。
「…分かった。サーニャの言葉を私は信じる」
そう言って、サーニャの言葉を呑んだ。サーニャは一瞬安堵した顔をするが、シュミットが「ただし」と言った言葉に再び彼の顔を見た。
「…サーニャも、私のことを信じてくれ」
「え?」
「たとえ怪我をしても、私は絶対に生きて帰ってくる。サーニャに心配をさせたくないからね」
シュミットはそう言って、サーニャに向けて言った。シュミットは、自分を見るサーニャの目が、僅かに血が流れている頬を気にしているのをみて、不安に思っていると考えた。その為、サーニャに不安にさせることをさせてはいけないと考え、咄嗟にそう言ったのだ。
その言葉に、サーニャはハッとして僅かに頬を赤く染めて頷く。が、すぐさま目の前のネウロイに対して気を引き締め直した。シュミットも同様に、武器を構えてネウロイの方向へ向いた。
その頃、ネウロイと戦闘を繰り広げていたエイラと芳佳は、苦戦を強いられていた。
「この…落ちろ!」
エイラが叫びながら攻撃をするが、ネウロイは二人に対して反撃を行う余裕があった。もともと四人で戦っていた分が半分になるのだ。ネウロイからすれば幸運であり、ウィッチたちからすれば不運である。
戦闘が長引けば長引くほど、人間には疲労が蓄積されていく。それはどのようなことでも同じであり、永遠と動き続けることなどできないのだ。そのため、二人の動きは徐々に低下していった。
「くっそー…」
エイラはネウロイに対して睨んだその時だった。突然、ネウロイがエイラや芳佳とは違う方向から攻撃を受けたのだ。攻撃を受け、ネウロイは悲鳴を上げて逃げ出すが、二人は攻撃の来た方向を向いた。
二人の向いた先には、頬から血を流しながら機関銃を構えているシュミットと、彼の機関銃を構えているサーニャが並んで飛行している姿があった。銃口から煙が出ていることから、撃ったのはシュミットのようだ。
「サーニャ!」
「シュミットさん!大丈夫ですか!?」
「ありがとうエイラ」
「大丈夫だ宮藤、かすり傷程度だ…だが、後で治療を頼む」
二人は無線から聞こえた落ち着いた声に一旦安堵した。
しかし、ネウロイはまだ健在している。回復をしたネウロイは攻撃を仕掛けたシュミット達の方向へ反撃を開始する。
「ここで必ずネウロイを倒すぞ。エイラ、サーニャと共に左側のコアを攻撃」
「おっけーい!」
「宮藤、お前は私と一緒に右のコアだ」
「はい!」
シュミットは回避をしながらエイラ達に指示を出す。事前に決めた取り決めだが、一度混乱した現在もう一度仕切り直す形で言った。
「よし、行こう」
「はい」
そして、シュミットとサーニャは散開して降下をする。その動きはまるで示し合わせたかのように、左右に同じような軌道を取りながらであった。
ネウロイは四人に対して攻撃をする。しかし、シュミット達は難なく回避をし、ネウロイの下部へと潜り込み、そして攻撃を叩き込んでいく。しかし、いくら下部の攻撃が薄いと言ってもネウロイからの反撃が無いわけではなく、ネウロイは4人に妨害を加えていく。
「喰らえ!」
「えいっ!」
エイラと芳佳は、シュミット達だ来るまでの間に戦っていた分僅かに疲弊していた。その為、二人は懸命にタイミングを合わせて攻撃を行っているが、ネウロイの攻撃なども相まって僅かなズレを生んでいた。
しかし、サーニャはこの状況で、いつもとは違うものを感じていた。
(軽い?)
サーニャは内心、自分の動きの迷いの無さを感じていた。いつもの動きよりも激しく、そして限界を攻めるような動きとなっている。しかし、今回はそれでも迷いを感じることは無かった。むしろ、次にどう動くかのイメージさえもしっかりしていた。
(――いいえ、違う。この感じは…)
同じように、シュミットも自然と体が動き、思考がスッキリとしていた。
(…なんだろう)
彼は短く、そう思った。ネウロイを避けながら攻撃するのに、自然と時間はゆっくりと流れているように感じ、それはゼロの領域とは別の感覚であった。
(悪くない。いや、むしろ…)
知らず知らずのうちに、シュミットはサーニャの方向を向いていた。サーニャも、同じようにシュミットの方に目を合わせる。そして、二人はこの感覚を理解した。
(――そう)
(――なるほど。だから、こんなに心地がいいんだな)
ネウロイの抵抗は、シュミット達より長い時間戦闘をしていたエイラや芳佳への負担を徐々に上げていた。そしてそれは、人間だけにはとどまらなかった。
「あれ!?」
芳佳の持っていた機関銃が突然「ガチッ」といった音を立てて弾を出さなくなってしまった。芳佳は引き金を何回も引くが、やはり弾が出ることは無かった。芳佳の機関銃は弾詰まりを起こしてしまったのだ。
まず異変に気付いたのは、サーニャ側にいたエイラだった。
「どうした宮藤?」
「エイラさん、機関銃から弾が出ません!」
「ナンだって!?」
芳佳の言葉を聞いてエイラは衝撃を受ける。そして、すぐさまインカムでシュミットに話しかけた。
「シュミットっと、宮藤のヤツ弾詰まりしたゾ!」
エイラは、シュミットが芳佳の言葉に反応していないことに気づき、回避をしながらもインカムで伝える。しかし、その向こう側から返答の声は無かった。
エイラはシュミットが反応しないので疑問に思った。次の瞬間だった。
「…?お、おいシュミット!?なっ、サーニャ!?」
シュミットは、ネウロイに向けて突然突っ込んだ。それだけではない、サーニャもシュミットと同じようにネウロイに向けて突撃をし出したのだ。そして、二人共エイラの言葉にまるで反応していなかった。
「サーニャちゃん!?シュミットさん!」
芳佳も二人の異変に気付く。しかし、二人は止まることなくネウロイに向けて全く同じタイミングで引き金を引いた。そして、飛んでいった弾丸はそれぞれ鏡に映したかのようにネウロイの左右中央部に命中する。
ネウロイは、同時攻撃を仕掛けたシュミットとサーニャに対してお返しとばかりに攻撃を集中させる。しかし、二人はまるで示し合わせたかのように左右に同じような軌道を描きながら回避をし、そして再び同時に攻撃をする。
その光景に、二人は立ち止まってしまった。
「す、凄い…」
「…あぁ」
攻撃する手段を失った芳佳は防御中心の体制に移ろうとしていたが、目の前で行われている光景に思わず声を漏らす。エイラも、二人の息の合った連携技に芳佳に同意する。
二人が見とれているそれは、ある意味異質であった。今まで見てきたウィッチは、連携をする掛け声やアイコンタクトなどの合図をし、合図なしの場合は若干の遅れが生じるものであった。しかし、今回のそれは違った。二人は
そして、エイラはその状況で自分のできることを考え、そして二人の援護に回っていた。この状況でエイラは、自身がネウロイの注意を逸らし、シュミットとサーニャの負担を減らしに向かったのだ。
それと同時に、エイラは二人の様子も観察していた。
(ま、全く同じ動き…なんなんだ、コレ?)
エイラは、この二人の動きを見て衝撃を受けた。只連携も物凄く上手いだけではなかった。それはもはや鏡写しに近いレベルで連携を取っているのだ。ここまで行う連携など、エイラは今まで501の隊員を含めて見たことが無かった。
その間にも、二人はネウロイのコアが存在する場所へ連携して攻撃を加えていく。そして、ついに物語は終盤へと向かった。
「コアだ!」
同時攻撃により、ネウロイの二つのコアがある位置の表面は大きく剥がされ、そこに真っ赤なコアが二つ露出する。それと同時に、ネウロイは攻撃の勢いを先ほど以上に厚くし、シュミット達に攻撃をするのを防ぎ始める。
エイラは未来予知で次の攻撃を予測し、攻撃の間を縫いながらコアに近づく。しかし、エイラはここで
「えっ?」
エイラの目には、攻撃を回避しながら接近をしているシュミットとサーニャの姿が映った。二人はネウロイの分厚い攻撃の間をすり抜けながら左右に広がっていき、一気にコアの目の前まで到着、そして同じタイミングで引き金を引いた。
二人の機関銃から放たれた弾丸は、それぞれ左右のコアのある位置に飛翔していく。何十発と弾丸を撃ち込まれたネウロイは、全く同じタイミングでコアを破壊され、今までにない大きさの悲鳴を上げる。そしてコアの付近を中心に、その体を白色に変えていき、最後には破裂して光の破片へと変わった。
「…」
エイラは、先ほどの光景に口をわずかにポカンと開け言葉を完全に失ってしまっていた。その視線の先には、ネウロイのコアを撃ち抜いた二人が空中でたたずむ姿があった。
その光景に、エイラはまず、シュミットに対して嫉妬をした。サーニャの横に並ぶシュミットの姿を見て、自分があの隣に居たいという気持ちが現れた。
しかし、その心が完全に嫉妬で溢れることは無かった。それどころか、徐々にその気持ちは薄れていき、今度は逆にその光景に対しての諦めのようなものが生まれてきていた。
なぜ、エイラはそんな風に考えたのか。その理由はかなり前に遡る。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
数か月前の501基地、エイラは基地の外を歩いていた。それは、目当ての人物を探すために。
「サーニャ~…?」
エイラは、基地の中に姿を見せないサーニャを探していた。いつもなら基本共に行動しているエイラだったが、この日は珍しく基地内で遭遇していなかった。その為、サーニャの居場所を突き止めるべく歩いていたが、思い当たるところは既に探してしまい、今度こそ困っていた。
その時、訓練場から聞こえて来た銃声にエイラは気づいた。エイラは、それがいつも射撃場にいることの多いシュミットの物であると考えた。そして同時に、シュミットならサーニャの居場所を知っているかもと考える。
しかし、エイラはシュミットに聞こうかどうか最初迷っていた。そして、数秒の葛藤をし――シュミットに聞くことを選んだ。
しかし、エイラはここで大きな勘違いをしていたことを、射撃場に来て理解した。
「――え?」
エイラが到着した射撃場に居た人物は、先ほどまでいると考えていたシュミットでは無かったのだ。
「サ、サーニャ…?」
エイラは、驚きのあまり声がちゃんと出なかった。そこには、今まさに探していたサーニャが、MG42を的に向けて構えている姿があったのだから。
皆さん、更新が大幅に遅れてしまい申し訳ありませんでした。日常生活のゴタゴタと、私個人のモチベーション低下、スランプ等理由から、更新が大幅に遅れてしまいました。深くお詫び申し上げます。
シュミットとサーニャ、二人に起きた出来事。そして、エイラが見たサーニャの目的は!?
誤字、脱字報告お願いしますそれでは次回!