ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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無事に風邪から復活した作者です。というわけで、遅れていた小説を再開します。


第九話「温もり」

翌日、シュミットは夜間哨戒に一人で出発した。この日は生憎の雨で、格納庫の先はザーザーと大降りだった。そのため、シュミットはいつもの服の上にコートを着ていた。

彼はまたユニットに足を入れ、エンジンを始動した。この日は特に違和感を感じなかったのか、すんなりと自身の武装を手に取った。

 

「よし、行くか」

 

そう言って、離陸をしようとした時だった。

 

「シュミットさん」

 

後ろから声を掛けられ、シュミットは振り返った。

振り返った先には、なんとサーニャが立っていた。

 

「サーニャ?」

 

シュミットはユニットを履いたままサーニャに近づいた。

 

「どうしたんだ?今日は私の当番なのに」

「……その、これを」

 

そう言ってサーニャはシュミットにあるものを手渡した。それは一昨日シュミットがサーニャに渡したものとよく似ていた。

 

「これは?」

「あの、差し入れです……この前のお礼の……」

 

そう言って、サーニャはシュミットに渡す。それをシュミットは受け取るが、受け取った後シュミットは動かなかった。

サーニャは疑問に思った。

 

「……シュミットさん?」

「あ、ありがとうサーニャ。嬉しいよ」

 

そう言って微笑むシュミット。それを見てサーニャは頬を赤くする。

 

「それじゃあ行ってくるね」

 

そう言って、シュミットは離陸をした。

離陸直後の雨は、シュミットの体に強くぶつかり、彼の肌を冷やした。そして、雲の上まで上昇したシュミットは、自身の目に強化を掛け、視力を強化した。

しかし、雨に打たれたのが原因か、シュミットは肌寒くなりくしゃみをした。

 

「はっくしゅん!」

 

途端にシュミットは、先ほどサーニャに渡された水筒を思い出し、それを取り出した。水筒の蓋を開けると、中から湯気があがる。

シュミットは一口飲んで驚いた。

 

「ミルクティ…」

 

それは、この前の差し入れで出したのと同じミルクティだった。しかしシュミットはそれを飲んでこう思った。

 

(美味いな…)

 

彼は自分の入れたミルクティよりもそれがとても美味しいと感じたのだった。

 

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翌日、シュミットは夜間哨戒を終え眠りについた。しかし、なかなか寝付けなかったのか夜明けに再び起きてしまった。

シュミットは窓の外を見て頬を掻いた。

 

「まいったな。まだ夜明けごろじゃないか…」

 

今日の夜間哨戒はエイラのため、シュミットはもう一度寝ようかと考えたが、眠気が覚めてしまい眠れそうになかった。

仕方なく、シュミットは部屋の外へ出た。そしてそのまま食堂へ行きコーヒーでも飲もうかと思ったところで立ち止まった。

外から誰かの掛け声が聞こえてきたのだ。そしてシュミットは基地の外へ出て声のする方向に向かった。そこでは、坂本が真剣を振って鍛錬をしていた。

 

「少佐」

「どうしたシュミット、朝早くから珍しいじゃないか」

 

坂本がシュミットに声をかけた。

 

「いえ、なんかなかなか寝付けなかったので、目も覚めてしまったし食堂で休憩でもしようと思ったところ、少佐の声がしたので」

 

そう言ってシュミットは近くにあった木のところに行って、その鍛錬を見学することにした。

 

「こんな朝早くから訓練ですか?」

「ああ、ここは最前線だからな」

 

そう言って再び坂本は剣を振る。それを、シュミットはしばらく眺めているのだった。

その後、時間が過ぎ朝食時になった時にシュミットと坂本は食堂へ移動した。

驚いたことに、食堂にはすでに殆どの人が揃っていた。中には、朝が弱いサーニャもいた。

ミーナがシュミットに挨拶をする。

 

「おはよう、シュミットさん」

「おはようございます」

 

そう言って挨拶をするシュミット。それを見てシャーリーとルッキーニも挨拶をする。

 

「おはよう、シュミット」

「おはよー!」

「ああ、おはよう」

 

それを区切りに他の隊員も挨拶をする。そしてシュミットは自分の食事を取りに行った後、空いている席に腰掛けた。

と、シュミットはあることを思い出しサーニャに顔を向けた。

 

「サーニャ」

 

突然呼ばれたサーニャは少し驚きシュミットを見た。

 

「昨日のミルクティとても美味しかったよ、ありがとね」

 

そう言って微笑みながらサーニャにお礼を言うシュミット。サーニャはそれを見て少し恥ずかしくなったのか赤くなる。その様子を見てシュミットは食事を開始する。その光景を見て、他の隊員は様々な反応をしていたが、シュミットはそのことに気づかなかった。

すると突然ルッキーニがシュミットに駆け寄って来る。

 

「ねぇねぇシュミット!」

「ん?どうしたルッキーニ」

「これからシャーリーが新記録に挑戦するんだけど見る?」

「新記録?」

 

シュミットはルッキーニの言っていることの意味が解らずオウム返しをする。

するとシャーリーが補足するように説明した。

 

「ストライカーのスピード限界記録に挑戦しているんだ」

「スピード限界だって?……今までの記録は?」

 

シュミットはシャーリーの説明を聞いて今までの最高記録を聞いた。

 

「今までは790キロ。この前シュミットが出した記録と同じだよ」

「なにっ、本当か?」

 

シュミットは思わず驚きシャーリーを見た。

 

「それって、ユニットの素の速さだけでか?」

「そうだ!私が改造してな」

 

そう言って胸を張るシャーリー。それを聞いてシュミットはさらに驚く。シュミットは、ユニットを強化で最大出力を底上げして790キロを出したのに対し、シャーリーはユニットの改造だけで同じ790キロを出したと言ったのだ。

 

「なぁシャーリー、私も見ていいか?」

 

シュミットは興味が沸き、シャーリーに聞いた。それをシャーリーは快く了承した。

そしてシュミット達は朝食をとった後、滑走路に移動した。

滑走路ではシャーリーが珍しくゴーグルをつけて離陸準備をしていた。その横でルッキーニが速度計を持っていた。

 

「シャーリー、準備できたよー!」

「おう!」

 

ルッキーニがシャーリーに合図を送る。それを確認してシャーリーも声を返した。

 

「GO!」

 

ルッキーニが合図を送る。それと同時に、シャーリーは物凄い加速で滑走路を走り始めた。

 

「いっけー、シャーリー!」

「凄い加速だな」

 

ルッキーニがシャーリーに声援を送る。その横ではシュミットがシャーリーのストライカーの加速に舌を巻いていた。

基地のバルコニーでは、朝食の席にいたウィッチーズ全員がシャーリーの離陸する姿を見ていた。

 

「高度1000mまで51秒、今までの記録を上回る上昇速度です。少佐」

「おっ、前よりも速く上がったな」

 

ペリーヌの報告を聞いた坂本が反応する。

シャーリーはその後、測定高度まで上昇した後魔導エンジンの回転数を急激に上げた。

 

「魔導エンジン、出力全開!」

 

こうして、ぐいぐいと加速するシャーリー。その姿を見てルッキーニがはしゃぐ。

 

「いけー、シャーリー!」

 

その横では、シュミットがその光景を見て純粋に驚いていた。

 

「たまげた……あんなスピードが」

「時速750…760…770」

 

シュミットの驚く横でルッキーニがシャーリーの加速を読み上げていく。

 

「785…790…795!」

「795!?」

 

バルコニーでは同じ光景を見ていた坂本達もシャーリーの出した最高記録を聞いていた。

 

「加速が止まりました」

「どこまで出た?」

「795キロです。そこから速度が前後しています」

 

ペリーヌの報告を聞いた坂本は双眼鏡から目を離した。

 

「まだまだ改良の余地がありそうね」

 

ミーナがそう結論付けた。

滑走路ではシュミットがシャーリーの姿を確認して手を振っていた。

 

「シャーリー、凄いじゃないか!新記録達成だぞ!」

 

そう言ってシュミットは振っていた手を変え、シャーリーに親指を立てた。それを見たシャーリーも、シュミットに親指を立て返した。

 

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シャーリーの新記録挑戦を見学した後、昼食を取ったシュミットは朝の坂本の姿を思い出し、滑走路で一人訓練として周辺を走っていた。最前線で人類を守る兵士として、少しでもネウロイを倒すためにウィッチ達は戦う。そのことを今朝シュミットは再認識し、自主的に訓練をやっていた。

そして滑走路を15周ほど走ったところで、一旦休憩することにした。

 

「精が出るな」

 

と声を掛けられ、シュミットは振り返る。そこには坂本が立っており、さらにその後ろにはペリーヌが建物の影からシュミット達――正確には坂本を見ていた。

 

「はい、少佐。体力は必要ですし、私たちは最前線で戦う人類の希望であると朝再確認したので、それに恥じぬようにしないといけないと思ったので」

「はっはっはっは!」

 

それを聞いて坂本が高笑いした。その様子を見てシュミットも少し微笑む。

 

「少佐も訓練しますか?」

「ふむ、そうだな」

 

それを聞いて、建物の後ろから見ていたペリーヌが反応した。それに気が付いたシュミットが、ペリーヌに声を掛けた。

 

「ペリーヌ!ペリーヌも一緒にやるか?」

 

その声を聞いて坂本もシュミットの向いている方向を見る。そこにはあたふたしているペリーヌがいた。

それを見た坂本も声をかける

 

「ペリーヌ、お前も参加するか?」

「も、勿論です少佐!」

 

こうして、坂本とペリーヌを加えた三人の訓練は、午後の時間いっぱいを使って行われた。

 

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訓練を終え夕食を取ったシュミットは、一日の汗を流そうと基地のお風呂に向かっていた。

しかしその途中で、エーリカとバルクホルンに会う

 

「ん?シュミットか」

「シュミット―!」

「大尉、ハルトマン、もしかしてこれからお風呂か?」

「ああ、そうだ」

 

それを聞いてシュミットはこの時間には入れないなと考えた。

 

「もしかして、シュミットもお風呂に入ろうとしていた?」

「ああ、そうだったのだが……二人が入るのなら仕方がないな。先どうぞ」

「すまないな」

 

バルクホルンからお礼を言われてから、シュミットは部屋に戻る。そして部屋のベッドに倒れた。

そしてしばらく天井を眺めているとき、シュミットは突如再び起き上がった。

 

「……そういえば、今日ユニットを見てなかったな」

 

そうして、シュミットは部屋を出て格納庫に向かった。

格納庫に入ったシュミットは、自分のユニットに歩み寄った。そして、しばらくそのユニットを眺めていると、ハンガーからユニットのエンジン音が聞こえてきた。

 

「……?」

 

気になって行って見ると、そこにはエイラとサーニャがいた。

 

「エイラにサーニャじゃないか」

「お、シュミット」

「シュミットさん」

 

シュミットは二人に声を掛ける。それに気づいた二人はシュミットの方向を振り向く。

 

「エイラはこれから夜間哨戒か?」

「そうダ。サーニャは見送り」

「そうか…」

 

そう言ってシュミットは格納庫の先の外を見る。昼間と違い真っ暗闇の外の景色を見てから、再びエイラに振り返った。

 

「気を付けていくんだぞ」

「……なんだよ突然」

 

突然シュミットがエイラに気を付けてと言ったことに、エイラはどうしたんだと聞き返した。

 

「いや、無事に帰って来いよってことだよ。何かあって怪我でもしたら皆が心配するからな」

「……」

 

それを聞いたエイラは表情を変えた。そして何かを言おうとするが、その前に別の人に言われた。

 

「……それは、シュミットさんもです」

「へ?」

 

突然の声にシュミットは間の抜けた声を出す。言ったのは、今まで会話に参加していなかったサーニャだった。

 

「シュミットさんに何かあったら、他の皆も心配します。シュミットさんはもう一人じゃないから……」

「そうだゾ。シュミットはもう一人じゃないんだゾ!」

 

それを聞いて、シュミットは目を見開いた。

 

「……そうか」

 

そう言って、シュミットは格納庫を静かに出ようとした。その姿をエイラとサーニャは見送っていたが、シュミットは格納庫の出口で立ち止まり、再び二人に向き直った。

 

「ありがとうサーニャ、エイラ」

 

そう言って、シュミットは格納庫の外に出て行った。

それを見てから、エイラは夜間哨戒に出て行った。それを見送ったサーニャは格納庫を出るが、出た後すぐに立ち止まった。

そこには、既に部屋に向かったはずのシュミットがいた。シュミットは格納庫を出たすぐそこで壁にもたれかかっていた。

 

「シュミットさん?」

 

サーニャは思い切って声を掛ける。その声に驚いたようにシュミットは肩をビクつかせた。

 

「サ、サーニャ……?」

 

シュミットがサーニャを向く。そのシュミットの顔を見て、サーニャは少し驚いた。

彼の目には涙が浮かんでいた。

 

「……泣いていたのですか?」

 

 サーニャの言葉にシュミットははっとして、目に浮かんでいた涙を指で拭った。

 

「ごめんごめん、変な姿を見せてしまった。それと、これは嬉し涙だよ」

「えっ?」

 

シュミットの言葉に、サーニャは何のことかわからずに聞いた。

 

「……どういうことですか?」

「さっき、二人が言ったことが嬉しくてさ。一人じゃないって言ってくれたことが」

 

そう説明するシュミットは少し笑いながら赤くなった頬を指で掻いた。その姿を見て、サーニャも自然と頬を赤くする。

 

「それにサーニャもだよ、一人じゃないのは」

「……えっ?」

「サーニャだって、この部隊の一員だ。だから何かあったら心配するのはサーニャも同じだ。だから少しでも負担を減らそうと私は思ったんだ。サーニャだって、大切な仲間だからね」

 

そう言われたサーニャは更に赤くなる。その様子を見て、シュミットは笑った。

 

「ははっ、少し格好つけたな。でも、私だってサーニャは大切に思っているのは変わりないから」

 

そう言ってシュミットは無意識にサーニャの頭に手を当て撫でていた。しかししばらくして、自分がサーニャに何をしているのかを知り、急いで手をどけた。

 

「あっ、悪い!今のはその……」

 

そう言ってどう説明しようか困るシュミットを見て、サーニャは笑って返した。

 

「大丈夫です、シュミットさん。その、気持ちよかったです……」

 

そうサーニャは頬を赤くしながら言った。それを聞いたシュミットは、恥ずかしくなって更に赤くなった。

 

「その、なんだ、それならよかった……」

 

何と言ったらいいか思いつかずそう言ったシュミットだったが、さっきのことがまだ恥ずかしいのか頬は赤いままで、サーニャから少し顔を逸らした。

それから暫く二人は無言になる。しかし、シュミットがその沈黙を破った。

 

「……そろそろ部屋に戻ろう、サーニャ」

「は、はい」

 

そう言って自分の部屋に並んで歩き出す二人。しかし、その間も話は一切無いままだった。

そしてサーニャの部屋の前に到着した後、シュミットはサーニャに挨拶した。

 

「それじゃあおやすみ、サーニャ」

 

そう言って手を振るシュミット。

 

「おやすみなさい、シュミットさん……」

 

サーニャも挨拶を返す。そうして、サーニャは部屋に入っていった。

それを見て、シュミットも部屋に戻った。

部屋の中でサーニャは、ベッドに寝ころびながら考え事をしていた。

 

(シュミットさん……撫でられたとき、凄く気持ちよかった……)

 

そう考えながら、サーニャは枕に顔を埋めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、そういえばまだお風呂入っていなかった……」

その頃、部屋の前に来たシュミットはそのことを思い出し、再び来た廊下をUターンしたのだった。




気が付いたら6000文字も超えているジャマイカ……。
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