ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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すこしリリカルなのはに手をまわしていて更新が遅れました。どうぞ


第十四話「家族」

夕方、シュミット達は食堂に集まっていた。この日は隊員の給料日であり、ミーナが手に給料の入った封筒を持っていた。

シュミットはこの世界に来てから多額の給料を貰っているが、彼はその給料の使い道が全くと言っていいほど無い。服などに特にお金を掛けず、これといった趣味が無いシュミットは毎回渡される多額の給料を部屋のトランクに仕舞う習慣ができているのだった。

その時、ミーナとバルクホルンの気になる会話をシュミットは聞き逃さなかった。

 

「今回はどうするの?」

 

ミーナがバルクホルンに聞く。その手には給料の入った封筒があった。

バルクホルンが言った。

 

「また、いつものようにしておいてくれ」

「少しは手元に置いておかないと……」

「衣食住全部出るのにそれ以外必要ない」

 

シュミットはバルクホルンの言った「いつも」と、ミーナの言葉から給料を毎月何処かに送っていることを推測する。しかし、シュミットはその送り先が何処なのかは全く検討が付かなかった。

 

「はい、シュミットさん」

 

そう考えている間に、ミーナはシュミットのところにやってきた。相変わらず封筒は多額の給料が入っており、シュミットはそれを見て「またか……」と思いなら受け取った。

ふと、先ほどのやり取りが気になったシュミットは、ミーナに話しかけた。

 

「中佐」

「はい?」

「後で少し時間いいですか?」

 

シュミットは真剣な眼差しでミーナを見た。それを見てミーナも、シュミットが何か真面目な話を持ち掛けると理解し了承した。

全員が給料を受け取った後、シュミットとミーナは厨房をバラバラに出て行くウィッチ達を見送りながら部屋に頃る。そして、部屋に誰もいなくなった後、二人は向き合った。

 

「それで、どうしたのシュミットさん?」

「はい、大尉のことなんです」

 

シュミットの言葉を聞いてミーナは表情を変えた。

 

「さっきの中佐と大尉の会話を聞いて、大尉はいつも何処かに給料を送っていると思ったのです。それと、今回の大尉の不調は何か関係ありませんか?」

 

ミーナはシュミットの言葉を聞き考えた後、口を開いた。

 

「トゥルーデには、入院中の妹がいるの」

「妹……」

 

妹という言葉にシュミットは過剰に反応した。

 

「カールスラント撤退戦は知っているわね」

「はい」

 

カールスラント撤退戦。それはネウロイのカールスラント侵攻に伴い行われた大撤退戦である。この撤退戦で、各地の防衛部隊に多大な犠牲を出した地獄のような撤退戦である。

 

「そのカールスラント撤退戦で、トゥルーデの妹が撃墜したネウロイの負傷してしまい、今もずっと意識不明なの」

 

それを聞いてシュミットは自分の過去と照らし合わせた。シュミットは過去に自分の妹を空襲で無くしている。その時も、妹の入院中は妹の為に懸命に働いていた。

 

「そんなことが……あったのですか……」

「え、えぇ……」

 

シュミットの声が震えているのをミーナは感じ取った。

 

「中佐、大尉は妹の病院には……」

「行っていないわ」

「!?」

 

シュミットが言い切る前にミーナは簡潔に答えた。そしてシュミットは驚いた。

 

「ま、全くですか……?」

「……そうよ」

 

その言葉を聞いてシュミットは拳を握り締めた。そしてミーナに「ありがとうございました」と言ってから食堂を退出した。

そして部屋に着いたシュミットは拳を握り締め、抑えきれない怒りを部屋の壁にぶつけた。ドンっ!と、鈍い音が部屋に響き渡る。そしてシュミットはそのままベットに倒れた。

壁に打ち込んだ右拳はまだ痛むが、シュミットはそんなこと全く頭に無く、ただただバルクホルンに対して怒っていたのだった。

 

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「今日は編隊飛行の訓練を行う!」

 

翌日、格納庫では坂本以下数名のウィッチが集まっていた。その光景をシュミットは自分のストライカーユニットの整備をしながら聞いていた。因みに、彼一人では整備は出来ないため、整備兵二人もシュミットを手伝っている。

 

「私の二番機にリーネ」

「はいっ!」

 

リーネが大きく返事をする。

 

「バルクホルンの二番機には宮藤が入れ」

「っ……」

 

坂本が命令するが、宮藤はバルクホルンを見る。バルクホルンは宮藤の視線に特に反応せずじっと坂本を見ている。

 

「宮藤、返事はどうした」

「…はいっ!」

 

坂本が注意をして宮藤はようやく返事をした。

それを聞きながらシュミットは黙々とユニットの整備を行っている。因みに、今回の整備は只の整備ではなく、ユニット自体の改造も目的だった。これはミーナからの許可の元行われている。

 

「しかしいいですね、中尉」

「ん?何がだ?」

 

突然、一人の整備兵に言われシュミットは何のことか分からず聞き返した。因みにこの整備兵二人はシュミットと年が近く、男友達の少ないシュミットが気軽に話せる整備兵達だ。

 

「ウィッチ達に囲まれているのがですよ」

「ああ、そういうことか……」

 

そんな会話をしながらも手を休めないシュミット。

 

「だが実際、楽では無いな」

「そうですか?」

「ああ。女性の中に男一人が混じるのは肩身が狭い。だからこうやって気軽に話せる男友達などがいると凄い嬉しいからな」

「そうっすか……」

 

そう言いながらユニットの改造をする三人。そんな中、シュミットのエンブレムを見たもう一人の整備兵が口を開いた。

 

「しかし中尉のユニットのこのエンブレム、なんていうかかっこいいですね」

「ああ、『鉄の狼』って言うんだ」

 

シュミットのユニットに書かれたエンブレム。それは白いオオカミが鎖を咥えており、その狼の後ろに赤い剣が盾に伸びている姿である。そして三人はユニットの改造を終える。

 

「中尉、ユニットの改造はこれで完了しました」

「ご苦労、助かったよ」

「いえ!……しかし何故いきなり『耐久改造』を?」

 

そう、今回行ったのは『ユニットの耐久改造』である。シャーリーがP-51Dスピードを追求する改造をしていたように、シュミットは自身のユニットFw190Dに耐久改造を施したのだ。

 

「私の固有魔法のためだ。固有魔法の強化はユニットや武装の性能を底上げすることができるが、この間、ユニットに対して使っていた時に黒煙を噴いて壊してしまったんだ。だから少しでも耐久力を上げて壊れにくいようにしようと思ってさ」

「なるほど……」

 

シュミットの説明を聞いて整備兵二人も納得する。今回の改造は、この間の経験から思いついた内容だった。因みに、ユニットの耐久力を上げるために代償としてFw190は速度が少し落ちてしまったのだった。

シュミットは油で汚れた手を拭きながら格納庫の外に出る。上空では坂本、バルクホルン、宮藤、リーネの四人が編隊飛行を組みながら飛行している。

その様子をじっくり眺めていたシュミットだったが、突然鳴り響く警報を聞いてそれをやめた。振り返ると上空に信号弾が打ち上げられており、それがネウロイ侵攻を示していた。

シュミットは急いで格納庫に戻り、ユニットを履いた。ユニットの近くでは先ほどの整備兵二人が立っていた。

 

「ご武運を、中尉!」

「二人とも整備ありがとう。リーフェンシュタール、出撃する!」

 

そう言って背中にMG151を背負い、両手にMP40を持ったシュミットは滑走路を発進した。

そして上空に上がっていき坂本達と合流した。

 

「少佐、ネウロイは!?」

「グリッド東、07地区、高度一万五千にネウロイが侵入した」

 

そう言って、全員がネウロイの方向に飛行を始める。

飛行中、坂本はネウロイの出撃の不定期さに愚痴を零す。

 

「最近、奴らの出撃サイクルはブレが多いな」

「カールスラント領で動きがあったらしいけど、詳しくは……」

「カールスラント!」

 

ミーナの言葉にバルクホルンが反応した。

 

「どうした!」

「……いや、なんでもない」

 

坂本が聞くが、バルクホルンはそのことを誤魔化した。しかし、彼女の顔には明らかに気にしている様子が浮かんでいた。

 

「よし、隊列変更だ!ペリーヌはバルクホルンの二番機に、宮藤は私のところに入れ。シュミット、お前は遊撃だ!」

「了解!」

 

シュミットは坂本からの命令を受け、両手に持つMP40のセーフティを解除する。

そして坂本の魔眼が、ネウロイを捉える。シュミットも強化していた眼でネウロイを目視する。

 

「敵発見!」

「バルクホルン隊突入!」

「了解!!」

 

バルクホルンは降下しネウロイに突入を開始する。

 

「少佐、援護に!」

「了解!ついてこい宮藤!」

「はいっ!」

 

坂本は宮藤を連れ上昇をする。

シュミットも高度を上げ、上空からネウロイを見る。

バルクホルンがMG42を二丁構え、ネウロイに弾丸を浴びせる。そして離脱していくところを見ていたシュミットは、ペリーヌがバルクホルンの動きについていけず遅れている姿を見た。

 

(ペリーヌが遅れている……?)

 

シュミットはペリーヌが遅れているのを不思議に思った。

そしてシュミットは急降下しネウロイに向けてMP40の銃弾を浴びせる。強化を掛けた弾丸はMG151ほど抉ることは無いが、それでも高いダメージをネウロイに叩き込んでいく。

 

「やっぱりおかしいわ」

「え?」

 

と、ミーナが突然言い出した。横で聞いていたシュミットとリーネは何のことか分からずミーナを見る。

 

「バルクホルンよ!あの子はいつも視界に二番機を入れているのよ。なのに今日は一人で突っ込みすぎる!」

 

それを聞いてシュミットもバルクホルンを見る。バルクホルンはネウロイに急接近し、ホバリングしながら弾丸を浴びせている。それはあまりにも危険な行為だった。

 

「大尉!突っ込みすぎです!」

 

シュミットはバルクホルンに向かって怒鳴った。

 

「あそこを狙って!」

「はい!」

 

リーネはミーナから命令を受け、バルクホルンとペリーヌが攻撃している赤い部分を撃った。そして命中と同時にバルクホルンとペリーヌは離脱するが、それを見計らってかネウロイが反撃を開始し始めた。

バルクホルンは迫りくるビームをシールドで受けず回避する。しかし回避した先にはペリーヌがおり、彼女はシールドを張ったと同時にはじき飛ばされる。そして飛ばされた先にはバルクホルンがおり、ペリーヌとバルクホルンは空中で激突した。

 

「やばい!?」

 

シュミットが焦りネウロイに降下するが、ネウロイはバルクホルンのそんな隙を逃す事無く容赦なくビームを浴びせた。そして激突により反応が遅れたバルクホルンはシールドをまともに張ることができず、ネウロイのビームを食らってしまった。ビームはバルクホルンの持っていたMG42を貫き、その中に入っていた弾丸を誘爆させた。

 

「ああ!!」

 

そしてバルクホルンはそのまま地上へ墜落し始めた。

 

「大尉!!」

「バルクホルンさん!!」

 

ペリーヌと宮藤が墜落していくバルクホルンに駆け寄る。そして空中で二人はバルクホルンの体をキャッチする。

 

「おのれッ!!」

 

坂本がネウロイに対して怒りを露にするが、その横を一つの影が通り過ぎた。

それはシュミットだった。シュミットはその表情を怒りに変え、ネウロイに向けて突撃した。

 

「おのれ!!よくも大尉を!!」

 

シュミットは手に持っていたMP40を捨て、MG151に持ち替えた。そしてユニットに強化を掛けネウロイに突撃した。急激に速度を上げたシュミットは強化したMG151をネウロイに向けて容赦なく浴びせた。

 

「許さねえええ!!」

 

シュミットの怒りの弾丸はネウロイの装甲を大きく抉る。そしてネウロイはそんなシュミットを危険視したのか、離脱するシュミットに対して攻撃をする。

シュミットはそれを回避した後再びネウロイにダイブした。

 

「くたばりやがれ!!」

 

シュミットはネウロイの弾幕を掻い潜り、再び弾丸を浴びせた。そして今度はネウロイのコアを露出させた。

 

「コアだ!!」

 

坂本がネウロイのコアを確認する。その時だった。

 

「ぬあああああああああああああああ!!」

 

雄叫びを上げながら宮藤の治療を受けたバルクホルンが下からものすごい勢いで上昇してきたのだ。バルクホルンは両手にMG42と九九式二号機関銃を持ちながら突撃し、それをネウロイのコアに向けて撃った。

そしてネウロイはコアを穿たれ空中で欠片となってバラバラに砕けた。

その様子を空と地上の全員が見ていた。そしてミーナはバルクホルンに近づいた。バルクホルンはミーナに気づき振り向いた。

 

「ミーナ…」

 

パンッ!

 

バルクホルンの言葉を遮って、ミーナは彼女の頬を叩いた。そしてミーナは口を開いた。

 

「何をやっているの!?貴方まで失ったら、私たちはどうしたらいいの!故郷も何もかも失ったけれど、私たちはチーム…いいえ家族でしょう!この部隊の皆がそうなのよ!」

 

ミーナはそう言って、空いている手でバルクホルンを抱いた。

 

「貴方の妹のクリスだってきっと元気になるわ。だから、妹のためにも新しい仲間のためにも死に急いじゃだめ!!皆を守れるのは私達ウィッチーズだけなんだから!!」

 

ミーナは泣き出しそうな顔をしながらバルクホルンに言った。その言葉にはどれほどの感情が入っていただろうか。彼女たちが戦ってから失ってきた物が、その言葉の中にはどれほど含まれていただろうか。

バルクホルンは口を開いた。

 

「……すまない、私達は家族だったんだよな」

 

その言葉は、静かながらもウィッチーズ達全員に届いた。

 

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翌日、シュミットはバルクホルンの部屋を訪れていた。

 

「大尉……」

「ん、どうしたシュミット」

 

バルクホルンはシュミットの方を振り向く。その表情はもう思いつめた様子は無くなっており、柔らかくなっていた。

 

「家族を……妹を大事にしてあげてください」

「……どうしたんだ急に」

 

シュミットの突然の言葉にバルクホルンは訳が分からず聞いた。

 

「たった唯一の、血の繋がった家族です。だから絶対大事にしてください。大尉が死んだら、残された人は心に深い傷を負うことになるから……」

 

その言葉の重々しさに、バルクホルンはシュミットの目を見た。彼の目は、目の前のバルクホルンでは無くどこか遠くを見ていた。

 

「シュミット……」

 

バルクホルンはそう言って、シュミットに近づき肩に手をやった。

 

「ああ、約束する。私はもう死なないと」

 

バルクホルンが笑顔で言う。その言葉を聞いて、シュミットも笑顔になったのだった。

 




彼のエンブレムイメージはエースコンバットのガルム隊エンブレムをシベリア狼にした感じです。
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